箱庭に導かれた優しき風を求めた哀れな魔王の話   作:( ∴)〈名前を入れてください

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箱庭とかいう魔王とか神々のバーゲンセール

太公望(フジリユーver)とかいないかな?


第5話

 

「糞ッどうしてこうなった!俺の計画が俺の全てがメチャクチャだ!」

 

金で彩られた趣向品が置かれた部屋の中で一人の獣人が机を叩きながら激昂する。机に置かれていたインクはその反動で机から落ち床を黒色で汚していく。知っているであろうが彼の名はガルドガスパー。明日ジン達が戦わなければならない男であり、魔王の傘下としてこの町でコミュニティにを大きくしてきた男である。

 

「あの…小娘変な力を使いやがって、あの力を俺が持ってさえすれば…後少しで俺の傘下にあいつらを入れられた筈なのに」

 

彼の頭の中で思い浮かぶのは言葉だけで自分を支配した小娘、まるで何処かの令嬢みたいな格好をしており正直彼の中では一番の鴨だと思っていた存在。令嬢なんぞ下手に出ればコロッと落ちるだろうと考えていた彼にとってはこの結果は予想外…それどころか正直あまり視界に入ってなかった小娘が一番ちょろいという現実、全く持って哀れとしか言いようが無い

 

「あんのジジイ…訳のわかんねえ事を言いやがって……魔王を全て倒す?そして自分が箱庭を支配するだぁ?出来る訳無いだろそんなもん」

 

箱庭は神々が集まる場所、そして箱庭の中央に行けば行くほど全知全能に近しい存在が蔓延る魔窟、かの白夜叉の全盛期時に中央で魔王として戦っていたが勝ち残る事が出来なかった場所

そんな場所をあんな男が勝ち抜けるのかと考えれば解りきっている事で

 

「だが…あの時の目そしてあの覇気、俺なんかじゃ勝てない……例え逆立ちをしようと勝てない存在。あのジジイは危険だ」

 

あの男の姿を思い出し恐怖で体を震わせる。俺の残った野生の本能が鐘を打ち鳴らしながら俺に警戒を促す。

 

あの男は危険だ…俺の魔王よりもずっと凶悪で強力な存在。勝てる訳がない…あの男と戦っちゃ命が何個あっても足りないと

 

「(無理だ…俺はジンに勝ったとしてもあの男に魔王と一緒に殺される……絶対に俺は殺されるんだ!)」

 

頭の中で思い浮かぶのはあの男に無惨に殺される魔王…そしてその後を追うように粉砕される俺。

 

震える体を隠すようにベットの中に転がり込む。何れ訪れる悪夢を頭から振り払おうとするもあの男の目を思い出してしまい寝れるに寝れない。ガタガタと体を震わせながらベットの中で怯える姿はこの辺り一帯を支配するコミュニティのリーダーには見えない

 

「何という事か…こんなんでは試金石にもならないかもしれんな」

 

「だっ…誰だ!」

 

聞こえてくる声に反応するが声の持ち主はそれっきり何も言わず此方を見詰めているのか視線を感じるだけで声を発しない。美しい女の声から感じる呆れに先程までの男の姿は頭から抜けていき恐る恐るベットから抜け出し声の持ち主の姿を確認する。

 

「ふん…まぁいいか。小僧、お前に力をくれてやる」

 

黒き翼を持った少女が傲慢そうにそう俺に言ってくる。流れるような肢体、比類無き美貌…美しい金髪を持った少女は見下しながら俺に視線を向けてくる

 

「はっ?いきなり何を言ってるんだ。あんたは」

 

「誰にも負けない力が手にはいるぞ?お前が怯える存在を倒せるような力が」

 

その瞬間まるで俺は誘われるように女の下に体を預けるように頭を垂れる。頭がボンヤリとして考える事が出来なくなる…まるで操られているみたいに

気づくのがあまりにも遅かった…この女は吸血種、吸血鬼は視線だけで相手の精神を支配するという

 

逃げるべきだった…この場から逃げ出すべきだったのだ

 

「(あぁ……駄目だ、これは堪えられない吸血種の支配にはただの獣人の俺では堪える事は出来ん) 」

 

「良い子だ…さぁ首をこちらに近づけなさい」

 

「あっ…うぅ…あぁ」

 

そうやって俺の意識はフッと失った。最後に感じたのはただ一つ、圧倒的な存在を怖れる恐怖の感情

 

そうしてガルドの首から血を吸い少女は何も言わず翼を広げ執務室を後にしていく。そうしてガルドが倒れている場所の近くの影から一匹の昆虫がトコトコとガルドに近付いていく。大きな目玉が一つあり脚が二本の気持ちの悪い姿だ。

その昆虫は倒れているガルドをその大きな目玉でじっと見詰めると体の後ろから尻尾のような物をガルドの体に近付けその尻尾から針のような物を出しブスリとガルドに突き刺す。そこから何かがガルドに流れ込むように入っていき、暫くした後その昆虫は体を崩れさせてその場所から消え去っていった。

 

ガルドは言うなればヤラレ役、彼等の強いところを見せ付けるだけの只の踏み台

だからこそ様々な悪意に彼は利用される…彼の行った事は確かに悪なのかもしれない。だが彼の身にこれから起こる事を行った者達は紛れもない悪そのものなのかもしれない。

何故ならば己の目的の為に何も知らぬ者を利用する事は吐き気を催す邪悪そのものなのだから

 

 

風呂…それは一日の疲れを癒すために最適な物。熱い湯船に浸かりホウッと一息付けば一日の疲れなんてパッと吹き飛ぶ人類が産み出した素晴らしい知恵の結晶の一つである。

 

「何よあの子!私達を駄目だとか戦えないとか言ってくれちゃってふざけるんじゃないっての!」

 

「うん…あれは流石にイラッと来たかも?」

 

「おっ落ち着いて下さいませ!白夜叉様もそんなつもりで言った訳ではないのです…ただお二人の事を思って」

 

風呂場の中でそんな事を話しているのは今日このコミュニティに入った女性二人に黒ウサギの三人、彼女達は怒濤の一日の疲れを癒すべく風呂に入っている。

 

「こうなったら明日あの外道をケチョンケチョンに倒して私達だって戦える所を見せるべきよね!」

 

「うん。絶対に勝つ」

 

女三人揃えばと良く言われるが正しく今の状況はそう言えるだろう。サウンザウントアイズからノーネームへ帰って来た彼等はそこで様々な物を目にした。

戦力になりそうもない子ども達に魔王の手によって見るも無惨な光景にされた土地、それを見た彼等はよりいっそう魔王と呼ばれる存在、このコミュニティの悲惨さを噛み締めた。魔王の所業はかくも恐ろしく、生活をしていた痕跡を残しながらその土地の全てを殺しきったのだ。

 

「そう言えば…お爺さんも魔王だって言ってたわね」

 

「うっ…その話をされると黒ウサギのお腹が痛くなって……」

 

「馬鹿な事言ってんじゃないわよ」

 

飛鳥が魔王の事を考えていると自分を魔王アピールしまくる我等がガノンドロフの事をふと思い出す。異世界…ハイラルと呼ばれる場所から現れたお爺さん、爪楊枝の事も知らずに暗器として有用だと抜かしたりコーヒーを知らなかったりと其だけを見れば只の痴呆としか思えなかったが

 

「あんなに強いだなんて…本当に魔王なのよね」

 

「えぇ…黒ウサギも一定条件の中なら魔王と戦えますがまさか白夜叉様と相打つ程強いなんて……」

 

私達がうんうんと頭を唸らせてあの蛮族系お爺さんの事を考えていると春日部さんが何かが気になったのか黒ウサギの肩をつつき話し掛ける。

 

「ねぇ黒ウサギ、魔王ってどんな人なの?」

 

「えっ?そうですね…一言で言うならばこの箱庭で好き勝手にする人ですかね」

 

「ふーん…じゃあ世界征服とかは?」

 

大概の人が魔王と言われて思い浮かぶのは魔物を支配下に置き人々を弾圧し苦しめる存在、世界を征服しておりそれを勇者が倒すありたきりだからこそ皆思い浮かぶ例の一つだろう。

 

「無理です。いえ…不可能と言えば宜しいのでしょうか」

 

「なんで?だって魔王なんでしょう?」

 

「いえ…この箱庭は全知全能…神々が住まう場所、そんな場所を一人の存在が全てを支配する等先ず不可能と言えます」

 

黒ウサギの言葉に飛鳥が疲れたように息を吐く。

 

「あんなに強いのに無理だなんて…ここは凄い場所ね」

 

お店での謎の力に私の命令が効かなかった事、それに白夜叉との激しい戦い。この事から痴呆から魔王様へと認識を変えざるを得なかった。

白夜叉と戦っていた時の風格、どれだけ攻め立てられようと不動のようにその場所から動かず、私達を庇いながら余裕を見せて戦っていた姿…あれを見てしまったらお爺さんが何れだけ強いかなんて考えなくとも分かってしまう。

 

「ジン君を見ていたお爺さんなんか楽しそうだったね」

 

「そうなんですよねぇーもうそれが怖くて怖くて」

 

春日部の言葉に耳をヘニャリとさせながら黒ウサギはため息を吐く。彼女にとって魔王と呼ばれる存在は危険としか言いようが無く、そんな存在が自分のコミュニティのリーダーを気に入っているなんて考えるだけでお腹が痛くなる案件である。

 

「あのお爺さんそんな暴力を簡単に振るうような人じゃないから大丈夫よ」

 

「うー…話を聞く限り長い時を生きた御方のようでは有りますが…飛鳥様からお聞きした一件がございますから」

 

「大丈夫よ。お爺さんに詳しく身元の話を聞かなきゃ何とかなりそうだったし…それに、あのお爺さんが悪人になんて私は見えないのよね」

 

「コーヒー待ってた時なんてソワソワしてたね。『コーヒー…面白い儂の舌を満足させるような逸品なのか試してやるわ』とか言ってたし」

 

「砂糖壺を見て『これが文化の違いか…恐ろしいものよ』みたいな事も言ってなかったかしら?」

 

「何だか黒ウサギの中のガノンドロフ様のイメージが……」

 

黒ウサギの中にあったカリスマに溢れ白夜叉と対等に戦える強者のイメージが新しいもの好きのお爺さんのイメージに侵食されていく。

何と言うか旅行に出掛けたら色んな物に目を引かれ最終的にケツの毛一本たりとも残さずむしりとられるような感じに。

 

「ハイラルかぁ…どんな所なんだろうね」

 

「確かに…気になるわ。お爺さんがハイラルの事を話していた時は何だかとても楽しそうだったもの…でも何故だか直ぐに怒っちゃったけど」

 

「うーん黒ウサギはそのハイラルと呼ばれる世界やトライフォース?にディンフロルネールと呼ばれる神々の事は存じ上げておりませんので…良く分かりませんが……」

 

「「はぁ…使えないモーファ」」

 

「だから違いますって!黒ウサギって素敵な名前があるんです!決して無能なんかじゃありませんからね!?」

 

そう言うとまた三人は湯船の中で考え込み始める。春日部が思い浮かべるのはハイラルと呼ばれる世界に存在する動物達

そこにはきっと己の知らない動物が沢山いるのだろうと胸を高鳴らせる。

 

彼女には今日まで動物以外の友達が存在していなかった。愛猫に回りにいた動物達、それらが彼女の世界だった…だが今日この世界に来て様々な事が起こった。

何時もの様なゆったりとした一日とは違った濁流の如く流れる一日、そんな中で始めて出来た自分と同じ人間の友達…そして

 

「(私みたいに動物と話が出来る人がいるなんて…考えた事もなかったな)」

 

自分と同じように動物と話が出来る存在…怖い顔で怖い口調の話し方をするお爺さん。自分の事を魔王様だと言ってる癖に私達の服を不思議な力で乾かしてくれたり、知らないものを興味深そうにしている姿を見たら不思議と恐怖は感じない。寧ろお爺さんがどんな人なのかを知りたくなる

 

「ねぇ…飛鳥?私…あのお爺さんとお友達になれるかな?」

 

「…それは流石に危険なのでは?」

 

黒ウサギが心配そうに春日部に話し掛けると飛鳥が呆れたように話し始める。

 

「黒ウサギは心配し過ぎよ。そうねぇ…魔王様がお友達を作るのかちょっと分からないけどきっと大丈夫よ」

 

「うん…頑張ってみる」

 

そんな事を話ながら少女達の話しは更に続く。長風呂はとても良いものだと思う…だがこれだけは言っておきたい。他にも風呂に入る人がいるのならさっさと出るのがマナーだと。長風呂は一人暮らしの特権だと

 

「遅いですねぇ…皆さん」

 

「あのおっさん共の話もとっくの昔に終わっちまったぞオイ…いくら何でも長くね?」

 

「待ちましょう…女性は何かと大変だとお聞きした事が有りますし……」

 

「あー…風呂入りてー……」

 

女性陣が風呂に入っている中そんな事を言いながら長椅子でグッタリとしている男性陣の姿があったそうな

 




哀れガルド踏み台(意味深)となると春日部ちゃんのお友達が欲しいなの二つでお送りしました
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