「一体、何事だ。」
「真選組と見廻組、江戸の二大武装警察が手を組んだようです。」
「まさか。彼らは犬猿の仲だと聞いていたがね。」
城の高いところから見下ろすのは、葵によって逃がされた定々と朧。見下ろす先は、黒と白が入り乱れる城下。
「おそらく何者かが仲立ちしたと思われますが……。気にすることは無いでしょう、もうすぐ船が来ます。用心のためご避難を……。」
朧が誘導しようとしたが、定々は見下ろした城下に対して高笑いをした。
「あの者ども、本気で国盗りをするつもりか。ならば……私も応えてやらなければならないな。」
定々は朧に命じた。
「江戸の全ての警察組織を城に集めてもらえるかね。
全ての力を持って、あの国賊どもを叩き潰すっ。」
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定々と朧が移動している頃、城内では戦闘が続いていた。
「まさか、バテてんじゃねぇだろうなぁ?」
「あ゛ぁ゛!????てめぇこそ、ヒョロっヒョロのくせにうるせぇよ、低杉っ!!」
「テメェに言ってねぇよ!!!銀時っ!!!」
口を動かしながらも、その動きが鈍くなることは決してない。むしろ、早くなる一方だった。
そして、その早くなる動きに対して、寸分の狂いもなく全てを受け返されているのも、また事実だった。
ただそれは、相も変わらず決して気づかれないように。
「そろそろケリつけようじゃねぇか、葵っ!!!」
高杉のその言葉を合図に、三人か一斉に攻撃を仕掛けた。
──ドガーーーーンッッッ!!!
三人の剣が振り下ろされたところは、煙が立ち込めた。
見えた、いや……
真剣である桂と高杉の剣だけを避けつつも、銀時の剣をその身に受ける葵が。
そして、気づいていることにさえ気づいた葵が、確かに真っ直ぐこちらを見て、
桂の方に僅かに微笑んだのを。
「!?」
剣が当たった葵は、壁まで吹っ飛ばされ、ピクリとも動かない。
ただ、三人は葵が死んだとは考えなかった。考えられなかった。
「行くぞ。」
「?……どこに行くつもりだ、銀時。」
「お前らもわかっただろ。葵姉を連れ戻すには、縛り付けてる本丸を叩かなきゃならねぇ。
葵姉を取り戻すのは、全部ぶっ壊してからだ。」
──ドガーーーーンッッッ!!!
城の中にいても聞こえるような、大きな爆発音。
全員が一瞬、外を見たがすぐに戦闘は再開する。その様子を後ろに、階段を登り下を見る。そこでは三人を追おうとする奈落の集団を、足止めする死神太夫と見廻組。
銀時は少しだけその光景を見て、走り出した。
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「な、何事だー!!!」
突然の爆発に、城の外で真選組と戦っていた兵士達は戸惑う。
「た、大変ですっ!!北門、南門から、軍勢が!!」
「馬鹿な!?一体、何者だ!!」
「いいかぁ!三秒以内に道開けろぉ?じゃなきゃ、天守閣ぶち落とすぞ。」
現れたのは黒い服に身を包み、サングラスをかけ、タバコをくわえる大砲を引き連れた男。
「いーち!」──ドガーーーーンッッッ!!!
「2と3はぁぁぁあああ!?!?」
その男に、天守閣は撃ち落とされた。
「いいか、男は一だけ覚えときゃぁ、生きてけるんだよ。」
その男、松平片栗虎。警察庁長官。江戸の警察組織のトップに立つ者。
「馬鹿な!警察組織そのものが、反乱を起こしただと!?」
「そんな馬鹿げたことあるはずがない!反乱どころか、あの人員……大殿の許諾なしに動かせるはずは……っ!!」
「一人だけいるんだよ。」
兵士の前で近藤が言い切る。
「警察でもなんでも、勝手に動かせる人が。
まだ分かりませぬか!定々公っ!!」
集まっていた真選組が二つに分かれ、中央の道に向かって整列する。
そこを馬にまたがり、悠々と歩くは……この国のトップ。
「う、上様っ!?」
「茂々……、お前の仕業か。」
──徳川茂々公。
「武器を収めよ。くだらぬ争いは好まぬ。
主らも、いずれはこの国を守る大切な兵ぞ。その命、みだりに散らす事は許さん。」
「し、しかし……」
「聞こえなかったか。
武器を捨てよと申しておる。」
そこに君臨するは、──将軍。
圧倒的なオーラが、その場にいる者をひれ伏せさせた。
「どいてくれるか。」
真選組が避けた先にいたのは、万事屋。新八と神楽、そして爺や。
後ろで、近づいてはならぬと叫ぶ声も気にせず、茂々は近づき、そして、頭を下げた。
「余が不甲斐ないばかりに、迷惑をかけた。礼言わせてくれ。
汚名を着てまで、よくぞ余の忠臣を守り抜いてくれた。
そなた達がいなければ私は、私たち兄妹は、大切な育ての親を見殺しにするところであった。
爺や、済まなかった。こんなに近くにいたというのに、……お前の苦しみに気づいてやれなくて。その人生をかけ、将軍家のために尽くしてくれたというのに。余はお前を苦しめることしか出来なかった。
爺や、……まだ間に合う。満月の夜の約束……、余が、必ず間に合わせてみせる。」
爺やを真選組に任せ、立ち上がる。
「将軍様、どちらに……?」
「叔父上に……話がある。
それから、頼みがあるのだが、聞いてもらえぬか。」
「「??」」
茂々は神楽と新八に、そこにいる者たちに聞こえるように言った。
「一人、訪ねて呼んできてほしい者がいるのだ。」
「呼んできてほしい人……?」
「幼き頃から余を守り、そして余を信じ、全てを話してくれ、片栗虎の元に行くことになった……、余の友。……余がここにおるのは、その者のおかげだ。
その者と話すべく人がおる。主ら二人ならば、分かってくれるであろう。」
天守閣を見上げ、茂々は思い出していた。
『本日から、茂々様の護衛を担当します。よろしくお願いしますね。』
次期将軍という身分により、どの者も壁を作り接してくる中で、数少ない、自分を年相応の子ども……弟のように接してくれた者。
『この方に手をあげるであれば、私を殺してからに致していただきたい。』
狙われる命を、何度も防いでくれた。
『これから申し上げること、信じてもらえないと思います。
ですが、どうかお聞きください。そして、どうか、この国を、お守りください。
信じて頂けるのであれば、私は、あなたの味方であることをお誓いいたします。』
自ら危険を冒して、導いてくれた。
信じると言った時の、笑顔と…………涙。
「殿。天導衆の船がもうまもなく、この城につきます。上に参りましょう。」
「半生をかけて積み上げたものを、捨てろと言うのかっ!!」
「捨てろとは申しておりません。一時、手放すだけです。またすぐに、戻って来れますよ。」
「戻ったか……、」
定々と朧の元にやって来たのは、死にはせずとも動けるような状態ではなかった傷を負った人物。既にその傷は癒え、
「葵……。」
長い髪をなびかせ、そこに立っていた。
「貴様ら、死肉を食らう八咫烏を信じろと申すか。ならば、その忠誠、示してみよ。」
「……いかほどに。」
「吉原に参れ!そして、鈴蘭を…………殺せ。」
動くのは、私腹を肥やした狸と……天を衝く烏。
「二人とも!!ちょっと、待って!!」
「早くしないと……っ、銀ちゃんも、みんな可哀想アル……。」
「新八くん、頑張って下さいっ!!」
全力で走っていた。会うべき人が、会わせなければいけない人がいた。
茂々の話を聞いて思い浮かんだのは、ただ一人だった。
「車、持ってくればよかったですね……。」
「何で走ってきたアルカ。運転出来るの、蒼汰しかいないアルヨ?」
走っているのは江戸の郊外。すでに夜は更けており、人の姿は無かった。
「……どうなるんでしょうか。」
「蒼汰さん?」
「正直、なんて話せばいいのか分かりません。どうすれば……」
「大丈夫アル!」
「神楽ちゃん?」
「銀ちゃんが大切に思ってる二人ネ。絶対に大丈夫ヨ!!」
一瞬、暗くなった空気が少し明るくなった。
──きっと、父さんが何とかしてくれる。
──やっと会えた。
……葵姉ちゃん。