The Actor 無限の可能性   作:エア_

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サブタイつけるのに4~5時間かかる。


突然の来客、まさかのギクシャク

「おぉ、ほんとに傷が隠れる」

 

日曜日の朝。輝の部屋にて彼の通る声が小さく響いた。ここはIS学園に近い業務員用にと用意された小さな部屋、元物置こと中村輝現在の拠点である。

顔の表面を手で擦り、未だ続くくすぐったさを拭うように彼は鏡を見つめていた。カーテンから木漏れ日のように入ってくる朝日で体を温め、陽光でその顔を鏡に映しだした。

 

「どんなもんか。こんなもんか」

 

そこに映ったのは以前の傷のなかった少し整っている顔だ。まだ大人になりきれていない少々の幼さが残っているそれは、紛れもなくあの時失っていたであろう中村輝本人の顔だった。若干整っているように見えるがやけど跡よりは以前の彼の顔である。

 

傷を隠すように貼られた最新技術を使用した皮膚保護シートのおかげで、見た目では判断できないほど綺麗に消していたのだ。これには輝自身とても満足しているのか、時折鼻歌までするほど。医療技術さまさまだ。今はせっせとシートのズレを直している。

 

輝自身、前回はこの怪我で警備員に連行されたため警戒心が高めなのか、とりあえず傷を隠そうと楯無から皮膚保護シートをいつの間にか貰っていた。ISでの訓練は生傷が耐えないらしく、保健室には常備されており、そこから拝借したとのこと。……いいのだろうか。

 

「【可愛いは作れる】なんてCMが前に流行ってたけど、ほんとに出来るもんだなぁ。素顔隠しなんてさ」

 

部屋の時計へ視線をむけると9時50分とデジタル数字が目に映った。待ち合わせの時間まで後40分ほどあるが、早く行って損はないだろうとぼやきながら腰を上げ、軽く背伸びをした。

 

あくびを噛み殺して滲み出た涙を手の甲で拭い、近くに置いてあった皮のボストンバックの中身を確認する。再三確認はしているのだが、忘れる時は本当に最後まで思い出さないものだと何度も念入りに確認しているのだ。

 

最後の確認を終えた輝は一度深呼吸をすると、ビシッとした表情をして。

 

「さぁて、自殺行為(プール)の時間だ」

 

と、情けない事を言った。

 

これから起こり得るであろう惨劇に引きつりそうになる頬を解し、帽子を深く被った。顔の傷は隠せてもその金色に輝く瞳も怖がられるだろうと思ったのか、仕事場などで使うつばの長いワークキャップで遠目から隠そうという魂胆なのである。

 

「よし、とっとと向うかね」

 

体……特に肩幅や胸がでかい輝にとって、ファッションとは敵である。基本的に体に合う服が少なく、まともに着れるのがスーツや作業着などの幅広くサイズが存在する物くらい。輝の体にあった普段着などここ日本ではあまり手に入らないのである。内側のシャツも伸縮性の高いシャツじゃないと両肩を入れた時点で破ける音がするほど……。漫画的な肉体ではないけれども、それでもまともに服が着れない難儀な状況なのである。

 

そんな彼は現在、4Lの無地黒の半袖Tシャツと黒デニムという服を纏っている。下半身は上半身とは違いそれほど肥大化していないためかまだ合うサイズが存在しており、少しは洒落たものが穿けるのである。

 

体が絞れているためか、比較的着やせして見えるのが功を奏したのか、見た目悪くない。

 

だが、今はまだ真夏で、その中を真っ黒な服装で真っ黒な帽子を深く被り、真っ黒なボストンバックを肩掛けしている。完全に怪しい人である。

 

そんな日本人離れした肉体を持つ輝は仕方ないと帽子を脱ぎ、サングラスをすることにした。こうなればとことん外国人っぽくなればいい。未だ成長期の彼はこれから起こるであろう服の消失にため息をつく。こういう時だけでも体が細くなったらなと都合の良い事を考えつつ、扉をガチャリと開けた。

 

考え事をしていたからか、扉の向こうが騒がしくなっていた事に輝はついぞ気づくことはなかった。

 

「……あれ?」

 

「あ、あはは。ど、ドーモ、輝さん」

 

扉を開けると、今日プールに行くメンバー三人と、時折楯無ちゃんと一緒に居るところを見かけるメガネのIS学園の女生徒、そして知らない袖ダボダボな耳のついたフードの少女がそこにいた。

 

 

 

 

時計の短針が10時をさしたと同時に、部屋のデジタル時計がピピッと音をたてた。

 

「おぉ!!ほんとにでかい!でかいねかんちゃん!」

 

「本音!」

 

「……すみません」

 

「あぁっと……ははは」

 

けもみみパーカー(あの後名称を教わった)娘にされるがままに攀じ登られ何も出来ないでいる俺は現在、自分のベッドに腰掛けている。おかしい、今日はプールに行く予定のはずだ。決して見た事ない名前も知らない女の子を肩車する話はなかった気がするんだけど。

 

俺の部屋に上がった残り楯無ちゃん一行に座布団を用意し、そこに座ってもらうことになったのは別にいいんだけど、プールはどうするんだろうか。

 

「それにしてもどうしたんだい? 集合場所は確かモノレールの駅だったんじゃ」

 

「いやぁ、昨日の事もあってからか護衛するって煩くて」

 

「申し訳ございませんが、現在のところ保護者としての貴方を完全に信用できませんゆえ」

 

「虚!」

 

おどけた楯無ちゃんの隣から容赦なく言葉を突き立ててきた女性――うつほと言うらしい。漢字は知らない――は顔を逸らすことなく目を鋭くしてこちらを睨んでいて、今にも噛み付いてきそうである。警戒心が高いようだ。

 

そんな彼女は楯無ちゃんの言葉に耳を貸すことなく、ただじっと俺の顔をそのメガネの後ろの瞳で覗き込んでいる。真意を確かめようとしているのか、一ミリもぶれな……

 

「おっほ~い!」

 

「……本音、いい加減に降りなさい。すみません、うちの妹が」

 

「あー、いやぁお構いなく」

 

……くもなかった。案外ブレブレだった。視線の先はけもみみパーカー娘のほうだった。まぁこの子が俺を暴れ牛のように乗りこなそうとしてるのが問題なんだけどね? 文句言うべきなんだろうけど何でかな、仕事が仕事だったからされるがままに慣れてるっていうか何というか。

 

コホンと一つ咳をして話題を戻すうつほさん。再び鋭くなった目は今度こそ間違いなく俺へと向けられた。

 

「お嬢様や簪様は名のある家の出です。そのような方々が殿方と遊んでいるなどと世間に知れるのはこのご時勢――」

 

「弱点を作ったり見せたりするわけにはいかない……ってことですかね?」

 

「――御明察の通りです。しかし前回のお買い物につきましては、貴方には以前簪様を助けていただいたご恩が御座いますので何も言いませんでした」

 

……この言葉から予想するに、彼女はそもそも俺のようなどこの馬の骨かもわからない男が傍にいると、品位に関わると思ったのだろう。

 

個人的な偏見だが、上流階級とは弱点を露見させたらすぐにつけいれられるイメージがある。それはよく作品に組み込まれていたり、実際にニュースになったりと、第三者目線で情報を知ったからだろう。正直それが本当なのかはわからないけど、この反応から察するにあながち間違いじゃないと言うことがわかった。

 

それに今の世の中だしな。男なんかと、何て上流階級でも起こってんだろうなぁ。

 

「しかし、昨日の一件に対しては目を瞑れません」

 

「……だから、あれは昨日も」

 

「簪様。例えあちら側に問題があったとしても、事件が起きたということ自体に問題があるのです。ご理解ください」

 

簪ちゃんの反撃も空しく、うつほさんは淡々と撃墜させていく。その見た目どおりの委員長タイプで、絶対曲がらない頑固っぽいところがある。それも彼女達を思ってなのだろう。

 

これは残念だがプールは無しだな。個人的には溺れないですむからいいんだが、蘭ちゃん達は楽しみにしてたはずだしなぁ。

 

でもこれ……俺が決めていい訳ないしなぁ。楯無ちゃんも簪ちゃんも徹底抗戦って顔してるし。

 

「虚、これは当主として命令よ。今回の件に首を突っ込まないの」

 

「この件に関しては既に前当主より判断を私に任せられましたので、その命令は承れません」

 

「ぐっ、何て用意周到な」

 

「ですので中村様。この件に関してどうか手を引いていただきたく、伺った次第です」

 

と言って彼女は俺の返答を待つように口を閉じた。これは俺がはいと言わない限り動きそうにないぞ。よわったな、空気が重い。俺が原因なんだけど、これ一概に俺が悪いのかね。

 

それは蘭ちゃんも同じようで、一緒に話を聞きながらもただ困った顔をしている。時折手を遊ばせてはこの状況の打破を考えているのか、落ち着きが見られない。時折楯無ちゃんの後ろからHELPの視線を送ってくる。ほぅ、涙目か。それはそれで可愛いな。

 

でもごめんな。それ俺が送りたい視線なんだよね。君の願いを叶える事はできないぞ。

 

うーむ。どうするべきか。

 

「……ん?」

 

そんな時、まるでタイミングを見計らったように電話が鳴り響いた。即座に蘭ちゃんが立ち上がって固定電話に出る。そしてスラスラと中村ですと電話相手に応答した。凄いな、俺なんて初めのうちは五反田って言うの忘れて掛け間違いと思われたのに。これがエリートという奴なのか。

 

「……はい……はい。輝さんですね? わかりました」

 

数十秒もしないうちに会話が終わったのか、蘭ちゃんが俺を手招きした。もしかして柏木さんかな? なら携帯にかけてきそうなんだがなぁ。いったい誰だろうか。

 

そう頭を傾げながらその電話に出ると、予想外なところからの電話だった。

 

「あぁ~、お電話変わりました。中村です」

 

[中村輝。私だ]

 

聞いたことのある声が聞こえた。というか前にも思ったけど流暢に日本語話すね君。こういう時ほどISの凄さを肌に感じるね。日本語が世界共通語になってまだ数年だろうに。

 

「……もしかしなくてもラウラちゃん? 何で電話を?」

 

[声でわかると思うのだが。教官から聞いていないのか? あとちゃん付けはやめろ]

 

姉さんの事だっけ? それなら確か。

 

「……電話越しだと声変わって気づき難いんだよね。それと訪問の件なら千冬姉さんからは来週って聞いてたんだけど」

 

[その来週が今日であるはずなのだが。ちゃんと聞いていないのか?]

 

「……」

 

あの人一言も今日だって言ってねぇえ!! マジかよ、日が被ってたのかよ。何してくれちゃってんの千冬姉さん。情報はちゃんと教えてくれよ!

 

[? どうかしたのか?]

 

「……OKOK。理解した。で、今どこだい? 迎えに行くよ」

 

[ナリタだ。足早で頼む]

 

「わかった。でもこっからだとどう足掻いても2時間はかかるから、食事は終えててくれ」

 

[了解した]

 

電話を切り一つため息を吐く。後ろの方で心配そうにこちらを見ている顔を数人確認してもう一度ため息を吐いた。うつほさんも何やかんや心配そうな顔してくれてたので、さっきの話も俺のために言ってくれたんじゃないかと自己完結させた。

 

「と言うわけで、ごめんね三人共。急用が出来た……」

 

「えっと、もしかして目の事ですか?」

 

「そうそう。だから結局今日は行けなかったらしい。ごめんね、この埋め合わせはちゃんとするから」

 

「……そうですか。それはこちらとしても都合が良いですね」

 

部屋の重かった空気が少しだけ軽くなった。流石にこの目の用事となれば楯無ちゃんも諦めがつく。ナイスタイミングだぜラウラちゃん。後で何か奢ろう。

 

っと、まだやる事あったわな。

 

「それでだ。蘭ちゃんこれ」

 

ボストンバックに入れてあった財布から今日行くプールのチケットを蘭ちゃんに手渡した。内容を確認した彼女は何故このタイミング? と言いたそうな顔をしてる。あ、楯無ちゃんが横から取ってった。

 

「? これって」

 

「そ。今日のために柏木さんから貰ったんだ。それ一枚で全員OKらしいから、これで行っておいでよ」

 

今回行く予定だったプール、実は三島グループ経営のアトラクションプールパークなのである。例の事件の後、客が今までの三倍は来るようになったおかげで懐が潤っているんだとか。今までも毎年2パーク合計で1500万人、一日の多くても5万人来るほどの有名なテーマパークだったが、本当に入場者数が三倍になり既に混雑しっぱなしという。良い意味でも悪い意味でも悲鳴を上げているらしい。

 

そんな三島グループから報酬として給料以外に何か貰えるらしく、今回の事で相談したところ、なんと10人までOKの特別チケットを貰ったというわけだ。しかも相談したその日に届くとは……三島で働いてて良かった。

 

「ねぇ、かんちゃん。あれ強敵だよー」

 

「……わかってる。一昨日それを味わったし、これくらい覚悟してた」

 

一人三島グループに感謝していると、簪ちゃんとけもみみパーカー娘が怪訝な顔でこっちを睨んでた。強敵……ラウラちゃんのことかな。確かに彼女は軍人だし強いんじゃなかろうか。ISも持ってるんだっけ? 千冬姉さんの教え子だしさぞ強いんだろうなぁ。ちなみにさっきの電話で言葉も強かった事がわかる。

 

「あー、ダメねあれ、何もわかってない顔よ」

 

「……難聴より性質悪い」

 

ふと視界の端にデジタル時計の時間が映る。急いで来いって言ってたし、これ以上ゆっくりしてると怒鳴られそうだ。さっさと行こう。

 

問題とか起きないといいんだが。

 

とりあえず部屋出るから戸締りしたかったんだけどまだ居るとの事で、まぁ隠したいものなんてないし、物色とかしないだろう。うん。

 

さて、目指すは成田空港だ。

 

 

 




俺、二章からは絶対韻踏むサブタイつけるの止めるんだ。

あと虚の漢字変換されてない部分が地の文に存在しますが、あれ輝がうつほって言う字を理解してないからであって別に変換し忘れたとかそんなんじゃないです。ないです。
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