ソード・アート・オンライン〜銀髪の二刀使い〜 作:月夜(白夜)
「ん……っ」
不意に睡眠から目覚める。寝ぼけた目で時計を見ると11時を回っていた。久々にここまで気持ちよく寝れた気がする。視界を上に上げると上に何も着ていないフェンが寝ていた。こうして寝ている彼の顔を見た事が無かった気がする。
私と同い年? でも上にも見えるな。今度聞いてみたいけどリアルの事を持ちかけるのはタブーだからね。でも、綺麗な顔している。指先で頬を優しく突いたり唇にそっと触れる。
「……キスしても起きないかな……?」
寝たまんま近づこうとしたが、胸に何か当たっている気がする。フェンに夢中で何も気付かなかった。下を向くと、私に抱きついて眠っているルリがいた。
「ルリ……」
そっと名前を呟くと呻き声が聞こえ、顔が上がる。目が合って私は優しく声を掛けた。
「おはよう、ルリ」
「うん、お母さんおはよう」
昨日は途切れ途切れだったのに夜を一回越えただけで流暢に話していた。ルリは、モゾモゾ動いて体を移動させて、上に這い上がっていく。
「お母さん、昨日の夜何してたの? なんか、今とは違う変な声だったけど」
ルリから発した変な声に私は、昨日の夜行った営みを思い出してしまった。しかもそれがルリに聞こえてたなんて……アスナ達には聞かれて無いよね。ちょっと声出ちゃったのは……は、初めてだったし。
「あ、あれはマッサージよ。お父さんに体を解して貰ったの」
「そうなんだ。私お腹空いちゃったよ」
「ごめんね、今から作るからね。その間にお父さんを起こしてくれる?」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
ベットから出て、エプロンを着て朝食を作り始める。その数分後には寝室からフェンがルリを抱っこしたまんま出てくる。
目が合った途端恥ずかしさが、こみ上げてきて双方顔を逸らすと。
「ゲツヤ、だ、大丈夫か?」
「ちょっと腰に違和感あるけど多分大丈夫」
「そ、そうか」
なんとも言えない雰囲気が漂ってしまう。そんななかルリはある人を探していると言った。その事でさっきの事は忘れてしまい、どんな特徴かすぐかま問いかける。
「名前はユイっていうの。私と同じくらいの身長で黒い髪で白いワンピースを着てたはず」
ルリの言った特徴ですぐに誰か分かり、居場所も簡単に特定出来た。
「あっ、その子ならすぐ近くにいるよ。今から行こうか?」
「ほんと!? うん、行きたい。どうしてもユイに逢わないと行けないの! たった1人の友達なの!」
ルリの眼差しと声のトーンでどれだけ大切な友人か分かる。
「なら行こうか、フェン行くよ」
「おう」
キリトの家は横のためにほんと5秒くらいで着く。インターホンを鳴らすとユイと確信のある少女を抱きながらアスナが出てくる。
「ユイ!」
「急にごめん、この子ルリって言うんだけどユイって子に逢いたいっていうから」
手短に説明をするとルリは必死にユイへと声を掛けている。ユイもルリを見るとアスナの腕から降りるとお互いに抱きしめ合った。
「ユイ! 私達やっちゃったね!」
「ルリ! やっちゃいましたね!」
一体なんの話なのかさっぱり分からない。
「あのね、お父さんとお母さんに話さないといけないの。私とユイの正体を」
「「「「え……?」」」」
ルリとユイは、顔を俯けながら、静かに自分が何者か語った。
「私達の正式名称はメンタルヘルス・カウンセリングプログラム、MHCP試作2号Ruri。そして、Yuiが試作1号です」
その事で私達は察した。この子達はNPCでもプレイヤーでも無い。人工知能……AIだと。
そして、ユイは泣きながら私達に謝罪をした「嘘ついてごめんなさい。この涙も何もかもは全部嘘、偽物なんです。ごめんなさい、キリトさん、アスナさん、ゲツヤさん、フェンさん」
ユイの涙は地面に着くとポリゴンと化す。涙で喋れないユイの代わりにルリご話した。
「私達はカーディナルシステムとよばれる巨大なシステムからプレイヤーに対する干渉禁止。それでも私達は続けた。この世界を埋める感情は、怒り、悲しみ、恐怖、絶望、狂気と最悪でした。徐々にエラーを蓄積するなか、光の感情が見えた。愛、楽、嬉、笑。どれも見ことの無い感情でした。もっと深く知りたいと思い更に監視をしていた。そしたら別の欲求が私達に動かしました。私は、フェンさんとゲツヤさんの横に居たいって思ったんです。そして、毎日のように私達はシステムコンソールで実体化して彷徨っていました」
「それがあの22層ってことか、でも1ついいか、今ルリ達はカーディナルっていうシステムの命令無視をしてここに居るってことは、バレたらどうなる?」
「間違いなく消されます」
俯くルリに私は、居ても立っても居られなくなり抱き締めた。少ない数のなかでも一番愛を込めて、娘から離れたくない一心で。
「お母さん……でももうお別れの時間が迫って来てます」
「どうにかならないのか?」
「まだ、可能性はありますがほぼ0%に近いです。はじまりの街中心部の地下にあるGMがシステムにアクセスするためのコンソールに入り込み、GMアカウントでシステムに割り込む。この手しか残されてはいません」
途中あまり内容が理解出来てはいないが、ゲーマー2人は、それがどれ程難しいが理解しているのか標準が暗いが。
「でも0%に近いってことは、1%くらいの望みはあるって事だ。俺達の娘を助けるためだ。どんな手を使ってもな」
キリトはユイの頭を撫でて、二刀流を装備する。やる気に満ち溢れている。それはフェンも、アスナも同じ。
「でもどうやって入り込もうか、はじまりの街は軍の本拠地だ。ネズミ一匹入れたもんじゃない」
入り込むなんて簡単じゃない。私の得意分野じゃん。それにまだツインセイバーには特集能力が隠されてるのよ。
「そんなの私に任せとけばいい簡単じゃない。サクッと忍び込んで、ルリ達を助けよう」
「お母さん、お父さん、キリトさん、アスナさんありがとう。私もずっと居たいから」
ルリは、私に抱き付く。必ず娘を1人になんかさせない。
はじまりの街に転移して、軍の拠点へと移動すた。目の前には警備の兵士が立っている。ここから潜入開始ね。
「みんなどこでもいいから私に触れて」
ユイとルイを先頭に両手を掴み、アスナは右肩、フェンは左肩、キリトは背中に触れる。
「よし、それでみんなステルス状態よ。ツインセイバーは触れてる人も反映されるからこんな潜入余裕でしょ? でも、大きな声だしたりするのはNGよ。オーケー?」
全員の頷きを確認して、場所をするユイとルイを歩かせてその後ろをついていく。
兵士の前を横切っても当然気づかれない。私以外のみんなはビビっていた。
「心臓に悪いわよゲツヤ!」
小声で叱ってくるアスナに舌を出して、謝る。そのまま軍の所を歩くと、黒鉄宮へと入る。見たくない顔が勢ぞろいだ。シリカをダシにして儲けようと考えたロザリアにラフコフ幹部のメンバー、私は周りを見ないように俯きながら歩くとユイとルイが指をさしたのは頑丈な扉だ。
「ここは、プレイヤーには開けれない開かずの扉です。でも、私達なら」
小さな少女が力を合わせて自分より何倍よりも大きい扉を開けて行く。そこに入ると扉が閉まる。
「ふぅ……流石に歩きにくいって、きゃぁ!?」
「どうしたゲツヤ!?」
突然お尻を強く掴まれ勝手に声が出てしまった。肩にはアスナとフェンしかいない。となるの犯人はこいつしかいない。
「キ、キリトが私のお尻を掴んだの……」
「いや待て! ご、誤解だ、これは不慮の事故だ!」
必死な弁解も虚しく、フェンとアスナに剣を向けられる。
「キリト君、これが終わったら2人で仲良くお話ししようね」
「いや、ちょっ待ってくれアス……」
「はい、口答えしない」
そのまんま、キリトにレイピアを向けたまま先行させる。
「はぁ……びっくりしたよ急に。キリト、セクハラするならアスナにしなさい」
「はい……そうします」
「そこ納得するな!」
アスナは後ろからキリトの肩を浅く突く。その状態のまま歩き続けると、システムコンソールらしい黒色のオブジェクトが出てくる。しかし、その手前にある通路と交差する道から何か嫌な気配を感じ取る。一瞬にして、戦闘状態に入る。
「皆さんも察したと思いましたが、システムコンソールを守るボスがいます。強さは90層に匹敵します」
「90!? 流石に勝てる訳無いわ。どうする?」
「ここも私達に任せてください」
ユイとルリが交差する通路にはいると鎌が頭上から前触れもなく現れる。ユイの頭の上には破壊不能の表示が現れる。
「邪魔しないでぇぇ!!」
ルリの声と共に右手に炎の剣が現れて、横に薙ぎ払う。するとボスは奇怪な声を叫びながらポリゴンへと化した。
「……今のでカーディナルにバレた。もう、時間がないよ」
ユイとルリの体が薄く光る。嫌だ……行っちゃいや!
「行かないで! 折角ここまで来たんだから!」
私とアスナは娘を抱きしめる。しかし、腕の隙間から光が漏れてしまう。徐々に透明になっていくルリ。
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
「俺達が救ってやる! フェン行くぞ!」
「まっかせとけ!」
キリトとフェンはシステムコンソールへと猛ダッシュして、一心不乱に何かを叩き始めた。
これは、時間との戦い。この役目はフェンとしてではなく、蒼葉 悠としての戦いだ。2年ぶりに見るキーボードだが、ずっと触っていたために体にこびりついている。
「あと……もう少し」
人生の中で一番早いタイピングだと思う。1つのミスもさせずにカーディナルシステムにGMアカウントで入る。
「これだ!」
キリトが見つけた、MHCP全命令解除フリー行動許可という項目だ。そこを選択して、確認のクリックをする。
「これでどうだ!?」
俺はルリ達を見た。さっきまで薄い光で包まれていたが、その光はどこかえとんでいた。
「成功です……パパ、ママ」
「お父さん、お母さん。私達自由になった」
「ルリ!」
「ユイちゃん!」
2人の母親は、愛娘を強く抱きしめる。まだ、俺達はやるべき事はやった。
「ユイはキリト、ルリは俺のナーヴギアの空き容量に保存しておいた。これでどの世界でもずっと一緒だよ」
俺はゲツヤとルリまとめて抱きしめた。
「これからは俺達3人はずっと一緒だ」
「ルリ……よかったよ、よかった……」
ゲツヤはただ涙し同じ言葉をずっと繰り返していた。そんな彼女に苦笑いしながれ頭を優しく撫でる。
「私、嬉しい。お母さん、お父さん大好き!」
ルリは、俺とゲツヤの頬に顔を近づけると優しく唇を付けた。可愛らしい娘だ。
「なぁ、そろそろ帰ろうか、ここじゃゆっくり出来ないしな」
「ええ、そうね……本当によかった」
キリト達もひと段落済んだようで既に転移結晶を持っていた。
「じゃーまた今度な、2人ともそれと……ゲツヤその悪かった」
「もういいよ、その代わりお説教頑張ってね!」
隣にいたアスナは笑ってはいるが完全に怒っている。多分キリトにだとは思うが……。
「よし、俺達も帰ろうか」
「そうね、じゃーね3人共」
転移結晶を使い、家へと帰宅する。
「さて、ルリは昔お母さんが使ってた部屋を自室にしてもいいか?」
「うん、でも寝るときは一緒がいい」
再び抱き付くルリ、この子は本当に甘えん坊だ。このSAOの世界は、俺にとっては現実世界よりも過ごしやすい。嫁もいるし愛娘もいる。本当は、現実世界なんかに帰りたくはない……。このままずっと3人で仲良く過ごせるならずっと閉じ込められててもいい。でも、そんな訳にも行かない。ゲツヤと現実世界で会って結婚するんだ。
「ェン……フェン聞こえてる?」
「お、おうどうした?」
考え事をしていたせいでゲツヤの声が全く届かなくなっていた。
「そろそろ聞かせて欲しいの、フェンの本当の名前と年齢を。私も言うから」
「わかった、俺の名前は蒼葉 悠(あおば ゆう)歳は、確か16になったかな?」
「あおば……ゆう、私は姫美夜 極夜(ひめみや きょくや)悠と同じ16よ」
「ひめみや……きょくや。同い歳か結構意外だな、ずっと上かと思ってたよ。師弟関係の時だけはな」
「あの時の私は忘れて、ちょっとカッコつけすぎたから」
「いいじゃん。私を乗り越えられないのなら一生弟子のままよ! だったか? 散々言われたよ」
昔のゲツヤに何十回と言われた言葉だ。あの時のゲツヤは怖かったよ、戦闘になると目の色変わるし。でも今は、恥ずかしがって、顔を必死に隠している愛おしい嫁になっている。
「バカ、今日フェンだけ飯抜き」
「ゲゲッ……お、お慈悲を下さい〜!」
「ふふ、冗談よ。今日も美味しいご飯作ってあげるからそんな顔しないの」
ったく心臓に悪いっつーの俺の活動の源はゲツヤの飯なんだから
「ねぇ、折角だから家族3人の写真を撮らない? それに今日はルリの誕生日って事で」
「おっいいな、ちょっと待ってろよ」
アイテムストレージから撮影結晶を取り出して、ゲツヤと一緒にルリを抱き締める。
「今日、4月26日はルリの誕生日。レンズしっかり見てろよ。ハイ、チーズ」
「わぁ、いい写真だ」
写真をデータに保存して一度実体化させて額縁へと掛ける。
「うん、いい感じね。ルリ、誕生日おめでとう」
「おう、おめでとう」
「お母さん、お父さんありがとう!」
俺達3人は再び抱き合う。最高だ。死のゲームなのにこんなにも嬉しいなんて。俺達ならどんな事も乗り越えられる。今日の出来事でそう確信した。