お読みいただきありがとうございます。
お気に入り登録者がとても増え、嬉しい限りでございます。
……話が大きく動き出しますよ。
いや、想像できた??笑笑
「やれやれ、傾城三匹がご同行とは。
加えてこっちにゃ、姫様誘拐の嫌疑までかけられちまってんだぜ。」
「将軍を相手取るより、よっぽど骨が折れそうですね。」
「その片棒担いでやがるのが、幕府のもんてのもどうなんかねぇ。」
「そのへんは考えないことです。」
女三人が暴れている少し上。見下ろすは、三人の侍。
その後に迫るは、まだまだ溢れる大軍。
「悪いことは言わねぇ、援軍呼んできな。
将軍直参だかなんだか知らねぇが、泰平の時代に生臭ったテメェらなんぞに、俺達の相手が務まるか。」
三人が刀に手をかけた。
「こっちはあのアバズレ共と……」
「「毎日、戦国時代送っとんのじゃーーいっっ!!!」」
銀時と新八が大軍に突っ込んだ。
ほとんどが二人に倒されるが、すり抜けて後ろにいる者にも攻撃を仕掛けようとする。
「おいっ!!行ったぞ!!」
全く構えない潮屋に、一瞬の焦り……そして、その時間が無駄だったという……確信。
「あっ……。」
「なっ!?……姫さっ」──ザシュツ!!
僅かに前に出てきたそよ姫を斬りかかりかけた兵士が、赤く染まった。
「この方を誰と心得る。
将軍、茂々様の妹君、そよ姫様であるぞ。
どの身をもって、この方に剣を向けている。」
そよ姫を、剣を持たぬほうの手で抱え込み言うその言葉は、幕府の者である言い知れぬ圧を含んでいた。
そんな圧に怯む中、ただ一人その姿を見つめる者が……。
その者の目には、まるで桜が舞うように……。
美しい型を振るう姿が映っていた。
───────────────────────
押し寄せる大軍。誰一人として引くことなく、眼前の敵をなぎ倒していく。
それでも後から後から溢れてくる直参の兵士。
そよ姫を囲うように、六人が背中合わせで集まった。
「姫様、大丈夫ですか。」
「はいっ。すいません、私なんて何も出来なくて。」
「僕が好きでやっていることです。気にしないでください。」
「全く、将軍の妹君に斬り掛かるとは、どのような教育をしておるのじゃ。」
「いやぁ……すいません。」
「てめぇら、のんびり話してる場合じゃねぇぞ。」
「銀ちゃん、一人あたり、あと何人アルカ。」
「百……二百……ダメだ、眠っちまいそうだぜ。」
七人を囲うは、数千の兵士。
そんな絶望の状況でも、六人は平然としていた。
「いいか、一歩たりとも仲間から離れんじゃねぇぞ。
背中は任せて何も考えず、テメェの眼前の敵だけ斬り伏せろ。
テメェが倒れねぇ限り、誰も倒れやしねぇ。
一本の刀になれ、……壁をぶち抜けっ。
将軍のあのふざけたおもちゃ箱、ぶっ潰すぞっ!!」
目指すは、罪深い満月を背負いし江戸の城。
「国盗り合戦んんんんっっっ!!
開始だぁぁぁぁぁああああ!!!!」
数千に突撃するは、六人……いや、一本の刀。
「壁だぁ!!壁になれぇぇ!!!一歩たりとも、将軍様のもとに賊を近づけるなぁ……グボッ!」
数千を破る刀の前で、数百の壁など無きにしも非ず。
「うすーいっ!!!狸じじいの頭よりも薄ーーい!!!!」
「失礼なこと叫びますね。」
「しょうがないアルヨ、みっくん。銀ちゃんはそういう奴ネ。」
前も、右も、左も、後ろも、上も。
どこにも付け入るスキなど、ありはしなかった。
「どけぇぇぇ!!」
「「!?」」
構えたのは弾数任せの、巨大な銃火器。
大量の銃弾が七人に降り注いだ。
「ふんぬっ!!!」
神楽の傘に全員が見を潜め……
「銀時……。」
そう、僅かに呟いたのは誰か。
「!!……わーってら。」
「新八くんっ、姫様をお願いします。」
潮屋と銀時が目を合わせ、信女と月詠もその意図を読み取る。
「なっ!?」
傘の上から銃火器の方へ投げられたのは、
次の瞬間、
「横だぁぁぁ!!」
壁を伝って迫る、見廻組副長と死神太夫。
「撃てっ!?!?」
「構える余裕があるのであれば、前を見ろ、モブ共。」
その発射口には、クナイと剣が刺さっており、そこに迫るは……
二人。
「お呼びなのは、横だけじゃねぇよっっっ!!!」
空中で投げた自らの剣を掴み、そのまま斬り伏せた。
「なんだか、随分息が合うじゃねぇの。」
「目指す場所は同じですからねぇ。」
そんなことを言い合うのも束の間、
──ドガーーンッッ!!!
「「「!!!」」」
「次から次へと、出てきやがるぜ。」
「次弾装填!!消し炭にしろぉぉぉ!!!」
迫る一発目の弾は、神楽が城に向かって撃ち返した。
「もう一発来るぞ!!!」
「!?……全員、下がって下さいっ!」
「潮屋さんっ!!」
潮屋の後ろに張り付いていたそよ姫を、月詠の方へ僅かに押す。
「姫様。」
「潮屋さんっ……!」
「おいっ!!かわせ!!!」
神楽が打ち返せたのは、彼女が夜兎だから。
一般人がその身に受ければ……起こりうる未来は目に見えていた。
「……っ!!」
少し目を閉じ、開いた次の瞬間、
腰に収められていた刀を抜き、一瞬で城に打ち返した。
「なっ……!」
「はっ……。幕臣に、んなことやられてんようじゃ、国も崩壊間近だぜ。」
「緊急ですよ。」
驚く間もなく、神楽と潮屋によって開かれた撃ち壊された重々しい扉が開く。
「将軍様ぁ、お待たせしました。デリバリーNO.1太夫・傾城鈴蘭、参上仕りましたぁ。
今更チェンジは無しだぜ?汚ぇケツはよく洗ったかぁ?
今夜は……、眠らせねぇよ?」
そこに並ぶは
「ど、どこに行くんですか!?」
「ご安心を。あなたの願いを蔑ろにするつもりはありません。」
「……!?」
銀時たちが将軍のもとに殴り込んでいた、ちょうどその時、そよ姫は違うところを走っていた。
……いや、走っていたと言うと語弊がある。彼女自身走ってはいない。抱えられているだけだった。
「彼らだけ置いてきて、良かったのでしょうか……。」
「姫様が心配することではありませんよ。彼らは強い、絶対に折れたりしません。」
そこまで話すと、どこかの部屋に着いた。
「姫様。
僕が必ず迎えに来ます。絶対にここから出ないでください。」
「どうしてっ!」
「ここからでも、国の改変は見ることが出来ます。」
部屋にある二つの窓は、一つは外を、もう一つは銀時たちを見ることが出来た。
「ここは一体……っ。」
そよ姫が真っ直ぐ見る、その先には。
「正直に言います。
あなたがあそこに乗り込んだ場合、僕はあなたを守ることが出来ると言いきれない。それ以前に、彼らが生き残ることが出来ることさえも、保障しきれないのです。」
「私が……っ」
「いえ。決して、あなたのせいではありません。
僕がねじ曲げてしまった真実を、元に戻さなければならないのです。」
そこまで言うと、そよ姫は黙ってしまった。
そんなそよ姫の足下に跪き、その人物は言った。
「信じてもらえないと思います。全てが終われば、あなたの元に説明もいくと思います。どうかそれまで、耐えてもらえないでしょうか。」
「あ、頭をあげてくださいっ。
私がここにいることで皆さんが助かるなら、私はここにいますからっ。」
「ありがとうございます。」
そう言うと、立ち上がり、ただ一つの出口に向かう。
「あなたはどちらに行くんですか。」
その背中に問いかける。
「僕は……一つだけ。どうしても変えたい真実があるんです。」
そよ姫は不思議だった。まるで、起こることがわかってると言わんばかりの、この者の言い方が。
「……あなたは、何者ですか。」
そう言うと、浴衣の下に隠していたのだろう。……髪をかきあげた。
「僕は……
私は、ただの弟好きの姉ですよ。」
少し振り返ってなびくその髪は、長い亜麻色。
深いその緑の瞳は、
愛おしいものを想うような、苦しむような……。