ソード・アート・オンライン〜銀髪の二刀使い〜   作:月夜(白夜)

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脱走

 俺の胸では、涙ぐむルリがいる。どれだけゲツヤに会いたいか分かる。表情1つ1つにメリハリがあるのはルリの良いところではあるが、辛く悲しい顔は俺の心を締める。少しでも寂しくさせないように自然とルリの背中に回していた腕に力を加える。

「んっ……お父さん、ちょっと苦しい」

 腕の中でもぞもぞと動いて顔を見上げる。

「あぁ、ごめん」

「んっ、いいの。今寒いからあったかいのがちょうどいい」

 そういい、俺の胸にコツンと額をぶつけて背中に腕が回るのを感じた。よほど寂しいのが分かる。

「寒いのか? ちょっと待ってな」

 アイテムストレージからコートを取りだし、ルリの肩に掛ける。そして、肩を震わせて涙声でこう言った。

「お母さん……会いたいよぉ……」

「ルリちゃん……」

 リーファは寂しがるルリの頭を撫でて慰める。

「ルリ大丈夫です。絶対にゲツヤさんは助かりますよ。あのSAOの最強プレイヤーが3人もいるんですよ」

「ユイ……そうだねキリトさんや、アスナさん、リーファさん、レイヤさんもいるし、お父さんもいる。絶対にまた会えるよね?」

「あぁ、約束する。だからルリとユイはナビゲーションを頼む」

「分かりました!」

「うん!」

 頬は涙で濡れてはいるが瞳には強い決意を感じ取れる。そして、俺達の隣からキリトとアスナとレイヤが同時にログインした。

「待たせたな、行ってきていいぞ」

「あぁ、分かった。ルリ、ちょっとだけ我慢しててな」

「待って! 何か置いてって、お父さんが普段身に付けてるの何か置いて」

 そう言われ腰に携えてあった剣をルリに渡す。壁に寄りかかり、両手で掴むとずっと剣を抱きしめ、持ち手の部分に頬を擦る。

「お父さんありがとう。私、待ってる」

「いい子にしてるんだぞ」

 ワシャワシャと頭を撫で、ログアウトした。

 ナーヴギアを外し1つ息を吐く、エアコンのモーター音がうるさいくらいの静かな部屋を出る。

 二階から降りてリビングに向かう……がそこは誰も居ない。

 それもその筈だ。俺の両親は死んだらしい。

 SAOから目覚めた次の日、眼鏡を掛けた政府の人間が来る前に実は警察官が来ていた。俺はあの世界でクラディールを殺した罪を問われるかと思ったが、警察官の言った言葉に俺は一瞬呼吸を忘れた。

「君の御両親は、一年と半年前に強盗犯に殺害されました。尚、容疑者の罪は死刑判決で事件発生から半年後に、死刑執行が行われました。御両親の安眠を御祈りします」

 その言葉を残し、警察官は立ち去った。退院してこの家に一人で帰ったときにあの言葉は本当だと知った。

 普段、立つことのないキッチンに立ち、昔授業で着ることしかなかったエプロンを着て、包丁を握る。

 俺は、母さんが包丁で食材を切る音が大好きだった。あの軽い音で眠っていたものだったが、俺が鳴らしてもただむなしいものだった。

「はぁ……」

 自然と漏れるため息、その際目を閉じてしまい、包丁の刃が軽く指を切った。

「ったぁー、またやっちまったか」

 これで左手に貼られた絆創膏は5つに増えた。それでもあまり気にすることなく、野菜を切り適当な分量の肉を冷蔵庫から引っ張りだし、これも適当なサイズにカットして野菜と一緒にフライパンに投入する。

 炒めれば完成する野菜炒め、傍らなは茶碗に持った白米。

「いただきます……」

 この言葉も一人になるとむなしくなり出来れば口にはしたくない言葉ではあるが、これは礼儀と解釈をして濃口になってしまった野菜炒めを食べていった。

 

 

 

「9……4……3……2……0……5……7……1OK……っと……」

 8桁の暗証番号を打ち込むと無音で鳥籠の鍵が開いた。

「よし、行ける」

 鳥籠を脱出して、勘を頼りにログアウトできる手掛かりを見つけるためにフィールド内を走る。

 壁際に寄り、ソーッと首を覗かせて人が居ないか見る。一度呼吸を整えた後にもう一度確認して、中を走る。

 裸足のおかげで足音を気にすること無く動くことが出来る。

「どこなの……一体……」

 回りを見渡すがマップみたいな物は置かれていない、情報の少なさと見つかれば何されるか分からない恐怖心が襲うが、私だって戦わないといけない。こんなのSAOに比べたらまだマシよ。

 そう自分に言い聞かせて動こうとしたとにかく前に進むことを考え、走った。

 するといきなり風景がガラリと変わった。あるのは脳……? 不気味な空間に吸い込まれそうになるが、近くから声が聞こえ慌てて柱に身を隠す。

「なんなの……アレ?」

 全身薄ピンク色のナメクジ……。駄目よあんなのに構ってる暇なんてないのよ。ここだね薄暗いために直ぐに切り抜ける事が出来た。

 一品の長い廊下を走る。そして遂にログアウトの手掛かりを見つけた。

「はぁ……はぁ……これだ!」

 とにかくメニューを開くと右下にログアウトのアイコンが出てきた。それを押すと最後の確認のようにOKとNOのボタンが出てくる。

「これで……出れる……」

 そしてOKボタンに触れようとした瞬間に、両腕に何かが絡んだ。ヌチャと水音が鳴り、咄嗟に小さな悲鳴が上がってしまった。

「君、誰? みたところ関係者の人間じゃないよね」

「な、なんの事よ。それより離して頂戴、私をここから出しなさいよ」

「ダメダメ、ボスに確認取らないと。部外者の人間だったらマズイもん」

「知らないわよそんなの! いいからここか出させてよ! 私を現実世界に帰らせてよ!」

「えー、待っててボスに聞いてみるから、でも時間掛かるし。電子プレイでもしようよー」

「お前ほんと好きだな、まっ俺も賛成だ」

 すると突然、両手両足の自由を奪われた。

「きゃっ……な、なにするの……」

「いいから、リラックスー」

 ウネウネと動く触手がドレスと素肌の隙間に入り込む。

「いやぁ!! 気持ち悪い! いや!」

「いい反応するねーもっと責めてみよう」

 更に触手はドレスの中で動く。

「ここなんてどうだい」

「あぁ! やめて! 離してよ! い、いやぁぁぁぁ!!! 触らないで!」

 言葉にしたくない箇所を撫で付けられる。もういや……なんで、なんでこんな目に……。

「ちょっとハードだったかな? 仕方ないやめてあげるよ」

 やめてあげる……? 逃げれるのここから?

「って思った? 大人をからかうんじゃないよー。それ!」

 乱れた呼吸を直すために口で息をしてがその小さな隙間に触手が入り込んだ。

「んんんっ!!? んっ……んむっ……」

 苦しい……なにこれ……気持ち悪い……。口の中で動いて、喉にまで……。

「行くよー、せーのっ!」

 その瞬間は触手がビクンとはねあがると喉に、熱くドロッとした液体を流し込まれる。

「そして、次は顔だよ」

 ジュルっと音が鳴り、髪や顔に容赦なくかけられる。

「やっぱり美少女のぶっかけはいいものだな~」

「それは分かるが泣き顔だから減点だなぁ。笑顔とごっくんなら満点だ」

「うぐっ……なんなの……ここから出してよ……」

 こんな屈辱耐えられない……。早く助けにきてよ……フェン。

「ん、ボスからだ……なんだ例の鳥籠にいるって散々言ってた子か、ほら帰るよ」

 もう抵抗する思いもなかった。なされるがままに拘束される。最後にコンソールを見ると何かカードらしき物を発見した。

(最後の抵抗にあれくらい……)

 足の指先まで懸命に伸ばすと親指と人差し指の間で挟みカードを引き抜く。それをうまく服の肌の間に挟む。

「こら動いちゃだめ」

 より強く締められ肺に溜まっていた酸素が無理矢理吐き出される。そのまま運ばれ、鳥籠に投げ入れられる。中には、怒りか何かで顔を歪ませたあの男が椅子に座っていた。

「この僕から逃げるなんて、この世界の神になんて無礼なものだ!」

 男は私に腕を伸ばして飛び掛かってくる。それをなんとか避けて、鍵に再び暗証番号を打ち込む。

「なんで……開いてよ!! お願い!」

 何度やっても赤字で表示されるエラーの文字。その間に男は背後に立っていた。

「番号は変えさせてもらった。さぁ、お仕置きの時間だ!!」

 両手を片手で捕まれる。また、変な事される……。汚されるのやだ。

 だけど男は私の頬を力一杯殴った。

「僕はあんな低脳とは違って、まずは見える部分からいたぶってその次に、体を汚していくからこれは、汚す前の下準備だ!」

 再び飛んでくる拳をただ見てるだけしか出来ない。次に膝蹴り、痛くはないが鈍い衝撃と違和感が襲う。でも、SAOよりは全然軽い。まだ、立っていられる。それに格闘は私の十八番、一矢報いるこ事も出来るはず!

 再びくる拳をギリギリで避ける。そして足を振り上げて顎を蹴る。

「な、なにをするかぁぁ!!!」

 怒りで単純に突っ込む。殴りが来るのは察していたために、それを再びギリギリで避けて、体が覚えている格闘スキルディープ・インパクトを顔面に放った。

「戦闘で私に勝てると思わないで、経験が違うのよ。早く私を出しなさいよ」

「君、何か忘れてはいないか? ここは僕の作った世界だ。君を絶望の穴に落とすなんて簡単だよ……覚悟しろ! 僕に歯向かった事を!」

 ゆっくりと立ち上がり、声を高らかに上げてなにかのシステムを変更か改変したその瞬間。

「ぐっ!? あああぁ!!? な、なにこれ……? い、痛い!!」

 殴られたり、蹴られた箇所が強く痛み始めた。あまりに来た突然の激痛に体が横にふらつく、そこに右足が飛んで来た。

「がぁ……」

 そのまま地面に倒れる。こんな痛み耐えれるわけない。一発でも多く受けないように距離を取らないと。

 這うようにして必死にもがいて離れる。だが体の節々が痛み、思うように体が動かない。

「何逃げてんだよガキィ!!」

 横顔を底の厚い靴で踏まれる。感じたことのない激痛にただ叫ぶしか出来なかった。

「エクスカリバーをジェネレートォォォ!!!」

 片手で髪を無理矢理引っ張られ立たされる。そして見えたのは純白の美しい剣だった。

 アレだ……あれがあればこんな奴秒殺よ。

「くくく、さぁ綺麗な叫び声を聞かせてくれよ!」

 腕を引き、そして突く。

「あああああぁぁぁ!! うああああぁぁぁぁ……」

 痛いなんてもんじゃない。最早死ぬのではないかと錯覚をする。そして引き抜けば私の体は支える物が無くそのまま前に倒れる。

 ……もうダメ……こんなの……死にたい。

「くく、もう京野ところは止めといてやる。また明日お仕置きするから」

 最後に聞こえた単語にもう抵抗する気持ちは産まれなかった。ただ、時間が流れるのを朦朧とする意識と壊れそうになった精神をさ迷いながらただひたすら待った。

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