最初の一歩だ、『勇吾』が『ユーゴ』になるための。
────────厳島 勇吾
[(゜゜;)]
「発動『サムライスピリット』ォ!」
そう雄叫びをあげながら自分にエンチャントをかけ、二挺構えた銃剣付きの魔法銃を振り回すショウ。我先にと先陣を切る姿は正に戦士職といった様相だが、一応魔法職の筈である…………多分。いや、ちょっと自信ない。
なお、エンチャント魔法『サムライスピリット』は、クリティカルヒット率を大幅に上げ、受けるダメージを少量とはいえカットしてくれる特殊エンチャントである。職業の方のサムライの習得できるスキルを、デチューン版とは言え再現できるこれは、習得条件がとても厳しいことで攻略サイト内では有名だった。…………一応戦士職が使うタイプのエンチャントの筈なんだがなぁ。
「ッシャアッ!」
そして、そんなの関係ねぇ! と言わんばかりに、ショウは群れる蟻を刈り、抉り、穿つ。思った以上に周囲に体液が飛び散ってないのは、銃剣を突き刺すと同時に放つ『フレイムランス』で傷口を焼いているからか。…………リアルな世界のお陰で
「チィ、雑魚のクセに数だけは一丁前だな…………ハッ、墜ちろ蚊トンボォ!」
敵は蟻である。
「俺が! 俺達が! ガン○ムだ!」
ロボになった覚えはない。
「俺のこの手が真っ赤に燃える!」
実際に燃やしてどうするんだ、炭化するぞ。
「俺は撃ち続けるからよ、魔力が切れねぇ限り、その先にフレイムランスはある! だから、」
魔力切れたところでお前が止まるはずがないし、むしろそこからが本番そうだし、お前の名前はオ○ガじゃないし、さっきからガ○ダムネタが多すぎる。
っと、そんなツッコミはともかく。あまりにもな敵の多さに、若干バーサーカーの入ってるショウも痺れを切らしたらしい。弾幕を張るように何発ものフレイムランスを展開し、射出。哀れソルジャーアント、爆発四散。アイテムとお金を遺し、灰となって消えていく。
「…………あの、師匠。ショウさんって、ウォーザードなんですよね?」
「……その、筈。うん、その筈」
イシュラの疑問も尤もである。というか、自分が一番疑問に思ってる。あの親友は、何を考えて魔法職に就いたんだろうか…………?
「「「……………………」」」
そしてイシュラはまだマシな方であり、レヴィアを始めとした他の村人達は、ショウの賢者とは思えないダーティな戦い方に度肝を抜かれていた。
…………嫌な予感はしてたんだ。休憩の後、ショウが『暫くは俺にやらせろ、ちょっと本気だす』って言ってた時点で。それでも、ショウのちょっと据わった目と周りの『賢者様の戦いも見てみたい』的な視線に押しきられて仕方なく。その結果がこれだ。
「…………あ、今後ろから襲いかかったソルジャーアントが急に燃えましたけれど」
「ああ、多分気配読んでソルジャーアントの真下に魔法陣作ってフレイムランスを放ったんだろうな」
「……あの、この間詠唱の隙について語ってましたよねショウさん。よくよく考えたら呪文唱えてないし、魔法で先手取れてますよね?」
「ああ、あれな。魔法に関しては分からない、いつの間にか詠唱破棄してるな。先手に関しては…………前に殴り合いで似たことをやってたな。相手の動きを予測して、その位置に攻撃を置いているらしいぞ?」
「何語ですか、『攻撃を置く』って!?」
俺も最初は何を言ってるのか分からなかった。分からなかった、んだが…………教えてもらうと案外理解できてしまうのが悔しい。
「簡単に言うと、先読みで攻撃を避ける…………の、発展系だよ。攻撃をただ避けるんじゃなくて、こちらも攻撃することで迎撃、反撃するってことだ。例えば、」
丁度視界の端でショウの撃ち洩らしたソルジャーアントの一体が妙な動きをしていたので、刀を納刀するように後ろに突き出してみる。
すると、硬い殻を突き破るような感触が剣から伝わってきた。
「敵の動きを予測したり、勘を極めたらこんな風に仕留められる」
「…………できる師匠も流石ですけど、本当大師匠って何者なんですか?」
本当、何なんだろうなぁ。断片的にしか聞いた覚えはないけど、自称最強の傭兵だったらしい。本当に自称なだけだったんだろうか?
「ふぅ、準備運動程度にはなったかな」
「じゅ、準備運動ですか!? あれが!?」
ショウが戦闘を終え、それでようやっと意識が戻ってきたらしいレヴィアが、若干悲鳴混じりで目を剥いていた。
「や、だって別に殺意マシマシの人工モンスターがたくさん詰まったモンスターハウスに投げ込まれた訳でもなけりゃ、即死魔法乱射してくるモンスターでもないんですよ? 騙して悪いがって言わんばかりに騙してくる依頼者がいるわけでも、高レベルのドラゴンがいるわけでもないんですよ? ましてや故郷を凪ぎ払うが如く隕石を降らせて来るような暗黒神がいるわけでも、全人類乗っ取り計画を企てる太陽王がいるわけでもないんですよ? ヌルゲーとは言いませんが、伊達に修羅場は潜って無いってことっすよ!」
「え、えっ………?」
なんだろう、途中からエターナルから別の話になってないか? そして目からハイライト消えてないか? 大丈夫かお前? あとごめんレヴィア、こっち見られても困る。
「…………や、本年言うと全然大丈夫じゃないんだ。思考速度に身体が追い付いてない。ほら、さっきの俺かなり遅かったろ? …………ここまで鈍ったら、流石に引退かなぁ」
「寝言は寝てから言おうな?」
俺の言葉に、その場の皆が同意したことは言うまでもない。
[(・・;)]
「……エンカウント率増えてきたな」
先程のショウの大暴れから皆が立ち直り、歩くこと一時間程。量はともかく蟻との遭遇回数が増えてきた。
「ついでに生々しい腐臭がすんな。巣が近いってことだ、助かる」
そう言ってショウは、疲労困憊といった様子の他の皆を見て肩を竦めた。一番最初に他の人間を連れていくことを渋ったヤツとは思えない、ビックリするほどのスパルタで皆に指示を飛ばし、時に軽い稽古をつけていた。
「これを期に、村周辺に生息するモンスター位は狩れるようになってもらおうと思ったんだが、これ以上は難しいな」
それでもこの短時間での訓練擬きは効果を出したらしく、全員のレベルが平均して5程上昇。スリーマンセルならば、ショウの指示がなくてもソルジャーアントを倒せるまでになった。攻撃スキルがなく、武器も質の良いものとは言い難い中、ソルジャーアントを倒せるのは素直に凄いことだと思う。『ギャスパルクの復活』に置き換えて考えてみると無理とは言わないが、厳しいものがあるからだ。
かなり厳しいことも言っていた。が、レベルアップや討伐という明確に解る形で成果が出ているためか、パーティーのショウを見る目は尊敬の眼差しだ。息も絶え絶えだけど。
「そういえば、ショウはクイーンアントのモーションを覚えてるか? 俺は正直、最初の方のことで思い出せないんだけど」
「…………クイーンアントのコマンドは5つ、通常攻撃、防御、兵隊蟻召集、スキル:酸の雨、スキル:強酸弾。兵隊蟻召集に関しては、その場にいるようなモンだから無いものと思っていいだろう。気を付けるべき攻撃は2つだ」
「酸の雨と強酸弾か?」
「ああ、酸の雨はパーティー全体攻撃。かなり強力なスキルで、皆のレベル位だとHPが一気に半分持ってかれるな」
そうか…………つまり、酸の雨は鬼門。使われる前に仕留める必要があると。
「次に、強酸弾は単体特殊攻撃。対象の最大HP1/4ダメージだ」
げっ、それは…………俺らにとってはキツいな。痛みもヤバいんだろうか?
「強酸弾を実際に喰らったことはないがなんとも言えないが…………酸をひっかぶると死ぬほど痛いぞ」
「あ、なら大丈夫だな。痛みが感じられる程度なんだろう?」
「まあな、行きすぎると痛み感じなくなるからそっちの方がヤバい」
しかし何故だろう、周りの視線が最初は『博識だな』だったのに途中から『正気かこいつ』って視線に変わって来たんだが。
「し、しかしたまげたなぁ…………賢者殿は、何処かの軍で、教官でもやられていたので?」
そしてそんな空気を変えるためか、息も絶え絶えな中では比較的マシらしいジャッコーさんが、ショウにそんなことを聞いた。
「いえ、俺の師匠がとある軍の教導官を務めてましたが、俺自身は風来坊ですね。都勤めは性に合わんので、各地を巡りながら傭兵をしていました」
…………よくもまあ、そんなサラサラと嘘を吐けるな。いや、もしかしたら実際にゲームでそんなプレイをしていたのかもしれないし、もっと言うと前世での話かもしれないけどな。
「傭兵…………雇われ、ですかい」
「ええ、傭兵。金を貰って殺しをするロクデナシとも言いましょう」
傭兵という単語に思うところがあったのか、ジャッコーさんの顔が曇る。そしてショウはそれを分かった上で笑顔で、しかし自虐的な言葉を放つ。
そして、続く次の言葉…………
「…………そもそも、復讐の為に剣を取った俺はその時点でロクデナシでしょうが」
「…………え?」
今、なんかとんでもないことを聞いた気がした。
思わずジャッコーさんと顔を見合わせて、もう一度ショウの方を見る。
「ん、どうかした二人とも?」
「え、いや、うん」
「な、なんでもありませんぜ賢者殿」
…………俺は、宮本翔のことは良く知っている。少し喧嘩っ早いが、優しくて少し不器用な男だ。しかし、『ショウ・ウォーカー』のことは良くは知らない。いくら本人が『妄想の産物かもしれんからなぁ』と言い渋ったとしても、深く聞かなかったことをちょっと後悔した。
「「…………ッ、止まれ!」」
しかし、そんな感傷に浸ることを状況が赦さなかった。ほぼ同時に俺とショウはパーティーに制止をかけ、洞窟の壁面に寄れと促す。
「ど、どうしたんですか?」
「あれを見ろ、巣の最奥まで来たみたいだ」
イシュラの質問に、現物を見てもらうことで答える。
通路の先の、広い空間。壁面に隙間なく張り付く青白く光る苔、ジャイアントアントやガードアント、ソルジャーアントの大群、奥の方には沢山の卵と思わしき白い物体。そして空間の中心に鎮座する、巨大な蟻…………。
「今からの動きを説明します、聞いてください」
落ち着いた口調でショウが話し始める。
「今からユーゴと俺であのデカブツ、クイーンアントを殺ります。その後統率個体を失った奴らは混乱状態に陥り、まともな行動を取れなくなります。つまり、経験値の稼ぎ時ということです」
倒せる前提だが、その心配はない。俺達は高レベルプレイヤーだし、それ以上に俺達で基本やってやれないことはない。
「クイーンアントを討伐終了次第、合図を出します。存分にやっちゃってください」
強敵を前に不適な笑顔を見せるショウ。そのお陰で明らかに萎縮していた皆もある程度緊張が解れたらしい、残ったのは程よい緊張と闘争心だ。
「ユーゴ、一撃」
「分かった、道は頼む」
「了解、開いて足場作る」
そして俺とショウで、最低限のやり取りを行う。やることも、考えてることも大体分かるから、これで充分だ。
「フォースシールド、シャイニングウェポン、ライフフォース、ドラゴンスピリッツ、ゴッドブレス。対ボス仕様だ、余裕だろ?」
かけ直しと同時に、より強い仕様のエンチャントに換えてくれたらしい。武器が真紅のオーラを纏う。
「サンキュ、じゃあ行ってくる」
そう言って、駆け出そうとする直前。イシュラが俺に声を掛けてきた。
「あの、師匠…………ご無事で」
…………いくら借り物の力を奮う偽物とはいえ、彼女達にとってはこのレベルは真実であり、正に勇者なんだ。そして、
「…………フン」
あの親友が、2度も言わせるなと鼻で嗤った。じゃあ、俺は本気で駆け抜けるだけだ。
「分かった、安心してくれ。俺は、」
強いからなッ!
[ε=ε=┏(・_・)┛]
「キテる、今正統派魔法使いの流れがキテる! 乗るしかない、このビックウェーブ!」
そうおどけた台詞を叫びながら、先に飛び出したのはショウ。その腕を前に構え、何事かを唱え始めた。
「起動『マルチキャスト』、セット数10! はぜ散れ、『マジックミサイル』!!」
そしてその前を躍り出る形で前に出る。剣を構えながら、しかし後ろの親友を信じて走ることに集中する。
後ろから幾重もの雷光が追い越し、眼前のジャイアントアントの大群を貫き、女王までの道を切り開いた。
それを確認したと同時に、俺は自分のステータスに物を言わせて勢い良く前に跳躍。
「『ウィンドファルコン』! 行けェ、ユーゴォ!」
そして地に付いていない脚が、風に乗る。風というには荒々しいが、この場ではそれが最適解だ。
「ウォォォォオオオオオオオッ!」
踏み締めた暴風の勢いを利用して、さらに跳躍。剣を横に構え、クイーンアントの首を目掛けて飛び上がった。
「その首、落とせェェェェエエエエエッ!」
刃が、クイーンアントの甲殻に触れた。抵抗は一瞬、凹むより速くバターの様に刃が沈み、首が胴体から跳ねた。
勢いを圧し殺しながら着地。振り返り、クイーンアントのHP表記を見る。そのHPバーは、全てを白に染め上げ、クイーンアントが息絶えたことを示していた。
…………結局、攻撃を貰うことは無かったなと思いつつ、
「お疲れ相棒、いい一撃だった」
「おう、ありがとな相棒」
まだまだ程遠くはあるけれど、最初の一歩を踏み出せた…………そんな気がした。
おう、どんだけ待たせるつもりやねんワレ?
→本当に済みませんでした、ケータイが殺られて執筆のモチベーション取り戻すのに時間を掛けすぎました。
なんかオリジナルの単語出てきたような…………?
→原作で出てきた魔法が全てではないと思いますので、多目に見ていただけると…………。
遅くなって申し訳ありませんでした。