箱庭に導かれた優しき風を求めた哀れな魔王の話 作:( ∴)〈名前を入れてください
私は大空へ飛び立ちたくなります。嘘です家から出たくありません、ニートなりたいです(願望)
「マスターソード…我が怨敵、儂が唯一恐れる退魔の聖剣よ。何故儂が持っておるのだ?」
茫然自失となりながらも頭を働かせてガノンドロフは考える。自分に起きているこの事態を
「マスターソード?確か…お主が恐れた聖剣であったか?」
「うむ…本来勇気のトライフォースを持つ勇者にこそ相応しい聖剣、マスターソードの前には如何なる魔族も無力となる伝説の聖剣…それが何故」
白夜叉の言葉に頷きながらマスターソードを取り出そうとするもウンともスンとも言わず取り出せない。そこに書かれているが取り出せない
「えぇい!さっさと出てこんか貴様!貴様を見るだけで殺意が湧くわ!」
思わずギフトカードを持つ手の力を強めてしまい魔力がギフトカードを包み込む
このまま焼いてしまおうか…!
ガノンドロフの手から黒き炎が溢れだしカードを包み込んでいく。炎はカードを焼き払おうと煌々と燃え盛るがカードを燃やす事が出来ない。それに苛立ちを感じているのかカードを包む炎は陽炎を作る程になる程熱量を上げていく。
そんな姿を見た白夜叉が急いで止めに入る
「待て待て!そのギフトカードはお主と魂レベルで繋がっておる!無特な扱いは止すのじゃ!」
白夜叉の言葉にはっとして力を緩める。
しかし…どうしたものか。マスターソードを取り出せないとなると儂の不快感が……
「のぅ白夜叉よ、このギフトカードから物を取り出す方法には念じる以外には無いのか?」
「……もしやそのマスターソードが取り出せぬと言うのでは無いであろうな?」
「もしやも何もその通りよ…」
白夜叉の言葉に頷き返事を返す。そうでなければこんな苦労はせんわい、全くどうしたものか……
「それがあったら何か困る事が有るのですか?ギフトとなるものならば何らかの力を持っているので困る事は無いと思うのですが……」
「困るも何もこれは儂の対極にある存在だ。持っておってロクな事になる訳がないに決まっておろう」
モーファの言葉にそう返しながら考え込む。何らかの要素があって儂の手にこの聖剣が来たのだとしたらそれは最早夢でしか起こり得ない事だ。何があってこの様な事が起こると言うのだ?
勇者が持つべき剣を魔王の儂が持つ…皮肉にも程があろう…そんな儂の様子が気になるのか回りの餓鬼共が気になるように此方をチラチラと見てくる。まぁ…説明する道理は奴等には無いか
「少し貸してみよ。ふぅむ…これは」
「何か分かったか?」
儂のカードを手に取りじっと見詰めると儂の顔を睨む様に見詰めてくる。敵意を滲ませて此方を睨み付けてくるとは…いやこれは疑念…それともこのモーファに対する心配か?どちらにせよ魔王の在り方ではないな。元魔王か…魔王は力を至高とし全てを支配する存在。力無き者を心配するなど魔王としてあってはならない
「……少し話がある。ガノンドロフ以外は今日は帰ってくれるか?」
「えー何だよ面白くねぇな。俺と戦ってくれないってのかよ」
「まぁまぁ許せ。儂からすればお前達はその土俵にすら入っておらん…お前さんと黒ウサギは魔王と戦える程の実力は持っておる。それは保証しよう」
「だが儂には絶対に勝てぬ。その力の差は理解できているだろう?」
「まぁ…分かってるけどよ。ちったあ格好つけさせてくれよ」
「戯け。ガノンドロフ程の力をつけて出直して来るのだな」
そう十六夜を評価しながら他の者をチラリと見据えてため息を吐く。そのため息は飽きれというよりも憐憫…憐れみが込められていた。見る目はまるで人間が死にかけた虫を哀れむような感情を込めており、十六夜達とは違いそこには期待が込められていなかった。
「だがそこの小娘共はその土俵にすら入っておらぬ。魔王と比べれば力無き只の小娘共よ」
「へぇ…私達じゃあ勝てないって言うのかしら元魔王様?」
「ちょっとイラッと来たかも?」
彼女達が色めき立つも白夜叉は真剣な顔をしてジンに言葉をかける。白夜叉にとって彼女達は問題ではない、むしろ彼がこれから成そうとする事が彼女にとって大切な事なのだ 。黒ウサギを見守りノーネームの手助けをして彼女にとってこれから起こることは云わば分岐点
親鳥の元を小鳥達が離れていく為の一つの儀式なのだ。
「ジン・ラッセル…お主はこれから強大な者と戦わなければならない運命にある。魔王の後ろ盾を持つ者との対立というのはそういう物なのだ」
「はっ…はい」
「それでも戦う覚悟はあるか?己の命を賭けてノーネームを復興する覚悟が…ノーネームを、仲間を守る覚悟が」
白夜叉の言葉を聞いて顔を青ざめながらどうしようとうわ言のように呟くジン。彼はガノンドロフに発破を受け喧嘩を吹っ掛けた。それも魔王の後ろ盾を持つ存在に…それは箱庭の力無き者が考える事の無いしたくても出来ない事云わば勇者の為す事なのだ。魔王を敵にまわすそれはノーネームにとっては悪夢の様な事であり彼のトラウマそのもの、ノーネームになったのも魔王が原因なのだからそうなるのも必然だろう。彼は浮かれていたのだ。新たな戦力が自分のコミュニティに入ってくれた事を今のこの現状を変えてくれると思っていたのだ。
「…困ったのう。お前さんが其では勝てるものも勝てんぞ?」
「あっ…うぅ」
「ふん…その程度か餓鬼よ。情けない…あまりにも情けないぞ……」
白夜叉の声もガノンドロフの声もちゃんと耳に入っていないのかブツブツと顔を青ざめてどうしようと呟くばかり。彼の背中に背負ってある物を考えれば己が何れだけの愚行をしてしまったのか分かる話ではある。
黒ウサギはオロオロとするばかりでジンに言葉をかけない、そうしていると彼の背中に鈍い痛みが走る。まるで誰かに背中を叩かれたみたいに
「まぁあれだ!坊っちゃんは喧嘩を吹っ掛けちまったんだ。なら先ずは勝ってからこの話は考えようや」
「……そうだ勝たなきゃ、勝たなきゃ始まらないんだ」
軽快な十六夜の声に元気につけられたのか顔を青くしながらも白夜叉を見詰める。その姿を目を細めジッと見詰めると顔を近づけてその顔を見詰める。
「先ずはガルドに勝つ…勝ってからそれを考えます」
「ほぅ…それは逃げだと分かっておるな?分かって儂にそう言っておると言う事だな?」
「白夜叉様…ジン坊っちゃんは」
「黙っておれ黒ウサギよ。これはジンに必要な事なのだ」
黒ウサギの横入りをピシャリと一喝し黙らせながらも顔はジンを見詰めたまま話を続ける。ジンはガノンドロフを見てそのまま話始める。
「ガノンドルフさんは言っていました自分以外の魔王を全て殲滅すると…そして己がこの箱庭の魔王として君臨すると」
「はっ…?お主はそんな阿呆な事を言ったのか?」
「当然だ。魔王の風上に置けぬ物が魔王と名乗る…これを認める儂ではないわ儂以外の魔王は全て殲滅する…例外は一切ない全てを捩じ伏せ力で支配する。これが魔王の在り方よ」
「……もーよい。ジンよ続きを言え」
「はっ…はい」
ガノンドロフの言葉を聞いて頭を痛そうに手で押さえながらジンに話の続きを言うように促していく。
「確かに僕達では魔王に勝つのは難しいかもしれません。ですが僕達は戦う為の力を集める事は出来ます。かつて先代が仲間と共に戦ったような仲間を集める事が」
「他力本願か…力無き者が考えそうな事だ」
ガノンドロフの呆れたような声に反応しジンは言葉を続ける。その姿に先程までの姿はみられない、凛とした声を放つ姿はまるで纏める者として相応しい貫禄を見せつけていた。
「ええ、確かにそうかもしれません。僕達には魔王と対等に力がありません、十六夜さんと黒ウサギに頼らなければ戦う事の出来ない弱小コミュニティです」
「全くだな」十六夜が面白そうに相槌を打っていく。
「ですがガルドを倒し人々から信頼を得れば人も少しずつですが集まってくれるかもしれません。今よりも良い仕事を受けれるようになるかもしれません。戦う仲間が増えるかもしれません」
「可能性だけではないか…そんな物では魔王を倒せる訳がな「倒せます」い…?」
白夜叉の言葉を遮りながら話を続けていくジン、その姿を目をパチクリとしながらも白夜叉は耳を傾ける。気づけばこの部屋にいる者全てがジンを見詰めていた
「僕達がそれを成すんです。敵を打ち倒し仲間を集め魔王討伐コミュニティ、ノーネームとして売り出していく」
「覚悟があるかと言われれば怖いです…ですが僕はノーネームの仲間の命を背負っています。こんな事で逃げちゃ駄目なんです」
「……今はこんな感じゃ駄目ですか?」
ジンが話終わり辺りを見渡すと皆が自分の事を真剣な顔をして見詰めていた。そうしていると彼の心の中で不安がまた生まれていく。駄目だ偉そうな事を一杯言ってしまった…謝らなきゃ……でもどうやって謝れば良いんだ?と頭の中ではグルグルと自己嫌悪が走り回る。そんな事を考えていると白夜叉が心底嬉しそうにジンに抱きつく。まるで子どもを誉める親のように
「良くぞ言った!お前なら言えると信じておったぞ、儂は嬉しいお前がそんな事を言えるようになったなんて!」
「し…白夜叉様!いきなり何を」
「もぅ愛い奴じゃなお前は、先代にもお前の今の姿を見せてやりたかったぞ!なぁ黒ウサギ!」
「うぅ…黒ウサギは感無量ですゥゥゥ!坊っちゃんがそこまで成長していたなんて!」
「なっ泣かないで黒ウサギ」
てんやわんやとなっている中十六夜はガノンドルフの近くに寄ると話し掛ける
「だってさ魔王様。あんたが倒されるのは時間の問題だな」
「はっ面白い…何度でも返り討ちにしてくれようぞ」
まさしく魔王のような笑みを浮かべながらジンを見詰めるガノンドロフに語りかけると心底嬉しそうに返り討ち宣言をかます、その姿をみて十六夜は己の中にあった疑問をガノンドルフに聞く
「あんたは魔王様なんだよな?」
「うむ、ハイラルを力と恐怖で支配した魔王ガノンドルフとは儂の事よ」
「ならなんでジン坊っちゃんに期待をよせていた仕草をしていたんだ?魔王だったら自分以外は支配されるべき存在なんだろう?木っ端程度が何かしようと歯牙にもかけないのが魔王様なんじゃないのか?」
「むっ……そんな態度をとっていたか?」
「あぁビックリするほど顔に出てた」
ガノンドロフにとって魔王がいたら勇者は現れるものだと思っている。長い時を生きたガノンドロフにとってはそれが当たり前だと感じているのだ。だからこそジンが魔王を倒すと言って心の奥底で喜んでいたのだろう。自分の気に入った者が対等の存在となって立ち向かってくる今の彼にとってはそれくらいしか楽しみが無いのだ。ハイラルが無くなった今この世界に楽しみを持ったとしても心の奥底に眠る帰郷の念が彼の心を苛んでいくだからこそ、勇者と戦うということは魔王として君臨していた過去に浸れる…つまりはハイラルにいた時の感覚を感じていれるからこそジンの勇気を振り絞る姿勢に歓喜を得ていたのだ。
勇者は生まれつき強い訳ではない、戦って戦い抜いたからこそ強くあれるのだ。
つまりガノンドロフは自分で勇者を作り上げるつもりでいるのだ。自分を魔王を倒す勇者を自らの手で作り上げる。その矛盾に彼は気付かない…何故なら彼は最後の戦いでハイラルの復興という大切な事を失ってしまったから。心に大きな罅が入っているから
魔王として君臨する事は勇者と戦う事…それは直結してハイラルをあの時を感じれる、つまりはそういう事なのだ。
だがガノンドロフがこの事を気づく事は決してない。気づくとしたら全てが終わったその時、倒されるその瞬間だろう。
「まぁ良い…餓鬼よお前の生き様を見せてもらうぞ。お前が強くなればなるほど儂の心は満ち足りていきお前が儂と戦うその瞬間まで儂がお前を導いてやる」
「えっなにこの魔王様やることが新しすぎだろ。自分で勇者を育てるとか」
「ふん…知ったことかこんな事所詮は只の暇潰しよ」
そうやって彼等は暫く話した後ガノンドロフを残してノーネームの拠点へと戻っていった……そして部屋に二人だけが残る。
魔王と元魔王の…この二人の会話は全てが終わった後に語るとしよう。
この物語が終わったその時に
Q.主人公って誰?
A.見て分からんのかマヌケェ……