魔法使いに、こんな人がいるなんて!
─────レヴィア・アローネ
[(;゜0゜)]
魔法使いなんて人間は、10人に8人位は嫌な人間。そう決め付けたのは、2年前のことだったか…………。
当時、コヴォルトが森に現れたことがあり、モンスターとしては小物だけれど、放置しておくには危険が過ぎ、この近辺では大きな、メルダの町にて依頼を出したのです。
その依頼を受けてやってきたのは、戦士3人、魔法使い1人、リーダーがその魔法使いというパーティー…………だったのですが、この魔法使いの男が、汚い言い方をすれば、嫌な奴だったのです。
レベル20という高レベルで、それを鼻にかけて威張り散らすなど、どう言い繕っても良い人物、とは言い難い人間でした。
それだけなら、良かったのでしょうが、そのパーティーを持て成し、滞在する場所を提供するのは村長の家…………つまり、私達の家でもてなすことになったのです。
その魔法使いの男は、しつこく私に言い寄って来ました。自分はここが凄いだの、こんなことも知っているだの、自慢しながら、だから私の番になれと言わんばかりの態度でした。
でも、コヴォルトを倒してもらうまでは、ご機嫌を取らなくてはならず、損ねてしまうようなことがあれば、コヴォルトによる被害が拡大してしまう…………。
だから私は、耐えるしかなかった。村長の、神官の後継、アローネ家の長女として、その責務を全うせねばなりませんでした。最終的に、その様子を見兼ねた村の青年団の団長であるジャッコーさんが、私を引き取ってくれて事なきを得ましたが…………あのまま家に居たらどうなっていたのか、今でも思い出すと身震いが止まりません。
その時からでしょう、村長と神官を継がなくてもいい自由な妹が羨ましくおもい、自由になりたいと願い…………魔法使いを憎むことになったのは。
[(-_-)]
そんな中、我が家にやってきたのは奇抜な服を着た2人組。イシュラが言うには、おとぎ話の勇者様のように強い、との事ですが。
「まあおとぎ話の勇者様かどうかは知らないけど、そこそこの高レベルっスよ。ほら」
軽薄そうな方が、自分のステータスを見せてきました。
成る程、確かに驚愕です。人間離れをしていると言い換えましょう。だって、レベル64だなんて、それこそイシュラの言う通りおとぎ話の住人です。
ですが、
「ウォーザード……魔法使い?」
伝説級の魔法職『ウォーザード』。高いMPを持ち、様々な分野の魔法を修める、賢者とも言うべき存在。
ですが私にとって、伝説級だろうと何だろうと、魔法使いという存在は、唾棄すべきものでありました。
「えっと、あのね。魔法使いといっても、ショウさんはすっごい良い人だよ。だから、誤解しないでほしいな」
事情を知っているイシュラが、フォローを入れても。私はお父様にこう言わずには入られませんでした。
「お父様、どういうことですか。魔法使いを家に連れてくるなんて!」
その魔法使いの男は、ハッキリとその顔を悲しみで歪めていましたが…………その時は、それが演技にしか思えず、嫌悪を込めた視線を向けるのをやめる事ができませんでした。
ですが、
「レヴィアさん、と言ったか? 君に何があったのかを知らないから、無責任なことを言うけど。あいつは俺の相棒で親友で、ビックリするほどいい奴だ。だから魔法使いと言うだけで邪険にされるのは…………不愉快だ」
私のそれと比べ物にならない位の嫌悪感が込められた視線を、魔法使いの隣にいた男性に向けられ、思わず立ち竦んでしまいました。
その後、その男性はすぐに駆け出して消えた魔法使いを追いかけて行ったのですが…………私はどうにも、釈然としない気持ちを胸に抱えたまま、お父様にお叱りの言葉を受けるのでした。
[(・_・;]
「姉様、少しいい?」
家に戻った後、妹のイシュラが私に声をかけてきました。
「どうしたの、イシュラ。貴女もお父様と同じ様に私に怒る気?」
「ううん。あたしは、姉様の気持ちも分かるから…………」
何を知った風に…………! と思わず声が出そうになりますが…………流石に大人気ないので、気持ちを無理矢理押さえつけて、先を促しました。
「あのね、本当にショウさんは悪い人じゃなくて、いい人なの。あたしがモンスターに襲われた時も、ユーゴさんと一緒に助けてくれたし、HPがほんの少し減ってるからって、魔法をかけてくれようともしたんだ」
でも、その位なら下心、で片付けられるではないか。
そう思っていたら、
「それにね、少しだけだけど、戦い方を教えてくれたし、何なら魔法書も書いてあげるなんて言われたの。あたしね、姉様に言い寄る男共を見てたから分かるけど、下心無し、まるきりの善意だった」
「…………!」
思わず、目を見開きました。
魔法書を書く、と言うのは並大抵の事ではありません。例え低級魔法であれども、その値段は高いのです。それもそのはず、読むだけで魔法が使える様になるのですから。
話の流れからして、あの魔法使いはおそらくタダで書くつもりだったのでしょう。
「あとね、確かに魔法はちょっと使うけど、近接戦闘ばっかりで、全然魔法使いらしくないの! 本人はMPの消費を抑えるためにー、なんて言ってたけど、多分あたしっていう護衛対象がいたから、壁になってたんじゃないかな?」
話を聞く度に、私の中の魔法使い像が崩れていきます。
2年前に来たあの魔法使いは、魔法を使うことに固執して、その守りを戦士たちに固めてもらい、まるで高みの見物を決め込む様な戦い方をしていた様に、記憶しています。
「いくらレベルが高くて、いくらあたしよりも防御力が高くても、ダメージを受けるのは怖いと思うんだ。でも、ユーゴさんもショウさんも、それを恐れずにあたしの前に立って…………姉様が、魔法使い嫌いなのは良く分かってるけど、ショウさんに関しては、その認識を外してもらいたいかな…………」
…………確かに、命の恩人を貶されて良い気はしないでしょう。それに、イシュラにここまで言わせるあの魔法使いが、俗に言う嫌な奴、であるはずがなく。
(…………あ)
その時不意に思い出した、あのハッキリと傷付いた顔。
「わ、私は…………」
あの人を、傷付けた。
[!(◎_◎;)]
戻ってきた、魔法使いではない方のユーゴさんから、そのショウさんの居場所が漏れた瞬間、私は走り出していました。
村の門を出て、少しした所に…………
「ハァ……ハァ……ここ?」
森の入り口辺りで野宿するつもり、と聞いてやってきたのですが…………。
「えっと、家?」
なぜかそこには、立派な木造の小さな家が建っていました。
ど、どういうことなんでしょう。最早これは野宿ですらなく…………というかいつの間に家を…………などといった疑問が、頭の中でグルグルと巡るうちに。
「ふんふふーん♪ あ、」
その家から出てきたショウさんが、私を見つけて、困った様な顔で笑いました。
「えっと、もしかして叱られて謝ってこいって言われたのですか?」
「い、いえ…………」
真っ先に出た言葉がこれ…………余程私は、嫌悪感丸出しだったのでしょうね…………。
「別に、誰に言われたわけでもありません。ただ、妹の恩人に対する対応ではなかったことを、どうしても謝りたくて…………本当に、ごめんなさい」
「い、いやぁいいですよそんな。それにメインで彼女を助けたのはユーゴですし、命の恩人って程じゃあありませんよ」
「ですが…………」
更に困った様にアセアセとしながら、ショウさんは右手で頭の後ろを掻きはじめました。…………なんというか、本当に魔法使いらしくないです。
「本当、嫌われるのとかマジで慣れっこなんで。それよりも、レヴィアさんが嫌な気持ちになってないかちーっと不安なわけです」
だから、放っておいてくれと言わんばかりに、ショウさんは家の中に戻ろうとして…………私は、そんな彼を見続けることしかできなくて…………。
「……………………」
「……………………」
ピタリ、とショウさんの動きが止まり、後ろを振り返りました。何故か、凄く居心地が悪そうです。
「…………ん”ん”。別に謝罪はいいけど、ここまで足を運ばせてしまったし、お茶でもどーぞ」
そう言い残して、ショウさんは扉を開けたまま、家に入って行きました。
…………あれ、何かがおかしい気がしてなりません。
[( ? _ ? )]
「…………んで、木材を切り分けてパーツごとに組んでいけば、こんな感じで簡単に家が作れるというわけです」
「へ、へぇ…………」
招かれた家の中は、一部屋しかない質素なものでしたが、あの一瞬で作られたことを考えると、ビックリせざるを得ず。そのことについて質問をしながら、私は出されたお茶を呼ばれていました。
そのお茶にしても、ウォーターボールとファイアーボールをぶつけた中に、お茶の葉を投げ入れ、氷で作られた大きなポットにそれを落として淹れられたものという、常人では考えつかない様な業のそれだったのですが。
「ですが、木を伐るには魔法は向いていないのでは?」
「一応ウォーターカッターってのがあるですけど、まあ面倒だったんでその辺の大きめの石を砕いて石斧を作ってそれで伐りました(いやー、流石に素手とかは言えねー)」
「な、なるほど…………」
聞けば聞くほど、魔法使いらしくないお方です。特に威張ったところもなく、知識をひけらかすでもなく…………話も面白いですし。
「ショウさんは、旅人なんですよね? 私はアルダ村から出たことがあまりないので、外のことをあまり知らないのですが、やはり楽しいものなのですか?」
「あー、ええ。凄く楽しいですよ。でも、同じくらい辛いこともあったし、悲しいこともありました」
ふと気になって訊ねた質問に、ショウさんはどこか遠い所…………まるで、別の世界を夢見る様な目をしながら、そう言いました。
そしてその目は、この今の生活から抜け出したいと思っている私の目にそっくりであり…………。
「時折今でも思い出すんです。あの頃に戻れたら…………まあ、今も今でとても幸せですけどね」
同時に、現状を受け入れてあるがままの幸せを享受しているかの様な、正反対の目も、していました。
もしかしたら…………この人なら、私が長年胸の内で溜めてきた思いを、理解してくれるのかもしれない。
そう思って、口を開こうとしますが…………勇気が出ませんでした。
あって間もない人に、それも私が傷付けた人に、こんなことを話するなんて、到底できそうにありませんでした。
「ふぅん…………? レヴィアさんは、何か悩み事があるんですね?」
「…………ッ」
直後、見透かされたかの様な目を向けながらそう言われた時、私は思わず震えました。
「あ、ああ別に無理に聞き出そうとかそういうつもりはありませんよ。でも、もし話したいのなら、不愉快にさせた分は付き合いますよ。深刻な悩みって、偶に家族には話せなかったりするものですし、たまたま会っただけの風来坊に話するだけでも、変わったりすることもありますしね」
そう言ったショウさんは、氷のポットを持ち上げて、木製カップにお代わりを注ぎ、
「まあなんにせよ、一旦落ち着くことですねぇ…………俺も、貴方も」
ケラケラと笑いながら、そう言いました。
「…………でしたらショウさん」
「はいさ」
「お詫びも兼ねて、ウチに来てください」
「…………え、いやちょ、いやァァァアアアアアッッッ!!!?」
おうおう、ハーレム崩れそうやんけ
→(めそらしー)
更新早いね!?
→ノリに乗った結果。
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