箱庭に導かれた優しき風を求めた哀れな魔王の話   作:( ∴)〈名前を入れてください

6 / 9
ガルド君は次です。良いね?


第6話

 

次の日…彼等はガルドとのギフトゲームをする為に、彼がいるであろうコミュニティの本拠地へと向かって行く。

 

「お爺さんは白夜叉と一緒に一体何を話していたのかしら?」

 

「ふん…話す道理等無いわ」

 

「ふーん…そんな事を言うなんて私寂しいわね」

 

ガノンドロフに飛鳥がヨヨヨと泣く仕草をするがそれを切り捨てながら辺りを見渡す魔王様。見知らぬ場所を見ながら歩く姿からはやはりカリスマを感じない、寧ろ親近感の沸く姿である。周りの皆も先日ならば飛鳥の行いに焦ったりするだろうがそれが無い。あれだけ怖がっていた黒ウサギがニコニコとしながらガノンドロフを見ているがそれを物語っている。

 

朝……夜が明ける前にノーネームの拠点に着いたガノンドロフは自分が滞在する予定のコミュニティの惨状を見て頭を抱えていた。

 

「はぁ…よりにもよってこの体たらくとは。これでどうやって戦力を整えると言うのだ」

 

ガノンドロフの考えでは子どもだけと言えども多少実力者がいると踏んでいたが1人としていない…薄く魔力を館全てに包み込めば誰かが反応するかと思えば誰も館から出て来る気配が無く頭を痛めるしかなかった。

 

「まぁ…良い。これからに期待という事にしておくとしよう」

 

とりあえず館の中へとズカズカと入っていく魔王様、不法侵入ここに極まれりと言った所だろうか。そうして屋敷に入り大広間にあった長椅子にどっかりと座り込むとそのまま眠りに入る。

余りの唯我独尊具合に思わずこれを見た者は頭を抱えてしまう程であると思う。

 

そんな静かな大広間に子どものかん高い声が響き渡る。彼女の名前はリリ、狐の獣人の少女である彼女は子ども達の中でも年齢が比較的に高く、館の家事等を黒ウサギから任されている女の子だ

 

「うーん…今日も良い天気!」

 

リリがそんな事を言いながら大広間に入ると、何時もと違う感覚が彼女を包み込む。ゾクリと背中に氷柱を突き刺されたような感覚に体中の毛がゾワゾワとなり辺りを見渡すと何時もと違う違和感に気付く事が出来た。長椅子で沈黙を保ちながら座っている老年の男の人、間違いなくこのコミュニティの人ではない。昨日あった人の中にはこんな人はいなかったと考えると一つの結論を出す。

 

「(この人……間違いなく不審者)」

 

悲しいかなこの男はノーネームに厄介になる予定の魔王様、黒ウサギが彼の事を紹介するのを忘れていたお陰ですっかり不審者認定である。

 

「だっ……誰ですか?」

 

恐る恐る話掛けるも不審者は何も反応をしない。その姿にますます疑念を持ったリリは少しずつ近付きながら男姿を確認していく。薄汚れた着物を身に纏い髪の毛をオールバックにして静かに佇ずんでいる姿を見てやはり自分の知らない人だと再確認する。

 

「あっ……あの!」

 

「うむ…何事だ。騒がしいぞ……」

 

思いきって大声で呼び掛けると不審者はいかにも寝ていましたと言わんばかりにゆっくりと声を出しながらリリを見詰める。その瞬間に先程の感覚が何百倍にもなったようになって思わず体を抱きながら座り込む。

 

不審者がリリを見詰めた瞬間に彼女の中の本能が警鐘を鳴り立てる。騒ぐな、王の目覚めだ…殺される。何故だか分からないがそんな事を思ってしまい身体を震わせながら座り込む。早くこの感覚から開放されたいと心のそこから願いながら

 

「ほぅ…おるではないか、儂の力を感じ取れる者が」

 

「嫌っ…ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「そう怯えるな、こちらを向けい童子よ」

 

「ごめんな……へっ?」

 

その声に思わず顔をあげると嬉しそうな顔をしながらこちらを見つめてくる不審者がいて、その姿からは先程までの恐ろしさを感じず、どちらかと言うとその姿に安心感を感じた。

 

「無闇に驚かせて済まなかったな…ほれ近こう寄れ」

 

「…酷い事しませんよね?食べちゃったりとか……」

 

「せぬよ。儂に人を食べる趣味はない」

 

恐る恐るそう聞くとそう答えながら手をこちらに来いとヒラヒラとさせて来る。

その姿に何だか安心感を感じた私はフラフラと隣に座り込む

 

「童子よお前の名は何と言うのだ?」

 

「えっ……とリリです」

 

「ほう…リリか、良き名だ。してリリよお前は儂から何らかの感覚を受けた。獣人故の特性か分からぬがお前達は野生のカンというものを持っておるのだな、その力努努無くすでないぞ?」

 

そう言って頭を優しく撫でる手にそのままにされながら取り敢えず悪い人じゃないと思った私はお爺さんに話し掛ける。

 

「えーっと…お爺さんは一体?」

 

「…夢に破れた何処にでもいる只の男よ」

 

そうやって笑う姿は何だかとても辛そうな顔をしていて、泣きたい顔を他の顔で隠しているような…そんな苦しそうな顔に見えた。私は何か言おうとするも身体が何だか急に疲れて眠くなってくる。

 

「眠ると良い…かなり薄めていたとはいえ儂の魔力を直に当たったのだ。獣人のお前には荷が重かろうよ」

 

「でも…朝ごはん……作らなきゃ」

 

「成程…ならば儂に任せておくが良い、お前は暫く眠っておけ」

 

あぁ…駄目それは私のお仕事だから…でも、もう……駄目

 

 

「リリさんが料理を作っていると思ったら誰だか知らない老婆2人とガノンドロフ様が料理を作っていた…」

 

「コタケさんやお塩をとって頂戴」

 

「はいはいコウメさん、これかね?」

 

「ふむ……若かりし時を思い出すわ、良く女中共に色々な事を仕込まれたものよ」

 

黒ウサギが朝食を作るリリの手伝いをしようと厨房に入ると予想外の人が知らない老婆×2と一緒に調理をしていた。

 

コタケとコウメと呼ばれる老婆が手馴れているのか料理を作る。幾つもの包丁が勝手に食材を切り刻み様々な調味料が空中を飛び交いながら鍋の中に調味料を入れていく…何だか見てると頭が痛くなるような光景だった。

 

ガノンドロフの方は鍋の火加減を見ているのか鍋を時折かき混ぜながら、マッタリとしている。

 

「あ…あのー……一つ聞いても?」

 

「「ヒーヒッヒッヒッ!!」」

 

「うぅ…何だか声をかけたら美味しくウサギ鍋にでもされそうな予感が……」

 

恐る恐る声を掛けるも、老婆達には聞こえていないのか楽しそうに料理を続ける

 

「モーファか…あの童子なら儂の魔力に酔ったから寝かせておる。食事なら任せてくが良い、これでも若かりし時に嫌という程女中に仕込まれたからな」

 

「「ヒーヒッヒッヒッ!!」」

 

「あー……はい分かりました。黒ウサギにお手伝い出来る事はありますか?」

 

「ふむ…ならば童子共でも起こして来い。もう朝日も出ておる、そろそろ起きて動き始めるには良いだろうて」

 

「……ハイ」

 

魔王様に料理をさせる現実から逃避する事を決めた黒ウサギは手伝いを申し出すも華麗にスルーされ、言われた通りに皆を起こしに行く。

後ろから聞こえる老婆の笑い声が魔女の笑い声にしか聞こえないと思いながら

 

 

「うんっ……何これ…マント?」

 

何だか美味しそうな匂いに引かれて目を覚ました私は体にかけられていたマントを見て先程までの事を思い出す。

 

「……朝ご飯作らないとッ!」

 

急いで長椅子から飛び起きて食堂に向かうとそこにはさっきのお爺さんと疲れ果てた目をした黒ウサギが子ども達にご飯を渡す準備をしている。

 

「お爺さんー!これ何ー?」

 

「何……お前達はこれを食べた事が無いだと…?まぁ良い、先ずは食べてみよ。話はそれからだ」

 

「はーい!」

 

子ども達と仲良く話ながら料理を配っていくお爺さんに

 

「黒ウサギの作ったものより美味しいとかあの老婆共は一体何者なんですか……」

 

「だいじょーぶ黒うさぎ?」

 

「えぇ…大丈夫です。まだ、まだ心は折れていませんヨ?」

 

半分白目を向きながら配膳していく黒ウサギが私の視界に入ってきた。

……どういう事なの?

 

皆が集まりガヤガヤと食事をとる。何時もの朝食を取る中に新たな人が昨日入った。昨日召喚された三人である。

 

「いやー……上手いんだ、けどよ」

 

「言わないで……心がボッキリ折れそう」

 

「お爺さん…本当に何でも出来るんだ」

 

彼がそう言いながら見る視線の先には外で魔王様が朝ご飯を食べ終わった子ども達と遊んであげている姿が見える。

というかこの料理を作ったのが魔王様という事実を考えたくないので現実逃避しているだけなのだが

何処に何でも出来る魔王様がいると言うのだろうか?

 

此処にいた。しかもかなりレベルが高く非常に美味しい、それが彼等の魔王のイメージに齟齬を与える。そして目の前の子どもと遊んでいる姿

 

昨日の魔王として戦った強者なのかと思わず首を捻りたくなってしまう。

 

「お爺さんって黒ウサギに呼ばれて来たんだよね?」

 

「まぁ…恐らくはそうなのだろうな」

 

「じゃあ強いの!?」

 

「儂に敵う者等この世におらん!」

 

「「おー!」」

 

子ども達とそんな事を話しているのが異世界の魔王様……それも世界を支配した物語に出るような魔王、とても今の姿から分かる者はそうはいないだろう。

 

「良いかお前達、己が弱いままで良いと思ってはならん。強くなるのだ、お前達には無限の可能性がある。良いな?」

 

「「はーい!」」

 

「良し!ならば戦う術をお前達に与えてやる付いてこれるな?」

 

そう言うと子ども達に正拳突きの練習やランニング、魔術らしきものを教えていき…その姿を見て更に色々と疲れてくる

 

「子ども好きの魔王様ってかんじだな、ありゃ」

 

「……凄いね。ほんとに」

 

「…黒ウサギはあれを見てもまだ不安かしら?」

 

飛鳥の声にリリの隣で食事を取っていた黒ウサギがフルフルと震えながら声を吐き出していく。

 

「もう…黒ウサギは無能でもモーファでも良いです。」

 

「大丈夫だよ。黒ウサギの料理もスッゴく美味しいから……でもこれ本当に美味しい。どうやって作ったんだろ…後で教えて貰おっかな?」

 

黒ウサギをフォローしながら目をキラキラとさせて料理を食べるリリの姿を見て黒ウサギは更に落ち込んでいく。

 

「リリさんまで陥落したぁ!もう黒ウサギは駄目です!駄目駄目なんです!モーファなんですゥゥッ!!」

 

「モ…モーファ?」

 

「あぁ…成程先ずは胃袋を握るって事ね」

 

何という事実だろうか、見知らぬ老人が直ぐに子ども達に溶け込み信頼を得た事実。流石は長い時を生きた魔王様と言ったところであろう。

 

「大丈夫だよ黒ウサギ、私お爺さんを見た時は怖かったけど話したら怖くない…寧ろ優しい人だったから。頼めば料理を教えて貰えるよ」

 

「そう言えば…リリさんが持っているマントは…ガノンドロフ様がつけておられた物ですね」

 

「うん。寝ている時に掛けてくれたんだと思う」

 

リリが膝に畳んで置いてあるものを見て黒ウサギが聞くと嬉しそうな顔でそう返事するリリ。それを見て驚く黒ウサギにやっぱりと納得する問題児達が黒ウサギをここぞと弄り回した。

 

そうしてそんな朝の事があったからこそのこの雰囲気である。そりゃ黒ウサギもそんな態度を取るという話というものだ

魔王だからと言って無駄に皆殺しにするわけでも無く、このコミュニティの戦力を高めたいガノンドロフにとっては未来の投資として子ども達をきたえたいと思っての行動、言わばコミュニティの戦力の地盤を整えていると言った所だろう。

 

リリの代わりを行なったのもリリの資質に興味を持ったからこそ、無茶はさせてはならないからだと思っている

 

だが、本当にそれだけなのか。

 

ガノンドロフにとって子ども達はそれだけの存在なのか、他の理由が心の奥底にあったのかどうかは誰にも分からない

 

 




_(:3」∠)……嘘みたいだろ?コイツ魔王様なんだぜ?

ぶっちゃけゼルダを眠っているのを起こさないようにしたり子どもを集めてても直ぐには殺さない所を考えると自発的には子どもを殺すような人には見えないんだよなぁ…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。