ソード・アート・オンライン〜銀髪の二刀使い〜 作:月夜(白夜)
あのあと俺達一行はサラマンダーのプレイヤーに尾行されていたことを知り、それをキリトがボコし何事もなく先に進んだが、そのあとはケットシーとエルフの話し合いに乱入したユージーンを俺がボコし、何事もなく無く先に進むことが出来て、ついに世界樹の懐まで着いた。
美しい町並みだがそんなものに全く興味がない。むしろ早くゲツヤに会える。一刻も助けたい気持ちが全面に出てくる。
しかし、現在はキリト、アスナ、レイア、リーファの四人でパーティを組んでいるため寄り道の頻度がゲツヤと二人の時よりどうしても多い。それがいけないとは思うがどうしてもイラついてしまう。
そんななか突然ルリが胸ポケットから両手を空に伸ばしていた。ナビゲート意外はよくポケットの中でうずくまるのに何故か、両手を空に伸ばし何かを掴もうとしているように見える。
「ルリ? 空がどうかしたのか?」
しかし、返事が全くない。瞬きせず、一点に見つめていた。そして羽を広げ空に飛んでいった。
「お、おいルリ! どこ行くんだ!?」
俺も羽を広げてルリを追いかける。下からは四人の声が聞こえるが、それよりもルリの方に耳を傾けると……。
「おかあ……さん。あぁ、お母さんが……上にずっと上にいる……」
「なっ……!? ほ、本当か!?」
「このプレイヤーIDは間違いない……お母さんのだ。どこ……? どこなのお母さん?」
ルリは世界樹目指して浮上している。あの反応は間違いない。
「ルリ、ポケットの中に入れ。俺が行くからナビゲートしてくれ」
「分かった。このまんまずっと上」
「よし、行くぞ」
俺は羽を最大限に広げて大きく羽ばたかせて飛翔する。凄まじいスピードで上がり、世界樹がどんどん大きくなる。
「お父さん! ストッ!!」
ルリの声と同時に俺は何もない空に突然行く手を阻まれる。
「ここから先は、侵入できないようになってる……」
「な……に……? くそがぁぁ!!」
剣を抜いて障壁なんてもの突き破ってやる!! かつてSAOでよく使っていたソード・スキル。インパクト・テイザーなる主語命剣の単発突撃スキルを再現させるが、またしても障壁に阻まれる。
「壊れろよ! なんで俺は……俺は!!」
なんで俺はシステムに抗えない!! ゲツヤやアスナは麻痺を解いてキリトを助けようとした。あの時俺はあの麻痺に従い目の前でゲツヤは斬られた。そしてそのあとキリトはあの世界の支配者を殺したのに……。
結局俺はユニークスキル持ってただけであの三人と肩を並べていたが、結局俺は何も出来ない。好きな人も一人も守れない人間に何が守護命剣だ……。何が守護剣士だ。ふざけんなよ……。
「……っざけんな……ふっざけんじゃねぇぞおおおお!!! 返せよ、俺とルリのゲツヤを返しやがれよこのクソゲーがぁぁぁ!!!」
目尻に何か熱いのが溜まるがそんなのは幻だ。俺はこの先に行かないといけない! だが、それを止める奴もいる。
「落ち着けフェン! この先はどうやっても無理だ! 別の入り口から入るしかない! 剣を仕舞え!」
「そうだよ、お父さん。それになんとか私の声なら届くかもしれない……」
「……本当か?」
「うん、待ってて……お母さん! 聞こえる!? お母さん!!」
この世界に囚われてどのくらい経ったのか想像も出来ない……。頭の可笑しい男にもて遊ばれ、脱出も失敗し何もする気力が起きない。
「フェン……どこなの? 私を助けて……くれないの?」
いくら経とうがフェンがここに来る気配なんて全くしない。まさか捨てられた? そんなよ嫌よ……。
「死にたい……。誰でもいい……早く楽にさせてよ……」
あの現実世界に戻れないのなら死んだ方がいい。むしろSAOに囚われていた方がよかった位だった。
地面に横向きに倒れながら全身の不快感に耐え続ける日々。目を閉じて息を吐いて吸っての繰り返し、孤独と戦う。そのとかだった。微かにだが幼い少女の声が響いた。目を開けて体を起こして回りを見渡すが当然誰もいない。
「なんだ……幻聴か……」
もう一度倒れようとしたとき今度はしっかりと声が耳に入った。
「お母さん!! どこなの!? いい子にするから返事してよ!」
この声……まさかルリ!? 立ち上がり回りを見渡すがルリの姿は無い。しかし、この世界にいることは間違いなかった。
「ルリ!! 私はここよ! お母さんはここにいるわ!!」
ルリがこの世界にいるだけで私には希望だった。でもルリがいるということは必ず隣には……フェンがいる!
「助けにくる……何か、メッセージ的なのを飛ばさないと……あ、あれだ!!」
ベッドの隙間に腕をねじ込ませて手探りであのとき手に入れたカードを掴み、それを外に投げた。
「受け取ってルリ! フェン!」
助けに来てくれた……! やっぱり私にとってフェンはヒーローよ。あとは、待つだけ。あのときフェンを疑った私がバカだ。絶対に助けに来てくれる。お願い早く、早く来て!
「うっ……ひっく……お母さん、どこなの?」
泣き崩れるルリを手の平に乗せる。空を凝らして見ると何かが光り落ちてくる物体があった。それをキャッチしてルリに見せると目を開いた。
「これ……どうやって」
「上かは降ってきたんだよ。分かるか?」
「これ……システム管理用のカードだよ。……まさかお母さん私の声聞こえてこれを」
「間違いないな……ルリ別のルートはどこだ?」
「あの塔目指して、そうすれば行ける。でも……」
それを聞き俺は破裂音と共に高速で飛ぶ。
「おい! ちょっと待て!」
後ろからキリトが俺を静止させようと声を掛けるが、そんなものに構っていられる暇はなかった。
塔の手前まで行くとそこを通過するためのグランドクエストの受注画面が現れる。それを押す前にキリトが俺の肩を掴んだ。
「待てって言ってるだろが!! ゲツヤを助けたい気持ちは俺達も同じだ!! 一人で突っ走るな!」
「目の前にいるのに逆に突っ立ていられるかよ」
「一人で先走るな! そうやってSAOの頃にろくな事しか起きなかったろ!? 回りを見失うな!!」
「SAO? 何言ってんだよ。このゲームは死んでも向こうじゃ死なないだろ」
その瞬間俺の右頬に強烈な衝撃が走り、体がぶっ飛び、塔に激突し止まる。
「キリトくん! 何してるよ!?」
「フェン。見損なったよお前そんな弱い奴だったとはな、死んでもいいだと? 今すぐSAOプレイヤーに謝ってこい! どんな世界でも死んでいいわけないだろ!!」
いってぇな……。なんだよ急に、ふざけやがって……。
「お父さん、大丈夫?」
「ルリ、ポケットの中に入ってろ」
頭を抑えゆっくりと立ち上がりキリトを押し倒し馬乗りになる。拳を上げて俺も殴ろうと思ったが、寸前で止まる。
「お前に……お前なんかに俺の何が分かるんだよ!? ゲツヤとルリしか居ない。俺に家族がいるお前にこの気持ちが分かるか!?」
「……家族がどうかしたのか?」
「俺がSAOにいたときに両親は殺されたんだよ! アスナやリーファ、両親がいるお前に何が……何が分かるんだよ……! 俺にはゲツヤしか居ないんだよ……。心のよりどころや温もりはゲツヤだけなんだよ! 分かるか!? この虚しさが! 言ってみろよ……。言ってみろよ!」
目尻から涙が零れキリトの頬に落ち、拳を地面にぶつける。
「フェン……。その悪かった。お前の気持ちの重さを軽く見ちまって」
「お前から謝るのかよ」
「まぁ、先に殴ったのは俺だし」
「……そうだな、俺も悪かった。それに今は喧嘩してる暇じゃなかった」
立ち上がりキリトに手を差し出せばしっかりと握り返し、立ち上がる。
「うっし、それじゃあ行こうか、一緒に来てくれるか?」
一度振り返り、仲間の顔を見ると頷く。俺も覚悟を決めてグランドクエストを受諾した。