ハイスクールD×D ~『神殺し』の新たな軌跡~ 作:ZERO(ゼロ)
そう言った方面が嫌な方、苦手な方、文句しか出ない方は回れ右してお帰り下さい
―――不死とは幸福であろうか?
人の考え方は多々其々であり、幸福と考える者も居れば不幸と考える者もいる。
尽きる事のない寿命を喜ぶ者も居れば、永劫に続く命に嘆き苦しむ者もいる……それは当然の事だ。
しかし恐らく、彼ほどに不死の命を得て“後悔”する事になる者は居まい。
己に過ぎたるを望むは間違いの始まり―――分相応を弁える事こそが肝要、その事を理解出来ていなかった。
故に彼の者は不死に肉体を持つ事を後悔し死んでいく、覚醒人をも超えし『超越者』とその臣下達によって―――
※※※※※
どうしてこんな事になったのか、かの蛇の王は全く理解出来て居ない。
己は凶悪な力を得、誰にも抗う事の出来ない最強の存在となった筈だ―――なのに何故、無様に地に叩き付けられている?
『どうした、王を語る蛇(くちなわ)よ?
この程度で終わりではあるまい―――それともその身は飾りか?』
巨躯の鬼神がシェーシャを見下ろす。
マサカド公が影、マサカド公の躰たる“公の影”の力は明らかに蛇王を超えているのは目に見えた。
しかしシェーシャは認めまい、いや認められる訳がない……己は不死、更に得た力により何よりも強いのだから。
『こ、この独活の大木がぁぁぁぁぁ!!
ボクに、ボクに屈辱を味合せてくれた罪は重いぞォォォォォ!! 死ね、死ね死ね死ね死ね死ね、死ねェェェェェェェェェェ!!!』
上体を起こし、公の影に喰らい付こうと牙を剥くシェーシャ。
だがその顎を凶悪なまでの“暴”を纏ったクランの猛犬、いやアルスターの狂戦士が穿ち貫く。
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――ッ!!!!!!』
『ヒギッ!? あっ、あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!??』
全身に波濤の獣(クリード)の力を宿した鎧を纏い、魔槍を構えたまま吶喊するクーフーリン。
纏った凶悪無比な“暴の力”は衝撃波となってシェーシャの顎を吹き飛ばし削り取る。
しかしシェーシャの顎は瞬時に再生する、彼は不死の力を持つが故に頭を吹き飛ばそうが心臓を抉り取ろうが瞬時に再生してしまうのだ。
『ククク、クヒヒヒ、残念でした―――
そうさ、そうだよ、ボクは不死身だ……君達が幾ら攻撃しようがボクは殺せない、殺せないんだよ!!
何で忘れてたのかな、恐れを感じて損したよ!! さあ、諦めて……げぎゃあ!!?!?』
『下劣よ、今喰ろうてやろうぞ蛇(くちなわ)―――女王の虐喰!!』
『屍を晒すと良いわ―――怨嗟の闇!!』
『焼き尽くせ、熱りたつ業火―――ッ!!』
勝ち誇るシェーシャだったが再び公の影の拳によって顔面を叩き潰される。
更に今度は彼の肩に乗っていたセイオウボ、イザナミ、イナンナが揃って攻撃を放ち、シェーシャの躰が大きく抉り取られた。
それでも再びシェーシャの傷は再生し、傷を受ける前の状態に戻ってしまう。
『無駄だってのが聞こえないの?
なら何度だって言ってやる―――お前らじゃボクは殺せない、今のボクを殺せるものは存在しない!!
解ったかい? 解ったら大人しくボクに喰われ―――ギ、ギャア嗚呼ああぁぁぁ!!?!?』
しかしそんな事などお構いなしに攻撃を仕掛ける仲魔達。
幾ら攻撃しても攻撃しても再生されてしまうのでは意味がないと思うが、アキラに何か意図があるのか?
地を駆ける霊的国防兵器たる存在達、多神連合幹部達が次々に攻撃を叩き込んだ。
『どうした蛇の王、その形は飾りか!? 冥界破!!』
『ヤソマガツヒ、ヤソマガツヒィィィ、ヤァソォマァガァツヒィィィ!!!!』
『巡り巡りて幾星霜―――祖国への恩忘れし蛇蝎よ、果てるが良い、大冷界!!』
『ハッ、蛇は蛇でもヤマタノオロチの方がまだ潰し甲斐があるぜ、ティタノマキア!!』
『立ち塞がるは敵に非ず、無様な人形に近し―――貫け雷光、真理の雷!!』
『貴様の如き木偶は死合う者としては些か不足也、怪力乱神!!』
『しかして我らが主が命にて、其の身に戦慄を刻もうぞ―――アメノムラクモ!!』
『フフフ……僕らを本気にさせた事を後悔する事だね、光刃ナンダカ! 闇刃ナンダカ!』
『哀れなる蛇(くちなわ)よ、せめてその魂に慈悲を……厳正なる裁き―――』
『―――駆けよスレイプニール!! 穿て神槍グングニール!! 眼前の敵を討ち貫け!!』
攻撃を仕掛けるも瞬時に傷は回復する、それでも攻撃を繰り返しまた回復されるの悪循環。
覚醒したアキラの力により無尽蔵に近い魔力を行使出来る為に魔力切れの心配はないが、一体何の為に攻撃を繰り返しているのか?
―――だが、この行為にはれっきとした意味がある。
そもそもアキラは戦いの場で意味のない事をさせはしない、それを彼らは理解している。
主と奉じる者に無条件の信頼を送り、主もまた彼らを信頼する―――それがアキラと仲魔達との関係なのだ。
『……無駄だ、無駄なんだよ!!
ボクは不死だぞ? 例え殺されても何度でも蘇る!! しかも今のボクには無尽蔵に力を強化する力もある!!
そうさ、ボクには勝てない!! 絶対に勝てない!! 絶対に……グゲェェェェェ!!?!?』
「五月蠅ぇなクソヘビ、ちっと黙ってろ―――アンティクトン!!」
シェーシャの言葉など無視し、攻撃を仕掛けるアキラ達。
無駄に戦い続ける事に何の意味があるのか、何の価値があるのか―――いや、意味も価値もある。
蛇王を語る蛇蝎はまだ理解出来ていない……狡猾に、下劣に、何より人間に近くなった事で彼に起こっている“変化”に。
不死とは最強か、と聞かれれば答えはNoだろう。
永遠に死なず、例えどのような攻撃を受けても再生する、それが不死だ。
文面からすれば死なずに傷を受けても回復すると言うのは驚異的で、シェーシャは文字通り最強の存在の如く思うかも知れない。
しかしそれはあくまで『生命力』が他者より脅威と言うだけで、決して最強とは成り得ないのだ。
例え不死身であろうが、傷が瞬時に回復しようが“不死”は死なぬだけであり“無痛”と言う訳ではない。
死なぬだけであり痛みは感じる、それも死ぬ程の攻撃を受けても死ぬ事を許されない、それがどれ程に歪(イビツ)だろうか―――普通ならば発狂するだろう。
シェーシャは続けられる連撃の中である疑問を抱く。
何故、意味も無く攻撃を続けるのか―――幾ら攻撃を喰らおうと回復する存在に攻撃を続けて何の意味があるのか彼には理解出来ない。
無駄な事をし続ける事に意味はあるのか? もしや他に奥の手があるのか? まさか瞬時に回復可能な己を殺す方法があるのか?
在り得ない、そんな方法がある筈はない、ならば何故―――不死の蛇王の脳裏に幾つもの疑問が浮かんで消える。
恐らく此処に居るのが多神連合に解放されたばかりのシェーシャならば疑問など浮かべなかった。
命令されるがままに暴れ、命令されるがままに戦う……其処に自我はほぼ無く、巨大な獣同然だったろう。
しかし自我がほぼ無いと言う事は考えを放棄し、本能のままに猛威を振るう状態である。
存在として正しいか間違っているかは解らないが、少なくとも戦いの中で疑問を浮かべる事はあるまい。
だが―――今のシェーシャは何度も殺され、何人も命を喰らった。
アキラ達との幾重の邂逅の中で成長……いや“進化”し、人間の如き意思を持つようになったのだ。
より狡猾に、より大胆に、より貪欲に、まるで人間の醜い部分を象徴するかのような存在に成長する……しかしそれこそがシェーシャにとって致命的となったのである。
かつてのシェーシャであれば疑問など持たずに暴れ狂ったろう。
しかしより人間に近く、より狡猾となった今のシェーシャは“この状況”に疑問を抱いてしまった。
何故、意味のない事をするのか? それに何の意味があるのか? そう言った多くの『疑問』は『猜疑』へと変わる。
敵はかつて自分を何度も殺した、ならば相手にはこの状況を打破する方法があるのではないか?
自らを強化し続ける力、これは本当に信用出来るのか? 土壇場で役に立たないのでは無いか?
今は傷が癒される……だが不死を封じる力を持っていたとしたらどうか?
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い―――何度こんな激痛を受け続けなければならないのか?
繰り返される『猜疑』、それはやがて限界を超える。
一か所が脆くなったダムに大量の水が流れ込む事で全壊するように、抱いた猜疑は自らのほんの少しの変化にも敏感になり、其処から自らを支えていた全てを信じる事が出来なくなってしまう。
―――実に皮肉な話だ。
より狡猾に、より貪欲に、より人に近くなった蛇王はそれが原因で完璧ではなくなってしまったのだから。
『―――ハッ!? う、うう、ウソだ……ボクは、ボクは不死だ!!
不死なんだ、最強なんだ、絶対に死なないんだ―――違う、違う違う違う違う違う、そんな訳……ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!?!?』
それは些細な切欠だ。
恐らくは全身中に刻まれる傷の数が余りに多い為に回復が追い付かず、ほんの少しだけ傷の直りが遅かった部分が出ただけの事だった。
しかし多くの猜疑によって追い込まれ、疑問を抱き続け、死ぬ程の痛みを延々と喰らい続けたシェーシャには正常の判断が出来なくなってきていたのだろう。
傷の治りの遅い部分を勝手に勘違いし、相手に『不死を無力化させる力がある』と危機感を抱いてしまった―――それこそがアキラの望んでいたシェーシャの“変化”だ。
「―――力を貸してくれナバール、ダグザ!!」
地を蹴り天へと飛び、痛みにのた打ち回るシェーシャに向かうアキラ。
後方では霊的国防達と多神連合幹部達が攻撃を浴びせ続け、復活の機会を与えない。
一瞬だけ黒い翼を生やしたシルクハットの怪人風の幻影が浮かぶと、アキラは足元に魔法陣を展開し、それを利用して更にジャンプしてシェーシャの懐へと飛び込む。
其処で今度は異形の主神・ダグザの幻影が浮かぶと、逆手に柄を構え、一気に愛刀を抜き放った―――
「ウオオオオオォォォォォ―――ッ!!!!」
猿叫の如き叫びが響き、神殺しの力を宿した刃がシェーシャの胴を薙ぐ。
元々の防御力か、それともアキラが意図しての事なのかは不明だが、蛇王の胴に一筋の斬痕が刻まれる。
だがその程度の斬痕では傷など直ぐに癒えてしまうだろう、一体何をする心算なのか?
するとアキラは何を思ったのか、切り裂いた蛇王の斬痕に自らの拳を突き入れる。
更に其処から思いっ切り拳を傷口に押し込むと腕から閃光の如きオーラが立ち上り、アキラ自身を包んだ。
『な!? ち、力が……ぬ、ける!?
か、神殺し貴様……ボクに、ボクに何を、したぁぁぁぁ!!!?!!?』
シェーシャの絶叫など意に介さず、腕を引き抜き巨躯を蹴って距離を離すアキラ。
彼の血塗れの腕には光り輝く球体と、小さな駒の様なものが握られている……球体を宙に放ると、アキラは理解不能な言語を呟く。
「―――※※※※※※※※※」
それは古代言語か? 内容は不明だが、唱え終ると宙に放った球体が光り輝く。
光はやがて何かの形を成し―――完全に光が止んだ後にアキラの横には多頭の蛇の姿をした悪魔が姿を現していた。
『―――我ハ龍王アナンタ。
我ヲ枷ヨリ解キ放チシ武士ヨ、貴様ニ無上ノ感謝ヲ―――』
目の前に現れた多頭の蛇を見、表情を変えるシェーシャ。
彼はアキラが何をしたのか理解した―――いや、嫌でも理解させられてしまった。
何故自らの力が減少したように感じたのか? 何故、力が抜けたように感じたのか……答えは簡単だ、アキラはシェーシャの『不死の源』とも言える“核”そのものを奪い取ったのだ。
悪魔が悪魔足り得る為、神が神足り得る為に必要なもの。
それは自身の“存在”―――悪魔や神と言った存在は人々の信仰、伝承、想像により形作られる。
より強ければ強い程に強化され、より信じられれば信じられる程に影響力も大きくなっていく……やがて人間独自の“観測”と言う力によって想像は現実へと変わるのだ。
しかし、時に其の“観測”と言う力は神や悪魔の存在を脅かす。
本来は伝承や幻影や架空の存在である神や悪魔を想像から現実へと変える力は言い方を変えれば、本来其処に存在する現実を幻想へと変える事が出来ると言う事である。
シェーシャの場合、伝承や伝説により『不死の蛇』と言う印象が抱かれている。
それはつまり―――人々の『観測』が蛇王を不死とし、存在を定着させているからに他ならない。
更に蛇王と同一とされるナーガラジャのヴァスキやアナンタと言った名の知れた存在が『シェーシャ』と言う存在をより大きく確立させ、おまけに得た『神器』や『悪魔の駒』とやらが彼の存在を災害級の怪物へと変異させていたのだ。
なら、そんな怪物を倒すには如何すれば良いか?
答えはさして難しいものではない、“蛇”を“不死の蛇王”と変えている『存在』を除けば良い。
シェーシャを不死の蛇王と変えている原因、それは人々が抱いた“蛇王”と言う存在―――言い方を変えれば、不死の蛇“アナンタ”と言う存在がシェーシャを確立させている。
要はシェーシャから『アナンタ』と言う成分を取り払ってしまえば、残るのは唯巨大なだけの蛇であると言う現実だけ。
故にアキラは蛇王から奪い取ったのだ―――彼が『シェーシャ』と存在を確立出来る力の源と、力を強大とさせている『悪魔の玩具』を。
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『か、返せ……ボクの力を、返せよぉぉぉぉぉ!!!!!』
巨大な腕をアキラに向かって迫らせるシェーシャ。
いや、今の彼は最早“不死の蛇王シェーシャ”ではない―――唯、図体がデカいだけの蛇の怪物と同じ。
急速的な回復能力も、再生能力も、不死性すらも失った蛇の攻撃などアキラや彼の仲魔達にとって『児戯』に等しいだけの些末なものだ。
―――斬光一閃。
アキラの手に携えられた愛刀が煌き、巨大なシェーシャの腕が切り落とされて大地に落ちる。
更に地に落ちるまでの間に仲魔達の斬撃により腕は粉微塵に切り裂かれ、建物を破壊する事無く降り注ぐ。
痛みに苦しむシェーシャ、傷は塞がる事も再生する事も無い……本当に不死性が無くなってしまったのだろう。
『ギ、ギ、ギギギ、ギァァァァァァァァァ!?!!?!!!??』
「五月蠅ぇぞクソヘビが、耳障りな声上げてねぇでさっさと斃(クタバ)れ―――」
恐らく『ソレ』をオーバーキルと言うのだろう。
言葉を合図に狂戦士、霊的国防の柱達、多神連合幹部達が一斉にシェーシャだったものに攻撃を叩き込む。
刻まれ、砕かれ、焼かれ、貫かれ……悪夢の如き連撃を喰らい続ける巨蛇は次第に形を失っていく。
しかしある意味では幸せなのかもしれない、これで蛇の怪物は死ねるのだから。
『グギャ、ゲバ、グヒ、エギャ、ゴギャ、グギィィィィィィ――――ッ!!?!!?』
悲鳴を上げていた巨蛇……遂に声すら聞こえなくなる。
幾千、幾万、幾億にも至る攻撃を受け続けた其の身は既に形を成さず、大地に雨の如く赤い鮮血を降らせた。
全ての形が無くなった後―――ボロボロになった『兵藤一誠』の姿をした蛇が地に伏すだけだ。
地に伏した哀れな蛇王の成れの果てを見下ろすアキラの仲魔達だったが、やがてスマホの中に戻っていく。
最後に残ったのは蛇の成れの果てを見下ろすアキラ、そんな彼の元に向かうアーシア、そして……彼の姿を恐怖と興味の合わさった視線で見つめているリアス達だけ。
「おいグレモリー……これはお前のだろ、ホレ」
リアスの前に何かを放るアキラ。
目の前に転げ落ちたのはチェスの兵士(ポーン)をモチーフとした悪魔の駒と呼ばれる代物。
どうやらアキラはリアスがシェーシャだった兵藤一誠に使った悪魔の駒を全て取り除いたと言う事だ。
本当に規格外な人物だ、本来ならば一度眷属とした存在は、死なない限りは悪魔の駒を取り出す事など不可能な筈なのに……悪魔の駒を拾うリアスの指先は小刻みに震えていた。
悪魔が人間に恐怖する事自体が在り得ない事だ。
だが、そんな常識など目の前の青年には通用しない―――断言出来る、彼は化物だと。
明らかに自分達よりも上の神や悪魔を使役する人間……考えたくもないが恐らく、今の冥界に存在する上級悪魔であっても太刀打ち出来ないだろう。
―――寧ろ、下手をすれば現四大魔王でも勝てないのではないのかとさえもリアスの脳裏には浮かんでいた。
いやそれこそ在り得ないだろう、冥界において最強たる四大魔王を人間が勝るなど在り得る筈も無い……リアスは首をブンブンと横に振ると、眷属達に支えられて立ち上がった。
重傷を負って虫の息だった小猫も、腕がグシャグシャに折れていた木場も、腰を抜かしていた朱乃も無事だ、先程のアキラの放った回復術によって全治したのだろう。
色々と聞きたい事がある―――しかし今はそれよりも、全壊してしまった駒王町と喰われてしまった人々や幼馴染の事をどうするべきかと思考する。
「あ、この町の事なら俺に考えがあるから心配要らんぞ。
それとあのクソヘビに喰われた魂も心配ない……遥か昔に食われた魂は無理だろうが、比較的に最近喰われた魂なら直ぐに解放される筈だ。
……それよりもグレモリー、このクソヘビの成れの果てをどうする心算だ? 此奴は人の姿をしてるだけで中身はあのクソヘビだ、生かしとけばまた面倒を起こすぞ」
地に伏す兵藤一誠を見つめるリアス。
丁度目を覚ましたのだろう、ヨロヨロと首を上げた彼とリアスとが目が合う。
途端に表情が変わり、兵藤一誠の姿をした力を失いし蛇王の成れの果ては懇願するように叫ぶ。
「ゆ、許して……助けて下さい、部長!!
ボクは死にたくない、死にたくないんです、もう逆らいませんし絶対の忠誠を誓います!!
絶対に役に立ちます、だからお願いだからお助け下さい―――部長!!!」
冷たい目で見つめるリアス。
当然だ、この男の所為で自分の領地である駒王町は全壊する羽目になった……許せる訳がない。
だがそれもこれも言うなれば巡り巡って自分の所為だ―――自分にもっと人を見る目があればこんな事にはならなかった。
目先の利益を優先させ、真実を見通す目を曇らせていた己の未熟さがこのような事態を招いた……そんな彼女に成れの果てたる彼を断ずる資格などない。
「……二度と私を部長と呼ばないで頂戴。
今の私は貴方を殺す資格も、偉そうな事を言う資格も無いわ……命は助けてあげる、代わりに消えなさい」
背を向けるリアス。
土下座して頭を下げ続けている存在に仏心が沸いたのだろうか?
しかしそんな頭を必死に下げ続けていた蛇は、見えないように哂う。
「(馬鹿が……ボクが下等生物如きに敗北を認めるか。
この姿はお前を油断させる為のものだよ部長、お前を下僕共と一緒に喰ってやるよ!!
神殺しも気付いてないし、この距離ならボクの方が早いんだよ馬鹿が!!!)」
消耗し切った体力を回復させるには些かあの程度では足りないだろう。
しかし今は此処から脱出して再起を図るのが優先だ、其の為なら恥も外聞も無い。
無防備に背を向けたリアス、その眷属達を直接喰らう為に蛇の成れの果ては飛び起きると襲い掛かる―――
次の瞬間、蛇の成れの果ての脳天はアキラの刃によって貫かれていた。
驚愕の表情でアキラを見つめる蛇の成れの果て、刃は脳天から顎に掛けて貫通している。
「ひ、ひどい……人、でなし……。
命乞いした、ボクを……ボクを……ボク、を……お、お前は……」
対してアキラは何処までも冷酷に見下ろす。
貫いた刃を引き抜くと、そのまま横薙ぎに一閃する―――哀れな表情の兵藤一誠の姿をした蛇の首が地に落ちた。
不意にその時、命を失いモノとなった亡骸から光が飛び出してアキラの中に飛び込む。
「……チッ、何だ今のは? まあ良い―――大丈夫だったか、グレモリー?」
「大丈夫よ……やっぱり、芝居だったのね……本当に見る目が無いわね私って、自分が嫌になるわ」
悲しげに呟くリアス。
恐らくは助かる為の口実だとは解っていた、だがそれでも信じようとした。
しかし結局、自分の選んだ選択肢は全てが間違いだらけだったと改めて彼女は気付かされる。
―――そして彼女はある決意を胸に再び歩き出すのであった。
皆様の温かいご意見・ご感想を心よりお待ちしております
【本編における超簡単な解説】
まあ簡単に言えばシェーシャ、人の魂喰い過ぎて人に近くなった故にやられました
第一形態の意志を持たない、ある意味では完璧なシェーシャの方が寧ろ強かったかもしれませんね