ソード・アート・オンライン〜銀髪の二刀使い〜 作:月夜(白夜)
イチャイチャ展開は終わり、時1時そして、ヒースクリフが用意したデュエルの会場へと向かったのだが、場所はアインクラッドで唯一ある闘技場が会場だった。
私はてっきり2人でこっそりとやると思っていだがかすりもしなかった。
「はぁ……帰りたい。だいたい見物客がいるとか最悪よ」
独り言を呟き、最後に装備の確認をして、フィールドに出た。
その瞬間に会場のボルテージが上がる。これからデュエルが始まるのにうるさい雑音だ。そんななかでも一度ぐるっと観客席を見渡すと最前列で身を乗り出して手を振るルリを見つけた。そのルリに向かって小さく手を振ると再び大きく手を振るが、ルリの後ろにいた男性プレイヤー達が変な勘違いをしているのを発見したために殺気を込めた視線で黙らせる。
「すまないなゲツヤ君。こんな事になるとは想像付かなくて」
「……まったくよ。ちゃんとギャラはくれるんでしょうね?」
「いや、これが終わったらギルドのメンバーとして、こき使わせてもらうよ」
ヒースクリフからのデュエル申し込みが来てOKを押せば、カウントダウンが始まる。剣を抜き、全て意識をヒースクリフに向ければ、あれほどの雑音が消え失せる。
「はぁぁぁぁ!!!」
0になった瞬間にヴォーパル・ストライクを使い、一瞬で距離を詰めるのと同時に、細剣上位スキル。スター・スプラッシュを高速で放つが、神聖剣の醍醐味である鉄壁の防御に容易く弾かれる。そして、相手の攻撃か来る前に完全ステルスと化して距離を引く。
(貰ったわ。ヒースクリフでもこのステルスを見破ることなんて出来ないわ)
裏に回り込み、ホリゾンタル・スクエアで勝負を決めようとしたが、目の前には、神聖剣の盾が向かれていた。
(な……なんて人なんだ……)
ホリゾンタル・スクエアだけは放とうと思ったが、先に盾が喉仏を直撃する。
「うぐっ! まったく硬すぎよ」
「そっちこそ見事なスピードとステルスだが、殺気を出しすぎだな」
「黙れ!」
ここで、ツインセイバー最上位スキルダイヤモンドダスト・ストリームを放つ。 今まで以上に重い一撃と素早く剣を振り続ける。
「ぬおおっ……!」
ヒースクリフの上体が少しずつよろけるが、何故反応できる? ツインセイバーは対人戦では今回が初めてなのよ。筋力パラメーターすべてを乗せた一撃を繰り出すと、あの盾が外れ、体が無防備になる。止めの一撃を送ろうとした時、ヒースクリフのスピードが光のように早くなった。いや、私の時間が止められたのか? とにかくあり得ない速さで盾が戻っていった。
最後の一撃がむなしく盾に激突する。その衝撃で体がよろける。
「しまった……」
ヒースクリフは勝ちを確信したように盾に全体重をのせたタックルをかまして、剣を振る。
でもね、私だって負けられないのよ!
「うあああぁぁぁ!!」
無理矢理体を捻り、格闘スキルを発動させヒースクリフのこめかみに鋭い蹴り技をお見舞いする。
それが見事に直撃して、ヒースクリフは地面を滑り、立ち上がるがその時の顔は、あり得ないと言わんばかりの表情であった。
「なるほど……これで終わらせよう」
「それはこっちのセリフよ!」
お互いに距離を詰めて、ソードスキルは使わず、ただ剣技だけで勝負を決める。
しかし、ヒースクリフの剣は私よりも上だった。徐々にHPバーが減っていき焦ってしまうが、ここでハマれば確実に私は負ける。いつでも慎重にならないといけない。
しかし、ヒースクリフはまだ1つ最大の武器であるパワーを見せつける。下からの切り上げに対応したが、二刀とも弾き空を飛ぶ。
「……あっ」
今度こそ終わった。諦めて手を上に上げて降参の言葉を呟こうとしたが、懐に、ガチャという軽い金属音が聞こえた。ヒースクリフの剣が迫るのと同時に懐に手を滑らすとそこにあったのは投げナイフだった。
「ゲツヤ君、楽しい戦いをありがとう」
「それはこっちもよ!」
剣が私の胸を貫いた途端、ヒースクリフの心臓部分に投げナイフを投擲した。
「ぐはぁ……! ぐっ、うぅ……」
剣を奥に捩じ込んで来るために強烈な違和感が発生する。そしてデュエル終了を表すゴングがなり結果は……。
「ドローだと……? まさかこれが」
ヒースクリフは胸に突き刺さったナイフを凝視する。そして、この時初めて彼のHPバーがイエローに変わっていた。会場ないは、沈黙が訪れる。
「素晴らしいデュエルをありがとうゲツヤ君、君の事は諦めよう」
直ぐに立ちたがりそそくさに会場を後にした。しかし、私は数分間立ち上がる事が出来なかった。
「つ、疲れた~」
近くにあったカフェに集まり、取り敢えず戦闘後の休憩時間。
「これでまたまた有名人だな、ゲツヤ」
「お母さんかっこよかった」
「今日は何もしたくない……」
「でも、本当にここから大変よ。特にフェンくん」
「お、俺?」
「この記事読んでごらん」
アスナが渡した新聞みたいなやつをフェンと一緒に見る。もちろん一面はさっきの戦闘の事が取り上げられてはいるが、それと同じように取り上げられていたのは、私とフェンとの関係であった。
「アインクラッドで5本の指に入る美少女、細氷ゲツヤは守護剣士として名を馳せているフェンと結婚し、子供も産んでいた。この緊急事態を男性プレイヤーはどう考える!? 現在フェンはNPCが経営するカフェ・パリスにいる……っておい、ここじゃねぇかよ!」
そして、何かを感じ取ったのか、ゆっくりと窓ガラスを見ると男性プレイヤーが殺気を放ちながらフェンを見る。
「お母さん、怖いよ」
「うん、私もなんだか怖い……。フェンどうする? あいつら徐々に近づいてるよ」
「んなもん簡単だよ……逃げるぞ! ってことで代金二人ともよろしくー!」
フェンは席立ち、私とルリの手を引っ張る。後ろで文句を言うアスナを無視して。
「いたぞー! フェンだ! 待てやゴラァァ!!」
ガラの悪い男達が必死に追いかける。それを見て、転移結晶を取り出して、ホームのある22層へと転移してノンストップで家へと戻る。
「これから家に出るときからステルスで行かないと危ないわね……」
「あぁ、そうだな……」
お互いにため息が漏れる。
なんだかんだで時が経ち、サービス開始から丸二年が過ぎて現在は75層の攻略を行っていた。
ボス部屋を発見して偵察隊を派遣したらなんと全滅。1つも情報がないままにボス攻略が始まった。
重々しい扉の前で勝手にフェンの手を強く握っていた。
「怖いか?」
「えぇ、とっても」
「大丈夫だ、いつも通りやっていけばな」
「そうね……」
ここ最近の攻略では、私とフェンの桁違いのダメージ量で戦ってきたがなんだかこの層は嫌な事しか考えれない。
「よし、行くぞ!」
ヒースクリフの言葉と共に部屋へと侵入する。
「上よ!」
アスナの言葉通りに、ボスは屋根から地面に向けて降りながら、爪でひっかく。その攻撃は、なんと一発で味方をポリゴン状となってしまった。
「いちげき……」
これまでよりも強く死が近づいてくる感覚がした。
「止まるな! 全員動け! 作戦通りに事を進めろ!」
そうだ、今はボス線。立ち止まってる暇なんてない。最初からツインセイバー最上位スキルを連発していく。他のプレイヤーもソードスキルを放つが、爪の一撃で1人、また1人と犠牲者が現れる。
「これ以上好きにはさせない!!」
横から飛んでくる爪を弾き飛ばして、ボスに真っ正面から攻める。
「やめろゲツヤ! 単騎で行っても死ぬだけだ! 自分のHPを見ろ! 一旦距離を開けるぞ」
フェンに激を飛ばされて、自分が陥ってる状況を確認した。HPバーは、いつの間にか、レッドに近いイエローだった。二人は、タンク達の後ろに下がりハイポーションを飲む。
「ごめんなさい……。冷静さを失ってたわ」
「いいさ、だがゲツヤお前らしくないぞ。どうしたんだ?」
「分からない、自分の事なのに本当に分からないの……」
「そうか、まぁ気持ちを切り替えていこうぜ」
「そうね」
フェンの後に続き、タンク達の前に出る。既に、レッドゾーンに差し掛かっていたキリトとアスナに変わり全線に出る。
「はぁぁぁぁ!!!」
再び、ゾーンスキルを連発する。そして、フェンの強烈なソードスキルがボスの足を破壊した。
「いい調子だ、このまま畳み掛け……ぐぅあ!」
前にいたフェンが凄まじい勢いで横に吹き飛んで行き、壁に激闘した止まる。そこから微動だにしない。
「フェンッ!! しっかりして! お願い! 目を開けてよ!」
どんなに肩を揺すっても耳元で声を上げても、指すら反応してくれない。次第に視界は濡れて、涙が落ちていく。
「うぐっ……フェン。おねがい……目を開けて……うぅ……フェンがいないと私……戦えないよ……」
剣を握る力が弱くなっていくのを感じる。そして今、ボス攻略だというその意識が飛んでいた。
「ゲツヤーッ!! その場から逃げろ!」
キリトの絶叫に自分が立たされた現状を知った。ボスの爪が、私に振り下ろされていた。
「フェン! 目を開け……」
爪が触れる瞬間に、何かに包み込まれる。これは守護名剣だ……。
「悪かったなゲツヤ、なんとかいけそうだ」
「……フェン」
「戦えるか?」
「うん、もう大丈夫」
「よし、一気に攻めかかるぜ」
ドーム状の盾は、サッカーボールサイズになり私の回りを浮遊する。
「全員、一気に押し込むぞ!」
「「「うおおおお!!!」」」
フェンが目を覚まし、士気が上がる。そこから捨て身の怒濤の攻撃が始まる。しかし、一筋縄では行かない。途中、途中で犠牲者が現れる。
「うおおおおお!!」
キリトがさらに先陣していき、私も後を追いかける。
「押し込めぇぇぇ!!!」
私と、キリトの最上位ソードスキルを連発する。あと、半分だ……!
「フェン! スイッチ!」
「了解だ!」
前後交代して、守護名剣の最上位スキル。13連撃、デス・インパクトを放つ。一発一発の攻撃が全てクリティカルヒットになりなんとボスはポリゴンと化して行った。
「はぁ……はぁ……疲れた」
自然と膝から崩れていく。もう動くことさえめんどくさい。
「お疲れ……ゲツヤ」
背中を合わせあいお互いに寄りかかる。そしてあのデュエル以降、ヒースクリフを見ているが、相変わらずHPバーはグリーンだ。
……何故だ? あのデュエルでは奇跡的にイエローになったがこのボス戦は比べ物にならないほど激しい戦闘だった。それにあの顔の表情、部下に労いの言葉も掛けずに、自分の思っていたシナリオ通りに動いて満足している顔だ。もはやの表情だ。
なら、あの茅場明彦は今このゲームをどこで見ている? 人のやっているゲームを傍らから見ているのは、非常につまらないものとフェンら言っていた。
まさか……。
1つの答えに辿り着いて、武器を握り、威力の弱いソードスキル。ソニック・リープを放つ。
しかし、HPバーは一ミリも減らない。変わりに表示されたのは不死のマーク、オグジェクトでしかでてこないアイコンに回りの空気は静まる。
「まさか、ヒースクリフいやこう呼んだ方がいいかしら? 茅場明彦さん」