まだペースは保てています、優菜です。
今回は少し短いですね……すみません。
こんなんですが、よろしくお願いします。
「ふぁ~……。。。」
銀さん……、怒られちゃうよ…?
「ごらぁ!!銀時ぃぃ!!てめぇ、何サボってんだぁ!!」
「うっせぇな、低杉。人には休憩というものが必要なんだよ。てめぇみたいに、体力バカばっかじゃねぇんだよ。」
「てめぇはさっきから、休憩しかしてねぇじゃねぇかぁあ!!」
あーあーあーあー、高杉に銀さん。暴れないでよー、せっかく掃除したのに……。
「やめんか、二人とも!葵殿が困っているだろ!!というより、どちらもさっさと働け!!」
「「うっせぇ!ヅラっ!!」」
「ヅラじゃないっ!桂だぁ!!」
って、あんたも入るんかい!!止めに来たんじゃないのっ!?
「3人とも?何をしているんですか??
掃除をしてくださいと言ったのに、汚くなっているなんてことはありませんよね??」
「「「げっ!!」」」
この後どうなったのかは、ご想像にお任せ致します。……が、想像通りですよ、多分。
こんにちは、葵です。
私が原作から大いに外れたことをしてから、僅か1日。既に引越し準備中。
が、あの悪ガキ3人が大人しく掃除をするわけもなく、銀さんがサボり、何気に真面目にやっていた高杉もそれにきれて、そして止めに入ったはずなのにとばっちりを食らっている桂。いつも通りといえばいつも通りなんだけどね……。
「葵姉ちゃん、こっち終わったよー!」
「ありがとう、蒼汰。もう終わるし、休んでていいよ?」
「はーい!」
最後まで真面目にやっていたのは弟の蒼汰ぐらい。……5歳児に負けるってどういうことですか。
「葵姉、俺も休んでいい?」
「んー?何を言ってるのかな?」
「……ゴメンナサイ。」
「わかればよろしい。自分の持ち場終わったら休んでいいよ。」
銀さんの教育も兼ねてるだけですよ。笑顔の圧力、いつも使うわけじゃないですよ?
昨日の夜、私が啖呵をきって『すぐにでもここから出ていきます。』なんて言ってしまったばっかりに、次の日にはお引越し……。こうなる事実はあったんだけど……それでも申し訳なさすぎる。
『父上、本当に申し訳ありません。私が余計なことを言ってしまったばっかりに……。』
『いえいえ。私が葵でも、同じことを言いましたよ。』
確かに、松陽先生が言ったことなんですけど……。
『引越しと言っても、荷物は少ないですし、門下は増えましたし、楽ちんですから気にしないでください。』
そう言って笑顔で言ってくれた父上の顔は、記憶に新しい。
蒼汰にはただの引越しだと伝えた。純粋に喜んでいた蒼汰に少しだけ罪悪感があった。
塾と家が繋がっている広めの家だけど、高杉と桂も手伝ってくれたということで、夕方にはすべて終わった。
「疲れたー。」
「銀兄はサボってたしょー。」
「馬鹿、銀さんもやる時はやったよ?」
「僕の方がやったもん。」
「それは蒼汰の言うとおりですね。」
「うぐぐ……。」
一足先に休憩している男5人の背中。全員が縁側に集結していた。
「みんなお疲れ様。はい、お茶と、頑張ったご褒美にお団子を作ってみました。よかったらどうぞ。」
―――バッ!!
はやっ!?
そんな4人いっぺんにこられても困るし!団子はどこにも逃げないし!!
……っていうスピードで奪われました。動物園の動物に餌あげてる気分です。
「ありがとうございます、葵。とても美味しいですねぇ。」
「……父上、いつの間に取ったんですか。」
「私ぐらいになればこれぐらい余裕ですよ。」
父上は、私に虚だということをばらしてから、こんなふうに自虐的に言うようになりました。……はい、素敵な笑顔です。
「だぁ!!高杉!てめぇ!食いすぎだぁ!」
「てめぇがとろいからだろ!」
「うるさい!団子くらい黙って食べろ!」
そしてこちらは、いっつも喧嘩しています。喧嘩するほど仲がいいとは言いますけどね?し過ぎですよね??
「晋助も銀時もうるさい。罰として、残りの団子は
「「はぁ!?」」
「やったぁ!!」
でも、弟が増えたみたいでとても楽しい。
手のかかる弟たちだけど、毎日が全く飽きなくて……。いつも賑やかなのは本当に嬉しかった。
あっ、なんで呼び捨てなのかって?
昨日、突然、『名字で呼ばれるのは嫌だ。同じ屋根の下にいるのに変な感じがする。』と2人に言われましてね。うむむ……、正直、私が変な感じがします。
「さてと、そろそろ出発しますよ。」
「おー!!」
「はい。」
この家ともお別れ。
この身体には13年だけど、記憶にないので、事実上、5年くらい。
本当に素敵な5年間をありがとうございました。
私を愛してくれた晴香さんと松陽先生に出会えて、
かけがえのない蒼汰という弟に出会えて、
銀さんと高杉と桂にも出会えて。
―目まぐるしく回っていった5年間。
――忘れられない記憶になった5年間。
―――守ることを誓った5年間。
ここに出会えてよかった。
ここで出会えてよかった。
「行きましょうか。」
「はい!」
さぁ、次の舞台へ。
聞こえるカウントダウンの音が、
大きくなるのを恐れずに。
――――――――――――――――――――――
「そういえば……気になってたんだけど。」
「ん?俺??」
「うん。銀時さ、昨日の夜、どうして名前偽ったの?」
次の家に向かって歩いている途中、私は隣を歩いていた銀さんに話しかけた。
なんだか流した感じになってしまったけど、ずっと気になっていた。正直、あの名前が本人から出てきた時に動揺しなかった私は偉いと思う。
『松下村塾、吉田松陽が弟子、坂田銀時。』
そう、“坂田”銀時と言ったのだ。
今までは“吉田”銀時を名乗っていたから、突然出てきたことに、本当に驚いた。……いやまぁ、確かに?このまま吉田で行くのかなぁ、とは思っていたけども!あんなにナチュラルに来るとは思わなかったよ!!
「特に意味は無いなー、なんとなく。」
「なんとなく?」
「ん。あのまま俺が吉田を名乗ってたら、俺だけの問題にならないだろ?吉田松陽も吉田葵も吉田蒼汰も目をつけられる。だから、とっさに出た名字を言ったんだ。」
「それが、坂田だったの?」
「結局、一文字同じだけどな。」
なんと……。坂田の由来ってそういうことなのか?それとも、私が転生したことによる歪みなのか??
どんな理由であれ、あの一瞬でそこまで考えていたとは……。
「ありがと、銀時。」
蒼汰に聞かれるのはまずいから、小さな声で近づいて話していた。
まだ、私よりも小さな背の、可愛い弟の顔に。
「べ、別に、大したことじゃねぇよ。」
「ふふっ、そうかなぁ?すっごく嬉しいよ。」
「そう?」
「うん!」
こんなに小さいのに、そこまで考えてくれていることに。
私たちを守ってくれようとしていることに。
その愛に、応えたいと思ってしまうほどに。
男の子の成長期はこれから。きっとすぐにでも抜かされてしまう。
それでも、前の世界では私の弟が私を抜かす前に、私は死んだ。
次こそは、
あなたの隣で、
大切な人たちの隣で、
成長を見守ってていたいと、
本当に心から思っていたんだよ。
引越し先は……もちろんあそこです。