The Actor 無限の可能性   作:エア_

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テンションによって、投稿スピードは変わっていく

あ、サブタイトルにそこまで意味は無いです


選んだ道、揺らがぬ意思

 

 

「輝、編入手続きの書類なんだが」

 

「隣に置いてるよ~。で、このペットボトルは再利用するの? 捨てるの?」

 

「あぁ捨ててくれ……すまないな、それが終わったらこの書類をイベント書類の上に置いてくれないか?」

 

「はいよー」

 

買い物をした次の日の土曜日。俺は千冬姉さんの手伝いをするために彼女の部屋に来ていた。まだ学園ができて数年なせいか、まだまだ書類などが間に合わずこうやって自分の部屋にまで仕事を持ってきていた。流石は治外法権のIS学園、ブラックなところまで治外法権だ。

 

今の俺の仕事は彼女の部屋を片付けつつ、資料を渡す事。家事に関してガサツな彼女には掃除なんて上手く出来るはずもなく、ドラマでよく見る中身のつまったゴミ袋が散乱するごみ屋敷と化していた。よく一夏君は綺麗にしてたよ。今度会ったら何か奢ってあげよう。

 

「次はそこの一角の書類束を頼む」

 

「はーい」

 

ゴミを掃除しつつ、指示された書類を姉さんの机に運ぶ。顔を向けはしないがありがとうと口にする彼女と俺の姿を第三者が見れば完全に仕事を頑張る旦那とそれを応援するために手伝いをする嫁の出来上がりだ。立場は逆だけど。

 

「姉さん、このコーヒー色に染まったファイルは……」

 

「……すまん、一応端に避けててくれ」

 

360°見渡せる目を手に入れた俺なら複数の場所を見ながら動くことも可能だし、目を離すなんて事が起きない。流石はドイツの科学技術だ。頭が上がらないな。おかげで役に立ててると思う。

 

――この目になってから大分時間がたった。初めはまともに歩けないし、平衡感覚と視覚がリンクしないときたもんだから躓いてばかりの転げてばかり。よく額を赤くして、千冬姉さんや蘭ちゃん達を心配させたっけ。自分のことだからめげなかったが、流石の柏木さんに「今の状況のお前は使えないから1~2ヶ月休暇取れ」と言われた時はちょっとショックだった。それからは一段とリハビリに励んだ結果がこれだ。今じゃ車の運転も出来るくらいに回復した。

 

それに悪いことだけじゃない。ドイツの人達とのコネクションを手に入れたことは良い事だ。柏木一家もヨーロッパ入りする日も近くなりそうだし。それにこの目のおかげで今の俺がいると思うとやはりドイツの科学者達には感謝しきれない。ほんと千冬姉さんの教え子さん様々だ。確かラウラちゃんだっけ。行儀もよくて良い子だった。まぁ軍所属な面があるから蛮勇は周囲を危険に晒すなんて厳しく言われたけど、それでも結果オーライで俺一人の犠牲でお客さんが助かったんだと思うとやっぱり正解だったと今でも思っている。別に自己犠牲じゃない。したいからしたって感じだし、後悔はない。

 

まぁ千冬姉さんには思い切り怒られたから反省してるけど――

 

「……む」

 

「ん?」

 

少し前の事に思いだしながら、大きなゴミ袋の先を縛ってドアの前まで運んでいたそんな時、ふと千冬姉さんの動きがピタリと止まった。真後ろなのに見えるという常人なら違和感バリバリなことが起こっているが、彼女がその資料に目を通して止まったところまで細部にわたって確認できた。何々? 入学手続き? 

 

そう言えば楯無ちゃんに聞いたことがある。夏休みの期間から既に入学手続きが外国から来るらしい。特に代表やそれに類する代表候補生、または適正が高く頭も良い外国人留学生は既に卒業することが決まっている子が多いらしく、IS学園へ直ぐに書類が届くのだとか。だから夏休みなのに千冬姉さんは忙しいのか。一夏も子ども扱いされたくない歳ではあるけど、折角の家族だし休みの期間くらいは一緒にいて欲しい。

 

だからこそ、俺も手伝っているんだけどな。

 

「そう言えば輝」

 

「ん? 何?」

 

書類を広げながら千冬姉さんがこっちに体を向けた。俺も顔をそちらに向け入学手続きに視線を向けた。先ほどはその文字しか見えなかったけど、これって普通に記入された書類じゃないか。いいのかよ第三者に見せて。

 

「何を考えてるか当ててやろうか? 輝」

 

「……一応、聞いておこうかな」

 

「お前は一夏同様顔に出やすいからな。第三者に見せてもいいのかと思っているのだろう。その点については心配していないし、むしろそういう考えに行き着いている人間にとやかく言うのは時間の無駄だとは思わないか?」

 

うへぇ、本当に当てちゃったよ。信頼しているのか少し笑みを見せながら書類をヒラヒラとさせてるけど、俺内心ドキドキよ。そうか、俺の知り合いには超能力者がいたのか……。

 

視線をそらそうにも書類からの視覚的情報が全部入ってくる。†逃れられないカルマ†的なサムシングってのがこれか。弾、初めてお前の気持ちがわかったぞ。厨二病はわからないけど。

 

書類にはCecilia Alcott――チェチリアアルコット?―― と言う名前が記載されていた。うわお、顔まで載ってるぞ。ほんと俺だから誰にも言わないけど、もう少し危機感をだね。個人情報保護をだね。

 

「また何を考えてるか当ててやろうか?」

 

「……もういいよ」

 

「そうか?」

 

参ったという思いを込めて返答すると、千冬姉さんは自分の顎に手を当て、ふむっと言葉を零した。うーん、何やっても似合うんだけどなぁ……こんなごみ屋敷じゃなければなぁ。

 

「だが、念のために一度言っておこう? ここは日本の領域に存在するが日本ではない。どこの国にも属さない存在だ。故に“IS学園の規律”という治外法権が適応されている」

 

「……ふーむ」

 

今度楯無ちゃんにでも聞こう。

 

「……それにしても全部千冬姉さんが捌いてんの? この書類」

 

千冬姉さんに手渡された書類に目を向ける。わーぉ、今度は漢字ばっかりで全然読めない。もしかして中国辺りかな?

 

「あぁ、既に入学希望についての書類は全て終えた……お前もやってみるか?」

 

「……んー。流石にそこまで図太い神経は持ってないかな」

 

うわぁ、しれっとさっきの書類の下に白紙の入学手続き重ねてる。なんて用意周到なんだよ。

 

「それにそもそも女子高って男入れないんじゃないの? 蘭ちゃんとこは入れなかったけど」

 

書類をそのまま姉さんにリリースしてため息を一つ。女子高はそもそも生徒を女の子限定にするから女子高なはずだ。基本男は入れないと思ったんだけどなぁ。何度か蘭ちゃんにイベントへ来てくれって誘われてるけど、流石にこの顔じゃなぁ。こういう時、弾や一夏君みたいに顔が整ってたらなと悔しいところ。しかも前回ので顔が焼け爛れたからなぁ。余計に行きづらいというもの……。

 

「まぁな……それにしてもなんだ? 男なら女子高に入るのは憧れじゃないのか?」

 

「他の男は知らないけど、俺は憧れってよりもただ単に怖いもの見たさってのは確かにあるけど……これじゃあね」

 

「おいおい、女子高は魔窟じゃないぞ。あぁ後、正確には女子高ではなく“ISが女性にしか扱えないから女子しかいない共学”だ。覚えておけよ? 少年」

 

結局女の子しか入れないから女子高じゃないかな? それ……。

 

「それに……お前のその顔が他のヤツにどう映るかは知らんが、私は嫌いじゃないぞ」

 

「……姉さん」

 

「人の忠告を一切聞かん馬鹿な弟でもな」

 

「ヴっ……」

 

「全く……ふぅ、少し休憩しよう」

 

目が疲れたのか、鼻背の上を指で摘んでる。流石に何時間も近くの物見てたら目は疲れるしな。

 

って事で、肩を揉んであげよう。姉に優しい弟というのもアリだろう。別に後ろめたいことがあるからではない。本当である。

 

「あぁ助かる。もう少し強めでいいぞ」

 

「あいよ。……それにしてもやっぱ多いよなこの量」

 

「外見は完璧ウーマンのブリュンヒルデだからな。おかげで仕事がよく回ってくる。来年じゃ主任を任される予定らしい」

 

あ、自覚はあるんだ。外見完璧ウーマンって。

 

……痛い、拳骨は止めて。

 

「何を考えてるかはお見通しだ。ばかたれ」

 

「あたた……それにしても大変だね。嫌にならない?」

 

「ん? 何を言うかと思えば……これは私が選んだ道だ。大変だとは思うが嫌と思ったことはないさ。だから大丈夫」

 

我ながら良い事言ったと思ったのか腕を組んで何度も頷いてる。このしたり顔を知らない人が見たら違和感で泡を噴きそうだ。まぁそんな一面も好きだが。

 

「あぁ、そう言えば輝。ドイツの方から連絡が来てたぞ」

 

「もしかして目についてかな?」

 

そう言って自分の目に手を近づけた。金色に輝いているであろう瞳が距離を正確に脳へ情報を送り、手と目の距離が何cmなのかも正確に把握させた。以前よりも制度がよくなっているのか、鮮明に映る。流石は全知の瞳と証するだけはあるなぁ。

 

「一週間後に検査にくるとのことだ。空けておけよ?」

 

「はいはーい」

 

「はいは一回、あと伸ばすな」

 

「はい先生」

 

「全く……」

 

ゴマをするように肩を揉む俺に呆れたのか、小さくため息を吐くと、暫く目を瞑ってマッサージを受けていた。張り詰め、凝っていた肩を解していくと、姉さんの顔は穏やかになっていった。手もプランと重力に任せたように垂れ、体も俺へともたれかかる。暫くすればそのまま寝息が聞こえてくる。

 

「……疲れてたんだろうな」

 

首元をゆっくりと揉みあげ、凝りそうな場所を解していく。こういうのは一夏君のほうが得意なんだろうな。

 

やっぱり、姉弟一緒に暮らして欲しいなぁ。

 

……よし、頑張って稼ぐか。

 

とりあえずベッドに寝かせて大事そうな書類以外は全部分けてゴミまとめとこ。

 

 

 

 

場所は変わり、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州ケルン・ボン空港。軍服を纏っている少女、ラウラ=ボーデヴィッヒが一足先にと空港に来ていた。若干の苛立ちを顔に出すまいと腕を組んでいるが、どうも足までは抑えられないらしい。パタパタと何度も貧乏ゆすりのように、足で地面を叩いていた。

 

今回の先行フライトの理由は二つ。恩師織斑千冬の家族である織斑一夏の確認と、ISを倒した時代(とき)の英雄である中村輝を見極めることである。

 

ただでさえ最強の兵器【IS】登場による女尊男卑のせいで世界の到る場所が口論の地と化してしまう世の中に突如現れた奇跡の戦士、ドイツの千冬の息の掛かったものにしか知らされてない存在。最近では男であるというのがその映像から専門家が認め、さらに世界に衝撃が走り、混乱の揺れが大きくなっている。

 

彼にその自覚があるのか、その金色の目に足るような男なのだろうか。

 

それを彼女は見極めるため、早めの休暇ということで日本へ旅立つのだった。

 

(あの男は確か、あの事件でも関係があった。教官の顔に泥を塗ったあの……)

 

自身の恩師を崇拝する彼女にとって、輝という存在は織斑一夏と同じように憎たらしい存在であるらしい。その表情がゆがみ、まるで今にも爆発しそうになっていた。

 

だからなのだろうか、遠くから彼女へ近づく人間に気がつくのがほんの零コンマ数秒ほど遅れてしまった。

 

「隊長、チケットです」

 

後方から声をかけられたラウラはコホンと一つ咳払いをし、その声の主へと顔を向けた。

 

「あぁ、感謝するぞ副隊長」

 

そこにいたのは長身の女性で、同じく軍服を着込んでいて、一目で軍人であるのがよくわかる。互いに真剣な顔をしており、ここが軍民共同の空港であることを改めて思い知らされるだろう。

 

世はまさに夏休み真っ盛りなため軍人を珍しげに見ている外国人観光客で溢れており、逆に彼女達は“浮いていた”。

 

「はい……それと隊長、例の件ですが」

 

「任せておけ。それくらい出来るさ」

 

「感謝します」

 

綺麗な敬礼を交わしたラウラは、先ほどのようにもう一度咳払いをした。副隊長と呼ばれた女性はその仕草の意味を理解したのか目を鋭くさせ、後ろへ体を向けて声を荒げた。

 

「そこに隠れている者! 出て来い!」

 

その一声に周囲の観光客に一瞬何かと驚かれたが、彼女達はそれを無視して視線の先にいるであろう人間が出てくるのを数秒待った。

 

物陰から人の姿が出てきた。数は四人ほど。二人と同じように眼帯をした少女達である。軍服を纏っていることから、もしかしなくとも関係者であった。

 

彼女達はラウラの率いる部隊の部下であり、今回の日本旅行(旅行ではない)に非常に同行したがっていた者達である。部隊の人間は総員で六人、つまり副隊長を除いて全員行きたがっていた。

 

「も、申し訳ありませんお姉さま!」

 

「でも、どうしても同行したくて」

 

「何度も言っただろう。今回は向こうでの安全確認だと。それに私が例の物を頼んでいるから我慢しろ。あと人前では副隊長と呼べ」

 

「あ、はい副隊長。でも折角のヤーパンですよ! 皆で行きましょう!」

 

「旅客機代も馬鹿にならんのだ。だから我慢してくれ」

 

「「「「えぇ~!!!」」」」

 

彼女達の説得のために十数分時間がかかり、飛行機に乗り遅れそうになったのは言うまでもない。

 

次回日本へ行く時は皆で行こうという約束で何とか手を打ったラウラは、その疲労を全て輝や一夏の所為にすることにした。

 

「……中村輝、織斑一夏めっ……」

 

完全に濡れ衣である。

 

 

 

 




例の件…イッタイナンナンダ
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