高2の僕がなぜか異世界の王に成り上がる物語 作:永遠の二番煎じ
一週間後・・・
朝老師と共に体操をしていた時であった。
「カズナリ、君にはルーシーを守ってほしいのじゃ。」
「いきなり、どうしたんですか。老師?」
老師は体操を途中でやめたが俺はもうだいたい覚えていたので最後までやろうと思った。
「私はもう長くない、だから君に私のすべてを継承してほしいのじゃ。」
老師は真顔であった。
その真顔にいつのまにか自分も体操をやめていた。
「なぜルーシーでなく、僕に?」
「ルーシーにも継承をさせてはみたが平均より少し強いくらいじゃ。まあ、森の動物くらいには素手で勝てる。」
僕の予想通りルーシーはある程度護身術を身に着けてるんだな。
老師に連れられ、森の中に。森に入るのは初めてだ。
獣道を歩くと今三人が住んでる家と同じくらいの小屋が見えてきた。
「あそこでは老師流武道をカズナリにすべて継承してもらう。」
「はあ。」
いまいち気乗りはしていなかった。
小屋(武道場)に入ると、弓矢に剣など接近戦で使うものすべてが揃っていた。
やっぱりどの世界も武道は同じなんだな。
この世界に来て初めて学ランから道着(布の服)に着替えた。
老師は漢服みたいな服のまま、
「どこからでもかかってくるが良い。」
煽られ、俺は真正面からとりあえずタックルしに。
だが老師は片手で俺を空中で一回転させ倒した。
腰を強打し、
「痛~。」
老師は腕を後ろに組み見下ろして、
「カズナリ、君にはまだ余計なものが支配しておる。」
余計なもの?元の世界に帰る事か?
「違う。人と争う覚悟が出来ておらぬ。」
なに!!心を読むことすらできるのか?
「そうじゃ、これが老師流武道。自分の弱さを知り、克服して強気心を手に入れればカズナリはこの世界を良くできる。」
なるほど・・・そこまで見込んで自分に継承を。ありがた迷惑ですよ・・・老師。
「さあ、かかってくるのじゃ!」
その後、何時間も稽古は続いたが片手で倒された。
そんな日々が続いた。
「カズナリ、焦りが見えるぞ?」
木の棒で体に当てようにもかすりもしない。
だんだん僕が避けているかのようにすらも思えてくる。
「大丈夫ですか?本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、かつて私は最強の軍隊を育てた男じゃ。」
30m先から老師に狙いを定めて弓で矢を放つも届いてすらいない。
「やってみろ。」
「はい!」
薪に向かって右手で何度もチョップしたが右手が腫れるだけだった。
ジジイこれ本当に出来るのか?
すると老師は薪の前に立ち、右手を垂直にチョップで振り落した。
薪は綺麗に真っ二つ、ついでに土台の切り株まで割れた。
だって異世界人だしな・・・
「世界など関係ない。自分を知るのじゃ。カズナリ!!!」
ある稽古が休みの日。
武道場に行き、瞑想していた。
僕には何が足りないんだ?そもそも、世界に秩序を取り戻せるのか?
なぜルーシーを俺が守らないと・・・
考えれば考えるほど負のスパイラルだ。
気を取り直して、木の棒を持って森を探索した。
「うごおおおお。」
これはイノシシを呼ぶ方法である。
「うごおおおお。」
すると茂みからモソモソと狼が出てきた。
おお!!生で初めて見る狼に少しビビったが自分の成長を試したかった。
狼は間髪入れずに飛びかかって来た。
木の棒で構えた時、矢が飛んできた。
狼の急所に矢が当たった。
「今日の晩御飯ね。」
矢を飛ばした場所にはルーシーが立っていた。
「どうして邪魔したんだ!」
「あのままだと手遅れだった・・・」
「いや、俺なら狼の一匹ぐらい倒せた。なんなら素手でもな!!」
「まだ・・・無理よ。」
その言葉に頭に血がのぼり、ルーシーに向かって飛びかかった。
ルーシーは驚きつつも、反射的に受け身を取ったが、二人して傾斜を転がり落ちた。
それでも俺の血の気は引かなかった。
すぐに立ち上がり、また襲いかかった。
だが足で倒され、ルーシーが馬乗りになり首を絞められた。
意識がどんどんなくなっていくのを感じた。
が、右手に細長い枝のような木片を取った。
木片でルーシーの頭を殴り、ルーシーは気絶した。
首を絞められむせながらも、やりすぎたと思った。
気絶したルーシーを背負い、家に帰った。
老師は家でなにか内職をしていて、気絶したルーシーを背負う僕の泥まみれの姿を見て驚いていたが何も言わなかった。
翌朝家の前の砂浜の太く長い流木に座って海で泳ぐ竜を見ていた時であった。
ルーシーが隣に座った。
「ごめんなさい。あなたへの嫉妬よ。」
「いや、僕こそごめん・・・嫉妬?」
老師が愛情を注ぐ僕への嫉妬か思い切って聞いてみた。
「手刀なんて私は教わらなかったから。」
ルーシーの言葉になぜか笑いがこみ上げてきた。
「なんで笑うの?」
そういえばルーシーは常に無表情だった。
いやむしろ無表情な顔しか見ていない。
「いや、僕は君が羨ましいんだ。」
ルーシーは不思議そうな顔をしていた。
「僕は教わるんじゃなくて継承しないといけないんだ。」
「けいしょう?」
ルーシーは継承を知らないようだ。
「とりあえず昨日は熱くなってごめん。今日も稽古だから。」
武道場で老師はすでに立っていた。
定位置につくといつもはどう老師に挑むかを考えていたが今はルーシーを笑顔にすることを考えていた。
「ルーシーを好きになったのか?」
老師に問われたが、ありのままの気持ちを伝えた。
「いえ・・・ルーシーはもっと笑ってもいい気がして。」
「ルーシーか・・・確かに笑った顔は見たことがないの・・・」
と老師は油断した時、老師の襟をつかみに行ったが両手で防御された。
「初めて私に両手をつかわしたな。精神攻撃も時に必要!」
だがあっけなく投げとばされた。
だが徐々に老師は両手を使いだした。
弓矢も老師には当たらないが届くようにはなっていた。
野外演習では槍投げでイノシシを仕留めるということをした。
「うごおおおお。」
するとイノシシが10m先に。
槍を投げるとイノシシに命中した。
「よっしゃ!!!」
老師も無言ではあったがよくやったと背中を叩いてくれた。
ある日武道場で。
弓を構え、矢をセットしていた。
そうだ心を統一して一点を狙う。肩の力は抜く・・・
矢を無心で放った、いや集中を極めてそうなった。
矢は老師の心臓めがけてまっすぐに飛んでいく。
やった!でも老師が危ない!!
いや分かっていたことじゃないか、世界を平和にするには血を流すしかないのだと。
すると右手で胸に当たる直前で、がらを持ち矢を手で止めた。
「私はここで死ぬ運命じゃなかったようじゃのう。」
老師は俺の武道の成長に少し喜んでいるように見えた。
この後初めて老師は木の棒を持った。
素手相手の老師ですらまだ手で止められてるのに大丈夫かな?
老師は木の棒を構えたが、構え方が独特であった。
両手で棒の両先端を持っていたのだ。
両手で作用点を握りしめた俺は力点を思いきり振り下ろすと木の棒が弾き飛ばされた。
「これでカズナリ、無防備だぞ?」
なんだ?今のは?
「今のは老師流剣術の応用だ。」
その後も何度どの角度から振り下ろしても同じ結果であった。