「……ん、ここは?」
目を開けると、知らない天井だったことに疑問に感じながらハルトは目覚めた。周りを見ると木製の家具が置かれている部屋であることがわかった。
とりあえず部屋から出て、助けてくれた人にお礼を言おうと上体を持ち上げるとーー
「うぐっ‼︎」
ーー腹部から強烈な痛みを感じ、呻き声を上がった。体を見回すと包帯が全身に巻かれており、重症だったことがわかる。よく生きてたな俺と思っていると、部屋の扉が開いた。
「おぉ!起きとったか!」
部屋に入ってきたのは、ハルトが意識を失う最後に出会った老人だった。老人はハルトが起きていることを確認するや否や厳つい顔からは想像が出来ない優しい笑みを浮かべた。
「傷の具合はどうじゃ?」
ハルトはとりあえず腹部以外のところを動かし答えた。
「はい。おかげさまでお腹以外は大丈夫かな?」
「そうかそうか!3日も寝ておったから死んでしまったかと思ったぞ?」
「ははは、それはなんていうかすいません。俺の名前はハルトっていいます。親しみを込めてハルと呼んでください」
「わかった。それでハルよ。なぜあんなところで倒れていたんじゃ?もしかしてじゃがゴブリンに襲われたという旅商人たちの生き残りか?」
ハルトはその言葉を聞き、驚きを隠せず立ち上がろうとしてしまうが腹部の痛みによって呻くことしかできなかった。
「〜〜ッ!み、みんな無事だったんですか?」
「すまんが全員かどうかはわからん。ただ、少し前にボロボロになった少女が一人この村に訪れてな。その話をしておってなぁ」
ハルトはその少女というキーワードに旅商人たちの顔が頭によぎった。
「よかった。生きていてくれて。本当に良かった」
誰かは分からないが生きていてくれたことが本当に嬉しかった。あの絶望的な状況から生き残っていてくれたことが本当に。ハルトは頬をつたう涙を拭いながら老人に聞いた。
「それでその子は今どうしていますか?」
「二日前くらいにきた旅商人たちの集団について行ったぞ。確か行き先はーー迷宮都市オラリオだったかな?」
「そうですか。ありがとうございます」
ハルトはこの時に当面の目的が決まった。ギルから預かった手紙に仲間の生存、その両方がある名球都市オラリオに向かうという目的が。思いだったが吉日と思い立ち上がろうと思ったが、またもや腹部の痛みにより呻いた。老人はそれを見ながら呆れたような顔をして「学習能力がないのう」と呟いた。
「その傷じゃと少なくとも半年、長くて一年は動けまい。ポーションがあればすぐ治るんじゃがのう。まぁ、ここでよければゆっくりしていくんじゃな」
ハルトはその言葉に少し落胆した。その間に身動きが取れないこともそうだが、この人にまた迷惑をかけてしまうことに。
「ご迷惑をおかけします」
「若いのに気にするな。自分の家だと思ってくつろいで「お祖父ちゃん。ご飯できたけどどうしよっか?」おぉ、ベルか、入って来なさい」
老人の言葉の後に一人の少年が入ってきた。その少年を表すなら兎。真っ赤な紅い瞳に雪のような真っ白な白い髪を持つ少年はハルトを見た瞬間、無邪気な笑顔で歩み寄ってきた。
「起きたんだね!よかったぁ〜。僕の名前はベル・クラネル!君は?」
「俺はハルト・シルドヴァーン。気軽にハルって呼んでくれ。これから半年近く面倒をかけるがよろしく」
「うん、よろしくねハル!」
二人は笑顔で固く握手を交わした。