遅くなり申し訳ありません。たくさんのコメントありがとうございました!
葵ちゃんが、みなさんにたくさん愛されていることがわかり、すごく嬉しかったです。
みなさんに決めていただいた運命を、葵ちゃんは辿ります!!
fulluさん、大日小進さん、ノートンさん、セニアさん、遥奏音さん、Ture of Vampさん、ピロネン6さん、邪龍王さん、チミチャンガさん、わさび、さん、スコルとハティさん、まいまい2518さんありがとうございました!!
新しい運命、新しい感情
──ピッ、ピッ、ピッ
静かな部屋に、一定の音だけが響く。
──ガラッ
「!……今日も来てくれたんだ。」
「まだ……、起きてないか。」
「……うん。」
一定の音だけが響く静かな部屋にやって来たのは、桂だった。
「いいの?一応、追われてる身なんでしょ?」
「俺に構っていられるほど、暇じゃないらしいからな。
それに、いざとなればお前が捕まえればいいだろう、蒼汰。」
その静かな部屋にいたのは、蒼汰だった。
「僕に小太郎のこと捕まえるのなんて、無理に決まってるでしょ。」
そう言うと、蒼汰が視線を戻した。その先にいたのは、たくさんの管に繋がり、目を閉じたままの葵だった。
「蒼汰。少しお前も休め。」
「……大丈夫だよ。みんなに比べれば、僕なんて何もしてないからね。」
「そんな顔で言われても、説得力が皆無だ。」
蒼汰の目の下にははっきりとクマがあり、一つも休んでいないことは明らかだった。
「まだ処分が決まらんのか。」
「仕方ないよ。ここまで事が大きくなっちゃったんだから、最終的な決定は、将軍様がすると思う。」
「その将軍は、仕事がありすぎると。」
「定々公の処遇の決定、天導衆との交渉、虚の調査……。
やらなきゃいけない事が溜まってるんじゃない?僕らのところにも詳しいことは、入ってこないし、小太郎がここまで入ってこれちゃってるしね。」
「……まぁ、それ以外の理由もあるか。」
「土方副長に、ここで休んでろって命令されちゃってさ。」
葵が眠りについてから、既に二週間が経っていた。
一時的とはいえ、虚や天導衆を江戸から追い出したことに賞賛するものはたくさんいた。が、それは同時に、その全ての仕事が将軍である茂々に回ってくることを意味しており、政治期間は目まぐるしく動いていた。
「……晋助は、今日はいないんだ。」
「あぁ。先生と一緒に、将軍といるぞ。」
「ついこの間までなら、考えられないね。」
「高杉も、恩を売れるだけ売っておくつもりらしいぞ。」
「晋助らしいや。」
葵が介入した世界では、普通では回らない方向へ歯車が回っていた。それでも、それは、確かに葵が望んだ回り方だった。
彼女の大切な父・吉田松陽は死ぬことなく大切な門下や息子と暮らしていた。身体から虚の血は消え、代償として不死の力を失ったが、吉田松陽として生き始めることが出来た。
大切な弟・吉田蒼汰は、今は謹慎中という身であるが、既にその処遇は決まっているようなものだった。
もちろん、真選組副長補佐としての復帰。結果的に真選組を騙していたことになってしまったが、既に葵が将軍に事情を話していたのと、今回は直属の上司であった土方が、既にその事について調べて知っていたことが、復帰を早々に促すことに繋がった。
今は療養期間として、謹慎中のままにしているが。
桂と高杉も、虚を追い出すことに貢献したことと、今、現在、政府に協力的なこともあり攘夷時代のことも、不問という形で処理される予定になった。
結果的に天導衆から引き抜くことになった朧は、葵の約束通り将軍の護衛として、将軍のもとにいれることになった。
もちろん、以上のことは将軍が茂々になったことが、大きく関わっていたが、その将軍をそこまで押し上げたのも、言ってしまえば葵であった。
そしてもう一つ。
あの後、そよ姫と茂々の付き人であった爺やと、鈴蘭が出会えたのだという。
鈴蘭は亡くなってしまったが、すぐに爺やを送り出したため、葵の知る世界よりも長く二人が話すことが出来たことは、誰も知らない。
誰もが少しだけでも幸せに暮らしている世界。
全員が葵と関わり、そして、感謝してたくさんの人が葵の見舞いに来た。
そんな世界で、
「あやつは、まだ来んのか。」
「……うん。土方副長は会ってるって言ってたから、どこかに行ってるわけじゃないみたいだけど。」
「あんの、馬鹿は何を考えているんだ。」
そんな世界で、彼女が愛してると気づいた人物だけが、一度も顔を見せなかった。
「一体、何に責任を感じているんだ、銀時は。」
「……葵姉ちゃんが差し向けたとはいえ、銀兄は葵姉ちゃんを刺しちゃったから。
その傷も、全く関係ないわけじゃない。……そういうことかな。」
「そんなめんどくさいことを考えているのか、あいつは。」
そう言うと桂は、葵に近づいた。
「見舞いの品がまた増えたな。」
「昨日、見廻組の信女さんと、吉原の月詠さんが来たんだ。後、万事屋の二人も。」
「そうか。」
そう言うと桂は、葵の透き通った手を握った。
「葵殿。あやつをまた叱ってやってください。
俺たちの手綱を握ってるのは、やはりあなたです。」
「……。」
──ガラッ
「あら、小太郎ですか?」
「んだよ、てめぇも今日来たのか。」
「!」
扉を開けて現れたのは、大混乱に陥っている政府に最も尽力していると言っても過言ではない二人、松陽と高杉だった。
「蒼汰、これ頼むわ。」
「いつもありがとう、晋助。」
「……これ、お前が買ったのか。」
「んだよ、悪いか。」
「いや……。お前が買ってるところを想像すると……、っ」
「小太郎、それ言っちゃダメだよ。」
桂も、その発言を止める蒼汰も、お腹を抱えて笑い出した。
「あぁ?笑うんじゃねぇよ!」
「いやいや、きっと葵殿も笑っているぞ。
お前が花束を持ってくるとは、明日は槍が降るな。」
「大丈夫、大丈夫。僕も初めて持ってきた時そう思ったけど、降らなかったから。」
「そうか、それは良かった。」
「おい、てめぇら……っ、」
こめかみに血管を浮かび上がらせた高杉が、二人を睨んでいた。そして、そこから更に言い合いになる。
「……楽しそうですねぇ、葵。」
そんな光景を、松陽は葵のそばから見ていた。
「あなたにも見せてあげたいんですよ。
あなたを待っている人が、こんなにたくさんいることを感じてほしいんです。」
既に、棚に乗り切らなくなっているたくさんの見舞い品。
酢昆布、ドーナツ、マヨネーズ、タバスコ、バナナ……圧倒的に食べ物が多いが。
吊るされている千羽鶴は、将軍とそよ姫がたくさんの人にお願いして作ったものらしい。
高杉が持ってくる花も、たくさんの花瓶に飾られていた。
そして、その棚に松陽が立てかけたものは、いつか松陽が葵に渡したもの。
「あの言葉はあなたにとって、覚悟の決意だったんですね。」
『この刀は、この世で最も大切なものを守りたい時に使います。例え……自分の命を犠牲にしても。
“その人のために斬った時に、後悔しない”
そう思える瞬間にだけ、この刀を抜くことにします。』
葵がそう誓った通り、家を出てあちら側に着くまでは、決してその刀を抜かなかった。
そして、結果的に裏切った時からそれを使い始めた。
「流石ですね、葵は。」
“守る”というのは、何も戦闘においてだけの話ではない。彼らと戦うことで、彼女なりに守っていたのだ。
剣を向けることに後悔しない、と誓って。
「葵。
みんな待ってますよ。小太郎も、晋助も、銀時も蒼汰も。
そして私も。
あなたと色んなことを話したいんです。」
葵の手を握る松陽の手に、涙が落ちた。
「!!……あなたはっ、本当にっ、」
生まれて初めて泣いた。
虚の身体であった時には、決して生まれなかった“悲しい”という感情。
それが葵によって生み出されたのだった。