The Actor 無限の可能性   作:エア_

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蘭ちゃん……


最高の終わり、ヒーローの勝利

 

ガイアがISの胸部装甲をぶち抜く数分前。聖マリアンヌ女学院では騒動が起きていた。職員が総動員して事態の収拾を図っていたくらいだ。

 

【生徒会副会長である五反田蘭の家族が今事件に巻き込まれているかもしれない】

 

偶然入った三島パークで起こっていると思われる写真がSNSなどで投稿されており、偶然にも蘭の友人が見つけたのだ。

 

勿論、その情報は蘭本人の耳にも入っていた。彼女はそれを聞くやいなや席を飛び出し、輝のいるであろう三島パークへと向かおうとした。その表情は切羽詰っており、強引に外へ出ようとしていた。

 

だが、現在進行形で事件が起きている場所へ大切な生徒を送り出すわけがない。教師が4人がかりで彼女を止め、何とか宥めてやっと今の状況に落ち着いていた。

 

ここは生徒指導室。蘭とは一生縁のないと思われた部屋にて彼女は右手で十字をきりながら輝の安否をひたすら願っていた。傍で共に安否を願う担任の教師も今までに見たこともない蘭の怯えように、彼女も恐怖を感じていた。

 

「……輝さん」

 

「大丈夫ですよ蘭さん。今は向こうの方々を信じましょう」

 

蘭の肩を抱きしめ、彼女を只管に落ち着かせようと努力する。だが情報によればISがその事件の大元だと聞いている。二人は最悪の状況を想像してしまっていた。

 

そこへ、誰かが入ってきた。蘭のクラスメイトで、彼女と同じ生徒会役員の少女だった。

 

「蘭! 三島パークがテレビに映ってるって! 今教頭先生がテレビつけてくれてるよ!」

 

「五反田さん。行きましょう」

 

「はい!」

 

蘭はクラスメイトの少女に連れられ教頭の待つ職員室まで走った。

 

職員室に近づくにつれ嫌な予感が強まる。だからこそ大切な人の元気な姿が見たい。最悪怪我をしていてもいい。だから生きていてほしい。そんな思いで心がいっぱいになる。

 

扉をがらりと開き、すぐ近くに設置してあるテレビへと向かう。そこには何人もの教師がその視線をテレビから逸らしていた。

 

「先生! 蘭を連れてきまし――」

 

「だめ! 今見せてはいけません!!」

 

「……え?」

 

蘭に映像を見せまいとしたがもう遅かった。彼女の目にはもう映ってしまったのだ。

 

[グォアアアアッ!]

 

マシンガンで蜂の巣にされているガイアの姿が映ってしまった。ガイアの悲鳴が彼女達の耳にも十分に届く。

 

「輝さん!!」

 

蘭が噛み付くようにテレビへ向かった。マシンガンで撃たれた後、その体を何度も叩きつけられる姿がテレビに映っている。

 

[今男性と思われる方が後ろにいた女性の盾となり、射殺された映像に見えるのですが、どうでしょうか]

 

[警察は一体何をしてるんでしょうね]

 

[貴女ね、この状況に警察も何もないでしょうが。下手に刺激して人が死んだらどう責任を取るつもりですか]

 

テレビの解説役の男性が一緒に映っていた女性の言葉に怒りを露にしながら発言を返していた。報道陣もまさに喧嘩が起こりそうである。

 

「この人たちも何を考えてるのでしょうか。彼らの意見よりも映像を見せたらいいのに」

 

教師はそうぼやきながらも、蘭へこれ以上のショッキングな映像を見せなくてよかったとも思う。

 

「……輝さん……輝さん!!」

 

ISのアームに捕まれ叩きつけられ、トドメと言わんばかりに踏み潰される姿を目の当たりにしてしまい、蘭は壊れたオルゴールのように輝の名を呼ぶ。教師たちはすぐに彼女を保健室まで連れて行こうとした。

 

だが、その時だ。

 

[デュァアアアアアアアア!!]

 

画面の中からガイアの咆哮が聞こえた。なんとあの鉄の塊であるISを持ち上げているではないか。

 

「輝さん!!」

 

蘭が嬉しそうに涙を流す。彼の勇姿に、彼の強さに、感動を覚えたのかもしれない。

 

テレビに映る彼の姿は、まさしく【ウルトラマンガイア】のようだった。

 

歓喜の声が職員室に響く、生徒たちも外からその様子をみていた。蘭の容態が気になって仕方がなかったらしい。

 

いつしか彼女達は輝の戦いに心を奪われていき、次第に皆はテレビに向かって応援をしていた。

 

 

 

 

「……うっそ、だろ」

 

女の掠れた声が、ガイアの耳に届く。驚愕に満ちた顔が彼に向けられている。

 

ガイアの拳がISの胸部装甲を破壊した。それだけ聞いてもおかしいと思う者は必ずいる。何故ならガイアと言っても、彼はただのスーツアクターに他ならないのだから。

 

だというのに、彼は20m上空まで飛び上がったうえでのISの装甲を破壊。全員が全員ありえないと声を揃えるだろう。夢物語だと馬鹿にするだろう。

 

でも、少年達は知ってる。自分達のために闘った彼が、目の前で奇跡を起こしたことを。

 

本物のガイアのように、人々を救う光となったことを。

 

「ざけんなよ、そのまま落ち?!」

 

反撃をしようとしたその瞬間、ISがガクンと音を立てた。女は何が起こったのか全くわからない。目の前の男に殴られたと思ったら急に体の自由が利かなくなったのだ。

 

「何だよ、おいなんだよこれ!」

 

ISの電子コンソールで何が起こったのかを調べようと開く。殆どが正常値を示しているというのに、何故かPICの表示のみが異常を映している。

 

「おい、こりゃあどういう」

 

落下しながらどうにか機体を安定させようとするが、どれだけ入力しようとISは言う事を聞かなかった。正常値を入力して機体を安定させようとするも、すぐに異常値を示しISは落下していく。

 

ありえない。今まで正常に動いていたものが何故今になって急におかしくなったのか。

 

ガイアは慌てた姿を見て好機と感じたのか、彼女を背中から羽交締めし、重力に身を任せ落下していく。

 

彼の重さも相俟って余計にISの動きが鈍ってしまい、身動きが取れなくなる。

 

ステージに女は背中から叩きつけられる。ガイアは直撃の寸前に彼女を足場にジャンプし、空中で一回転をして見事無事に着地をした。その姿に観客が歓声を上げた。

 

BGMが変わった。力強いその音楽はまさにガイアの君臨を祝福し、大地を称え、平和を懇願する謳。

 

それはガイアのための音楽。必ず勝利してくれという願いを込められた歌は彼を応援する少年少女達にも希望を与える。

 

「ガッ……なめんな、クソがぁああ!」

 

PICを切り、無理矢理体を持ち上げガイアに対面する。しかし先ほどの衝撃が酷いのかIS自体にもガタが来ていた。今にも膝折れして倒れこむともわからないほど、先ほどのダメージは強大だったのだろう。

 

ガイアが両腕を上げ、その手の内側に円盤状の白い光が現れる。

 

胸のところでクロスさせ、横へ思い切り手を伸ばす。白い光は彼の体全身を包み赤く輝いた。

 

光が晴れると、ガイアの姿が変わっていた。

 

黒くなり黄金の縁がついた両肩、横腹から足まで迫る青い模様、海と大地が一つになった特徴的な姿になる。

 

S(スプリーム)V(ヴァージョン)、ガイアにとって最強の姿と言っても過言ではない。その強靭な姿に、彼は変身した。

 

確かに、彼は本物のガイアではない。だから変身しようとスペックが変わるわけではない。

 

だが、それは(てる)自身が許さなかったのだ。自分は今、皆の希望であるガイアなのだ。ガイアならガイアらしく最期まで演じきらなくてはならない。

 

それは、彼のスーツアクターとしての精一杯のプライドだった。

 

だが女は咆哮をあげた。彼のその変身を侮辱と捕らえ、怒りをあらわにしたのだ。

 

「殺す……殺す!!」

 

操縦者は呪詛を唱えるように呟き、彼に襲い掛かる。放たれた鋼鉄の腕がガイアに叩き込まれた。速度の乗った腕の横一閃が横腹に刺さる。この豪腕を前にすればいくらガイアでも一溜まりもない。

 

そう、確信していたというのに。

 

「死ね、ご……なっ!?」

 

だが、彼は倒れなかった。それどころか、その腕をがっしりと受け止めていたのだ。

 

大地を踏みしめ、ガイアは彼女の腕を思い切り抱え込む。もうお前の攻撃なんて効かないと言わんばかりに、そして今度はこっちの番だと言わんばかりに、彼はその鉄の塊を抱えこみ、そのまま思い切り持ち上げようとした。

 

女はその腕を振り解こうとする。しかし腕を振るうことすら出来ない。アームが言う事をきかないわけではない。振るうことが出来ないのだ。

 

仮にPICが正常に戻ったとしても、彼女は振り払うことは出来ないだろう。

 

何故ならガイアの腕は彼女の関節を完全に決めていたのだ。

 

女の体が持ち上がる。なす術もなく彼女の体は円を描き、大地に叩きつけられる。

 

ISの重さもあることから、頭をぶつけた際の衝撃で絶対防御が発動した。つまり、それほどのダメージが彼女に降り注いだのだ。無事で済むはずがない。

 

「グガ……ふざけっ!?」

 

だが、ガイアは一度では終わらない。彼女の腕を再び掴み、思い切り振り上げ叩き落す。

 

初めは一本背負い。次に腰車。次々と柔道の技が繰り広げられていく。これこそガイアの大見せ場。通称投げの鬼の見せ所である。地球投げがコンセプトであるガイアの十八番といっても過言ではないだろう。

 

ISが宙を舞い、大地に落ちる。1回1回の衝撃が操縦者に降り注いだ。

 

ウルトラマンガイア。彼の姿はもう、ただのスーツアクターではない。

 

もう、立派な地球の守護者だった。

 

 

 

 

「……凄い」

 

ガイアの投げの連続を目の当たりにした簪の感想はとても簡潔なものだった。

 

その目に映ったガイアの姿は、まさに彼女がテレビでみていたガイアその者。

 

絶対に諦めない。必ず希望を繋ぎ、人々を守る光の戦士の姿。そんな彼の姿に彼女は簡単な感想しか出てこなかった。

 

いや、これほど彼のための感想(ことば)はないだろう。

 

「よっしゃ! 成功したみたいだな!」

 

「柏木さん、志藤さんぶっ倒れました!」

 

「なら寝かしといてやれ! おい美馬ちゃんは無事か!」

 

ステージの裏手から現れた二人の男。簪は面識がないが関係者であるのはわかった。美馬も柏木達の無事な姿をみて安心したのか嬉しそうに近づいた。柏木は二人の無事を確認すると志藤を近くの壁に寄りかからせた。

 

「こっちはガイアのおかげで無事!!」

 

「そいつは重畳。あとはあいつが決めるさ!」

 

「でも何が起こってるの?」

 

自身の無事を知らせた美馬は何が起こったのかを聞いた。

 

いきなりISの制御が狂っているのだ。誰もが疑問を持つのも仕方ないだろう。美馬のその疑問に意識を戻した志藤がフラフラと立ち上がり、得意気な顔をしながら親指をたてたことにより彼女の納得をしてしまった。

 

この男、土壇場でやってのけたんだなと。

 

「ガイアを中継に、相手のISのシステムに侵入したんですよ。でもガイアが触れてる間しか効力を発揮しないんで簡単に掌握出来るPICを弄ってきたんです。流石に異常値をランダムに手動で入力するのは堪えましたけど」

 

「ま、そんなのそこのお嬢ちゃんには関係なさそうだけどな」

 

「裏話なんてあまり流行りませんよ志藤さん」

 

「はっはっは……城嶋君、後で覚えておきなよ」

 

四人が話している間も、簪はガイアをずっと見つめていた。絶望を打ち砕いたその姿に、彼女は胸の高鳴りを抑えられなかった。そう、彼女は彼の背中から目を離せなくなっていたのだ。

 

そんな彼女の横顔に満足したのか柏木はマイクを美馬に渡した。その行動に一瞬戸惑いをみせる美馬だったが、柏木は無理矢理その手に持たせる。

 

「美馬ちゃん。仕事が残ってんぞ。司会のお姉さんらしく決めちゃってくれ」

 

「……うん!」

 

柏木の笑顔をみた美馬は、何か決意したのか先ほどの戸惑った表情を消し、最高の笑顔で返し、マイクを口に近づけた。

 

「皆―!! ガイアが悪い奴をやっつけてるよ! もっともっと、彼を応援しよー!!」

 

子供たちは美馬の声と同調し、喉が嗄れるほど応援をする。それが彼の耳に届いたのか、ガイアの動きが勢いを増した。

 

その応援は会場からだけではなかった。

 

治療台の上、応急手当を受ける男が朦朧とする意識の中、うわ言のようにガイアを応援し、その手を天へ伸ばしていた。

 

頑張れと、負けないでと、皆応援していると、勝利を掴んでくれと。

 

彼らの声がガイアに届いた。彼の耳には確かに彼らの声が届いた。

 

ガイアは答える。彼らの思いに報いるために。ガイアは闘う。彼らの命を守るために。

 

会場からも、ステージからも、そして患者たちが搬送されたあらゆる場所からも。彼の勝利を願うその思いが、ガイアに再び奇跡を起こさせた。

 

 

「……マジかよ」

 

 

そう呟いたのは人々の救出をし終えていた大槻であり、その光景に思わず笑ってしまった。規格外な事をやってのけたガイアがさらに奇跡を起こしたのだ。これが笑わずにいられるだろうか。彼は大地に背を預けながら彼の活躍をその目に焼き付けた。

 

「何がまだまだだ。十分出来てんじゃねぇか」

 

鉄の塊であるISをその腕一本で持ち上げていたのだ。咆哮と共に持ち上がるISを目の前に、その場にいた誰もが喜びの声を上げた。勿論、大槻もだ。

 

「ディアッ!!」

 

片手で持ち上げ、そのまま投げ飛ばす。そんな力技、今までのステージでやってのけた者がいただろうか。大槻の記憶の中でそれをやってのけた者はたった一人だった。

 

「……洸さん。あんたのガキ、あんたの背中に追いつきそうだぜ」

 

「いんや、超えようとしてんだよ。立てるか大槻ちゃん」

 

「ディレクター……確かに」

 

いつの間にか現れた柏木の手を借りて立ち上がる。もうフラフラなのか少しすると座り込んでしまう。その光景に柏木は若い頃の大槻を思い出すと言って笑い出した。

 

「お客さんはどうだ?」

 

「えぇ、人っ子一人見逃してませんよ……あぁ、スーツが汗吸ってやばい」

 

スーツの中は汗だくで今すぐにでもシャワーを浴びたい。そう思った大槻だったが、彼の雄姿を最後まで見届けたいという気持ちが勝っていた。

 

「安心しろ、もう終わるぜ」

 

「でしょうな。網走ちゃんが心配しまくってましたしね」

 

ガイアが構えを変えた。右手を天高く伸ばし、左手を胸のライフゲージの前に構えた。

 

「おい! いいのかよ篠ノ之先生さんよぉ!」

 

操縦者が吼えた。最後の足掻きに聞こえるその声が美馬の耳に入った。美馬は何も答えず女を見つめる。

 

青く光っていたライフゲージが白と赤の輝きと同時に放たれる。体の中心線に沿うように両手の位置が逆転した。

 

「あんたの作ったISが! たかが男にぶっ壊されていいのかよ!! こんな生身の人間によぉ! あんたの兵器がぶっ壊されてもいいのかよ!!」

 

「別にかまわないよ」

 

初めて彼女が会話をした。今まで何も答えなかった美馬が、ついにその口をあけたのだ。その表情は今までの暗いものではない。自信に満ち溢れた非常に良い顔をしている。

 

「私が作ったのは宇宙に行くためのものであって“兵器”じゃない。兵器として作られてしまったのなら壊さないといけない」

 

天と地に腕が伸び、その両手の指先が一本の線を結ぶ。それは今彼がこの星の全ての力を使うという意味を持つ。大地と海の力、そして光の力が一つになることを表していた。

 

「それにね、あなたは間違ってるよ」

 

「何!?」

 

全身を包むように両腕を下から後ろへ、後ろから上へと大きく振りかぶり、両の手を合わせ頭上で一度止めた。すると三色の光が収束して行き、赤い光球へと変わった。そう、全ての力が完全に一つの輝きに変わったのだ。

 

「今だ!!」

 

「うてー!! フォトンストリームだー!!」

 

そしてそこに、人々の声援(おもい)が光に加わった。その光景に美馬はとても満足した顔をして手を銃のようにしてバシュンと口にしながら操縦者の眉間を撃つ真似をする。

 

 

「悪が栄えた試しなんてないんだよ!」

 

 

美馬の声と共に、ガイアは前に一歩足を出し、その勢いでその両の手を胸の前に持って行き、右手を下にスライドさせた。

 

瞬間、小指側面から放たれた赤い光の一線がISに直撃した。

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

女の叫びが皆の耳に届く。本来実態ダメージは存在しない。だが、その光の出力ゆえに操縦者の肉体を焼けるような感覚が走り、その輝きで意識が遠のいていく。出力が高すぎるゆえか、直接撃っている輝自身もその光に目が焼ける痛みが彼を苦しめる。

 

だが、止めない。何故なら今、彼はガイアなのだ。人々の光と共に闘う地球の守護者なのだから。

 

彼らに、ガイアを見せて上げられるなら、この目なんてなくなってもかまわない。

 

ガイアの光線の光が増す。出力を手動で上げたのか、その光りは赤く、そして白く輝いていた。ISを攻撃したときに照射装置の位置が若干ずれてしまい、ガイアにもその光が当たってしまう。だが、それでも彼は止めなかった。

 

そして次第に光は弱まっていき、光線は完全に消えた。

 

エネルギーが切れたのだろうか。だが敵のISがギギギと音を立てながら倒れたことによって問題は解決した。その瞬間、今までにない歓声が三島パークに轟いた。拍手喝采が鳴り響く。

 

皆の喜ぶ声がする中、ガイアは構えを解いて動かなくなったISへと歩み寄る。

 

気絶した女性を見下ろし、片膝を立てしゃがんでISのコアを引き抜く。綺麗なクリスタルのような形をしたコアを確認すると、少しの間クリスタルを労わるように両手で包み、祈るように胸の許へ持っていく。それはISへの慈悲なのかもしれない。傷つけたことを謝っているのかもしれない。

 

そうとも、悪いのはISを利用したものであって、IS自体ではないのだ。

 

その後、ISを失った女を抱えてステージを降りる。

 

あれだけの戦いを繰り広げたというのに、彼は一度も体を揺らすことなく真っ直ぐと救急車両にいた隊員の許へと向かった。周りのざわめきが次第になくなっていき、皆はガイアの真意がわからず、彼を凝視していた。

 

隊員の許まで行き、歩みを止めた。そして彼は気絶した女を渡すために隊員へ差し出した。

 

「……助けてやれってことか?」

 

男の質問にガイアは黙って頷く。何も話さない彼はただ、彼女を助けてほしいとその態度で示した。彼のヒーローとしての格を隊員は心で感じ取った。

 

「……あぁ、任せろ。俺たちは人命救助の為にいるんだ。悠木君!」

 

「は、はい!」

 

女を渡されると隊員たちは急いで準備を始めた。その光景を確認したガイアは再びステージへと戻っていく。あとは任せたと言わんばかりに。信頼をしきっているのか振り向くことはなかった。

 

ステージへ近づくと、前転宙返り半ひねりをしながらステージ上へ着地。左腕を突き上げ、右腕を顔の横へ。

 

それは彼らの登場のときの姿だ。ウルトラマンの代表的なポーズと言えるだろう。

 

その姿に子供たちは集まっていく。彼の勝利を称えるために、その奇跡を確かめるために。

 

「皆―! 大勝利したウルトラマンガイアにもう1回大きな拍手を送ろー! 拍手―!」

 

美馬の司会を〆に、今日のウルトラマンショーは幕を閉じたのだった。

 

 

 

 




第0章 終わり。

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