武器がないのきちーな。せめて刃物があれば…………!
─────宮本翔
[(-_-)]
半ば無理矢理アローネ家に連れられてしまった俺。ユーゴがなんか納得って顔してるのが気にくわない。
とりあえず、オランドゥさんが誤ってくるのをお気になさらず、と言いつつも何故か張り詰めた雰囲気に疑問が浮かぶ。
「それよりも、顔が青ざめてる様に見えるのですが…………何かありました?」
「ああ、そうでした! ガードアントが出没したということで、近くにクイーンアントの巣が作られてることが判明したのです! 今すぐ対策を取らねば…………!」
お、おおお?
これはまさか…………!?
と思ってユーゴを見ると、あいつも力強く頷いていた。
「オランドゥさん。そういうことなら是非、俺たちに任せてください」
「そーですよ! タダでカバンなどを融通してもらうのも心苦しかったところです!」
序盤ステージにしては、ヤケにハードなステージだったが、今のレベルからすれば片手間同然。なんなら低レベルの誰かを連れて行っても問題ないレベルである。
「え………それは…………ですが、それではあまりにも対価が釣り合いません」
「そんなことありません。寧ろ、クイーンアントはとある武器をドロップするモンスターです。俺達の武器のためにも、是非行かせてください」
そうっ! ここで自分達のためにと言っておけば、相手は引き退るのだ! 例え本心が諸々見え見えでも、建前でもそう言っておけば、口を挟むのを躊躇うものなのだからね! ユーゴ分かってるゥ!
「こうしてこのタイミングで俺たちがトラブルに巻き込まれたのも、何かの縁です適材適所とも言いますし、任せちゃってください」
「本当によろしいのですか?」
「ああ、確かに話が上手すぎると思うでしょうが、こうなったら勿論対価はしっかりといただきますよ! 多少の食料に靴、あと鍛冶施設の一時貸与! 寝床は…………まあこっちゃでも用意してるんでいいですが、先程もお願いした内容をなんとかしていただけると約束していただけるなら、です」
悪い話じゃ、ないでしょう?
「そういうことでしたら、ぜひお願いします。お二方がこの村の近くに現れたこと、感謝いたします」
そう言って、オランドゥさんはニカリと笑って御礼を。
「よーし、そうと決まればレッツゴー鍛冶屋さんだ! 流石に武器が欲しいので!」
この時俺は、非常に浮き足立っていた。
久々に、チリチリと命を削る様なあの戦いの舞台に舞い戻ることができるのだと。
…………だからまさか、翌日になって、イシュラちゃんとレヴィアさんが参加するなんて、聞いてなかったんだ。
[(・_・;]
武器専門でない鍛冶屋。と聞いていたけれど、成る程確かにその通りで。
「爺さん、ここはこうやってこう! で、こう流し込んでちょいと放置!」
「お、おう!」
でも、炉は田舎の鍛冶屋にしてはそこそこ高温の出るものだったので、軽く教えたら…………
「ほいでけた! あとは研いで形を整えたら完成ね!」
「お、おおお…………!!!」
そこそこ整ったロングソードの刃の出来に、この鍛冶工房の主であるゴーダさんが、感嘆の声を漏らす。
「ありがとうございます賢者殿! お陰でワシもそこそこの剣を造れそうじゃ…………!!」
「あーあー、そんな感極まった声出さないでくださいよ照れるなぁ…………それに、賢者なんて柄じゃないですし」
実際、柄じゃないしね! 本職はバリバリ近接だもの!
「では、この炉を貸していただいても?」
「勿論ですじゃ!」
「ありがとうございます!」
さてさて、どんなものを作ってやろうか…………! 我が身は鍛冶師に在らねど、まごう事なき魔法師也! この世界が完全にゲームのシステムのそれと同じでなければ、新たなマジックアイテムを作ることだって…………!!
「まずは、異世界ファンタジーでのど定番からだな!」
使ってもいいと言われた鉄鉱石を掴み、俺は火を起こし始めた。
→3時間後→
「で、でけた…………!!」
その長く、光を受けて先端が鈍く光を反射するそれは、俺の創作意欲を満足させるに足るものだった。
「シッ、ハッ、セイッ!」
構える、振る、突く。単純なこの動作が出来るだけで、この武器は近接戦闘もこなせるということが分かる。
「二つ目作って、二刀流も面白そうだな…………まあ次はちゃんとユーゴの武器を作らなきゃだが」
炉を暖めながら、どんな武器がいいだろうかと考え、最終的に幅広長さ1メートル程度の剣でいいか。ゴーデスナイト固有必殺に耐え切れればそれでいいわけだし。
うぼぁー…………夢が広がりんぐ。ここにフォトンがあれば、もっと色々できたのだが…………まあ無い物ねだりしても仕方がない。
「じゃ、材料に魔力を練り練り♪」
創作モノだと、勇者のサポートはパーティーの魔法使いがするものと、相場が決まっている。だから、ちょっぴりこの定番ポジションに収まってすっごい楽しいのである!
「…………賢者殿、凄く楽しそうじゃのう」
[♪───O(≧∇≦)O────♪]
真っ暗になって、いざアローネ宅に戻ってみれば既に夕食の準備が整っており、是非と言われたので御相伴に預かることにし、日本じゃ滅多に食べない、とても美味しい欧風家庭料理に舌鼓を打っている最中。
「……………………は?」
思わず俺は、マジトーンで声を漏らし、食卓を凍りつかせてしまった。
それもそのはず。
なんとイシュラちゃんとレヴィアさんが、明日のクイーンアント討伐戦に着いてくると言うのだ。
思わず口を滑らせてしまったのだろうイシュラちゃんは、露骨にしまった! という顔を晒し、ユーゴとレヴィアさんはあーあ……と言わんばかりに頭を抱えていた。
「お、おいおいおい…………ユーゴ、お前それを認めたのか?」
「…………条件付きでな」
ユーゴの定めたその条件。
・ガードアント、またはそれ級のモンスは俺とユーゴ持ち
・ジャイアントアント級以下なら、2人に任せる
・必ず俺のエンチャントを受ける
・体力が1/4減ったら、迷わず後ろに下がり、回復するまで前線にでない
…………まあ、コレだけ固めれば問題はないだろうがそれよりも。
「らしくねぇなユーゴ。テメーこういった場に女の子なんか連れて行きそうにねーだろうが」
「普段なら、そりゃ俺もしないさ。でも、この世界はモンスターが跋扈する世界だぞ?」
…………言わんとしてることは、分かるが。
「以後こんなことがあっても、村の中で対応できるように経験してもらうことがメインだ。だから明日は2人だけじゃなくて、村の方々も討伐戦に加わるそうだ」
「むー…………」
なんというか、腑に落ちねー。
いや、ユーゴの言ってることは分かる。分かるんだが…………その、なんて言うか。
「…………危なくない?」
有り体に言えば、超絶不安なのだ。いや、命に代えても守る覚悟はあるが、不測の事態が起きかねない、人の命が簡単に失われそうなこの世界でそれは、少々楽観視しすぎじゃね? と思うわけだ。
「過保護が過ぎるぞショウ。流石にそれは、自動車に轢かれるから外に出せませんって言ってるのと同じだ」
「で、でもだな!」
「お願いしますショウさん!」
「お、お願いします!」
うっ…………女の子2人の視線がキラキラしてて痛い…………!? クソ、どうなってもこう転ぶことが分かってやがったから、大して慌ててなかったんだなあんにゃろう!
「…………へーへー分かった。民主主義的に、多数決で決まったと思って飲み込んでやんよ」
「やったあっ!」
俺の諦めの言葉に、イシュラちゃんが飛び跳ねながら喜び。
「こら、はしたないわよイシュラ」
叱りつつも、その顔に安堵を滲ませるレヴィアさん。
「本当、お転婆な娘達で申し訳ありません」
苦笑しながらオランドゥさんが暖かい目をし。
「というわけで明日は頑張るぞ、相棒」
ユーゴが、一本取ったと言わんばかりに笑った。
「ハァ…………しゃあねーな!」
結局、俺もその空気にあてられ、笑顔を浮かべる。
笑顔で囲む食卓は、何よりも幸せな空間だ。そのことを再認識させてくれたこの家は、間違いなくいい家族なのだろうなぁ。
「うむうむ…………やっぱご飯食べてると、作りたくなるな」
「え、ショウさんも料理が作れるんですか?」
「ええ、男が作る乱雑そのものな料理ですが、味の程はまぁまぁですよ?」
「何言ってんだ、お前の料理食って何人の女の子が膝をついたのか覚えてないのかよ?」
「…………しらなーい♪」
「け、賢者殿はなんでもできるのですね…………」
「「……………………」」
近接戦闘『も』できる長物武器ってまさか!?
→分かったあなたは凄い。
ショウさんオールマイティ過ぎィ!
→すまんな、前世が前世なだけに色々スペックはカンスト状態さ。
たしかこの世界のレベルって、魂の強さだよね? でも、異世界英雄のショウが、元一般人のユーゴに魂の強さで負けてるとは思えないんだけど。
→…………ノーコメ! いずれそのことについてはやる!
というわけで、次回もよろしくお願いします!