現実の世界に空想の産物であるはずの怪獣とウルトラマンが現れてから3日が過ぎた
テレビでは連日、あの日の出来事が報道され、ネットではお祭り騒ぎだった
『あの怪獣の名前はディノゾールだ!』
『あの見た事もないウルトラマンの名前は何だ?』
『あのウルトラマン、ちょっと強すぎない?』
『あのウルトラマンが使ってるのはセブンの技じゃないか?』
『あのウルトラマンは本当に味方なのか?』
『街を直してくれたんだから味方に決まってるだろボケ!』
『誰かが変身しているのならば、その人物を保護しなくてはならない』
テレビでは偉そうな評論家が何度も討論を繰り広げているが、結局確かな事は何もわからない仕舞いで終了する
街に設置された監視カメラが捉えたゼロとディノゾールの戦いはテレビで放映され、ネットの動画サイトにもすぐにアップされた
動画の再生数は1日で100万再生を突破し、あまりのアクセス数でサーバーがダウンしてしまうという事態になってしまっていた
さて、世間はウルトラマンの話題でお祭り騒ぎ中、当の本人達はというと――
◇
ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ
『おい、朝だぞ、卯月』
ピピピピ ピピピピ ピピピッ!
「・・・う~ん」
寝惚け眼を擦りながら卯月は目覚まし時計を止める
「・・・あと5ふ~ん・・・」
『今日から学校が再開するんだろ?起きないとマズイんじゃないのか?』
ディノゾールが現れてから休校となっていた学校が今日から再開されるのだ
「・・・ぐぅぅ・・・」
布団の誘惑に負け、卯月は二度寝に突入する
『おい、卯月!起きろって!おい!寝るんじゃねぇ!』
「ぐぅぅ・・・」
ゼロが懸命に呼び掛けるが、卯月は起きる気配はなかった
この様に世間を騒がすウルトラマンは女子高生と一体化し、馴染んでいた
◇
(ゼロさん!どうして起こしてくれなかったんですかぁ!?)
『俺は何度も起こした!お前が起きなかったんだ!』
卯月は泣きそうになりながら通学路を走っていた
理由は当然、二度寝によって遅刻寸前の時間になってしまった事である
(もう間に合いませんよ~!)
『・・・仕方ない・・・卯月!俺に代われ!』
(え?代われって?)
ゼロの言葉に、卯月は足を止める
『俺が卯月の体を動かす!そうすれば遅刻は回避出来るはずだ!』
(本当ですか!?じゃあ、お願いします!ゼロさん!)
そう会話したあと、卯月は目を閉じる
そして、次に卯月が目を開けた時、彼女の目付きは鋭くなっていた
「よし!行くぜぇえええ!!!!」
『はいぃいいいいい!!!!』
そして、目にも止まらない速さで学校に向かって、言葉通り一直線に走り出した
信号があれば飛び越え、建物があれば飛び越え、川があれば飛び越え、何があっても飛び越えて行った
そして、僅か数分で学校に到着し、無事遅刻を回避したのだった
目付きが鋭い美少女が全てを飛び越えて行く都市伝説が出来たのはまた別の話――
◇
放課後――
『この後は美城プロダクションに行くんだったか?』
(はい!凛ちゃんと待ち合わせしてて、一緒に行くんです!)
学校を出たゼロと卯月はこれからの予定を確認していた
『その『渋谷凛』ってどんな奴なんだ?』
(とっても綺麗でクールな感じの女の子ですよ!そして、お家何と!お花屋さんです!)
『地球では家が花屋だと凄いのか?』
(女の子の将来の夢トップ3に入ります!)
『そりゃ凄いな。渋谷凛か、会うのが楽しみだぜ』
そんなたわいも無い会話をしながら二人は凛との待ち合わせ場所に向かった
待ち合わせ場所に二人が到着すると、既に一人の少女がそこで卯月を待っていた
「あっ!凛ちゃ~ん!」
卯月は少女『渋谷凛』の姿を見つけると、笑顔で彼女に駆け寄った
「こんにちは!凛ちゃん!一週間ぶりです!」
「うん、一週間ぶりだね、卯月。何ともなかった?」
「何ともって?」
「あの事件だよ。怪獣とウルトラマンが出た奴、知ってるでしょ?」
「ああ~・・・そう、ですね・・・」
凛の言葉に、卯月は自然と左腕にあるウルティメイトブレスに目が行く
あの日から3日が過ぎたが、改めて濃すぎる1日だったと卯月は思う
迷子の女の子の母親を探して、怪獣が現れて、自分は瓦礫の下敷きになって死んで、ウルトラマンと一体化して怪獣を倒した
これまでの人生が霞むくらい、濃厚な1日だった
「・・・?どうしたの、卯月?変わったブレスレットだね。買ったの?」
ブレスレットを見てボーッとしている卯月に凛は尋ねる
「へっ?ああ、はい!凄く綺麗だったから買っちゃいました!えへへ」
惚けていた卯月は凛の声にハッとし、笑って誤魔化した
「えっと、あの日の事ですよね?はい、何ともありませんでした。ゼロさんが怪獣をやっつけてくれましたから」
卯月は話題を元に戻し、何もなかったと凛に伝える
「ゼロ?あのウルトラマンの名前ってゼロっていうの?」
「え?・・・あ"っ、えっと・・・名前が決まってなかったみたいなんで、私が付けてみたんです!」
早速ボロが出た嘘が苦手な島村卯月さんである
「へ~、そうなんだ。ゼロか・・・いいんじゃない?かっこいいと思うよ」
「そ、そうですよね!かっこいいですよね!あは、あははは」
おかしな卯月に、凛は首を傾げるだけだった
『照れるな』
そして、一人でかっこいいと言われて照れているゼロだった
◇
待ち合わせ場所から移動し、ついに卯月と凛は美城プロダクションにやって来た
「うわぁ~!まるでお城みたいですね~!」
「流石は大手って感じだね~」
卯月と凛はお城の様な外観をしている事務所に関心しながら歩みを進めていく
「へ~、中もこんな感じなんだ」
『卯月が言った通り、城を意識した作りになってるんだな』
内装を見て、凛とゼロはまた関心する
ちなみに、ゼロの声は凛には聞こえていない
ゼロの声が聞こえているのは、卯月だけである
「・・・緊張しますね」
「うん・・・」
ついに、事務所にやって来たという事を認識し、卯月と凛は緊張し始める
『大丈夫だぞ、卯月。俺が文字通りついてるからな』
(はい!頼りにしてます!)
ゼロの励ましを聞いて、卯月は少し緊張が和らいだのだった
「シャンデリアなんて今時みないよね~」
「うん!・・・ん?」
突然、ピンクのパーカーを着た少女が自然な流れで隣に立ち、自然に会話に入り込んできた
「あっ!お疲れ様でーす!新人アイドルの『本田未央』です!今日からお世話になりまーす!」
そして、自然な流れで近くを歩いていた社員に挨拶をし行った
「・・・知り合い?」
凛の問いに、卯月は首を左右に振るのだった
『忙しない奴だな』
手当たり次第に挨拶をしにいく未央を見て、ゼロは呟くのだった
卯月と凛は受付に向かい、手続きを行う
そして、パンフレットと来客用のスタッフカードを受け取り、新館30階へと向かった
その途中、渡り廊下から見えた会社の敷地の広さに驚きながら新館に移動し、エレベーターに乗り込む
「何階かね?」
一緒に乗り込んだ初老の男性に何階か尋ねられる
「えっと・・・」
「30階です」
「あっ・・・」
卯月が迷っている間に凛が答えてしまった
『先を越されたな』
(はうぅ・・・一つお姉さんなのにぃ・・・)
卯月は心の中で項垂れてしまった
「うわぁ!?ちょちょちょっ!うがぁ!?」
そこに、扉が閉まるのを見て慌てた未央が駆け込んできた
しかし、結局間に合わず、エレベーターの扉に挟まれたのだった
「これは失礼!」
「いやぁ、全然平気です!あはは・・・」
「「・・・」」
そんな未央を見て、卯月と凛は必死に笑うのを堪えるのだった
『グレンの奴と同じ雰囲気を感じる・・・』
ゼロは未央に仲間の一人と同じ空気を感じていた
◇
30階に到着し、パンフレットを確認しながら目的地である部屋の前までやって来た
『Cinderella Project Room』
「ここですね」
部屋の名前を確認し、ここで間違いないと判断した卯月はノックし、ドアノブを捻った
「失礼しまーす」
中に入ると、手前のドアが開き、厳つい見た目をした男が姿を現した
「おはようございます、島村さん、渋谷さん」
「おはようございます!プロデューサーさん!」
「おはよう。プロデューサー」
彼は『武内俊介』、シンデレラプロジェクトのプロデューサーである
「少し待って貰えますか、もうすぐ――」
「失礼しまーす!」
「来られたようですね」
武内の言葉に、卯月と凛は振り返る
「あっ!さっきの!」
「えへへ」
そこにいたのは22階で降りたはずの未央と緑色の制服を着た事務員だった
「こちら、本プロジェクトの最後のメンバー『本田未央』さんです」
「最後のメンバー!」
「本田未央!高校一年!よろしくね!」
「島村卯月です!よろしくお願いします!」
「渋谷凛、まあ、よろしくね」
自己紹介した未央に釣られて、卯月と凛も自己紹介をする
「未央ちゃんは一次オーディションでは惜しくも不合格でしたが、欠員補充の二次オーディションで合格となりました。相当な幸運をお持ちですね」
「いや~、アイドルの神様に目を付けられちゃったみたいで~」
事務員の話を聞いて、未央は照れた様に頭を掻いた
「あの、プロデューサーさん。こちらの方は?」
「申し遅れました、『千川ちひろ』と申します。このプロジェクトを色々な面からサポートしますので、よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!」」」
ニコニコと笑って挨拶をしてくれたちひろに三人は頭を下げて、そう言った
「では、私からささやかながら・・・」
そう言って、ちひろは持っていた鞄から缶ジュースを三本取り出して、卯月達に渡した
「エナジードリンク?」
「頑張ってね!」
「「「はい!(頑張ります!)(ありがとうございます!)」」」
そして、ちひろは卯月達にエールを送って、プロジェクトルームを出て行った
「では、早速ですが、皆さんにはこれから今の皆さんの実力を把握する為のレッスンを受けていただきます」
そう言って、武内はレッスンスタジオまでの道順をプリントアウトした紙を卯月に渡す
「メンバーとの顔合わせは、その後ほどとなります。何かご質問はありますか?」
「レッスンが終わったらどうしたらいいんでしょうか?」
「では、六時に本館のエントランスに集合して下さい。そこで待っていますので」
「わかりました!ありがとうございます!」
「では、レッスンスタジオに移動して下さい」
武内に促され、卯月達はプロジェクトルームを後にした
◇
~ロッカールーム~
「凛ちゃんはダンス初めてですよね?」
「うん」
「本田さんは?」
「未央でいいよ」
「じゃあ、未央ちゃん」
「にひひ、友達と踊ったりしてたけど、ちゃんと指導受けるのは初めてかな~」
「なるほどぉ~。私は養成所に通ってましたからわからない時は聞いて下さいね!」
「うお~、先輩じゃ~ん」
「えへへ」
『・・・ああ、卯月、言い忘れてた事があった』
(へ?何ですか?ゼロさん)
『実はな・・・』
◇
~レッスンスタジオ~
「うえぇええ!?」
『だから言ったのに・・・』
「卯月!?」
「うわぁ~、痛そ~」
卯月はゼロと融合した事により、変身しなくてもある程度の超人的な力を発揮出来るようになっている
その片鱗は今朝の遅刻回避の為の全力ダッシュで見せている
だが、全力で体を動かすなら良いが、ダンスなど繊細な動きが求められる運動は難しいのだ
わかりやすく言うと、今の卯月はパワータイプでメルバに挑んでいるのだ
「島村、派手に転んだな。大丈夫か?」
「は、はい!大丈夫です!」
しかし、トレーナーがやっている振付は卯月が今まで養成所で何度も踊ってきた物だった
(普通にやったら体が凄く動いちゃう。なら、力を抜いて軽く、軽く・・・)
そして、数分後には――
「1、2、3、4!5、6、7、8!」
華麗なステップを踏み――
「1、2、3、4!はい、ターン!」
綺麗にターンを決める卯月の姿がレッスンスタジオにはあった
『やるなぁ、卯月!』
(はい!これは何度も練習した振付ですから!)
決めポーズをバッチリ決め、卯月は輝いていた
◇
「凄かったよ、卯月」
「うん!流石、養成所に通ってただけの事はあるね!」
「えへへへ、そんなに褒められると照れちゃいます」
凛と未央に褒められ、卯月は照れながら頭を掻く
「ダンスって難しいんだね。でも、楽しかった」
「振付が出来るようになると、もっと楽しいんですよ?これからも一緒に頑張りましょう!」
「うん」
卯月が笑顔でそう言うと、凛も笑顔で頷いた
「ごくごくごく、ぷはぁ~!・・・何か元気出てきた!」
ちひろから貰ったエナジードリンクを飲んだ未央は元気を取り戻す
「よし!冒険しよう!」
「「冒険?」」
エナジードリンクを飲み終えた未央は立ち上がり、卯月と凛に言った
「そう!さっきチラッと見たんだけど、エステルームがあるみたなんだよ!エステルームがある会社なんて聞いた事ある!?」
「ないかな」「ありません!」
「だったらさ、こんなにおっきなビルなんだよ?他にも何かあるよきっと!」
「そうですね!何だか面白そうです!」
未央の話を聞いて、卯月は立ち上がる
「ほら、行こう!」
「え、ちょ、ちょっと!」
「行きましょ~う!」
戸惑う凛の手を引いて、未央は歩き出し、卯月も笑顔でそれに続いた
『やれやれ、さっきまで疲れてたんじゃないのか?』
そんな三人を見て、ゼロは呆れながらも笑っていた
◇
楽しい時間はあっという間に過ぎて行き、あと40分程で武内との約束の時間になろうとしていた
卯月達は社内にあるカフェで集合時間まで時間を潰していた
「夏樹さんのギター、素敵でしたね~」
卯月は先ほどベンチでギターを弾いていた『木村夏樹』の事を思い出しながら言う
「いやいやいや!しまむーも凄かったじゃん!弾き語り!」
「た、たまたまですよ!たまたま!・・・しまむー?」
呼び慣れていない呼び方で呼ばれたなと思い、卯月は最後に小さく呟いた
先程、夏樹のギターを借りて、卯月は弾き語りをしたのだ
その弾き語りは到底素人とは思えない上手さだったのだ
「まぐれであそこまで弾けないでしょ。卯月はギターやってたの?」
「やってませんけど・・・」
(ゼロさん、どうしましょう?)
『少し調子に乗り過ぎたみたいだな・・・すまん・・・』
会話からわかるように、弾き語りをしていたのは卯月の体を借りたゼロだった
演奏を聞いたゼロが「俺もやりたい」と卯月にギターを借りるように頼んだ結果がこれである
「あの曲何て曲だっけ?どっかで聞いた事あるんだけど・・・う~む、思い出せない」
未央は卯月がギターで弾いた曲を聞いた事があったが、曲名と何処で聞いたのかを思い出せない
『あれはウルトラマンダイナこと『アスカ・シン』に教えて貰った曲だ。この世界にダイナがあるならそれ関連じゃないか?』
「未央ちゃん、あれはウルトラマンダイナと関係のある曲ですよ!」
「ああ!そうだ!ウルトラマンダイナのエンディングテーマだ!スッキリした~」
やっと曲に関する事柄を思い出せた未央は憑き物が落ちた表情を浮かべる
「未央ちゃんはウルトラマンに詳しいんですか?」
「私、兄弟がいるから一緒に見てたんだよね。子供向け番組だと思って侮っちゃダメだよ。そういう人程、ド嵌まりする代物だからね、ウルトラマンは」
拳を握り、未央はウルトラマンが如何に素晴らしいか熱弁する
「でも、まさか本当にウルトラマンが現実に現れちゃうなんてなぁ~。会って話してみたいよ~」
「女子でも嵌る物なんだ、ウルトラマンって」
未央の話を聞いて、凛は感心した様に言った
「いらっしゃいませ~、346カフェへようこそ~。メニューをどうぞ!」
そこに店員さんがメニューを持って現れた
その店員さんを見て、未央と卯月は驚く
「・・・ここって、メイド喫茶?」
「そ、そうかもしれません」
その店員はメイド服を着ていたのだ
「ふっふっふ~、今日は訳あって臨時でバイトしてますが、その正体は!」
『その正体は!?』
「きゅぴ~ん!ウサミンパワーでメルヘンチェーンジ!ウサミン星からやって来た、歌って踊れる声優アイドル!ウサミンこと!安部菜々で~す!キャハっ!」
「「「・・・」」」
『おぉ~』
ゼロだけが感心した様に拍手していた
◇
30分後、卯月達は武内との約束の時間に遅れる事無く、集合場所に到着していた
10分前行動は大事だというゼロからの助言に従った結果である
まあ、ゼロはよく遅れて登場するが、それはまた別の話
三人は武内に連れられ、シンデレラプロジェクトのメンバーとの顔合わせと初めての仕事をする為に、撮影スタジオまで移動する
そこで、撮影の準備を行っている11人の少女達と卯月達は出会った
おしゃべり大好きチャレンジャー『赤城みりあ』
姉に憧れカリスマJCを目指す『城ヶ崎莉嘉』
絶対自分を曲げないウーマン『前川みく』
個性爆発、ハピハピパワー全開『諸星きらり』
メンバーでは一番年上の大学生『新田美波』
ロシア人と日本人のハーフ『アナスタシア』
美味しいから大丈夫だよ『三村かな子』
ロックって一体何なんだ『多田李衣菜』
クローバー探して三時間『緒方智絵里』
漆黒の堕天使『神崎蘭子』
不労所得、狙ってます『双葉杏』
『よくもまあ、個性的な娘を集めたもんだな~』
ゼロは個性的なメンバーを見て、感心した様に言う
「以上、14名がシンデレラプロジェクトのメンバーになります」
全員の自己紹介が終わると、武内がそう言った
「じゃあ!これでいよいよ!」
「はい、シンデレラプロジェクトついに始動です」
その言葉に、待ちに待ったメンバー達は歓声をあげる
「それではみなさん、これから宣材写真の撮影を行っていただきます。リラックスして、普段通りでお願いします」
『はい!』
武内の指示に、全員が良い返事を返した
◇
撮影は問題なく進み、無事に終了した
今は莉嘉の提案で全員で集合写真を撮ろうとしていた
『卯月!卯月!このポーズで撮ろうぜ!』
(ええ?こうですか?)
ゼロは卯月にピースではなく、フィニッシュのポーズを取らせていた
そして、全ての撮影が終了し、メンバーは荷物を纏めてプロジェクトルームに戻ろうとしていた
カーーーン
その時、卯月は聞き覚えのある鐘の音の様な音を聞いた
周りでは「何?今の音?」とメンバーが会話をしているが卯月は
「すみません!私、今日はこれで!」
「え?卯月?」
そう言って、手早く荷物を纏めて撮影スタジオを出ようとした
「島村さん?どうかされましたか?」
そこで、撮影スタジオにメンバーを呼びに戻って来た武内と鉢合わせた
「あっ、プロデューサーさん!あの、私!ちょっと用事を思い出して!今日は失礼します!!」
「島村さん!?島村さん!」
そう言って、卯月は武内の横を通り抜けて行った
「しまむー、どうしたんだろ?」
「さあ?」
飛び出して行った卯月を不思議そうに見つめる凛と未央
他のメンバー何だ何だと凛と未央に話し掛けていく
その時、卯月がいなくなった事を見計らった様に、撮影スタジオに招かれざる者が現れた
「フォッフォッフォッフォッフォッ」
怪奇音と共に、撮影スタジオに笑い声かの様な声が響き渡る
◇
『卯月!とにかく会社を出るんだ!外から妙な電磁波を感じる!』
(はい!)
ゼロの指示に従い、卯月は会社の外に飛び出し、空を見上げる
「あ、あれ!?UFO!?」
卯月の視線の先には、大きな円盤が浮かんでいた
「何でみんな普通にして?」
卯月は周りを見て、騒ぎになっていない事を疑問に思う
『恐らく、普通の人間達には見えていないんだろう』
(私はゼロさんと融合してるから見えるんですか!)
『そういう事だ』
円盤は卯月から逃げる様に移動を開始する
『追うぞ!卯月!目的が何なのか確かめるんだ!』
(はい!)
卯月は円盤を追って走り出した
しかし、1時間の追いかけっこの末、円盤は忽然と姿を消してしまった
◇
22:02――
「・・・やっぱり繋がらない、忙しいのかなぁ・・・」
円盤を見失った卯月は家に帰り、今日の事を謝ろうと武内に電話をしていた
しかし、一向に繋がらなかった
会議中かと思い、時間を置いて電話をしているが、もう十回はかけている
「も、もしかして、途中で飛び出したから怒って?」
最悪のシナリオを想像してしまう卯月
『怒ってるからって電話を無視するか?武内はそんな男には見えなかったぞ』
「そ、そうですかね~」
ゼロの励ましにも、安心できない卯月だった
『それより、俺が気になるのはあの円盤だ。一体何が目的だったんだ・・・』
「そうですね、途中で消えちゃいました」
『いなくなったならそれで良いんだが、何処かに潜んでるとなると――』
「卯月~!ちょっと聞きたいことがあるんだけど~!」
その時、下の階から卯月の母親の呼ぶ声が聞こえた
「な、なに~?ママ~」
卯月は二階から降りてリビングに向かう
「卯月、あなた今日、一人で帰って来たのよね?」
「う、うん。そうだよ」
「今ね、凛ちゃんのお家から電話があったんだけど、まだ帰ってないらしいの」
「・・・え?」
母親の言葉に、卯月は背筋が凍った
「芸能界に入ったんだから遅くなるのは覚悟してたけど、何の連絡も無いらしくて。それで心配して家にかけて来たらしいんだけど・・・」
「私は帰って来てる」
「そうなの。だから、凛ちゃんのお母さん、凄く心配してて・・・」
卯月の母親も不安気な表情を浮かべている
卯月は二階に駆け上がり、机に置いていた携帯電話を取り、凛に電話をかける
『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、 電源が入っていないため、かかりません』
しかし、凛は電話に出なかった
「なら、未央ちゃんに!」
『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、 電源が入っていないため、かかりません』
「・・・出ない」
未央も電話に出なかった
「他のみんなは!?」
他のシンデレラプロジェクトのメンバーにかけても、電話は繋がらなかった
「ぷ、プロデューサーさん!」
『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、 電源が入っていないため、かかりません』
そして、縋る思いで武内に電話をかけたが、先程からと同じで、電話には出なかった
卯月が我慢出来たのはそこまで、パジャマを脱ぎ捨て、タンスから着替えを取り出し、着替える
「ママ!私、事務所に行ってくる!」
そして、卯月は家を飛び出した
「え!?ちょっと、卯月!?」
卯月の声に卯月の母親は視線を向けたが、そこにはもう卯月はいなかった
家を飛び出した卯月は、目にも止まらない速さで走る
道路を飛び越え、家を飛び越え、川を飛び越え、ビルの屋上まで飛び上がる
『卯月!夕方のあれは俺達を事務所から遠ざける為の囮だったんだ!』
ゼロは騙された事に気付き、悔しがりながら言う
「じゃあ、凛ちゃん達は!?」
『わからない。だが、ピンチなのは確かだ!』
ビルの屋上から屋上に飛び移り、一直線に346プロに向かう
「待ってて下さいね!みんな!!」
今の卯月を止められる者はいない
◇
美城プロダクション――
(ゼロさん、どうですか?)
卯月は建物内に侵入し、ウルティメイトブレスを掲げていた
『みんなの気配を感じる。どうやら無事のようだ』
(よかったぁ~・・・)
ゼロからみんなはまだ無事である事を知らされ、ひと安心する
『だが、そうも言ってられないぞ、卯月。敵の正体を突き止めないとな』
(はい。島村卯月、頑張ります!)
卯月はみんなを救う為に決心し、薄暗い建物の中を歩き始める
生まれたての小鹿の様に足を震わせながら・・・
『だ、大丈夫か?』
(だだだ、大丈夫です!暗いのなんて、全然、全然怖くないですよよよ!)
昼間とは打って変わり、電気もついていない為、不気味な雰囲気が支配する夜の美城プロダクション
16歳の卯月にはちょっとレベルが高かった
(・・・あっ!見て下さい!人がいます!)
少し進んでいくと、暗闇に人影を見つけた
「あの!すみません!」
卯月はその人影に近付き、声をかける
『おい、卯月。不用意に声をかけるのは――』
「ひっ!?」
ゼロの忠告は間に合わず、卯月は小さな悲鳴を上げる
人影は346に勤務している男性のものだった
しかし、その男性は卯月が声をかけてもマネキンの様にピクリとも動かなかった
「ど、どうなってるんですか・・・これ・・・」
『・・・どうやら、仮死状態にされてるみたいだな・・・』
硬直した男性社員を見て、ゼロは言う
「みんなもこんな風に・・・?」
『わからない。だが、みんなの気配を感じるのは今日、写真を撮った場所だ』
「撮影スタジオですね。わかりました、行きましょう」
卯月はウルティメイトブレスの光で周りを照らしながら撮影スタジオに向かった
◇
撮影スタジオ――
卯月はそ~っと扉を開けて中に侵入する
「みんな、無事だったんですね・・・!」
『硬直させられている様子もないな』
機材の影に隠れながら通路を進んでいくと、そこにはシンデレラプロジェクトのメンバーや武内、撮影スタッフ、隣のスタジオで撮影を行っていた『城ヶ崎美嘉』の姿があった
「・・・ああ!!もう耐えられない!俺は家に帰る!!」
卯月とゼロが安堵したのも束の間、一人のスタッフが癇癪を起こし、立ち上がった
そして、出口に向かって走り出そうとした
「いけません!」
「ダメだって!じっとしてないと!」
武内と美嘉がスタッフを止めようとしたが、もう遅かった
卯月とゼロの死角から赤い光線が放たれ、そのスタッフを硬直させた
その瞬間、悲鳴が撮影スタジオに響く
「コウナリタクナカッタラ、大人シクシテイロ」
光線を放った張本人は武内達にそう告げる
「・・・ねぇ、アンタ等の目的は何なの?どうして杏達をこんな所に集めたわけ?」
「杏ちゃん、だめだよ。静かにしてなくちゃあんな風に・・・」
「そうだよ、殺されちゃうよ、杏ちゃん」
「大丈夫だよ、それに暇だからいいじゃん。ねえ、教えてよ。『バルタン星人』」
きらりや莉嘉の静止を聞かず、杏は目の前にいるバルタン星人に問いかけた
「オ前達ハ、ウルトラマンゼロヲ倒ス為ノ、人質ダ」
「ウルトラマンゼロ?あの見た事もないウルトラマンのこと?」
「ソウダ。ウルトラマンゼロハ、M78星雲・光ノ国デ、最強ト言ワレテイル、ウルトラマンダ」
「ふ~ん・・・で、その最強のウルトラマンに杏達を人質にしたくらいで勝てるの?杏は勝てないと思うんだけど?」
「ウルトラマンハ、自分ヨリ弱イ存在ヲ、守ロウトスル、愚カナ種族ダ。勝算ハアル」
「はぁ~・・・もういいや。さっさと来てくれないかなぁ~、ウルトラマンゼロ」
杏は溜息をつき、コイツはゼロには勝てないなと判断し、黙った
「やはり、どうにかして外に連絡を・・・」
武内は何とか外に連絡する方法を考える
「無駄だよ。プロデューサーも男ならウルトラマンくらい見た事あるでしょ?アイツ等、核ミサイルも効かないんだから。警察だろうが、自衛隊だろうが、呼んでも無駄無駄」
「か、核ミサイルも効かないの!?」
杏の言葉に美波は驚愕する
「何か奴等の弱点は無いの?」
「う~ん、バルタン星人の弱点はスペシウムだけど、架空の物質だからな~」
凛の問いに、未央は腕を組んで、難しそうな表情を浮かべる
「でも、ウルトラマンさんやあのバル何とかさんはいるよ?」
みりあは不思議そうな表情を浮かべる
「だから、さっさと来て欲しいんだよ。今の杏達に勝ち目は無いんだから」
「・・・ウルトラマンゼロが来るのを大人しく待ってるのが正解、という事ですね」
「そうみたいだね」
杏の説明を聞いて、武内と美嘉が話すと、人質の面々は暗い表情を浮かべる
「まあ、来てくれるでしょ。・・・多分」
「一体どっちにゃあ!?」
「私が知る訳ないでしょ!本人じゃないんだから!」
「だったら無責任な事言わないでよ!怖いんだから!」
「悪かったよ!ごめんなさい!」
無責任な発言をする李衣菜に、みくは苛立ち、二人は言い合いを始める
「きっと、大丈夫だにぃ。きらり達が信じていれば、ウルトラマンゼロさんは来てくれるよ!」
「うむ!光の勇者の出現は間近!(きっと、すぐに来てくれますよね!)」
「ダー、ウルトラマン。諦めない人を、裏切りません」
面々を勇気づける為に言ったきらりの言葉に、アナスタシアと蘭子も同意する
「もしかしたら、もう来てるかもしれないよ?私達を助けるチャンスをうかがってるとか」
「そ、そうだったらいいな・・・」
かな子の励ましの言葉に、智絵里は震えながら頷いた
(ゼロさん、みんなを助ける為にはどうしたらいいんでしょうか?)
『簡単な事だ、卯月』
ゼロのその言葉と共に、ウルティメイトブレスからウルトラゼロアイが出現する
『これを装着して、俺になれ!俺と一緒に戦うんだ!』
(・・・はい!島村卯月、頑張ります!)
卯月はウルトラゼロアイを手に取り、着眼した
その瞬間、卯月の体は光に包まれた
◇
突如、眩い光が撮影スタジオ全体を照らした
「何ダ、コノ光ハ!?」
「決まってんだろ!」
その声と共に、バルタン星人を激痛と衝撃が襲った
光が収まり、視界が戻って来た人質の面々が見た光景は吹き飛ばされたバルタン星人と――
「待たせちまったな」
人質の面々が待ちに待っていたウルトラマンゼロその人だった
「シェアッ!」
ゼロは立ち上がろうとしていたバルタン星人に『エメリウムスラッシュ』を放ち、トドメを刺す
『やった!』
爆散するバルタン星人を見て、人質だった面々から歓声が上がる
しかし――
「まだだ!」
ゼロがそう叫んだ瞬間、三人のバルタン星人がゼロを取り囲んだ
「「「フォッフォッフォッフォッフォッ」」」
「・・・シェアッ!」
ゼロが構えを取った瞬間、一斉にバルタン星人がゼロに襲い掛かる
振るわれる巨大なハサミ、繰り出される蹴りをゼロは巧みに受け流す
そして、拳を叩き込もうとしたその瞬間、バルタン星人は姿を消す
「おっと!ハッ!おらよっ!」
バルタン星人はゼロの背後に現れ、ハサミを振るったが、ゼロはそれを難なく受け止め腹に膝蹴りを叩き込み、投げ飛ばす
投げ飛ばされたバルタン星人は宙返りを決め、着地し、他のバルタン星人と共に『白色破壊光線』を放つ
「甘いぜ!ハッ!」
ゼロは後ろに人質がいる事に気付いており、ウルトラゼロディフェンサーを張る
そして、ウルトラ念力でゼロスラッガーを操り、二人のバルタン星人を切り裂いた
「どうした?人質を取れば俺に勝てるんじゃなかったのか?」
最後の一人となったバルタン星人をゼロは挑発する
人質が人質として機能しなかったのは、バルタン星人がゼロの実力を侮っていたからだろう
「・・・我々ハ、時間稼ギニ、スギナイ」
「何だ?負け惜しみか?」
「我々ノ、本当ノ目的ハ、オ前ノエネルギーヲ、消耗サセル事ダ」
それを聞いて、ウルトラマンを知る者達はバルタン星人の狙いに気付く
『ウルトラマンは地球上で三分間しか戦えない』
四人のバルタン星人、それはゼロのエネルギーを消耗させる為の尖兵だったのだ
「オ前ヲ倒スノハ、我々ノ『皇帝』ダ」
「皇帝だと?」
バルタン星人の皇帝、そんなモノをゼロは聞いたこともなかった
しかし、次の瞬間、ゼロの目の前に一人のバルタン星人が現れた
他のバルタン星人とは違い、ハサミは剣のように鋭く尖っており、ただならないオーラを身に纏っている
「・・・ご苦労だったな」
「ハッ、『デスバルタン』様」
現れたデスバルタンに、バルタン星人は膝をつき、頭を垂れる
「お前の役目は終わった。よって、もうお前に用は無い」
そう言うと、デスバルタンはその鋭いハサミでバルタン星人を差し貫いた
「ナ、何ヲ・・・!?」
「弱者は必要ない。消え失せろ」
デスバルタンはもう片方のハサミからエクシードフラッシャーを放ち、バルタン星人を爆散させた
「お前、仲間じゃなかったのか!?」
「仲間?」
デスバルタンは今度はゼロに向かってエクシードフラッシャーを放つ
「シュアッ!」
ゼロはそれを『ワイドゼロショット』を放ち、相殺する
「この宇宙で存在が許されるのは、何者にも倒されず、壊されず、永久に進化を続ける究極の生命体だけだ」
「何だと?」
「下等でつまらない生物に、存在する価値はない。この星に存在する生命も、貴様もだ!ウルトラマンゼロ!」
デスバルタンはハサミをゼロに向けて、言い放った
「・・・はぁ」
それを聞いて、ゼロは溜息をついた
「前にもお前と同じような事を言っていた奴がいたぜ」
ゼロはかつて、『フューチャーアース』で戦った『バット星人』を思い出した
「お前にも同じことを言ってやる。お前が人間の価値を語るなんざ、二万年早いぜ!!」
ゼロはそう言い放ち、ゼロスラッガーを手にしてデスバルタンに向かっていく
「ヘアッ!ウオリャッ!シェアッ!ハッ!」
ゼロは連続で蹴りを繰り出し、デスバルタンを攻め立てる
しかし、デスバルタンも負けていない
「フンッ!トァッ!ガァ!!」
ゼロの隙を突き、デスバルタンも蹴りを繰り出し、更に怯んだ所に前蹴りを繰り出し、ゼロを後退させる
そのままゼロに迫り、ハサミを振るおうとしたが、ゼロはそれを受け止める
ゼロは左フックを繰り出したが、デスバルタンもそれを受け止めた
「「ふんぬぅううううう!!!!」」
両者は力比べを始め、一瞬でその姿を消した
「き、消えた!?」
「テレポーテーションで外に行ったんでしょ。ここじゃ自由に戦えないし」
「そ、そういう事か・・・」
「もう見張りもいないみたいだし、今だったら逃げられるんじゃない?」
「っ!そうだ!逃げるぞみんな!」
杏の言葉を聞いた数名がスタジオの出口まで走る
「皆さん!我々も行きましょう!」
武内の先導に、CPのメンバーも動き始める
「双葉さんも速く!」
「杏ちゃん!速く速くぅ!」
「ん?ああ、うん。今行くよ」
武内ときらりに声を掛けられ、ボーッとしていた杏はスタジオを後にした
◇
デスバルタンとゼロの戦い夜の街へと舞台を移し、続いていた
「フンッ!トリャアッ!デリャア!!」
デスバルタンは斬撃の合間に廻し蹴りを繰り出し、ゼロの頭を狙う
「くっ!」
しかし、ゼロはそれを腕で受け、少し吹き飛ばされるまでにダメージを抑える
「シェアッ!」
「トァアッ!」
両者の間に距離が出来、ゼロはゼロスラッガーを投げ、デスバルタンはハサミから剣型の光線『バッドナイフ』を放った
ゼロスラッガーとバッドナイフは互いに相殺し合う
ゼロはもう次の行動に移っていた
「ウオリャァアアアアッ!!」
ゼロはデスバルタンに向かって、『ウルトラゼロキック』を繰り出す
デスバルタンはそれを両ハサミで受け止めたが、今度はデスバルタンが後方に吹き飛ばされた
「・・・そんな技が、私に通用すると思っているのか?」
「・・・へっ!」
ゼロは唇を拭い、デスバルタンに向かって行く
デスバルタンはそれを向かい撃ってハサミを振るうが、ゼロはそれを前転で躱す
そして、いつの間にか手にしていたゼロスラッガーを振り向きながら振るった
ゼロスラッガーから放たれる緑の光と、デスバルタンのハサミから放たれる青い光が何度も衝突して火花を散らし、夜の街を照らす
デスバルタンは片方のハサミでゼロの持っているゼロスラッガーを打ち上げ、もう片方のハサミでゼロを刺し貫こうとした
ゼロはそれを躱し、ゼロスラッガーを頭に戻して、エメリウムスラッシュを放つ
しかし、それはデスバルタンに躱され、地面に当たって爆炎を巻き起こした
その爆炎に隠れ、ゼロはデスバルタンに接近して組み付き、プロレス技のパイルドライバーの体勢に入る
「くらえぇええええ!!!!」
「うぉおおおおおお!!!?」
そして、デスバルタンを持ち上げ、高く飛び上がった勢いで頭から地上に叩きつける『ゼロドライバー』を繰り出した
巻き上がった煙からゼロが飛び出し、様子を伺う
デスバルタンは煙を切り裂き、上空に舞い上がった
「お、おのれぇえええええ!!!!」
デスバルタンは両ハサミにエネルギーを溜め、エクシードフラッシャーをフルパワーで撃つ準備に入る
「これで終わりだぁ!!」
ゼロはゼロスラッガーを頭から外し、カラータイマーに装着し、光刃にエネルギーを溜める
「シュアッ!!」
「クオォオオオーーー!!」
そして、ゼロは広域に照射する強力光線『ゼロツインシュート』をデスバルタンはエクシードフラッシャーを同時に放った
「なぜだ!?なぜこれ程までにエネルギーが残っている!?」
最初は拮抗していたが、ゼロツインシュートがエクシードフラッシャーを押し返していく
そして、間もなくデスバルタンを貫いた
「な、なぜ貴様如きに、皇帝であるこの私が――」
体に大穴を開けられたデスバルタンは爆散し、消滅した
デスバルタンの敗因は二つある
一つは純粋にゼロがデスバルタンより強かった事
そして、もう一つはゼロがウルティメイトブレスを持っていた事だ
哀れバルタン、ゼロはこれによってエネルギー切れを気にせず活動出来るのだ
「言ったはずだぜ。二万年早いってな」
そう言って、ゼロは空を見上げる
「・・・そこだな、シュアッ!」
透視能力で乗組員がいなくなり、上空に放置されていた透明の円盤を見つけ出し、エメリウムスラッシュで破壊した
こうして、ゼロはバルタン星人を撃破したのだった
◇
バルタン星人がいなくなった事により、人質となっていた面々は346プロから脱出していた
そして、ゼロがデスバルタンを倒した光景を目撃していた
その姿に歓声があがり、中には抱き合って喜ぶ者もいた
「ゼ~ロく~ん!ありがと~!」
「ありがと~!」
莉嘉とみりあがお礼を言いながら手を振ると――
「ん?」
ゼロが莉嘉達の方を向いた
その瞬間、その場にいる全員が体をビクリと跳ねさせた
ゼロはゆっくりと歩き、346プロの近くまで来ると、腰を低くして膝をついた
「怪我は無いか?」
ウルトラマンにそう尋ねられ、大人は固まってしまった
無理も無い、テレビの中にいるはずの憧れのヒーローが自分に話し掛けて来ているのだから・・・
「ゼロ君!来るのが遅いよ!めっちゃ怖かったんだからね!」
「ちょ、ちょっと莉嘉!?ウルトラマンに何てこと!?」
「だって~!」
そんな中、ゼロに向かって文句を言う莉嘉に、美嘉は大慌てする
「ハハッ、悪かったな、駆け付けるのが遅くなっちまって」
「いやいやそんな!?滅相もない!ほら莉嘉!謝りな!ほら!」
ゼロは笑っているが、美嘉はもうパニックである
「いや、謝る必要なんてない。今回は奴等の策に嵌った俺の落ち度だ。悪かったな、怖い思いをさせちまって」
謝るウルトラマンに、大人達は滅相もございませんと心の中で叫ぶ
「あ、あの・・・」
「ん?何だ?武内」
「なぜ私の名前を・・・それより、時間は大丈夫なのでしょうか?」
「時間?ああ、エネルギー切れの事か?俺にはこのウルティメイトブレスからエネルギーが供給されててな、エネルギー切れを気にする必要が無いんだ」
『三分じゃないの!?』
ゼロの話を聞いて、ウルトラマンを良く知る者達は驚愕する
(あのブレスレット・・・確か・・・)
ゼロが見せたブレスレットに凛は見覚えがあった
「そう言えば、まだちゃんと名乗ってなかったな。俺はゼロ、ウルトラマンゼロ、セブンの息子だ」
『セブンの息子!?』
「何だ?親父を知ってるのか?」
「あなたの父親は最後まで人間の為に戦ってくれた永遠のヒーローだよ!」と言いたいが言えるはずもなく・・・
「ねぇねぇ!ゼロ君!一緒に写メ撮ろうよ~!」
「撮ろう撮ろう!」
「莉嘉~!もう勘弁して~!」
この場を支配しているのは莉嘉とみりあだった
「写メ?写真の事か?いいぜ、初めてでもないしな」
ゼロはかつて、別の宇宙で出会った女性を思い出す
「やった~!お姉ちゃん!撮って撮って!」
「美嘉ちゃんおねが~い!」
「莉嘉ちゃん!私も!私も入れて!」
「はいはい・・・もうどうとでもして・・・」
こうして、莉嘉とみりあと未央はゼロと写メを撮ることが出来たのだった
(何か・・・イメージと違う・・・)
そして、ウルトラマンに対するイメージと美嘉に対するイメージにギャップを感じる者が続出した
「それじゃあ、俺はもう行くぜ」
「ゼロさん!あの、これからも怪獣は現れるのでしょうか・・・?」
武内の問いに、その場にいる全員が不安気な表情をしてゼロを見る
「・・・原因はわからないが恐らく、これからも怪獣は現れるだろうな」
『・・・』
それを聞いて、その場にいる全員が言い知れぬ不安を抱いた
「だが、必ず原因を突き止めて、この星を元の状態に戻す。約束だ」
ゼロは胸に手を当て、そう約束した
「それじゃあな!シュアッ!」
そして、ゼロは立ち上がり、空に飛んで行った
全員がゼロが見えなくなるまで、空を見上げていた
「おーい!みなさーん!」
「卯月?」
そこに聞こえて来たのは聞き覚えのある卯月の声だった
「皆さん!大丈夫ですか!?怪我はありませんか!?電話が繋がらなくて、とっても心配したんですよ!!一体何があったんですか!?」
卯月はみんなに駆け寄り、捲し立てる様に言う
「あのね!バル何とかさんが出てきたの!」
「そんでー!ゼロ君が来てくれて、ボカボカボカー!ってやっつけちゃってー!」
「ふっふっふ~!見てよ!しまむー!じゃ~ん!何と!ウルトラマンゼロと写メ撮っちゃったー!!」
「「撮っちゃったー!!」」
未央と莉嘉とみりあはゼロと撮った写メを卯月に見せて自慢する
「わぁ~!凄いですね!羨ましいです!」
それを見た卯月は笑顔でそう言った
「島村さん、ご心配をおかけしました。事情はまた説明させていただきます。が、今日のところは・・・」
「そ、そうですね!もう遅いですし、また明日!聞かせて下さい!」
話し掛けてきた武内に、卯月は笑顔でそう返す
「あ、あの、プロデューサーさん。今日は、勝手に帰ってしまって、すみませんでした。じ、実は、ママ、じゃない、お母さんがギックリ腰になっちゃって・・・!」
そして、ずっと気になっていた事を卯月は心の中で母親に謝りながら、武内に謝罪した
「そうだったのですか。ですが、これからはちゃんと理由を話して頂けますか?」
「はい!本当にすみませんでした!」
「では、この話は終わりにしましょう。皆さん、家までお送りしますので、ロビーで少々お待ち下さい」
そう言って、武内は事務所に入って行った
そこからシンデレラプロジェクトのメンバーが卯月に何があったのかを話し始める
バルタン星人のこと、ウルトラマンゼロのこと、デスバルタンのこと
まるで、空想の様な話だが、現実に起こってしまった話
この星にいる全ての人間が、まだその異様さに気付いてはいなかった
「・・・」
たった一人、壊れてしまった携帯電話を握り締める少女を除いて――
皇帝デスバルタン
ウルトラマンスーパーステージに登場
バルタン星を武力で支配する皇帝
ウルトラマン、セブン、ジャック、A、タロウ、ネオスを纏めて相手にする実力を持つ
使用した技
『エクシードフラッシャー』
ウルトラマン80に登場した六代目が使用
80のサクシウム光線と互角の光線
『バッドナイフ』
ウルトラマンコスモスに登場したネオバルタンが使用
コスモスに手で弾かれていた剣型の光線
※ウルトラマンスーパーステージに登場したデスバルタンは、これらの技は使用していません