IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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こんにちは、優菜です!

今回、本作品が日間ランキング22位にランクイン致しました!
初めてのことで、本当に嬉しく思うと同時に、一旦中断してしまうことへの申し訳なさでいっぱいです。
読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。

今はこの1週間に全力をかけていきたいと思います。
では、最新作をどうぞ!


吉田葵と周囲のその後【吉田松陽・蒼汰】

IF

 

 

「……。」

「………。」

「…………。」

「そうですか、……葵が。」

 

葵と再会した後、すぐに話に行った人物がいた。

それは、言おうか言うまいか迷ったあげく、結局は隠せないということになった人。

 

「悪かった、松陽。」

 

吉田松陽。

吉田葵の父親で、葵が連れて行かれたことに最も悲しみ、責任を感じていた人であった。

 

 

「いえ、3人ともありがとうございました。」

 

松陽には、守るべき息子と銀時たちよりも若い門下生がいた。それを理由に、松陽には戦場に行かせなかった。

 

「確かに葵の言う通りです。

国を相手取って、仲間を犠牲にすることは無謀ですよ。」

「「「……っ、、、」」」

「でも、それは今の君たちの方法なら、という意味です。

 

私たちが相手取るのは国ではありません。葵自身です。

考えてみてください。もし本当に葵がなんの心も持っていないのであれば、君たちはここにはいないと思いませんか?」

 

 

そう。松下村塾でも一番の強さを持っていた葵ならば、俺たち3人を殺すことなど容易なことであったはずだった。

 

「それをしなかったのです。それは、葵が大切な弟たちに生きてほしかったからですよ、きっと。」

 

自分たちの師で彼女の親である人の言葉のどこを疑うというのだろうか。

 

「だから、君たちは生きなさい。もう葵のために戦わなくていいのです。

それは、私と葵からの願いですよ。」

 

 

 

 

 

 

―その夜

 

3人は考えた。

今のまま再び突撃しても、結果は同じ。

無謀と言われた戦争で、多くの仲間を失うことは3人にとって耐えられなかった。

 

 

「銀時。」

「?」

「俺たちは、葵殿を信じていこうと思う。」

「……また戦争する気か。」

「いいや、松陽先生の教えを破るほどの悪ガキになった覚えはない。」

「俺たちはこのまま、国をつつきながら葵のことを探る。少々荒い真似はするかもしれねぇが、“国家転覆”するわけでもねぇし、大丈夫だろ。

それに、“鬼兵隊”と“狂乱の貴公子”がいて、捕まるなんてこたァねぇからな。たっぷり国と遊びながら葵の情報を探ってやらァ」

「ということだ。

銀時、貴様はどうする。」

 

 

銀時は迷った。

2人とともに葵のことを助ける方法を探すことをしたくない訳では無い。でもどうしても、銀時には出来なかった、

 

「わりぃ、俺は別行動にさせてもらうわ。」

 

明確な、葵を守っているという証拠もない中で、刀を振るい誰かを斬ることが。

 

 

 

「そうか。

まぁ、貴様は葵殿といた時間も俺らより長い。思うこともあるだろう。

こちらが何か掴んだ時は、お前にも教えてやろう。」

「あぁ。ありがとな。」

 

 

 

その後すぐに、松陽にも俺たちがどうするのか伝えた。

鬼兵隊として活動することを最初は心配していたが、

「何かあった時、ここに戻って来てもいいですか?」

という高杉の言葉に納得したようだった。

 

 

「蒼汰には、俺たちに着いてくるなとだけ言ってほしいのですが……。」

「あいつには、普通の生活を送ってほしいからな。」

 

最後に大切な弟のことを任せ、攘夷戦争の英雄たちはそれぞれの道を歩み出した。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「ってことだ。

ヅラと高杉が国から追われてんのは、やり方が“少々”じゃなくて“かなり”荒いからだ。それに、『攘夷戦争に参加した“鬼兵隊”』っつーレッテルは消えるわけじゃねぇ。

いつか反乱を起こすんじゃねぇか、って政府は見張ってんだ。」

「じゃあ、紅桜の時に高杉さんと桂さんと一緒に天導衆と戦ったり、高杉さんと桂さんが真選組に追われたりしてるのも、その名前のせいなんですか。」

「まぁ、そーゆーことだな。“鬼兵隊”って名前出しときゃあ、あちらさんは勝手に構ってくるからな。丁度いいんじゃねぇの?」

 

 

何かある度に、代わる代わる出てきていた桂と高杉。

2人は“鬼兵隊”と“攘夷戦争の英雄”という名前だけが一人歩きしているために、追われているだけだった。

 

「じゃあ、私らは勝手に巻き込まれてただけかよカヨ。」

「俺に情報、言いに来てる時もあるけどな。悪ぃな。」

 

 

……。

 

この人は一体、どのくらいの苦労をしてきたのだろうか。

 

気づいた時には戦場に1人いて、

姉のように慕っていた人を、ある日突然奪われ、

取り戻せなかった無力さを覚え、

何もしていない仲間が追われている日々。

 

 

きっと、取り戻せなかった後も、何かを守るために刀をふろうとして、ここに出会った。

そして、そこで守られてきた。

 

「銀さん、ありがとうございます。」

「??」

「次は私が銀ちゃんたちを守るアル!」

「……??」

 

この人にとって、それは無自覚でやっていることなのだろう。

自分が、自分の大切な人に守られた時から、

大切な人を守ることは、普通のことになったのだろう。

 

いつか、本人に恩を返すために。

その時に弱くて届かないなんてことがないように。

 

「何でもないアル!早く行こうヨ!!」

「そうですよ、銀さん!」

「……!?お、おう、そうだな。」

 

 

 

誰にでも踏み込まれたくない場所がある。

 

誰にでも知られたくない記憶がある。

 

それを教えてくれたあんたこそ、

僕らにとっては本当に大切な人。

届かないかもしれない力の、

ほんの少しの足しになれるように。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「ついた。」

「ここが……」

「銀ちゃんのお家アルカ……」

 

そこにあったのはかなり大きな木の家。

銀時たちが学んだ“松下村塾”だった。

 

「入るか。」

 

中に入っていく銀時について行く2人。中は想像していたよりも綺麗だった。

 

「誰かいるんですかね……。」

「えっ、、、銀さんそんなこと知らないんだけど。」

 

 

 

その言葉で、怯え出す3人。

何年も来てないのであろう家が、ホコリもかぶっていなければ、誰でも怪しむだろう。

 

 

恐る恐る奥に進むと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、今日、帰って来ましたか。」

「「!?!?」」

 

突然聞こえた声に、派手に驚く新八と神楽。

 

 

「……松陽?」

 

そして、別の意味で驚く銀時。

 

 

「松陽…って、あの銀さんの師匠の?」

「師匠なんて立派なもんじゃないですよ。親代わりとでもしといて下さい、新八くん。」

「!?……僕の名前、、、」

「もちろん知っていますよ、新八くんと神楽さん。

銀時のことは、晋助や小太郎から聞きますからね。その大部分を占める名前が『新八』と『神楽』。

いつも、銀時がお世話になっています。」

 

そう言うと、松陽は深々と頭を下げた。

 

 

「いや、あのさ……俺のこと置いて話進めないで。」

「あぁ、銀時いたんですね。忘れてました。」

「松陽ぉぉぉぉ!?」

 

 

 

―――あぁ、ここは自分の家だ

 

こんなにも楽しくて、幸せな気持ちになれる。

そんな場所があることが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。

 

「ただいま、松陽。」

「おかえりなさい。」

 

 

この場所がなかったらどうなっていたんだろうか。

 

もしあの時、葵姉が守ってくれていなかったら、

 

この場所に帰ってくることが辛いものになっていたら。

 

 

葵姉が連れ去られた場所として、ここに来るのにも時間がかかった。

 

でもこの場所が残っていて本当に良かったと思う。

 

 

――いつかここに、みんなで帰ってくる。

 

―――帰ってこさせる、絶対に。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

「松陽って、ここに住んでたのか?」

「いいえ、今は江戸の近くに住んでいますよ。……晋助たちから聞きませんでしたか?」

「……聞いてねぇ。」

 

あんの野郎……、と呟いてる銀時を見ると、次に会った時に怒られるのは決定事項のようだ。

 

「さっき掃除を終えたんですよ、と言っても、私が来た時にはもうほとんど終わっていましたがね。」

「……は?」

「もう1人。来てるんですよ。」

 

 

そう言った松陽の後ろ。襖が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、銀兄。」

「……そう、、、た??」

 

そこに立っていたのは、全身真っ黒な制服、

 

 

 

 

“真選組”の隊服を着た……

 

「「土方さん(トッシー)??」」

 

鬼の副長にそっくりな人。

 

 

「やっぱり似てますか?」

「土方さんが笑ったらそんな感じなんだなぁ、という……」

「変な感じアル!」

「神楽ちゃんっ!」

「はは、よく言われるので大丈夫ですよ。」

 

鬼の副長、土方十四郎が爽やかになればこんな感じになるのだろう。

そんな印象の青年がそこに立っていた。

 

「あんなニコチンマヨと一緒にすんな。」

「副長の悪口言うなら、銀兄でも逮捕するよ?」

「あーあー、スイマセンデシター。」

 

銀時とコントのような、リズムのいい会話を繰り広げるのは……

 

「自己紹介が遅くなってすいません、僕は吉田蒼汰といいます。そこにいる吉田松陽の息子です。」

「銀ちゃんの弟アルカ!」

「まぁ、そんな感じですね。」

 

 

歳が近いのもあるのか、すぐに仲良しになったようで、穏やかに話している新八と神楽と蒼汰。

 

 

そんな中、神楽がふと聞いた。

 

「蒼汰は真選組の何番隊アルカ?」

「確かに……、蒼汰さんのこと見たことないですね。」

「そういや、最近屯所にいなかったな。」

 

それなりに真選組とは関わってきた万事屋一行。蒼汰が真選組に所属していることを知っていた銀時は、真選組と関わる事に蒼汰を探していた。……が、その姿を見かけたことは無かった。

 

「僕、最近まで屯所を離れて仕事していたんです。副長の命で。」

「土方さんの?」

「あぁ、お前ら知らないのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼汰は、土方の直属の部下。

何番隊とかに所属してねぇ、特殊部隊みたいなもんだ。」

「……よく知ってるね、銀兄。」

「土方本人に聞いたのと、高杉とヅラからも教えてもらったからな。」

 

 

 

 

「……」

「すごいんだナ、お前。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そんな、吉田蒼汰のお話。





謎だった桂の所属場所、そして葵ちゃんがねじ曲げた運命がお分かりいただけたでしょうか?

変わった世界と運命は葵ちゃんの願い通り、みんなが仲違いすることなく、松陽先生とともに暮らすこと。


―――例えその時、自分がそこにいなくても。

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