ある日、地球のサハラ砂漠に隕石が落下した
専門家はその隕石を調査する為に現地に赴いたが、その隕石を発見することは出来なかった
しかし、この隕石が落下したその日から地球上の各地でおかしな現象が起こり始めたのだった
◇
島村卯月はアイドルを目指す17歳の女の子である
アイドル養成所に通い、レッスンを受ける日々を送っていた
しかし、卯月の願いが天に届いたのか、ついに彼女のアイドルデビューが決まった
346プロダクションのシンデレラプロジェクトに欠員が三名出た為に参加することになったのだ
それからの卯月の毎日は大きな期待と少しの不安であっという間に過ぎていった
そんなある日、卯月は学校を終え、養成所に向かおうとしていた
「デビューに向けて、今日もレッスン頑張らないと!」
デビューが決まり、卯月はやる気満々の様だ
しかし、養成所に向かう途中、人混みに煽られ、あたふたしている小さな少女が目に入った
ぬいぐるみを抱えたその小さな少女に周りの大人は気付かない
「あっ!」
少女はとうとう転んでしまい、泣き出してしまった
すぐに卯月は駆け寄り、小さな少女を抱え、人混みから脱出した
「大丈夫?何処か怪我しちゃったかな?」
卯月は少女が何処か怪我をしていないか確認する
「んーんー、だいじょーぶ」
すんすんと鼻を鳴らしながら少女は卯月の質問に首を振った
「どうして一人でいたの?お母さんは?」
「ママ・・・いなくなちゃったの・・・ママァ~・・・」
今の少女に「母親」に関する単語はどうやら禁句だった様だ
「ああ~、泣かないで!私がお母さんを見つけるから!」
「・・・ホント・・・?」
「うん!本当だよ!だから、笑って!ぶい!」
卯月の満点の笑顔を見て、少女は涙を拭い、笑顔を浮かべた
「私は島村卯月っていいます。お名前は?」
「四ノ宮真希です!5歳です!」
「真希ちゃんだね。じゃあ、お母さんを探しに行こう!」
「うん!」
こうして、卯月は真希と共に真希の母を探す旅に出るのであった
◇
「お姉ちゃんアイドルさんなの?」
「うん。でも、まだテレビとかには出れてないんだけどね」
卯月は真希の寂しい気持ちを紛らわす為に雑談を交わしていた
「凄い凄い!お姉ちゃん、いつかテレビに出るの!?」
「うん。いつかきっと出るよ」
「じゃあ真希、応援するね!」
「ありがとう!真希ちゃん!」
先程までの涙は何処へやら、真希は満面の笑顔を浮かべていた
「でも、真希ちゃんはどうしてあそこにいたの?」
卯月は迷子になってしまった理由を真希に尋ねる
「う~ん・・・わかんない!さっきまでお店の中にいたのに、気が付いたらあそこにいたの!」
「そうなんだ・・・不思議だねぇ・・・」
少女の話を聞いて、卯月は本当に不思議に思う
真希は幼い見た目をしているが、ちゃんとした受け答えが出来るしっかりした所がある
そんな彼女がフラフラと歩き、気付いたら知らない場所にいたという状況になるだろうか?
『臨時ニュースです。また不可思議な事件が起こりました』
聞こえて来たのは街の大型スクリーンから聞こえてくるニュースだった
『今度は大型船が突如消え、数キロ離れた陸地で発見されました』
最近、この様な常識では考えられない不可思議な事件が多発している
卯月は思考を真希がさっき話した事に戻す
真希がさっきまでいたというお店は真希を見つけた場所からは距離がある
それは、小さな彼女が一人で歩くには無理がある距離だった
「もしかして・・・」
「どうしたの?お姉ちゃん?」
「・・・ううん、何でもないよ」
真希が不思議そうに自分の顔を見ている事に気付き、卯月は笑う
「さあ、もうちょっとで着くからね」
「うん!」
少女の元気な返事を聞き、前を向いた卯月だったが・・・
カーーーン
「へっ?」
鐘の音の様な音が鳴り響くのを耳にした
そして、次の瞬間――
「キシャアアアアアア!!!!」
聞いたこともない咆哮を付近の人々みんなが耳にしたのだった
◇
その頃、別の宇宙では――
「ん?」
一人の巨人が左手首にあるブレスレットが輝いた事に気が付いていた
彼の持つブレスレットは宇宙の神とも呼ばれている存在に授かった物だ
つまり、何かしら意味があるという事である
「この光・・・確か、アナザースペースに初めて行った時に見た・・・」
ブレスレットの輝きは一筋の光となり、時空の扉を開く
「誰だか知らないが、俺を呼んでいるようだな」
巨人はブレスレットを鎧へと変え、装着する
「行ってみるか!シュアッ!」
巨人はブレスレットが開いた時空の扉に飛び込むのだった
◇
東京の街は人々の悲鳴で溢れている
その原因は突如現れた巨大生物だ
巨大生物の名称は『宇宙斬鉄怪獣 ディノゾール』
しかし、そんな事を気にしている暇は逃げ惑う人々には無い
少しでもディノゾールから遠ざかろうとする人々の波の中に、卯月と真希の姿はあった
「あっ!」
しかし、小さな真希がその波に耐えられるはずもなく、案の定転んでしまう
「大丈夫!?」
卯月はすぐに真希を抱き起こし、ここにいてはいけないと考え、人の波から逃れる
「お姉ちゃん・・・怖いよぉ・・・」
聞こえてくる爆発音とディノゾールの咆哮に真希は怯える
「大丈夫・・・大丈夫だからね・・・」
卯月は自分も震えながら真希を抱き締める
どうすればいいのか、どうすれば助かるのか、卯月にはわからない
とにかく、あの怪物から遠く離れた場所まで逃げなければならない
自分一人なら簡単に逃げられるという考えが頭を過ぎったが、すぐにそれを消し去る
今、自分の腕の中で震えている小さな少女を置いて逃げるなんて自分には出来ない
そんな度胸を自分は持ち合わせていないし、持ちたくもない
「ウルトラマン・・・早く来て・・・」
『ウルトラマン』
真希が小さな声を振り絞って呼んだ空想のヒーロー
確かに、今のこの状況は昔見たウルトラマンみたいだと卯月は思う
しかし、『ウルトラマン』は空想の産物、17歳の卯月はその存在を信じてはいない
今、この娘を守れるのは自分しかいない
そう考えた卯月は真希を抱え、そのまま人の流れに従って走る
これが所謂、火事場の馬鹿力というものなのかと自分の力に卯月は驚きながら走る
「こちらです!こちらに避難して下さい!慌てないで!!」
警察官が行っている避難誘導に従い、力を振り絞り走る
ディノゾールは今も鋭い鞭状舌『断層スクープテイザー』を目に見えないほどの速さで振り回して建物を切断
外殻の背部や体側から流体焼夷弾『融合ハイドロプロパルサー』を大量に発射して、破壊の限りを尽くしている
今、ディノゾールを邪魔するモノは何も無いのだ
ディノゾールは咆哮を上げながら断層スクープテイザーを振るう
それは逃げる卯月達のすぐそばにあるビルを切断する
切断されたビルの一部は瓦礫へと変わり、卯月達の上に降り注いだ
「っ!!」
卯月は頭上を見上げ、咄嗟に抱えていた真希を目に付いた少し離れた場所にいる人に向かって投げた
次の瞬間、轟音と共に瓦礫が地面と衝突し、土煙が舞い上がる
「お嬢ちゃん!大丈夫かい!?」
卯月が投げた少女は倒れた男性の上にいた
土煙が止み、自分に飛んできたモノを見て男性は驚き、声を掛ける
「お姉ちゃん・・・何処・・・?」
真希は少し頭に怪我をしていたが、卯月の姿を探していた
卯月が先程までいた場所にはビルの大きな瓦礫があるだけだった
◇
あれ・・・?
私、死んじゃった・・・?
まだ、アイドルになってないのに・・・
『お前の女の子を助けたいって想い、感動したぜ』
え?誰ですか?
『あとは俺に任せな!』
明るい・・・光・・・?
◇
その日突然、空想の産物と思われていた怪獣が現実に現れた
人々は恐怖し、逃げ惑う事しか出来なかった
誰もがテレビに登場する『銀色の巨人』の出現を強く願った
『最後まで諦めなければ、きっと来てくれる』
最後まで諦めない、生きる事を諦めない、希望を捨てない
その想いと願いは一つの光をこの宇宙に呼んだ
そして、一人の少女の勇気が最後の鍵となり『彼』は姿を現す
空から降り注ぐ光を、逃げる事も忘れて人々は見つめていた
「まさか・・・本当に・・・?」
誰もがその光を見て、そう考えた
怪獣と同じく、その存在もまた空想の産物だと思われていた
しかし、今この瞬間、その考えは覆される
大きな地響きと共に、その巨大な姿を現した『彼』は暴れるディノゾールの前に立ちはだかった
誰も彼の名前は知らない
しかし、彼がどういう存在なのかは誰もが知っていた
光と共に現れた彼を人々はこう呼ぶ
『ウルトラマン』と――
◇
この宇宙の地球に降り立ったウルトラマン
彼の名は『ゼロ』、M78星雲光の国の若き最強戦士である
「ディノゾール・・・最後に戦ったのは渡りの進行方向を変えさせた時だったか?」
ゼロを見たディノゾールは咆哮を上げ、断層スクープテイザーを振るう
「おっと」
しかし、何とゼロはそれを片手で掴んでしまった
「この舌が厄介なんだよな。だが!」
ゼロの頭部にある宇宙ブーメラン『ゼロスラッガー』が頭部から勝手に外れ、宙を舞う
そして、ゼロが掴んでいた断層スクープテイザーを口元から切断してしまった
「切っちまえばどうって事ねぇな!」
切断した断層スクープテイザーを投げ捨て、ゼロはディノゾールに向かって走る
「ウラァ!!」
その途中、宙を舞っていたゼロスラッガーを手に取り、そのままディノゾールに切り掛った
「フッ!ハッ!デリャッ!!」
ディノゾールが反撃する暇を与えず、攻撃を加え、片腕を切り落とす
「おまけだ!」
距離を取りながら投げられたゼロスラッガーはもう片方の腕を切り落とす
完全に戦意を失ったディノゾールは逃げる為に空に舞い上がる
ゼロの追撃を防ぐために背部から融合ハイドロプロパルサーを発射する
「はっ!」
ゼロは地上に被害が出ないようにウルトラゼロディフェンサーで巨大な光のバリアーを作り出す
「逃がすかよぉ!!」
そして、左腕を横に伸ばした後、腕をL字に組み、強力な光線『ワイドゼロショット』を発射した
それを背中に受けたディノゾールは大気圏まで飛んでいき、そのまま爆発した
「ざっとこんなもんだぜ」
現れてから一分にも満たない時間でディノゾールを倒したゼロに、街から歓声が上がった
だが、その歓声を聞いてもゼロの気分は暗かった
「俺がもっと早く来ていれば・・・」
破壊し尽くされた街を見て、ゼロは来るのが遅かったと後悔する
ゼロは左腕に着けている『ウルティメイトブレス』から青い光を引き出す
「ルナミラクルゼロ」
その青い光に包まれ、ハープの様な音と共にゼロの姿は全身が青い『ルナミラクルゼロ』に変わった
「ミラクル・リアライズ」
ゼロは両方の手のひらから破壊された建物などを一瞬で復元する光線を放った
瞬く間に東京の街はディノゾールに破壊される前に戻った
それを見て、自分に出来るのはここまでだとゼロは判断し、姿を消すのだった
◇
「お姉ちゃん!お姉ちゃん起きて!お姉ちゃん!」
自分を呼ぶ声と、小さな揺れに卯月は目を覚ます
「・・・あれ?私・・・どうして・・・」
卯月は体を起こし、何が起こったのかを思い出そうとする
「お姉ちゃん!おはよう!」
そして、自分に抱き着いて来た真希を見て全てを思い出した
「奇跡だ!あの状況で、かすり傷一つ無いなんて!」
「私、助かったんだ・・・」
瓦礫の下敷きになったはずなのに、傷一つ無い自分の体を見て、卯月は不思議に思った
「・・・あっ!あ、あの、怪獣は!?」
卯月はディノゾールの存在を思い出し、周りの人に尋ねる
「ああ、それならウルトラマンが倒してくれたよ」
「へ?ウルトラマン?」
「うん!すっごくカッコよかったんだよ!」
卯月は話について行けなかった
自分が気を失っている間に一体何が起こったというのか・・・
『それは俺が後で説明してやるよ』
「え?今何か言いましたか?」
「いや?何も言ってないけど?」
突然聞こえた声に卯月は驚き、近くにいた男性に聞いてみるも、首を傾げられてしまう
「今の声・・・」
「お姉ちゃん!ママを探そう!」
「え?・・・ああ、うん。そうだね!怪獣もいなくなったみたいだし・・・」
卯月はディノゾールのせいで中断されていた真希の母親探しを再開しようとしたが・・・
「真希ィ!!」
「あっ!ママー!」
母親らしき女性が警官と一緒にこちらに走って来ていた
「真希!探したわよ!もう!心配かけて!!」
母親は真希を抱き締め、泣きながら叱っていた
「このお姉ちゃん助けてくれたの!」
「本当に、ありがとうございます!何とお礼を言ったら良いか・・・」
真希の母親は深々と卯月に頭を下げ、感謝の言葉を述べる
「い、いえ!気にしないで下さい!真希ちゃん、お母さんに会えてよかったね!」
深々と頭を下げられた卯月は恐縮してしまい、慌てて真希に話を振った
「うん!お姉ちゃん!ありがとう!」
真希の笑顔を見て、本当によかったと思う卯月だった
◇
「お姉ちゃん!ばいばーい!」
「ばいばーい!」
元気に手を振ってさよならを言う真希に卯月も手を振り返す
真希の母親はもう一度頭を下げると、真希の手を引いて帰って行った
「はぁ・・・本当によかった・・・」
『そうだな』
「また声が!・・・あれ?何だろう?これ?」
また聞こえた声に驚き、両耳に手を当てた時、卯月は左腕に知らないブレスレットがある事に気付いた
『それは俺とお前が一つになった証だ』
「一つになった証?あの、あなたは誰なんですか?」
聞こえてくる声に何者なのかを卯月は尋ねる
『よく聞け、卯月。俺はゼロ!ウルトラマンゼロだ!』
「う、ウルトラマン!?」
思わず大きな声を出してしまった卯月に、周りの人が注目する
それに気付いた卯月は、すみませんと一言謝り、人が少ない方に向かう
「ど、どうして、ウルトラマンさんが――」
『ゼロでいいぜ』
「ぜ、ゼロさんが私の中に?」
卯月はなぜ自分の中にゼロがいるのか小さな声で尋ねる
『子供を助けたお前の勇気、感動したぜ。これから俺達は、一心同体だ!』
「え、えええええええええ!?」
こうして、卯月はウルトラマンゼロと一心同体となったのだった