なんてことを考えながら執筆するようになりました。
「どういうつもりだ、朧。」
刀を向けた二人に声を発したのは、天導衆のリーダーと思われる男。そして、
「このままの意味ですよ。賢いあなた方なら理解していただけるでしょう。」
それに応えたのは、朧ではない。
「貴様の手引きか……吉田松陽の娘、吉田葵。」
まっすぐに眼光を向ける葵であった。
「そちらにつくというのが、どのような意味を持つのかわかっての行為であるのだろうな。」
「さぁ……。どのような罰を与えになろうとしているのかは想像もつきませぬが、一つだけ言えることがありますよ。」
──シュンッ!!
「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」
突然、船の両サイド、葵と朧の少し後ろの将軍の真横から現れたのは、深く帽子をかぶった奈落が二人。気配もなく現れた奈落に、真選組と見廻組は、身を挺して守るため将軍を取り囲むように立った。
──ザシュッ!!!!
「それは、あなた方は我らに罰を下す前に、この世から消え去るということです。」
それは、『一瞬』。
たしかに前に立っていた葵と朧が、それぞれ真選組と見廻組の前に立ち、現れた奈落を切り捨てたのだ。
深緑の瞳が、天導衆に向けられる。
「あなた方は地上に降りてくるべきではなかった、
ここに降りてきた時点で、天を突く者たちが多数いることを考慮すべきでした。」
その声とともに茂々は手を前に突き出した。それを合図に、全ての警察組織が一斉に構える。
「ここは……侍の国。
あなた方が支配できるほど、小さな国ではない。」
全ての警察組織と奈落が衝突した。
「茂々……っ、貴様ぁぁ!!このような者と手を組んだのか!売国奴と罵られたわしを、この国から追放する気かぁぁ!!」
「叔父上!申したであろう。あなたと共に私も罰を受ける所存。
一国の主である将軍家が行うべきことは、権力にものを言わせ、自らの身を守ることではない。
その身を粉にして国のために尽くし、そして、命をかけて家臣を守ること。国を守るためという立前で、国を売り、国民を売るなど
主が行うべき行為ではござらんっ!!」
叫ぶ茂々に切りかかろうとする奈落。が、その刀が茂々に届くことはない。
「使えぬと切り捨てるのではない。使えぬ家臣などござらん。
その者を信じ使うのが、主であり、将軍である。」
「っ!!」
その奈落を切り捨てたのは、葵。決して、血がそよ姫に付くことがないよう、防ぐことも忘れない。片手で戦う葵に、そよ姫は大切に守られていた。
「葵っ。」
「お疲れ様です、将軍様。」
「っ!!」
将軍に笑顔を向けた。茂々の気が少し緩む。それほど、彼女の存在は、過ごした時間は、彼にとって忘れられぬものであった。
「まだ気を緩ます時ではございません。
そよ姫様をお願いしてもよろしいですか?」
「!」
それは、その目とその言葉は、合図。
彼女が、……本気で戦うという決意。
「葵。」
「……?」
「死んでらならぬ。」
「……ご命令ならば、もちろん。」
「いや、
友としての頼みだ。」
「!!」
「お前とは話したいことが、まだたくさんある。」
「そうですか。」
そよ姫を受け渡し、茂々の前に立つ。
「では、待っていたください。」
「!」
「私も、あなたに紹介したい人がいるんです。」
思い浮かぶのは、いつも葵に勝負を挑んできた、彼女のこの世で最も大切な者たち。
「みんなで、お喋りしましょう。」
「!!……あぁ。」
刀についた血を振り払い、敵に相対した。
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《銀時side》
「……っ、」
「目を覚ましたか。」
「!!」
反射的に緊張を最高まで引き上げる声。既に本能的な行為、だが、すぐにその緊張は解いた。
緊張するだけ無駄だと分かったから。
「……やべぇ状況みてぇだな。」
「目を覚ますのがもう少し遅ければ、貴様を敵の前に放り出そうとしていたところだ。」
「はぁ!?」
「……暴れるな。そして降りろ。」
……なっ!?担がれてたのかよ、俺っ!!
すぐさま降りた。……恥ずかしいな、おい。
「朧!」
「葵姉っ!!」
「銀時!?目を覚ましたんだ。」
既に大量の奈落を切り伏せてきたのか、葵姉の刀も着物も血だらけだった。だが、その中に葵姉自身の血は一つもなかった。
「銀時!」
「葵っ!!」
「ヅラ!?高杉!?」
やって来たヅラと高杉も血だらけだった。
「「……。」」
「……。」
葵姉以外の三人が睨み合う。……そりゃあ、そうだ。俺は色々と目の前で見ていたから理解したけど、二人はそうじゃねぇ。どっちかと言うと、まだ、葵姉を連れ去ったやつだという認識だ。
「お、おいっ、ヅラ!高杉!」
「分かっている。焦るな、銀時。」
一触即発の雰囲気が一転、ヅラと高杉は、そいつに背を向けて刀を構えた。
「葵だけじゃねぇ、てめぇまでもが、んな緊張感なくそこに立ってんのは、そいつが信頼出来るやつか、てめぇが腑抜けたのどっちかだろうぜ。」
「あぁ!?俺がいつ、腑抜けたって!?」
「例えの話だろうがっ!!いちいち突っかかってくんな!天パ!!!」
「はぁ!?天パ舐めんじゃねぇぞ、ごら!低杉のくせによォ!」
「あ゛ぁ!?」
「やめろ、二人とも。みっともない……」
「うっせぇ!!ヅラぁ!!!」
「ヅラじゃない!!桂だぁぁぁ!!!」
「三人とも、ちゃんと周りも見てね。」
それは、言い合ってても絶対に聞き逃さない声。
俺が、俺ら三人がずっと待っていた。
偽りじゃない、本物の……優しい声。
突き放されても、裏切られたと感じても、その手をどうしても離すことが出来なかった。
──ザシュッ!!!
俺らの背後から現れた二人の奈落を切り伏せて……、
五人が背中合わせで構えた。
「くくっ、生きてみるもんだぜ。まさか、あんたに背中を預けられる日が来るたぁなァ。」
「ちっ、なんでてめぇもいるんだよ。」
「貴様らだけでは、葵の手を煩わせるだけだ。」
「「あ゛ぁ゛!?」」
「はいはい、集中して。」
「葵姉!!どっちの味方だよ!!」
でかい声で罵りあっていたのもあって、見渡す限り奈落に囲まれていた。
葵がまとう空気が僅かに変わったのを察知して、全員が刀を構え直した。
「……ありがとう。」
「「「「!!!」」」」
全員が戸惑ったのもつかの間。
「行くよ。」
葵姉の合図で、全員が飛び出した。
「ありがとう」
その意味を聞いていれば。
「約束。」
その真意を探して当てていれば。
あんたの言葉の裏に隠された真実を見つけていれば、
「……、、、、、。」
「!」
その言葉を聞かずに済んだのか。