ハイスクールD×D ~『神殺し』の新たな軌跡~   作:ZERO(ゼロ)

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プロローグ

全てが漆黒に包まれた空間の中で一人の青年が辺りを見回していた。

何処までも続く先の見えない闇は、まるでかつての“空を閉じられた町”を青年に思い浮かべさせる。

 

東京―――かつてその町は神と悪魔が闊歩し、多くの悲劇が繰り返された魔都であった。

神々と悪魔が覇権を争い、一神教の主により存在を貶められた数々の多神達が介入し泥沼の大戦へと発展。

だが最後には『神殺し』と呼ばれた少年とその仲間達により全ての神や悪魔達は瓦解、更には創造神YHVHをも下し、東京は……いや世界は神や悪魔に支配されるのではなく、人間達が己の意志で歩める地へと変わったのだ。

 

その立役者となった少年の名は神藏晃(カムクラアキラ)。

ミカド国と言う天使達に支配された国に生まれたサムライ・フリンと共に『救世主』と呼ばれた人物だ。

仲間や仲魔達と共に神々と悪魔の軍勢を倒し、神の戦車を討ち、悪魔王を滅し、多神連合と呼ばれた組織を瓦解させ、死と共に歩み、原初の天使を屈服させ、最後には創造神すら退けた最も悪魔に近しき人間。

神々や悪魔達を滅ぼした後、彼は仲間達と共に荒廃した東京を復興する為に其々の方法で尽力する。

アキラはそんな中で人外ハンターとして数々の依頼をこなし続けていた―――

 

神々や悪魔達から東京を人間の手に取り戻して五年。

かつて少年であったアキラも立派に大人と呼べる年齢の青年となり、日々を忙しく生きていた。

そんな折、その日の依頼を終わらせターミナルを起動したアキラは摩訶不思議な空間へと飛ばされてしまう。

―――これが彼にとって、新たな闘いの日々の始まりだと気付けないままに。

 

 

●●●●●

 

 

~side:AKIRA~

 

 

『―――やあ、久しぶりだね』

 

依頼を終わらし、錦糸町に帰って商会に報告すれば終わりだった筈だ。

其の筈なのに……何故か転送先は真っ暗な空間、どうしようかと困っていた時にその声は聞こえて来た。

何も見えない、何も感じない、なのに何処か感じた事のある天も地も解らないこの場所に何かが擦れる音―――音と声の響いた空間の先には明らかにこんな場所には不釣り合いな人物が現れている。

 

車椅子の紳士―――確か『スティーブン』と名乗っていた。

かつて俺が大切な仲間達と、信頼する仲魔達と共に最後の戦いに赴く時も唐突に現れたが……。

 

おっと名乗り忘れた、俺の名は神藏晃……東京で『人外ハンター』と呼ばれる仕事をしてる。

『人外ハンターって何?』とか『東京にそんな仕事ないよ』なんて思う人もいると思うが、そこら辺はまあ長くなるから何れ説明の機会があれば説明させてもらう。

まあ今は取り敢えず、東京にそう言う仕事があるって事だけ覚えて貰っとけば十分さ―――東京じゃ結構、重要な仕事なんだけどよ。

 

年齢は今年で恐らく二十位かな?

元々孤児だったし、自分の正確な年齢なんて覚えてねぇからさ……まっ、人外ハンターに年齢は別に関係ねぇからあんまり気にした事ねえのよ。

 

っと、話が逸れちまったぜ。

取り敢えず俺は現れたスティーブンさんに会釈を返す―――呑気に世間話でもしても良かったが、恐らくこの人は冗談が通じないだろうし困らせるだけだろう。

多分この人が俺の前に、それもこんな唐突に現れたって事は……まあ恐らくは何か面倒事があったとか、それとも俺やフリンじゃなけりゃ解決出来ない事でも起こったんだと思われる。

 

―――そう言えばフリンも忙しいらしいな。

当たり前の日常(いま)に戻り、人の手に未来が委ねられてからもう五年も経つのか。

ミカド国を支配してた『神の戦車』が居なくなり、アッチは色々と混乱したりもしたらしいけど、最終的にはフリンがイザボーさんやガストンやサムライ衆に支えられて統治してく事になったらしいし。

あ、そう言えばイザボーさんそろそろ子供産まれるんだったな……あのフリンの嬉しそうな照れてる顔見たら幸せなんだろうな、二人とも。

 

しかしガストンがまさかサムライ衆の頭補佐、ねぇ。

あの“お頭”ってオッサンに毎日絞られてるとか愚痴溢してたけど、顔はイキイキしてたな。

最初に会った時はエリート気質でいけ好かない奴だってハレルヤが言ってたけど、今となったらあの時のガストンも良い思い出だし。

まだNo.1じゃないけど、今のガストンなら間違いなくサムライ衆を率いる立派な頭になれると思う。

 

ハレルヤも『阿修羅会』の組長として試行錯誤してるってノゾミさんに花見に呼ばれた時に言ってたっけ。

昔に比べれば良くなったけど、まだまだ本来の『東京』としての機能は全部回復した訳じゃないし……でもケンさんも若頭になってくれたらしいし、アイツなら“神の御業戦争”前の東京に復興出来るだろうな。

それに今は阿修羅会だけじゃない―――人外ハンター協会も、ガイア教団も、ミカド国のサムライ衆も協力を惜しまずに続けてくれてる。

 

ノゾミさんは『妖精の女王』として今も上野で頑張ってる。

多神連合の所為で枯れた上野の桜も今は満開に戻ったし、妖精達も仲良く暮らしてるようだし。

まあノゾミさんとダヌーの力が強過ぎるのか冬になっても全然枯れないけどな、あそこの桜……仕舞にゃ『万年桜』なんて名前つけられて、宇宙の卵の残骸と共に東京の観光名所の一つになったけど。

 

……それにまさか、ナバールが上野に住むようになるとは思わなかった。

俺に憑いてた事とダグザの力によって幽霊から精霊になるなんて……ナバールに『精霊』なんて似合わないがよ。

今でも相変わらず『師匠』とか言ってるけど、ああいう部分を全てひっくるめてナバールなんだよな。

 

あぁ、環境が一番変わったのはトキか。

ガイア教のババア二人には『帰って来い』とか言われてたらしいけど、今は人外ハンター協会のハンターの一人になってる。

ノゾミさんやアサヒと一緒に居て笑顔を見せるる機会も増えたし、最近は御洒落に目覚めたらしくて日々を毎日楽しく暮らしてる―――ガイア教の中だけじゃ知れなかった趣味も増えたらしいしよ。

……だけど変な仮面のコレクションと刀剣のコレクションは程々に願いたい、まさか休みの日にほぼ一日中刀剣や仮面の説明と磨き上げで終わるとは思わなかったぜ。

それと最近、アサヒの前で対抗するように『主様』なんて呼ぶの止めてくれ、アサヒやノゾミさんの眼が怖ぇんだよ……てか二人きりの時に呼ぶとか言ってなかったか確か?

 

最後にアサヒ……アイツには色々と助けられたなぁ。

俺を庇ってクソヘビに殺された時、頭の中が真っ白に染まった……抑えるのが大変な程の憎悪も湧き出した。

多分、皆がいなけりゃ俺はかつてのダグザの言葉通り、他者全てを否定して独りになってただろう。

アサヒは今、錦糸町人外ハンター商会の店主として試行錯誤しながら頑張ってる……勿論、現役の人外ハンター続けながらだ。

最初の頃に比べれば店主の仕事も板についてきたが、恐らくマスターが生きていたとしたらまだまだ『なってねぇな』なんて言われてるかもな。

……でも、今頃天国辺りでアサヒの成長を何よりも喜んでると思う。

 

因みに俺は人外ハンター商会のハンターとして日々を過ごしてる。

世間じゃ『英雄』だの『東京の救世主』だの『最強のハンター』だの『東京の守護神』だのなんて御大層な呼ばれ方してるが、俺はそんなに立派な存在じゃねぇけどな。

マサカド公に託された東京の未来を護る為、ひいては東京に生きる人々を守る為に自分に出来る事をしてるだけだ。

本当ならフリンのようになれりゃ良いんだろうけど、俺って頭良くねぇし、ハンターやってた方が性に合う。

ま、自分に出来る事をやった方が為になるし、細かい事はフジワラさんやツギハギさんに任せりゃ良いか。

 

 

と、其処でスティーブンさんが笑みを浮かべて俺を見ている姿が目に映った。

人間なのか、悪魔なのか、神なのか、それともそれ以外の存在なのかは解らないが、恐らく俺の考えてた事が理解出来ているのだろう。

穏やかな微笑みを浮かべ、柔らかな物腰で言葉を紡ぐ。

 

『懐古の念は済んだかい? なら今度は僕の話に耳を傾けてくれないかな?』

 

スティーブンさんの言葉に頷く。

さっきも言ったと思うが、スティーブンさんが俺の前に現れたと言う事は恐らく何かしらの問題がこの東京に起こったと言う事だろう。

それも普通の人外ハンターじゃ解決出来ない、フリンや俺のような存在でなければ解決不可能な問題が、だ。

 

ある程度覚悟はしてた筈だった。

しかしスティーブンさんの口から語られた内容は正直言って御免被りたい内容だったと言う事だけは此処に記しておこう。

……やれやれ、本当に面倒事が起こってくれるもんだぜ。

 

 

●●●●●

 

 

『君は“シュレディンガーの猫(※)”と言う理論を知っているかい?』

 

首を横に振る―――猫? 猫ぐらいなら知ってるが。

シュレディンガーって何だ? しかも理論って何だ? 疑問符が頭に浮かぶ。

そんな俺にスティーブンさんは難しい説明の後に簡潔に分かり易く説明をしてくれた。

 

『重なり合っている状態は蓋を開けて観測した瞬間に猫が生きている世界と死んでいる世界に分岐する。

各瞬間ごとに枝分かれする世界は無数にあるが、観測者の意識は結果的に二分の一の確率で猫が生きている世界と死んでいる世界のどちらかの世界に分岐してしまう。

つまりは言うなれば君の歩んだ道と同じようなものさ―――中庸の道を選び、絆を育み、人間の手で東京を復興するという偉業を成し遂げ、最後には観測者であり創造神のYHVHすら倒した。

しかし言うなれば他にも色々な結果があったかも知れない……神の戦車の僕になった結果もあったかもしれないし、悪魔王の下僕になる結果もあったかもしれない。

更には絆を否定し孤独を尊ぶ結果もあったかもしれないし、志半ばで屍を晒していた結果もあったかもしれないと言う事さ。

言うなれば結果的に絆を育んだ世界が存在していると言うだけで、選択肢によっては全く違う世界に分岐し続けてしまっていたかも知れない―――これを“パラレル・ワールド”と言うんだ、此処までは理解出来たかい?』

 

何だかイマイチ理解出来ないが取り敢えず首を縦に振る。

シュークリームの猫だか何だか知らんが、専門用語を並べられてもちっとも理解出来ん。

辛うじて分かったのは、俺の選択した今以外にも色々な結果があったって事位か?

 

『全てを理解する必要性は皆無だよ。

大事なのは君自身の選択によって幾つもの可能性が生まれ、その可能性が紡ぎ出した世界がこの宇宙に存在すると言う事。

……そして時にそれは今君が生きるこの世界に綻びを生み出し、やがて綻びは大きな亀裂と成り得る可能性があると言う事だね』

 

……今、何か聞きたくない台詞を聞いたような気がするが。

世界に綻びとか、大きな亀裂と成る可能性とか……ちょっと待て、まさかスティーブンさんが現れた理由って。

外れて欲しいと願う俺の予想はどうやら外れては居なかったらしく、スティーブンさんは重々しく頷きながら言葉を続けた。

 

『―――時に運命とは残酷な現実を映し出す。

かつて君は『東狂』と言う一つの宇宙を目撃し、魔人達を屠り己の力とした筈だ。

あの世界は最終戦争(ハルマゲドン)の折、救世主が誕生せずに神や悪魔や多神が争い続けた結果……生態系は滅び、世界は怨嗟によって歪み、そして神や悪魔の天敵たる魔人を生み出してしまった。

……更に魔人の出現は宇宙そのもののあり方を歪めてしまった、この空間もその副次物とでも言うべきかな』

 

そこで一度何かを考えるように目を閉じるスティーブンさん。

次に続く言葉を言い辛いのか、それとも他に意図があるのか、それは不明だ。

しかし話された内容から想像するに、俺でも次に続く言葉は実に禄でもない内容だと言う事は察しが付く。

―――そしてその予想は見事に的中してしまうのだから堪らない。

 

『僕の今の話の内容で薄らとだが察しは付いているだろうね。

言葉にするのは中々に辛い内容だが―――言うなればこの空間は、魔人の出現により幾つにも分かれ歪んだ東京の可能性の一つ。

更に言うなればこの世界の在り様は後の時代の君の選択によって育まれた絆の世界の未来の姿なのだよ』

 

また其処からスティーブンさんの難しい説明が続く。

意味が良く分からない部分も多々あったが、簡単に言えばこういう事だ。

 

東狂、つまりハルマゲドンによって人類が死に絶えた世界が現れた事により世界の理ってものが歪んだ。

元々は可能性、要は俺の選んだかもしれない選択肢の一つの世界に過ぎなかったそれが歪んでしまった理により現実化し始めているとの事。

この真っ黒な空間は歪んでしまった理、つまり歪んでしまった宇宙そのものが今の現実を蝕み始めてるって証拠らしい。

このまま放置しておけば今の現実は歪み続けている『並行宇宙』ってもんに侵蝕され食い荒らされ、下手すれば東狂なんて比じゃない『無間地獄』のような世界になってしまう。

それを食い止める為にスティーブンさんは俺かフリンの所に行こうとしてたとの事だ。

 

正直、説明して貰っても頭が追い付かない。

しかし放っておけば東京は、いやそもそもこの世界が滅びてしまうと言う事だけは否が応にも理解出来る。

やっと神も悪魔も創造主も居なくなった世界が滅ぶ? そんな事を寛容出来る訳がない―――復興してきたこの東京を良く分からない理由で無かった事にされるなんて納得出来るか。

 

だが、スティーブンさんは言っていた。

歪んでしまった『平行宇宙』を正しい流れに戻すには、それ相応の覚悟と犠牲が必要だと。

この今、つまり俺が仲間達と勝ち取ったこの東京に居る状態では宇宙の崩壊を止める事は出来ないのだそうだ。

歪み始めた『平行宇宙』に“転生”し、その歪みとなる切っ掛けを正す……そうして初めて、この東京は救われる。

つまり……覚悟と犠牲、それはこの今を救う為に特別な力を持つ二人の『救世主』のどちらかを『平行宇宙』に転生させなければならないと言う事。

フリンか俺、どちらかの存在をこの世界から消さなければならないという究極の選択を選ばねばならない。

(尚、転生と言うのは簡単に言えば並行宇宙に『生まれ変わる』事だそうだ)

 

勿論、選ばないと言う選択もある。

しかしそれは既に詰んでいる、未来を勝ち取った世界を自ら滅ぼすと同義……そんな選択を選ぶ訳ない。

其れにフリンは今から父親になる……これからの未来に幸あるアイツを巻き込む訳には行かないな。

 

ならば必然的に選択肢は一つしかないじゃないか。

アサヒやトキ、ノゾミさんやガストンやハレルヤ、フリンやイザボーさんやナバール、フジワラさんにツギハギさん……他にも多くの俺を支えてくれた人々。

皆と会えなくなるのは辛い……でもそれでも、それ以上に皆の“今”を俺は護りたい。

 

だから俺は―――

 

『……急いで結論を出す必要はないんだよ?

一応、状況は切羽詰まっているけれど、今日明日に歪みに飲み込まれる訳ではないのだから』

 

だけど時間をかければ別れが一層辛くなる。

俺はもう答えを決めた、どんなに辛かろうと苦しかろうとその道を進む。

唯、仲間達に別れを告げないまま消えるのは少々心苦しかった。

 

『そうか……なら君と絆を育んだ人々の事ならば心配ないよ、僕が何とかしよう』

 

そうか、其れなら一安心だ。

スティーブンさんの正体は知らないけど、何せこの人はフリンや人修羅やアレフさんやザ・ヒーローと俺が五人がかりでやっと勝てるような能力と観測の力を持ってる人だし。

ある意味、現代の奇跡の力を行使出来る超人だからな―――あの人に任せておけば大丈夫だろう。

 

『それと、僭越ながら僕から細やかな贈り物がある……受け取って欲しい』

 

車椅子に備え付けられたコンソールを弄るスティーブンさん。

直後、俺の持っていたスマホが電子音を発する―――スマホの画面には見慣れないプログラムとアプリがダウンロードされているようだが。

 

『今、君の元に送ったプログラムの一つは言うなれば悪魔召喚アプリの拡張版と言った所かな。

通常の悪魔合体では再現不可能だった『外なる宇宙』の悪魔達を召喚・合体・使役する事が可能となる。

勿論、君が使役した悪魔達も同様に自由に召喚出来る―――必要なマッカも少々控えめに設定しておいたよ。

本当ならば只にしてあげたいのだが、まあどこの業界も世知辛いと言う事で一つ納得して欲しい』

 

まあ、そりゃどこの業界も世知辛いのは知ってるけどよ……。

考えてみれば悪魔全書でミドーに払ってるマッカって何処に消えてるんだろうか?

そんな事を考えていると、さらに追加してくれたアプリの説明を続ける。

 

『二つ目に送ったプログラムは『ガーディアンシステム』と言うアプリさ。

君の行く並行宇宙には何が待っているのか解らない、万が一にも君が命を落とす事になれば全ては終わる。

このガーディアンシステムは、そんな君の命を守る為の云わば“保険”のようなもの―――自らの肉体に悪魔を憑依させる事で普段の身体能力を更に向上させる事が出来るのだよ。

別の宇宙においては『ペルソナ』などとも呼ばれる事もあるがね……それに別の宇宙とは言え、君が命を落としたとしたら君と絆を育んだ人々が悲しむだろう?』

 

確かに、今の俺は悪魔の力を数々取り込んで『魔人』に近くなってるとは言え一応は人間だ。

並行宇宙とやらじゃダグザに助けて貰う訳にもいかないし、いざという時の為の補助みたいなもんも必要だろう。

 

『そしてもう一つのプログラムは『シュミットシステム』。

このアプリは悪魔合体システムを生み出される工程にて偶然ながら生み出されたものでね、依代となる剣に悪魔を融合させる事でその悪魔の力を兼ね備えた武器に変化させるというプログラムさ。

どのような敵が存在するかも解らない並行宇宙において万能的に役立つ武器は必須だろう……どうかそれらのプログラムを役立てて貰えると僕としても幸いだよ』

 

中々大盤振る舞いのプログラムだ。

しかもスティーブンさんによればアプリの方は自動で更新され、新しいプログラムもさらに追加される可能性があるとの事。

……何故に並行宇宙なんて世界に行った先でスマホのアプリが自動更新されるのかは不明だが、まああって困る事は無い。

 

これでスティーブンさんの話は終わったようだし、これで準備は整った。

アサヒ達には別れは告げて行かない、折角決めた決心が鈍ってしまうから。

願う事は唯一つ―――アサヒが、トキが、ノゾミさんが、ガストンが、ハレルヤが、ナバールが、フリンとイザボーさんが幸せであるように。

俺はもう、貴方達と共には居られないけど、別の宇宙に転生したとしても皆の未来が明るい事を切に願う。

 

……雨かな、どうも周りが滲んで見えるぜ。

この雨が強くならない内に済ませて欲しい、そうスティーブンさんに言うと彼は小さく頷いた。

 

『最後に一つ言い忘れていたよ。

君が向かう並行宇宙は東京の“在り得たかもしれないカタチ”故に神や悪魔が人間を規模や待遇の大小の違いあれ支配している。

そのような世界に幼き姿で転生し、君の『神殺し』の力が知られればどのような手段を行使してでも君を排除しようとする輩も現れるだろう―――それを考慮して、君の力や記憶は凡そ十歳前後程度までは戻らないようにする事を許して欲しい。

それと、このような事を君に頼んだ僕が言うには烏滸(おこ)がましい考えかも知れないが……僕も君の道行きに幸多からん事を祈っているよ』

 

言い終わるとスティーブンさんがコンソールを弄る。

何かの準備が終わった後、不意に俺の周りを光り輝く魔法陣のようなものが覆う。

併せる様に身体の力が抜け、瞼が閉じていく―――暖かい、まるで誰かに抱きしめられてるようだ。

そう、か……この、安心感……これが、母親に、抱かれる子供の、安らぎ……みたいな、ものなの、かな……。

 

 

意識が消える―――暖かい『何か』に抱かれ。

最後の最後、完全に意識の消えるその時、不意にスティーブンさんが何かを言ったような気がするけど……。

 

 

『……配……要……い……君……独……で……無……ら……』

 

 

その最後の聞こえなかった言葉を耳に残し、俺の意識は完全に消えた。

 

 

~Side Out~

 

 

始まるは『神殺し』と呼ばれた青年の新たなる世界での道行き―――

 

其処に待つは幾つもの出会い、幾つもの出来事、幾つもの闘い、幾つもの運命の交叉。

 

創造神を退けた青年はその並行宇宙で何を見、何を聞き、何を感じ、何を成すのか。

 

それを知る者は居ない―――

 

 

 




暖かいご意見、ご感想を心よりお待ちしております。




※)量子論における量子の「直感的な考えでは奇妙に見えるふるまい」が拡大されて「猫が生きているか死んでいるか」というようなマクロな違いにおいても不思議な現象を起こすと考えるべきかという思考実験、及びその思考実験中に想定されている猫の事。

内容はまず蓋のある箱を用意して、この中に猫を一匹入れる。
箱の中には猫の他に、放射性物質のラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れておく。
もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これをガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死ぬ。
しかし、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。
一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。

猫の生死はアルファ粒子が出たかどうかのみにより決定すると仮定する。
そして、アルファ粒子は原子核のアルファ崩壊にともなって放出される。
この時、例えば箱に入れたラジウムが1時間以内にアルファ崩壊してアルファ粒子が放出される確率は50 %だとする。
この箱の蓋を閉めてから1時間後に蓋を開けて観測した時、猫が生きている確率は50 %、死んでいる確率も50 %である。
したがって、この猫は、生きている状態と死んでいる状態が1:1で重なりあっていると解釈しなければならない。
我々は経験上、猫が生きている状態と猫が死んでいる状態という二つの状態を認識する事が出来るが、このような重なりあった状態を認識する事はない。

これが科学的に大きな問題となるのは、例え実際に妥当な手法を用いて実験を行ったとしても、観測して得られた実験結果は既に出た結果であり、本当に知りたいことである観測の影響を受ける前の状態ではない為、実験結果そのものには意味がなく、検証のしようがないという事である。(Wikiより一部抜粋)

専門知識的なものだが、この作品において要は『猫が死んだ世界』と『猫が生きていた世界』があると理解して頂ければ十分。
簡単に言えば一生というものは己の選んだ選択によって分岐し、選んだ選択肢とは反対の選択肢によって生み出された世界も存在するかもしれない。
それが所謂『並行宇宙(並行世界、パラレルワールド、外史)』と呼ばれるもの。


【主人公設定】
名前:神藏晃(カムクラアキラ)
LV:∞(現在も成長中故)
職業:人外ハンター
年齢:凡そ二十前後
好物:イナリズシ、ヌエバーガー、その他色々(悪食)
趣味:釣り、ゲーム(スマゲーのモン○ト、チェ○クロ、パ○ドラなど)
特技:料理(本人は悪食なのに腕はプロ級)

【習得スキル】
覚醒の力(PS・全ての攻撃が相性関係なく貫通)
アカシャアーツL.9(物理属性攻撃)
トリスアギオンL.9(火炎属性攻撃)
アイスエイジL.9(氷結属性攻撃)
八色雷公L.9(電撃属性攻撃)
殺風激L.9(衝撃属性攻撃)
審判の光L.9(破魔属性攻撃)
アンティクトンL.9(万能属性攻撃)

【装備】
刀剣:ヒノカグツチ⇒無銘の儀式刀(シュミット用)
銃器:メキドファイア、AMRファントム、ハイパーバズーカ
弾丸:天魔の弾丸
防具:エージェント・B装備(防具強化キット使用済)
装飾:武王の腕輪、賢王の腕輪
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