ソード・アート・オンライン〜銀髪の二刀使い〜 作:月夜(白夜)
フェンと結婚して一週間が過ぎた。毎日が今までより楽しかった。苦手な早起きもフェンのために朝ごはんを作れると思えば何の苦にもならない。それにフェンも私の事を気遣っているのか片時も離れ無い、それよりずっとくっ付き合ってます。
まぁなかでも一番驚いたのは、キリトとアスナも一緒の日に結婚したって事かな、更に引っ越して家隣だし。
でも、私の自分勝手な行動で攻略を止めてしまったのは本当に申し訳ない。だから少しずつ鈍った感を取り戻すためにダンジョンに向かうことにした。一応フェンには行き先は伝えてあるため向こうも安心していると思う。
行き先は人型でソード・スキルをよく使うモンスターが多い57層迷宮区だ。
手ごたえとりあえずは大丈夫と言った所ではある。しかし、モンスターとは言えポリゴン状になるとやはりあの記憶がチラッと蘇り視界が揺れる。
完璧に仕上げないとボス戦で命を落とす確率が高くなる。なんとかここで慣れないと……。
再びPOPしたモンスターをソード・スキルと自前の剣技で薙ぎ倒して行く。
ゲツヤが剣を振りに行くと行って丁度1時間が経過した。ソファーで作り置きしてくれたサンドイッチを食べつつ56層はどんな所か近いようで遠い記憶を辿っていた。
大丈夫だとは思うが、流石に不安な箇所が出てくる。念の為に情報屋から56層の情報を買った。もちろん信頼できるアルゴからだ。
だが、送られた情報は目を疑うものだった。
「ゲツちゃんがラフコフを壊滅にさせて以来あそこは、オレンジ達の巣窟とかしてるゾ。もし1人でいるなら即行助けにいないとマズイよ。今、ゲツちゃんの装備とかは破格の値段で売られるって聞いたからな、オレっちの商売にオレンジもレッドも関係無いからナ」
なんだよこの最悪の事態は、それに今ゲツヤは対人戦をやらせる訳には行かない。こうしちゃいれない!
アルゴに手は早く返信をして、ゲツヤの安否を確認用のメッセージを送り家を飛び出すと目の前にキリト達がいる。
「おぉ! ビックリしたじゃねえか、どうしたんだよそんは険しい顔して」
「ゲツヤが1人で56層に行っちまって、流石に心配になってアルゴから情報を買ったらあそこは今オレンジの巣窟だって、それで今ゲツヤの持ってる装備は高値で売買されるらしい。まだあの事で魘されてる状態でオレンジと戦ったら確実にパニックになるから助けに行くんだよ」「私達も行くわ! ねっ、キリト君」
「当たり前だ」
「ありがとう、行くぜ!」
キリト達がいるなら心強い。無事で居てくれよゲツヤ……。
だいぶ56層に篭って時間が経過した。今だあのトラウマは完全には消し去れては無いが、剣の腕の方はそこまで鈍っていなかったのが助かった所か、レベルも上がった事だし帰ろう。メッセージBOXにはフェンから届いていた。
「今すぐそこから離れろ……。一体どういう事なの?」
「私は大丈夫だよ」
メッセージを送ろうとしたが、突然背中に不快な違和感が全身を走る。そして、瞬時に発動する麻痺毒。
力なくそこから倒れる。なんとか動くのは右手だけ、一体誰が……。
「よぉよぉ、細氷さんよぉ。随分反応速度が落ちたんじゃねぇのか?」
この、声喋り方間違いない……。昔フェンをコソ泥扱いして、返り討ちにしたクラディール……。
「いやー、この時をずっと楽しみにしていたぜ、あの細氷が俺様の前で無様に倒れるこの瞬間を……ヒャッ、ヒャッ」
奇怪な笑い声が背中から聞こえる。誰か、この層にはいないの?
「無駄無駄、ってこんなくだらん話してたら麻痺が切れちまう」
ザクザクと背後から近く足音……。やだ、来ないで……。
「いや、いや……」
「おいおい、随分弱々しいなぁ。あの時殺すとか言ってた威勢はどこに消えた!!」
クラディールは、無抵抗な私の両手を紐できつく縛り付ける。そして、背後にある巨大な木からなる幹に引っ掛ける。
「な、なにをする」
完全になすすべが無い。格闘スキルで蹴り飛ばしたい所だが、背後には木がありモーションに入れない。
「あ? この状況見て分からない? 全くこれだからガキは、大人の遊びを教えてやるよ」
頬を釣り上げて近く。次第に恐怖心がジワジワに襲い掛かる。
そして、麻痺して動かない左手を掴まれて勝手にメニューウィンドウを開かれる。
「このゲームの深いところに倫理コード解除設定ってのがあってだなこんな事ができるんだよ」
ま、まさか……。
「や、やぁ……」
クラディールは私の装備を全て解除した。隠しているのは下着だけ。
「ヒャッヒャッヒャァー!! 最高だなおい!」
そして、両手剣を私の太ももへと突き刺す
「あぐっ!?」
「いい声じゃねぇか、さぁてとそろそろ本題に入ろうじゃ無いか」
クラディールの汚らわしい手がゆっくりと近づく、指先で撫でるように脇腹と内腿を触る。
「ひっ……!」
「ったく相変わらずいい声じゃねぇか、こっちも興奮するじゃねぇか人殺しさんよぉ」
煽るように言われた人殺し、その言葉で私は一気に足から力が抜け、目から止まらない涙がこぼれる。だが、クラディールの屈辱な行動は止まらない。胸元、首筋フェンに触られて無い箇所を何もかも触られる。
「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んじゃ、そろそろあんたのお初俺がもらいますか」
腰を持ち上げられ、足を無理矢理広げられる。
嘘だ、こんな所で……好きでも無いこんな奴に……。
「助けて……助けてよ……誰かお願い……フェン」
本当に誰でもいい。この屈辱から早く助けて欲しい。
「うーっし、いただきまー……ゴフッ!!?」
突然クラディールが横に吹っ飛ぶ。手に縛られていた紐が切られて地面に落ちる前に温もりが私を包み込む。
「アスナ、服を頼むあいつは俺がやらないと気がすまねぇ」
かつて無いほどここまで怒りを露わにしているフェンは初めて見た
「分かったわ、ゲツヤこれを」
アスナからコートを羽織られる。
「ありがとう……助かったよ」
「遅くなって本当にごめんね」
アスナに飛び込み涙を溢す。その一方でフェンはクラディールをボコボコにしていた。
「おい、立てよ雑魚。1発くらい斬ってみろや」
「いい所を邪魔すんなクソガキィ!」
クラディールは単発スキル、アバランシュを発動させる。フェンはため息をついてそれをスキルを使わずノックバックで弾き飛ばす。そして、両手を一瞬で斬りとばす。
「まだ、終わりじゃねぇからな」
両手を失い抵抗できないクラディールにポーションを飲まして再びいたぶる。
「調子に乗んなよ! 今度こそ細氷を俺様の奴隷させてやるからな!」
「あ? お前何ほざいてんだよ。ゲツヤはな俺の妻なんだよ、お前みたいな雑魚引っ込め!」
顔面を思いっきり蹴り飛ばして、殺さない程度にいたぶる。
「ケッ、人殺しとよく結婚出来たなぁ。お前もどうせリアルの世界じゃ毛嫌いするぜ」
人殺しの言葉に肩がビクッと上がる。耳元でアスナが大丈夫よ、と連呼してくれる。そうだよね、そうじゃなかったら結婚なんてしてないよ。
「お前……殺す!」
フェンから聞こえた言葉に私は止めさせようと声を掛けようとしてが、既にクラディールはその場に居なかった。そう、ポリゴンと化して死んでいった。
何の罪も無いフェンを私は何てことを……。
「悪いなゲツヤ遅くなっちまって」
両腕を広げて私を迎え入れる。それに応えるようにアスナから離れてフェンに抱きつく。
「ごめん……フェンまでこんな事をさせちゃって」
「大丈夫。俺は、お前を助ける為になら悪魔にもなれる、キリトもアスナもありがとう」
「私は平気よ。さぁ、戻りましょうそれと気分転換に4人てピクニックでもしない? まだお昼回って無いし」
ピクニックか、22層の風景を満喫出来るなら楽しみだね。
「おお、それはいい案だな。なら支度したらゲツヤ連れて家に行くよ」
「りょーかい。また後でね」
アスナとキリトが転移する。私はもう一度フェンの胸元に顔を押し付けた。
「……本当にありがとう。私にとってフェンはヒーローよ」
「当然の事をしたまでだよ。さて、俺たちも帰ろう…….ん?」
メニューポーズを開いたフェンの指が止まり困惑の表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「いや、見たこと無いスキルが解放されてて……もしかしてユニークスキルか?」
「本当!?」
「あぁ、守護命剣(しゅごめいけん)愛する人を守るためならどんな罪をも恐れない。設定で愛する人の名前を書く。
愛する人が半径200m以内にいる場合全てのパラメーターが50%アップ。経験値獲得率アップ、クリティカル率アップ。
守護命剣を装備中はソード・スキルの威力が2倍。硬直時間半減、この効果は愛する人も反映される。おい、これ流石に強すぎだろ」
うん、確かに強すぎる。全パラメーターアップだけでも強いのに、ソード・スキル威力が2倍って、しかもそれが私にも反映されるって。確認のためにみるとHPバーの上に色々なアイコンが表示されている。
「守護命剣の獲得は愛する人との間に子供を作るだぁぁ!?」
「えぇぇぇぇ!?」
「なんだこのセクハラ仕様は!?」
こ、子供って事は……つまりそういう事だよね
「と、とりあえずこのセクハラ剣は置いといて、まずはピクニックに向けて準備しようか」
「う、うんそうだね」
あの守護命剣の獲得条件を聞いて、フェンとの間に恥ずかしい気持ちが出てきてモヤモヤする。
「子供か……なら近い内に……」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん、何も」
22層へ帰りまずは風呂へと入りそこからピクニックに向けての準備をした。