正統派の勇者さまに、かなり変わった賢者さま。雲の上の人に見えるけど、その実親しみやすくて…………。この2人に会えたのは、このあたしイシュラ・アローネにとって、最高の幸運に違いない!
─────イシュラ・アローネ
[(((o(*゚▽゚*)o)))]
あたし、イシュラ・アローネは、ちっちゃい頃からとにかくやんちゃだった。女の子がするような遊び…………例えばおままごとなんか、一つもやったことがなくって、代わりに男の子に交じって駆け回ったり、虫取りをしたり、戦争ごっこしたり…………あれ、今思えばあたしって、相当おかしい?
でもあたしは、そんなことを気にしたりはしなかった。例え、お父様に姉様とは大違いと言われようと、あたしはあたし、姉様は姉様と割り切っていた。
だから、そんな男勝りなあたしが、大人に黙ってモンスターを倒そうとするのも、そんなにおかしくないことだったし…………
「キィィィィイイイイイイッ!」
「あ、ああ…………!?」
その向こう見ずな行動の罰を受け取ることになるのは、自然な流れだった。
目の前で、大きく振り被るのは、『ガードアント』というモンスター。私が倒したことのあるジャイアントアントよりも大きいその体と、分厚そうなその甲殻は、あたしの攻撃じゃどうにもならないことを、悟らせてしまった。
逃げようと走り回るも、ガードアントの方が足が速くて、
「に、2体目!?」
さらにもう一匹が、騒ぎを聞きつけたのか、あたしを追いかけ回し始めた。
人間の、それもレベルがたったの5しかないあたしじゃ、逃げ切れるわけがなくて。
「あうっ!?」
足がもつれて前のめりにこけてしまった。
ああ、怖い怖い怖い! 足音で分かる、もうすぐそこまでガードアントが追いかけてきている!
(父様、姉様、ごめんなさい…………あたし、命の無駄遣いしちゃった。母様のところへ、一足先に…………)
音も聞こえず、次回も白く染まり、あたしはどこか諦めながら、その時を待っていた。
…………でも、覚悟した死は、訪れなかった。
恐る恐る前を見る。
すると、姉様ぐらいの歳の男の人が、腕をガードアントに突き刺していた。
ガードアントのHPバーは、全て真っ白になっていて…………それは、ガードアントが倒されたということを示していた。
「ふぅ…………えっと、無事かな?」
そう言って、ちょっと戸惑うように振り返る、男の人。
その姿が、あまりにもカッコよくて…………。
(ゆ、勇者さまみたい…………)
あたしにも、女の子らしい部分があったんだ。
あたしの前に颯爽と現れたその勇者さまに、一目惚れしてしまった。
[σ^_^;]
そんな、運命的な出会いをした翌日。今日はあたしを助けてくれたユーゴさんと、意識が朦朧としていたせいでちゃんと思い出せないんだけど、2体目の方のガードアントを倒してくれた、魔法使いなんだけど、全然魔法使いらしくないショウさんと一緒に、クイーンアント達を倒しに行くのだ!
そのことに浮き足立って、思わず早起きなんてしちゃって、昨日のユーゴさんやショウさんの動きを思い出しながら、自分の剣で素振りなんかしちゃったり。
「えっと、とうっ! 違うなぁ…………てやっ! しっくり来ないなぁ…………」
ユーゴさんもショウさんも(ショウさんは魔法使い)、使っていたのはゴテゴテしたナイフだったものの、その剣閃は歴戦の戦士のそれ(何度も言うけど、ショウさんは魔法使い)。多分、見ただけでどうにかなる動きじゃないのは分かってるんだけど…………でも、真似できるのならしてみたかった。
「へぇ、素振りかぁ。感心感心!」
「ふぇっ!?」
背後から声がして、変な声を出しながら振り返ると、そこにはショウさんがいた。
「も、もう! 脅かさないでください!」
「あはは、悪い悪い。イシュラちゃんが、一生懸命素振りしてるもんだから、思わず、ね」
そこでショウさんは、なぜか持っている、あたしの剣と同じくらいの大きさの剣を構えて。
「シッ、ハッ、フンッ!!」
まるで、踊るように剣を振り始めました。その一振り一振りが、大ダメージを生むことは、簡単に想像できた。
「ま、戦士職じゃないからこんなもんかな?」
「いやいや!? 前にこの村に来た戦士職の冒険者でも、ショウさん程剣を振れてませんでしたよ!?」
本当に、この人は魔法使いなのだろうか…………いや、ステータスウィンドウがそう映していたから、本当にそうなんだろうけど…………。
「でも、こんなモンだよ。多分今の俺じゃ、ユーゴ程は振れない」
でも、ショウさんは納得がいってないのか、仕切りに剣を振り回しながら、首を捻りつつ、その目を尖らせていった。
「あ、そだそだ。イシュラちゃんイシュラちゃん」
「あ、はい」
目で追うことができなくなるんじゃないだろうか…………という速さまで達した時に、ショウさんはその動きをピタリと止め、あたしの方を向いた。
「慣れない内は、あまり大きく振り被るのは、止めといた方がいいと思う」
「え、どうしてですか!?」
大きく振りかぶった方が、ダメージが大きい。その辺のイノシシを相手に戦った時に分かったことだ。
だというのに、ショウさんはそれを止めろと言う。
「だって、あまりにも隙が大き過ぎて…………」
む、それはちょっと聞き捨てならない。
確かに、ユーゴさんやショウに比べたら、あたしの剣技なんて、勇者ごっこしてる男の子の真似事なのかもしれないけど、そこそこ振り慣れているのだ。
だから、大丈夫なことを証明するために、大きく振りかぶって、
「てやっ!!」
振り下ろしてみた。
で、隙ができないように剣を引こうとするが。
「遅いよん?」
「ッ!!」
首筋に、手があてられていた。
「振り被っての一撃は確かに強力。ちゃんと決めきれる時なら、必殺になり得るけれどね。でも、その振り切った体勢は隙だらけそのもの。ジャイアントアントなら無理でも、ガードアントならその隙は突けると思う」
ショウさんのアドバイスに、あたしは一々納得させられてしまいます。
確かに振り切った後の体勢は、横がガラ空きで、攻撃してくれと言わんばかりだ。
「扱いに慣れてくると、自然とその対処法も身につくんだよね。でも教えてどうこうなるものでもないから、修練あるのみ! とにかく今日は、それを意識して攻撃してみたら、どうかな?」
そう言って、ショウさんは家の中に入っていった。
…………うん、そのアドバイスはとても助かるし、嬉しいんだけど。
「…………なんでウォーザードやってるんだろうあの人」
それとも、賢者はなんでも知っている、ということなのかな?
「(羨ましい…………)」
「(…………はっ!? 嫉妬の視線!?)」
[(・_・;]
そんなこんなで朝食を済ませ、集合場所の村の門に向かうことになり、既にそこには、村の青年団のみんなが顔を揃えていた。
「おいおい村長。ひょっとして凄腕の旅人ってのはそいつらのことか?」
青年団の団長のジャッコーさんが、疑わしそうにユーゴさんとショウさんを見る。確かに、見た目だけなら間違いなくジャッコーさんの方が強そうなんだよねー。大きいし、腕も足も丸太みたいに太いし。あの腕で殴られたら、ショウさん辺りはボッキリ骨が折れそうだよね!
「ま、普通そうだよな」
「うんうん、そうなると思って…………ゴーダ爺!」
でも、2人には予測済みだったようで、ショウさんが村唯一の鍛冶職人であるゴーダお爺さんの名前を呼ぶと。
「ほいさ! まかしとくれ賢者殿!」
その場にいた、おそらくみんなの武器を用意しに来てたんだろうゴーダお爺さんが、ユーゴさんとショウさんに、それぞれ鉄の塊を投げつけました。…………って、
「あ─────」
危ない! と言おうとしたその時既に。
「セイッ!!!」
「バーン!」
昨日、ショウさんが作ったらしい武器を持った2人が、それぞれに行動を始めていました。
まずユーゴさんは、刀身が赤くとても長い剣で、鉄の塊を一振りでたくさん斬り刻んでいました。
あの一瞬でどうやって!? なんて疑問が起こりますが、それよりも先に思うことは、『流石ユーゴさん、カッコいい!』という感想だった。
一方ショウさんは、先っぽに小さな剣のついた、鉄の筒から火の槍を放って、鉄の塊を撃ち落としていました。おそらくあれは、フレイムランス。でも、記憶にあるそれよりも遥かに速いし、赤い。多分、あの謎の武器のお陰なんだろうけど…………それよりも思ったのは、『ああ、なんかようやっと魔法使いらしいことしましたね、ショウさん』という感想だった。
「ふんふん、『魔剣ファイア』の調子はいかがかね?」
「攻撃力は低いけど、まあ扱いやすい。それよりもお前、銃はないだろ銃は!」
「ばっかお前、昨今の魔法少女モノだと銃なんてありきたりじゃねえか!」
そんな、一般人には到底できないことを、息するようにやってのけた2人は、まるでいつものことのように世間話を始めました。…………お2人共、凄すぎます。
でも、直に2人の戦いを見ていたあたしはまだマシな方で、父様や姉様、そして青年団のみんなは口をあんぐりと開けて、驚いていました。
「な、成る程。凄腕ってのはこれ以上ないくらい理解した。ところで、もしよかったらステータスを見せてくれないだろうか?」
さっきの不機嫌そうな顔が嘘のような、びっくりしたままの顔で2人にそうたずねるジャッコーさん。別に、あたしのことじゃないのに、2人が凄いということを知ってもらえて、なんだか嬉しかった。
その後、2人がステータスウィンドウをみんなに見せることで、さらに騒ぎが大きくなって、出発が少し遅れたのは余談。
[(^.^)]
森を抜けた先、あたしがおそわれ、ユーゴさん達と出会った葉擦れの草原にたどり着くと。
「あれを見ろ、ガードアントだ!」
ジャッコーさんが、声を張り上げて皆に知らせた。
指が向けられた方向を見ると…………うわぁ、本当にいたよ。昨日襲われたばかりで、いくらユーゴさんとショウさんがいるとしても、怖いものは怖い。
「とりま、バン?」
でも、その恐怖の象徴とも言えるガードアントは、ショウさんの気まぐれに放ったように見えるフレイムランスによって、そのHPを燃やし尽くされていた。
その光景に、予想はしていたけど追いつけないみんなに、ユーゴさんが言いました。
「ここから先は危険だ。パーティーを組んでいく。それ以外の人は、引き返した方がいい」
「俺も賛成。その場の味方全員にかかる様な特殊エンチャントは流石に持ってないし」
流石凄腕の旅人って感じ。2人の声音は、反論を許さないそれだった。
「うむ、それではメンバーを選抜するとしよう。ユーゴさん、ショウさん、レヴィア、イシュラ、それに…………」
「わしが行こう。無駄に歳ばかり食っているが、それなりには戦える」
ジャッコーさんが、名乗りを上げた。確かに樵として斧を振るうジャッコーさんは、アルダ村の中では強い方だ。
「あ、じゃあ俺もいく」
雑貨屋のエドも名乗りを上げた。今回の討伐のためにヒールスクロールを持ってきてくれたエドは、やっぱり村で1番気の利く男だなって感じ。
「俺もいくぞぉ!」
最後に名乗りを上げたのは、村1番の力持ち、牛飼いのディギー。太ってはいるけど、その見た目は伊達じゃない。
「うん、7人。まあ縁起もいいし、人数的にも丁度いいか」
そう言って、ショウさんは腕を天に突き上げて…………
「エナジーシールド、フレイムウェポン、ライフフォース、ビーストスピリッツ、更にダメ押しでゴッドブレスだ!」
何ごとか、呪文を唱えた。
すると、あたし達の持っていた武器が赤く光り、更に力が漲ってきた!
思わずステータスを確認すると、
「す、凄い…………!」
STRやHPが跳ね上がってる! 防御力も、ちゃんとした装備をしたみたいになってるし!
「ふふん! なんか俺のことを全然魔法使いって信じてくれないから本気出してみたぜ!」
そういうショウさんの顔は、非常に得意気で、普段の大人びた感じが薄れた、まるであたしと一緒に遊ぶ様な男の子と同じ顔をしていて。
(やっぱり、変わった人だなぁ…………)
そう思わずにはいられなかった。
「じゃあ、行ってきます! 道中お気をつけて!」
「良い報告ができるよう頑張ってきますからね!」
何はともあれ、ようやっと、あたし達の冒険が始まるんだ…………!
怖いけど、楽しみで楽しみで仕方がないっ!
おいおい、銃はあかんやろ…………
→いや、こうでもしないと魔法使いらしいことしなかったし。
実際、ユーゴとショウが戦えばどっちが勝つのん?
→条件によりけり。なんでもありなら、ショウの方がやや有利。
というわけで、慣れない女の子視点を通り過ぎたからあとはヒャッハーな戦闘シーンだ!←戦闘シーン苦手なやつ