転生デューマンの賢者ろーぷれ!   作:しにかけ/あかいひと

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あ、あはは…………ツッコミは無しだとうれしいカナー?

…………ほんっと、すみませんした。


セーブデータその10『君の悩みを解体(バラ)してみようか』

 

なら私は、どうすれば良かったのですか。

 

 

────────レヴィア・アローネ

 

[(。>д<)]

 

 

「殲滅終了! みなさんお疲れ様でした!」

 

「「「ウォォォォオオオオオオオッ!」」」

「「おおー!」」

 

ショウさんの掛け声で、ジャッコーさん達が雄叫びをあげ、イシュラと…………その、恥ずかしながら私も、声をあげました。

 

ショウさんの言った通り、ユーゴさんがクイーンアントを倒した後のジャイアントアント達は、正しく烏合の衆と言った様相で、私達の格好の的でした。…………少し恥ずかしいですが、私の日常からは到底あり得ない非現実的な出来事を前に、少々興奮してしまい、その…………ええ、かなりはしたなく、ジャイアントアント達に杖を何度も振り下ろしてしまいました。その分レベルが一気に上がったので、悪いことばかりではないのですが。

 

しかし、それにしても…………

 

「ふー、なんか久々に全力で戦った気がするな! そういう意味では、ここに来れて良かったのかもな!」

 

「肌を艶々させ過ぎだバカ。ったく、これだから戦闘狂は」

 

やはりあの二人は、文字通りレベルが違うのだと感じさせられました。

 

道中のモンスターを、鎧袖一触と言った様相で切り刻み、あの巨大なクイーンアントを一撃の下葬り去ったユーゴさん。

 

ウォーザードとは戦士職だったのかと勘違いするほどに、ユーゴさん以上に前に出て、刃を振るいモンスターを屠るショウさん。

 

二人とも、私とそう大差の無い年頃の筈です。それが、一体どんな人生を送れば、あんな超高レベルになれるんでしょうか?

 

(…………でも、)

 

私は知りました。物語の登場人物みたいに…………いえ、もしかしたらそれ以上に強いショウさんでも、やはり普通の人と同じ様に、悩みを抱えているものだと。そしておそらく、時折自信なさげで困ったような顔をしていたユーゴさんもまた…………。

 

「それにしても、さっきの俺メチャクチャ魔法使いしてなかった? してたよな? 過去最高に魔法使いしてたよな?」

 

「道中を全て無視するんならな…………皆ドン引きしてたぞ?」

 

しかし、今の二人からはそれを感じることはできません。ショウさんの言葉を借りるのなら、『後悔の少ない選択』をし、『より良い自分を形作ろうと努力している』からなのでしょう。…………後悔を、後ろめたさを、疑問を抱えながら生きている私には、少し眩しく映りました。

 

「……………………」

 

それにしても、イシュラの言っていた通り…………本当に魔法使いらしくない戦い方をするんですね、ショウさん。おそらく、何処かの国の騎士様よりも勇猛果敢な戦いっぷりでした。自覚しているのか、必死に『魔法使いらしかったよな?』と皆に同意を求めていますが…………ユーゴさんを除き、誰も目を合わせようとしません。

 

「…………ま、魔法使いだって、前線立ったっていいじゃんか」

 

拗ねるように、そっぽを向きながらそう呟くショウさんに、思わずくすりと笑ってしまいます。外見年齢と乖離した落ち着きを纏う彼ですが(戦ってるときは別)、こうしてみると確かに『見栄を張りたいお年頃』なのでしょう。

 

「……ちっ、そんなにおかしいですかレヴィアさん?」

 

「ふふ、おかしいと思います。でも私は嫌いじゃないですよ、魔法使いらしくなくて」

 

「褒められてないでしょうそれ!?」

 

「そんなことはありませんよ、本当です」

 

本当に…………魔法使いが皆、ショウさんみたいな人なら良かったのに。そうすれば、私はあのとき嫌な思いをしなくて済んだのではないか…………。

 

なんて、もしものことは考えても栓のないことですね。

 

 

[(..)]

 

 

ドロップアイテムやお金を回収し、ショウさんの脱出魔法で巣穴から出てきた時には既に陽の光は空になく、無数の星が瞬いてました。

 

「…ライト付けなくても良いくらい明るいな、星の光ってのは」

 

「え? 空を覆うような森の中ならともかく、そういうものなのでは?」

 

「あ、いや、そうか…………普通はそういうものか」

 

空を見上げ、思わず溢したショウさんの言葉に疑問を覚えます。旅人にとって、一部の星は方角を示す大事な道標です。そうすると、嫌が応にも他の星を見ることにもなるのですが…………まるで、今初めて見たと言ったような台詞でした。

 

「俺も、ユーゴも、星の光が満足に見えない場所から来てるんですよ。街は夜も眠ることなく明かりを灯し、空まで照らしてしまう。そのせいで、夜にちゃんと見える星なんてそう多くはないんです。だから、ちょっと驚いてしまって」

 

「空まで照らす、明かり…………」

 

その光景を、見てみたい気もしますが…………空に星が少ないのを想像すると、少し寂しい気がします。

 

「それにしても…………牛飼い座、乙女座、獅子座。アルクトゥルス、スピカ、デネボラ。繋いで春の大三角。…………天体は、地球と同じなのか? だというのに、割とこういうのでメジャーな星占術士はエターナルには存在しない、少なくとも『ギャスパルクの復活』には無かったし…………概念がないのか、あるいはドマイナーなのか(ブツブツブツブツ)」

 

「あ、あのショウさん?」

 

急に考え込む様に空で何かを探し、見つけたと同時にまた考え込み、ブツブツと何事かを唱え始めました。端から見ていると…………その、病人と見間違う程の真っ白な肌と紅い左目とが相俟って、凄く危ない人に見えます。

 

「っ? あ、ああごめんなさい。気になることがあると考え込むのは、俺の悪い癖ですね」

 

「は、はぁ…………」

 

そう言って恥ずかしそうに頭の後ろを掻くショウさんに、私は生返事を返すしかできません。

 

…………あれ? 今更ながらショウさんの容姿を、ちゃんと確認できたような気がします。なんというか、それまでの印象があやふやで、よく思い出せません。本当に、同じ年の頃の男性としか…………。

 

「ショウさん、その肌と、その眼は…………」

 

「…………ん? ああ、切れたのか。まあこの見た目がバレたところで困ることはないんだけど」

 

そう言って、ショウさんの右の黒目が紅に染まり…………

 

「まあ、俺のちょっとした秘密です。隠してる訳でも無いんですが、積極的にばらすつもりもないんで、ちょっと幻影魔法で認識阻害をちょちょいのちょいと」

 

なんと、形容していいのか…………。それなりに整った顔立ち、死人の如き肌の白さ、妖しく光る紅の双眸…………浮世離れした、何処か現実味のない容貌で…………。例えるなら、幽霊(ゴースト)の様な…………。

 

「あ、あの…………し、しし、死んでる、というわけでは、ないですよ、ね…………?」

 

「あははははは! レヴィアさんってば、面白いことを言いますね。死んでたら、上のバー無いでしょうに」

 

「あ、それもそうですね……あは、あははは…………」

 

…………何故だか、どっと疲れました。で、でも、世の中には元は人間だった不死者(アンデッド)というタイプのモンスターもいると聞きます。疑ってしまうのも仕方ないと思います…………ええ。

 

しかし、これだけ特徴的な見た目をしているということは、もしかしたらショウさんは人間ではなく、エルフやドワーフといった別の種族の方なのかもしれませんね。…………昨日ステータスを見せて戴いたときには、ウォーザードの文字しか目に入ってこなくて見逃してしまいましたが。

 

「あ、あの……ショウさんは人間ではなくて、その……」

 

「ええ、もう人間じゃなくなりました。元、と付きますね」

 

「元、ですか?」

 

それは…………おかしいはずです。種族は、生まれた時に決まるものです。まるで後天的に変わった様に言っていますが…………

 

「率直に言うと呪われたんですよねぇ、邪神の類いに。それまで積み上げてきたものを台無しにされた気分でした」

 

「…………!」

 

その言葉と、それまでのショウさんの言動が、妙に噛み合った様な気がしました。つまり、ショウさんは元は戦士職の方であり、何らかの要因で邪神から種族すら変えられる程の呪いを受け、そのせいで戦士を続けることができず、否応なしに魔法使いとしての道を歩むしかなくなった…………。単なる想像ですが、なんだかしっくり来ます。そうでなければ、あのように我先にと剣を振るような魔法使いが生まれるわけがありません。

 

「…………余程、苦労されたのですね(魔法使いとしてのやり直すために)」

 

「んー、確かに苦労はしましたね(あまりにもな虚弱体質に)」

 

…………あれ、何故でしょう? 意志疎通に失敗してすれ違った様な気がしてなりません。

 

 

[(・・;)]

 

 

「……………………あ」

 

…………皆も寝静まる真夜中。

 

村に戻れば、村を挙げてのお祭り。村の広場の中心で火を焚き、それを囲んで飲んで食べて、勇者を称え、神に感謝。

 

あの二人を中心に盛り上がる皆を、私は外れたところでそれを、どこか遠くのことのように眺め…………気が付けば、何もなかったように、終わっていたのでした。

 

今日は、とても楽しかった。これまでの人生の中で…………もしかしたら、村長として神官として生きることを定められているこれから先の人生の中でも、一番の出来事なのかもしれません。

 

だからこそ、皆の和の中に混じることが出来なかった。これで最後にしたくない、という溢れてはならない感情が、何度も何度も私の耳に『これでいいのか』と囁くのです。そのせいで上手く笑えない私があの輪の中に入っても、異物になるだけ…………。

 

そもそも私は本当に、200年続いたアローネ家の長女として、神官の跡取りとして、次期村長として、相応しいのでしょうか? 以前、あの魔法使いから嫌がらせを受け、『自由になりたい』と自分の定められた人生に疑問を抱く様な私に。

 

逃げ出してしまえ、と本能が叫ぶ。本心を押し殺し、凍りつかせるのは何よりも辛いことなのだと言う。

早まるな、と理性が嗜める。迷いを抱え、それでも正しく生きようとする意思が貴いのだと言う。

 

迷う私の疑問に、誰も答えてはくれない、聞くこともできない。疾く全てを知る風の神、アローネ家が代々神官を務めてきたファドラも、祈っても何も答えてはくれません。

 

(…………『後悔の少ない選択を』『より良い自分を形作る為の努力を』)

 

でも、魔法使いらしくなく、しかしあらゆる出来事を経て生きてきた様な、妙な落ち着きを持つ賢者の言葉が、この迷いに光を差し込んでくれたのです。

 

…………おそらくこれからしようとすることは、より良いとは言い難い、寧ろ、悪の道でしょう。でも、私はそもそも『生きて』いない。自分の人生に、自分の意思がないのです。誰かの引いた線の上を歩く努力はしても、そもそも自分のための努力をしていないのです。このまま燻らせていたなら私は…………一生を後悔に苛まれます。

 

(…………今しか、ない。村を出るのなら、今しか、ない!)

 

以前にも、同じ事をしようとして…………その時は理性が打ち勝ち、また状況もあってか実行に移すことはありませんでした。

ですが今は、本能を止められず、村が寝静まる真夜中という状況もあって…………まるで運命が、私の旅立ちを後押しするかのようでした。

 

準備をしましょう、幸い以前の準備が…………最低限の旅の装備と、お金を詰めたバッグ、そして用意して使うことの無かった書き置きが、家の、私の部屋に隠してあります。

 

音を立てないように、慎重に…………慣れ親しんだ村が、まるでダンジョンの様に思えます。

 

民家の間を歩き、神殿の戸を開き、そして…………

 

 

 

 

 

 

 

Bonsoir mademoiselle.(こんばんわ、御嬢さん)

 

 

 

 

 

 

意味のない音の羅列…………その筈なのに、私には確かに『こんばんわ、御嬢さん』と言ったように聞こえました。

ですが、問題はそこではなく。

 

「そんな浮かない顔をして…………はいないですね。んー、折角の『賢者(サヴァン)』だからやって見たかったんですが…………上手くはいかないものですね」

 

「ど、どうしてショウさんが…………この神殿に?」

 

明かりのない神殿の隅でショウさんが、不敵に笑って佇んでいたのです。

 

「どうしてもこうしても……レヴィアさんがあの宴会に混じってなかったから、ですかね?」

 

「…………ふ、ふふふ。そう、ですか。全く、皮肉なものですね」

 

貴方の言葉で、背中を押されたのに…………他ならぬ貴方が、私を止めようとするなんて…………。

 

「ん? んんん? ああ、そう言う風にも取れるのかこの場合。想定外だ」

 

「…………どういうことですか?」

 

「説明するより、見せる方が早いですね。とりあえずこれどーぞ」

 

そう言ってショウさんは、私に麻袋を手渡して来ました。手に乗せられた瞬間、ジャリという金属の擦れる音が、その中身を教えてくれました。

 

「あ、あの…………これ、は?」

 

「4000G、どこ行くにしても先立つものは必要でしょう? ああ、先に行っておきますけど、その気になれば簡単に稼げる額なので、気にしないでくださいね? こんなの、爺が孫にお小遣いをやるようなモンです」

 

「どうして、ですか? 私は今から……」

 

「分かってますよ、家出予定少女。何せ、背中を蹴飛ばしたの俺でしょう?」

 

…………全て、お見通しというわけですか。

 

「何が、目的なのでしょう?」

 

ここまで来ると、逆に疑いの方が深くなります。ショウさんは、この男は何を企んで、私を家出させようとしているのか。今からその立場を捨てようとする私が言うのもおかしいですが、利用価値はあるのですから。

 

しかしこの男はそれすらもお見通しなのか、くつくつと愉快げに笑うだけ…………。

 

「くくっ…………少しは安心しました。それぐらいの危機感がないと、すぐに不幸に見舞われてしまいますからね。外の世界は、君が思う以上に危険だ。この村で、蝶よ花よと大事に育てられてきた君では、想像もつかない位の悪意に満ちている」

 

無論、そればかりではないが…………と言って、笑みの浮かんでいた顔を、鋭い物に変えました。

 

「家出少女、先に行っておくが後悔するぞ。俺は君でないからその胸中は分からん。が、このまま自分を押し殺す方が後悔すると踏んで、今に至るってのは想像できる。だが、故郷を捨てることで後悔する可能性を、ちゃんと考え抜いたのか?」

 

「……………………」

 

何を知ったように、という言葉と、旅をしている貴方が言うのか、という言葉が浮かび…………しかし沈みました。彼の真剣な表情は、いかなる反論も許さないと言っている様でした。

 

「自分のやりたいようにやって、自分の因果、自分の不幸で自分を殺す。成る程これなら諦めもつくし、納得の終わりだろう。だが、自分の因果、自分の行動で、誰かを不本意に不幸にさせたとき、君は後悔しないのか?」

 

「それ、は…………」

 

「この村のことは良く分からんが、君が居なくなることで不幸になるのは予言の必要もない位に確定的だ。まず君の父上は悲しむだろう、君の妹も悲しむだろう、村の皆も悲しむだろう。塞ぎ混んで、重い病気にかからないといいがな。そればかりか、君を探しに村を出る者もいるだろう。そこで不幸な事故に遭わないとも限らない。世の中、何が起こるか解らないんだからな。君の妹には君が担う筈だった役割を押し付けることになるだろうし、もし旅先で君が死んだ場合、君の父上はもしかしたら後を追うかもしれない。…………これは起こり得るだろう予想の触りだが、ここまで考えたか? もし考えたとして、その覚悟で踏み切ったのか? 答えろ、家出少女」

 

…………分かっていました。頭のどこかで、そういう確信はありました。でも、それを考え始めると辛くなって、気が付かないふりをして。

 

でも、なら、私は。

 

「なら…………私はどうすれば良かったのですかッ! どうしようもなく身勝手だと! どうしようもなく悪いことなのは分かってます! でも…………私だってどうしようもないんですよッ! このままだと、後悔しかない! 何がしたいんですか、何がしたいんですか貴方はッ! 肯定するようなことを言っては、否定するように諭してくる! 私を、迷わせたいのですかッ!」

 

「うん、迷わせたかった」

 

「何故ですか!? 私が悩む姿を見て、楽しみたかったとでも!?」

 

息を切らして叫ぶ。涙も、溢れてきました。何も知らない癖に、私の心を引っ掻き回すこの男が、心底憎く思えたのです。

 

「……後悔して欲しくないからね」

 

「…………え?」

 

「後悔して欲しくないから。だから、しっかりと考えて貰う為にも、迷わなくちゃいけないと思ったんだ。見て見ぬふりをした現実も直視した上でね」

 

そう言ってショウさんは、苦虫を噛み潰した様な顔で語り始めました。

 

◆◆◆

 

馬鹿なガキの話をしよう。

 

そのガキは、故郷を災害で失った孤児でね、その災害が人為的なものだと分かると、すぐさま復讐に奔った。

 

そして復讐に奔走する中、後にガキが師匠と慕う女に拾われた。

 

最初は冷えきった関係だったが、徐々に仲は深まる。寝食を供にし、時には稽古を付けてもらい、四六時中一緒にいたんだ、余程問題がなければ自然な流れだった。

 

ガキはその女を師匠とは呼ぶも、自分の親代わりだと、母親の様だと感じるようになる。それは女の方も同じだった。

 

が、コレがガキの心を悩ませることになる。

 

ガキはある時気が付いた、復讐の念がある程度治まってしまったことに。故郷のほぼ唯一の生き残りであるガキは、そのことに申し訳がなくなった。自分一人だけが生き残り、細やかな幸せを享受しているこの状況が、赦せなかった。

 

だがしかし、それで女を捨てて姿を眩ませようとするには、過ごした時間が長過ぎた。情が移るなんてモンじゃない、間違いなくその女はガキにとっての母親になってたんだ。

 

だから、ガキは考えることをやめて、女を捨てた。あれこれ理由を付けて自分を正当化してな。

 

考えることをやめて、復讐に取り憑かれて走る。しかし後悔だけは足元を泥濘の様にし、風の噂で伝え聞く母の様子に心を痛め動きを鈍らせ…………。

 

結局ガキは復讐も果たせず、死んだ。最後に、自分が捨てた母親に懺悔しながらな。

 

◆◆◆

 

「不様過ぎて、一周まわって笑えなくなるくらい、馬鹿なクソガキだったよアレは。というわけで盛大に笑ってくれ、アッハッハ!」

 

笑えるわけがなかった。笑えなかった。それは、この先の私の未来を暗示するかの如き内容だからという訳でなく…………なんとなく、その『ガキ』というのが誰のことなのかを、朧気に察してしまったからでした。

 

「まあ、だから、うん。この話で何を思うかは知らないけどサ。よくよく悩んだ方がいいと思うナー」

 

そう言って彼は神殿を後にしようとして、ふと立ち止まり、ああそうそう言い忘れてた、と振り返り、口を開きました。

 

「君の問題は君だけの問題じゃない。こうやって俺が口出ししたけど、これって親しい人が気が付いてもいいと思うんだよ。君は身勝手だ、でも同じくらいに優しい。だからね、子供のように怒ってもいいと思う、というか君はまだ子供なんだし。さっきみたいに泣きわめくのもいいし…………ほんのちょっと家出して、戻ってくるでもいいし?」

 

「あ…………」

 

「最終的に、どんな着地になるかは神ならざる俺には分からないけれど。自分も、周りもこの問題を考えさせる様な状況を作るのは、悪くないと思うんだ。じゃ、おやすみなさい。家出少女、悩んで悩んで悩みまくるがいい」

 

…………まるで、嵐の様でした。言いたいことだけを言って、そして唐突にいなくなる。でも、私の心に掛かっていた靄も、吹き飛ばされた様でした。

 

「……………………よし」

 

…………村を出ていくのは、とりあえず保留にしておきましょう。務めを放棄するにしても、なるべくしこりは残したくありませんから。

 

ですが、それとこれとは話は別。少しぐらいは…………我が儘をしてみたいと思います。

 

私は、心持ち軽くなった足取りで自分の部屋に向かい、支度を始めるのでした。

 

(…………やっぱり、変な人。でも、)

 

ありがとうございます、賢者さま。

 

 

◆◆◆

 

お父様、イシュラへ。

 

少し家出します、一週間程で戻ってくるので安心してください。

 

レヴィア・アローネ

 

◆◆◆

 

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