この感覚…………やはり戦闘は、最高だ。
─────宮本翔
[(^.^)]
地面を蹴り、標的を目指して駆け抜ける。
「キィィイイイッ!」
わめき声と共に酸弾が、口元から放たれるのを、体勢を低くして回避。そしてそのままその巨体の下から───────
「…………ッ」
発砲と共に刺突。胸部を貫かれ、大きくのけぞった標的は、そのHPを完全に減らして後ろに倒れる。
しかしこれでは終わらない。さらに横から襲撃してくる標的をバックステップで避け、
「シッ!!」
「キギャッ!!?」
回転をつけて銃剣を振るい、首を跳ねる。
そして、背後から分不相応にも襲ってくる標的に対しては、
「Bang」
視線どころか、そちらへ向くことすらなく、銃口を後ろに向けて発砲。
見なくてもわかる、標的を撃ち抜いた感触。
「フゥッ…………」
銃剣による、遠近織り交ぜた戦闘は初めてだったが、感触は良好。あとは優秀な鍛冶師に造ってもらう上で、この『魔銃』という概念を理解してもらうための資料作りとデータ集めか。
こう言ってはなんだが、標的……ガードアントはサンドバックに丁度いい。許せガードアント、君らの犠牲は無駄にはしない。
「ほぇえ…………流石、師匠の師匠」
いつの間にか、ユーゴのことを師匠と呼ぶイシュラちゃん。交代交代して、ガードアントの群れを討伐しているのだが、ユーゴの剣技に惚れ込んだようで。まああの剣技を1日で仕込んだの俺だし、師匠の師匠って表現は間違いではない。
「そうだ、ショウさんは大師匠ですね!」
「待て、どうしてそうなる?」
別にショウでいいじゃないか!?
つか、俺如きが大師匠とか…………前世の師匠にどやされる!!
「えっと…………大師匠?」
「待って下さいレヴィアさん。貴女にまでそう言われる覚えはありませんよ!?」
「ふふっ、冗談です」
「うぐぅ…………」
そ、そんな風に笑いかけられると、魔法使い(意味深)な俺の精神にダメージがァ…………!!!
なんて、ことはないんだけど。
でも、やっぱり美人に微笑みかけられて嫌な気はしないだろう、男の性として。
「それにしても…………」
というユーゴの声で一気に現実に引き戻され、周囲を見渡す。
「ポップ数が尋常じゃない、巣が近いのか、それとも」
「巣が複数、はないにしても、その規模が大きかったりしてな」
あたりに散らばるガードアントやジャイアントアントの残骸。切り刻まれたもの、燃やし尽くされたもの、無残にも引き千切られたもの。ガードアントに関しては俺ら。ジャイアントアントに関しては、経験値を積ませることを理由に他の皆に任せている。
村のみんなの動きに関して、特に口を出すようなことはなかった。唯一口を出しそうになったのは、レヴィアさんだけ。魔法を覚えてないのに杖装備…………? なんて思ったけど、殴れるし、いっかなーと放置している。
「しっかし、アイテムドロップは無くてGだけか…………」
「ん? ジャイアントアントとガードアントってなんか落としたか?」
「んにゃ、この世界…………エターナルは、『ギャスパルクの復活』の仕様と違うから、そういうことを期待しただけ」
仕様と違う、というのは魔法の細かな数値と、本来存在しえない武器種『魔銃』が現れたことによる判断だ。
ちなみに俺の使っているこの銃だが。
【フレイムシューター:魔攻撃力23】
【特殊能力:引金を弾くと、無詠唱で『フレイムランス』を銃口から放つ】
【追加武装→銃剣:攻撃力27】
武器の攻撃力としては、序盤では中々いい数値をしていて、基本的には杖と同じ魔法職装備の種子島型、追加武装扱いの先端に付いた銃剣。
というか、銃剣に関しても『銃』の武器種が存在していなかったため、これまた異世界エターナルと『ギャスパルクの復活』の仕様が違う裏付けになるよな、うん。
「だから、ちょーっと期待してたんだよな…………ほら、パチンコとか鉤爪ロープとかフックショットとか」
「ゼ○ダの伝説に毒され過ぎだ」
「残念、俺がやったことがあるのは時の○カリナだけだ」
まあ、今挙げたブツに関しては冗談にしても、そういうものがあってもいい。と思っていたところにコレだ。そもそもがアリ如きがアイテムなんざドロップするか! と言われたらそれで終いなんだけど。
まあそんな感じで雑談を挟みつつも、意識を全方向に向けつつ、ガードアント駆除とサポートに徹すること30分。
「あ、見てください、アレ!」
レヴィアさんが、声をあげてある方向に指をさした。
その方向には…………
「ほぉ、でっけぇ穴だこと」
「少なくともジャイアントアントとガードアントは簡単に出入りできる程度には、な」
一面の草原の中に、唯一禿げている上に、大穴。コレは、もはや疑いようがない。
「じゃあ、俺が先行する」
ユーゴが、降りても大丈夫かどうかを確認するために、先に降りた。
「おーいユーゴ。大丈夫かー?」
「おー! あと10秒待ってくれー!」
あと、10秒?
その言葉に疑問を抱いていると、穴の中から金属が何かにぶつかる甲高い音と、グシャリブチュリという、
「もうオーケーだ! 入口はそこまで深くない!」
…………俺が先行すればよかった。
[(T_T)]
出番というか、実戦の機会を失い、割とショゲてしまった俺は、でもそんなことを表に出すわけにもいかんので、顔だけは普通にして、内心呪詛をこれでもかとユーゴに送りながら、降りた洞窟の中に降り立った。
「結構暗いな…………ライト!」
光の差し込まないダンジョンには欠かせない魔法の一つ、明かりを灯すライトの魔法。そうして見えてきた光景は…………
「おぇ…………覚悟しててもコレはグロい」
「言うな、俺まで気持ち悪くなってくる」
ユーゴによって切り刻まれた、ガードアントよりもゴツい甲殻しているアリ…………ソルジャーアント達だった。
俺の後に入ってきた面々も、その光景に息を飲んだ。
「す、げぇ…………流石ですね、騎士殿」
「え、いやぁ…………この程度なら」
斧使いのジャッコーさんが、皆を代表して、感嘆の声を漏らし、それを受けてユーゴはいつになく困ったように頭を掻き始める。
…………まあ、本人的には自分の本当の力じゃないって認識なのかな。だからあんなに自信がないのかもしれない。
だから、俺がするのは息抜きも兼ねた激励だ。
「そりゃあそうですよ! 何せユーゴは俺の見込んだ男なんですから!」
「うおっ!?」
背後から忍び寄って、不意打ち気味に肩を組む。
「(確かに、今のお前のステータスはゲームで育てただけの借り物かもしんねぇ。単純にそうだとは思わねーけどな。でも、そのスペックを十全に活かすだけの技術は、他でもないお前が、昨日の夜中の訓練で覚えた、努力の証だろう?)」
不自然にならないように、腹話術でこそこそと耳打ちという、無駄な行動技能を駆使して言葉を投げかける。
「(誇れ、今のお前は少なくとも立派な戦士だ)」
そも、ただの一般人が、いくら力があると分かっても誰かの盾になるのは躊躇うはずなんだ。でも、こいつはやった。
ならば、素養は十分。
「(それでも不安になるのなら仕方ねぇ。不安にならねぇ位に稽古はつけてやる)」
言うだけ言い切って組んでた肩を離し、気合いを入れるように背中をバン! と叩く。
「ショ、ショウ…………」
「だからそんな情けねー顔すんな。大師匠の顔くらい立てやがれ!」
戯けただけはあって、ユーゴの顔の曇りも、悩みも、少しは晴れたみたいだった。
全く、世話の焼ける弟子だこと!
[( T_T)\(^-^ )]
数々の戦闘をこなし、そこそこ巣の探索も進んできたところで、イシュラちゃんのレベルが上がったので、キリがいいのでそこでお昼休憩。何気に現実に近い使用だった『ギャスパルクの復活』同様、このエターナルにも満腹度を示すFOODの数値があり、その数値が低いとステータスに悪い補正がかかるのだ。
見張りを買って出た俺は、手頃な岩に腰掛けてる。
敵自体は大したことないが、それでも気の抜けないこの空間は、前世で馴れ親しんだ戦いの空気に似ていて、逆に俺を落ち着かせてくれる。
「戻ったら、部活に入るか…………」
こういう戦いの空気は、何も命のやり取りだけで得られるものではない。ルールの中でとは言え、スポーツだって真剣に競い合う行為には違いない。
俺が動くと騒つくから、遠慮していたけど、やっぱ一度思い出せば禁断症状が出かねん。喧嘩よりも健全だし、絶対戻ったらどっかの運動部に入ろう。
と、そんな決意を定めていると、レヴィアさんがこっちに向かってくる気配が。
「あの…………ショウさん?」
「ん、レヴィアさんですか。サボらず見張りはちゃんとやってますのでご心配なく」
「いえ、そこは全く心配してませんが…………」
むぅ、じゃあなんでこんなみんなから離れた場所に…………と、疑問に思ってたら、レヴィアさんが何かの包みを渡してきた。
「お昼休憩なのに、まだ何も口にされてないと思って…………その、迷惑でしたか?」
「とんでもない!」
最悪、歩きながら俺の分を食べようかと思っていたところだ。実のところ買って出た手前、弁当を取りに戻るのは気恥ずかしかったのだ。
「いやぁ、ありがとうございます。見栄張って取りに戻るのを諦めてたところなんですよ」
「見栄……ですか?」
「だって、『見張りは俺がやります!』って、有無を言わさず引き受けといて、『お腹すいたからお昼を…………』なんて戻ったら、ちょっと恥ずかしいじゃないですか。俺もまだ17のガキ。見栄だって張りたいものです」
「そう、ですか…………」
まあ、精神年齢的にはゴニョゴニョだけど。身体の年齢に引き摺られてる部分もあるし、別にいいか。
「幻滅、しちゃいました?」
「っ! い、いえ別に」
「大丈夫ですよ。俺、あんまり胸を張れるような人間じゃありませんもの」
どう言い繕ったって、俺は戦いが大好きな野蛮人で、それが事実かどうかも分からない、前世の記憶があるなんて吹聴する奇人で。
「世間に指を指されるようなこともしました。法に裁かれかねない悪行を重ねたこともあります」
(それが事実なら)前世でも、今世でも…………まあ規模は違うけど。
「でも、それが俺なんだから仕方がないってことです」
ちょっと喋りすぎたか、と笑って誤魔化しながらそう言う。
すると、
「ショウさんは…………」
「ん?」
「ショウさんは、悩んだことはないんですか? そういう、自分の暗い部分を」
「……………………ふむ」
何か、悩み事を抱えていると言うのは分かっていたけど、そういうことか。
レヴィアさんは確か、村長と神官の後継として育てられてきたとのこと。で、妹であるイシュラちゃんへ向ける眼差し。
多分、定められたレールに乗せられてる現状が気に食わないのだろう。でも、根が良い人だから、そんなことを考えてる自分に対して嫌悪感を抱き、悩んでいる、という感じかな?
「うーむ、現在進行形で悩んでますしねぇ…………」
「で、でも。私には吹っ切れたように」
「吹っ切れているように見えるのは、ある程度割り切ってるからですよ。自分はこういう人間である、と」
そうしないと、やっていけないこともあるし。
「それに、悩んでいるから、より良い自分を形作ろうと努力できるんだと、俺は思います」
「悩んでいるから…………」
「すみませんね、何にも力になれなくて」
「い、いえ! 別にそんなことは!」
慌てたように首を振るレヴィアさんに、少しクスリと笑いながら、ふと思い出した言葉を口にする。
「『後悔の少ない選択を』」
「…………え?」
「俺の師匠が、常々言っていました。生きていれば、何度も何度も選ぶことを躊躇うような選択を迫られると。どちらを選んでも、悔いが残るようなね。でもギリギリまで、どちらの方が後悔しないで済むかを考えて動けば、残った後悔によって過度に苛まれることなく、自分の選択に胸を張れるようになる、と。万事が万事、それで片付けられるとは思いませんが、その通りだと、俺も思ってます」
「胸を…………張れる」
「少しは参考になりましたかね? じゃ、お昼いただきまーす!」
何故か、家出少女の背中を蹴飛ばした気分になったけど…………まあこれは彼女だけの問題じゃ無いし、皆で悩むが良い! ウケケケ!
ちなみに、ショウさんの精神年齢は?
→さぁてね? 少なくとも、転生システムがあるグラールは、身体を何回かリセットできるという点を込めると、もしかしたらン百歳を超え[ここから先は切り取られました]
ショウさんの今世でも法に触れかけたの!?
→ほら、戦闘意欲を満たすためにちょっとね(実は詳しいことは考えてない)
次回もよろしくお願いします!