ハイスクールD×D ~『神殺し』の新たな軌跡~   作:ZERO(ゼロ)

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今回、設定の改変パネェです
はっきり言って暴走に近いかもしれません、それでも問題ないならばどうぞ
例によって納得出来ない方、今回は特に回れ右してください


第十六話

リアスの夜這い騒動から明けて翌日の放課後。

アーシアと共に『オカルト研究部(リアスと眷属達の隠れ蓑)』に訪れたアキラ。

部室の扉を開けた瞬間、不意に放たれる熱気―――部室内を覗き込めば、其処にはリアス達と昨日会ったグレイフィア以外に見た事のない人物が居た。

 

「ふう、久しぶりの人間界は相変わらず汚い場所だな」

 

開口一番、随分と無礼な事を言う輩である。

見た目は二十代前半、何処かのチンピラかホスト崩れ、いや人間の屑の様な雰囲気を出す男。

誰だかは不明だが断言出来る、此奴とはお近付きには成りたくない―――げんなりしながらアキラは溜息を吐く。

……ふと其処で何故かこの人物の気配を懐かしく感じたのだが、こんな軽薄そうな人物とは知人では無い筈だが?

 

「なあちびっ娘、誰だあのアホそうな奴」

「ちびっ娘っじゃなくて塔城小猫です……そんな呼び方する人には教えません」

「えー、良いじゃねえか教えてくれよちびっ娘」

「……そうですか、先輩は私に喧嘩売ってるんですね?」

「いやいや、喧嘩なんて売ってねぇよ……ほれ、機嫌直せって」

「ふにゅ……はっ、あ、頭をなでなでされた位で騙されません……ふにゅ~♪」

 

面白がって小猫の頭を撫でるアキラ、満更でもなさそうに気持ちよさそうにする小猫。

二人をニコニコしながら見守るアーシア――― 一触即発的な空気であった部室内に仄々とした空気が流れる。

しかし流石にそのままでは収拾がつかないと考えたのだろう、グレイフィアが空気を読んで説明を始めた。

 

「鳴海アキラ様、あちらの方はライザー・フェニックス様。

純血の上級悪魔にして古い家柄を持つフェニックス家のご三男に在らせられます。

更にグレモリー家次期当主の婿殿―――つまり、リアス様とご婚約されているお方であらせられるのです」

 

「ふーん、あんな軽薄そうな兄ちゃんがねぇ。

あーそうか、あの兄ちゃんと結婚したくねぇからグレモリーは俺ん所に来た訳だ。

まあ気持ちは解らなくもねぇな……第一声から人間界が汚いとか何様だ本当に」

 

ブツブツと文句を言うアキラだったが、それよりも気になっている事があった。

先程初めて会った筈のアキラ曰く『軽薄そうな兄ちゃん』の気配が懐かしく感じた事、それを疑問に感じていたのである……懐かしく感じたと言うより、彼の気配を知っていたと言うべきか。

 

アキラは仕事柄、偶然と言うものを信じない。

普通の人ならば偶然だと考える事柄にも細心の注意を払い、確りと前後関係を調べてから行動に移る。

裏世界の住人からすれば“臆病”にも見える行為―――しかしその行為故に裏の仕事において絶大な信頼を置かれる要因となっているのだ。

 

密かに後手でスマホを操作すると、そう言った情報を調べるに最も相応しい仲魔を召喚する準備をする。

やがてリアスとライザーと言う軽薄男の言い争いが始まるが、アキラは意に介さずにチラッとスマホを確認すると液晶に映っていた仲魔を召喚するのであった―――

 

 

●●●●●

 

 

「粗茶です、どうぞ」

 

ニコニコとしながらお茶を出す朱乃、だがその笑いは完全に心からのものではない事は容易に理解出来る。

そりゃそうだろう―――差し出された茶を手に取りながら手を握ったり、尻を触ったりと何処ぞのエロ親父のような行為をされれば気分が悪くなるのは当然だ。

どうやらそれ以前に彼女がライザーを嫌っているのは明白だろう、何故なら普段ならば彼女の言葉に「あらあら」や「うふふ」などと言う口癖が入る筈なのに、それが全く入らないのだから。

……まあそもそもの話、あんな軽薄そうな馬鹿を好む女もそうそう居ないだろうが。

 

「いやー、リアスの『女王』の淹れてくれた茶は美味いな。

どうかな? リアスとの結婚が終わったら君も俺の所に来ると良い、可愛がってやるぜ?

ああ勿論、其処のお嬢ちゃんもシスターのお嬢ちゃんも歓迎するぞ」

 

ソファーに座るリアスの横で馴れ馴れしく肩やら手やら髪やらを触るライザー。

実に気分が悪い事この上ないが、この男は自分の婚約相手の所に来ながらもナンパを行っている。

成程、グレイフィアの問題発言の際にリアスがライザーの事を『下種』とこき下ろしていた理由が理解出来る……こう言う存在の事を“屑”というのだろう。

 

まあリアスの眷属二人は別として、その程度の事で激高する程にアーシアは気は短くない。

ニコニコと『社交辞令』の笑顔をライザーに向けながら、アキラの耳元で小さく囁く。

 

「……アキラさん、撃って良いですかあの人?」

 

―――前言撤回、随分と頭に来ているようだ。

そんな彼女を宥めるように頭をポンポンと撫で、アキラは笑顔を向ける。

『気にするな』とでも言っているのだろうか? 言葉は無くてもある程度の事を読み取れる位に信頼し合っている二人である故、これだけで十分だった。

 

その時、不意に室内に怒声が響く―――

 

「いい加減にして頂戴、ライザー!!

以前も言った筈よ、私は貴方となんか結婚しない―――貴方と結婚するなんて真っ平御免よ!!

私の人生は私のもの、他の誰のものでもない!! 自分の人生のパートナーは自分で決めるわ、私は私が自分で良いと思った相手を婿にする、それと朱乃と小猫やアーシアに色目を使わないで!!」

 

しかし、そんな剣幕のリアスにライザーはニヤニヤしながら口を開く。

彼の得意げな態度と話が長い為に簡単に割愛するが、要はリアスとライザーの結婚は『純血の悪魔を絶やさない為に選ばれたもの』なのである。

 

 

先の三つ巴の戦争において純血の悪魔が大勢亡くなったと言う話は何処かで書いたと思われる。

名目としては戦争は休戦状態であり、堕天使や神の陣営とは拮抗状態であり、彼等とのいざこざによって跡取りを殺されてお家断絶になった家も無い訳ではない。

これからの情勢を考え、上級悪魔の御家同士がくっつくのは当然の事である―――特にリアスやライザーのような純血の上級悪魔、其の新生児が貴重だと言う事は冥界ならば誰でも知っている事だ。

 

グレモリー家は本来の跡取りであった兄・サーゼクスが魔王を襲名した事で家を出てしまっている。

リアスに兄妹はサーゼクスしか居ない、と言う事は必然的に彼女がグレモリー家を継ぐしかないのは当然。

御家を継ぐと言う事は、純血の悪魔を途絶えさせる訳にはいかないと言う事……即ちそれは、彼女が婿を取って家を存続させるしかないと言う事だ。

 

古いしきたり―――それがリアスを縛り付けている鎖。

彼女が婿を取り、純血の悪魔を存続させねばグレモリー家は御家断絶となる……古く続いた家を彼女の代で潰すなどと言う事をリアスも、彼女の家族も望んでは居まい。

……リアスの家の事情はかなり切羽詰まっている、だからこそ強引な手で娘の事情などお構いなしに彼女の両親はフェニックス家との結婚を進めてしまっているのである。

それにフェニックス家は名声も富も冥界有数の家だ―――何不自由なく、血筋を閉ざさせる事も無い事こそが本当の幸せだと両親は考えて言うのだろう。

 

 

ライザーの得意げな口調で語られた内容に気分悪そうに肩を竦めるアキラが其処には居た。

個人の生き方は個人其々で決めるものだ、勝手な考えで未来を奪う事の愚かさを何故解らないのか?

複雑な事情がある事は理解出来る、家の事を考えれば当然の選択だと言う事も理解出来る、だがそれでも他の道が無いのかを模索しても間違いは無い筈なのだ。

アキラから言わせて貰えば、リアスの両親は所詮『安易な道』を選んだだけに過ぎない―――本当の意味で自分の子供の幸せを願うなら、困難でも他の道を探すべきだと思うのだが。

 

「ライザー、貴方に一々説明して貰わなくても私は家を潰さないわ―――婿養子だって迎える心算。

だけどそれは決して軽薄な貴方なんかじゃない!! 私は私が自分自身で良いと思った者と結婚する、古い家柄だってその位の権利はあるもの!!」

 

リアスの言葉に機嫌が悪そうな表情となるライザー。

彼とすればハッキリ言えば正直リアスの返事などどっちでも良い、何故ならこの婚約は既に詰んでいる。

彼女がどんな選択をしようがライザーからは逃れられない―――彼には冥界の中でも古くから幅を利かせる古参悪魔の一人がバックに付いている故に。

言うなればこれは『最後通告』……素直に応じれば良し、応じないとしても強引にでも話を進める、其の為に来ただけだ。

 

「そうかい、だが俺もフェニックス家の看板を背負ってる。

名に泥を塗る訳にもいかないんでな……そんなに嫌なら、君の下僕全員を焼き尽くしても冥界へと連れ帰るぞ?」

 

放たれる殺意と敵意、包み込む熱風。

上級悪魔から放たれる敵意はそれそのものが力と化し、弱き者を簡単に屈服させる。

対してリアスも、その眷属である朱乃も木場も小猫も臨戦態勢となり正に一触即発―――何らかの切欠で緊張の糸は切れ、この狭い部屋の中で爆発するだろう。

 

ライザーの背中に集まる炎。

それは翼のように形取り、正に彼が『火の鳥(フェニックス)』だと言う事を顕著に表していた。

張り詰める室内の空気―――しかし、そんなリアス達とライザーは一瞬にして冷水を掛けられたかの如く鎮静する事になる。

 

―――ライザーに向けられた、凶悪無比な殺意の奔流によって。

 

「!? なっ……だ、誰だ!?!!?」

 

裂帛の覇気―――恐らくこれはそう言う類の代物だ。

まるで首元に刃を突き付けられているかの如く、少しその刃が動くだけで首が切り落とされる。

ライザーを襲う原因不明の震え、それが恐怖によるものだと言う事に気付くまでに少々の時間を要す。

今迄の余裕綽々でニヤけた表情など何処へ行ったのか、脂汗の様なものを浮かべながら荒い息をするライザー。

彼は無様にひざまづくと、情けない声を上げながら殺意を向けてるであろう相手に言葉を必死に飛ばす。

 

「わ、解った、解ったよ!! 済まない、俺が浅はかだった!!

最強の『女王』と呼ばれる貴女にこれ程の殺意を向けられたら流石に俺程度じゃ抗えない!!

化物揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくない、だからこの殺意を抑えて下さい!!」

 

その言葉が聞こえたのか、向けられた殺意が収まる。

荒い息をしながらライザーは改めてサーゼクスとその眷属の化物ぶりを再確認した。

共に、リアスと結婚する事でそんな存在と親戚同士になる事を内心で悦ぶ―――己が冥界の中心となる為に利用出来る権力を手に出来る事を。

 

だがしかし、彼は理解していなかった。

冷静になれば直ぐに分かった事だ―――普通に考えれば例え一触即発の状況を止める為とは言えど、自らの仕える上級悪魔の家の跡継ぎであるリアスが居る前でこんな殺意を向ける訳があるまい。

更に周囲を見渡せば直ぐに理解出来た事だ―――凶悪なまでの殺意を向けて居る筈のグレイフィアが、同じように向けられた殺意によって身動き一つ取れずに固まってしまっていた事を。

そしてもう一つ、決定的に歪な事―――上級悪魔が身動きが取れず、呼吸も満足に出来ない状況において普段通りに壁に寄り掛かっているアキラとアーシアが居た事を。

 

彼は理解出来て居なかった。

不死身の存在である筈のフェニックスの後継が、死を身近に感じてしまったと言う矛盾に。

最後に、己の影に何かが入り込んだと言う事にもライザーは全く気付いていない……其れが己に対して致命的になる事にも。

 

●●●●●

 

 

この後、中立の立場であるグレイフィアから“リアスが結婚を拒否した”際に妥協案としてグレモリー家現当主、つまりリアスの父親から預かって来た内容を語り出す。

恐らく彼女の両親も、フェニックス家の現当主達もリアスがごねる事を予想していたのだろう―――それを理解した上で、彼女の逃げ道を奪う手段を取って来たのだ。

その内容は『リアスが結婚に承諾しなかった場合、レーディングゲームにて決着をつける』と言うもの……まあ平たく言えば『結婚したくなければ自力で勝ち取れ』と言う事である。

 

一見、娘にチャンスを与えているように見える。

しかし実はこれ、完璧な『詰み』と言える行為だ―――リアスの結婚相手を知っていれば尚の事に。

フェニックス家三男であるライザーは既に何度もレーディングゲームに参加し、その中で常勝無敗とも言える結果を叩きだしている新鋭だ。

今迄の試合結果は全戦無敗―――引き分けになった試合もあるが、それは御家柄の関係で“接待的”な試合をしたからである。

何せ彼は不死鳥の力を持つ一族であり、誰よりもその不死性を熟知し、利用した戦い方で何度も何度も勝ち抜いてきた実績を持つが故に。

 

簡単に言えば『出来レース』なのである。

レーディングゲームはある程度の例外はあれど成人前の未成年は参加する事は出来ない。

リアスは外見的には成人女性の如き魅力的な姿をしているが、高校に通っている事から未成年である。

しかしライザーは既に数多くのレーディングゲームに参加し、御家事情以外は常勝無敗を誇る上級悪魔の顔ともいえる存在だ―――この時点で決定的に経験差があり過ぎるのだ。

更に眷属の数も違い過ぎる……リアスの場合は己を入れて4人(正確には+1人)、ライザーの場合は全駒分(15)の人数の眷属を揃えている。

つまりこのリアスの両親から与えられたチャンスは所詮、初心者が上級者には勝てないと高を括っているだけに過ぎない。

だから『出来レース』なのだ―――リアスの両親は彼女に勝たせる気はないと言う事である。

事実、ニヤニヤしながら話を聞き終わったライザーが口を開く。

 

「しかしリアス、キミは本当に正気か?

この程度の連中じゃキミの『女王』である『雷の巫女』位しか俺の可愛い下僕に対抗出来そうにないなぁ」

 

其処でライザーは格好付けて指をパチンッと鳴らす。

すると部室内にフェニックス家の紋章の刻まれた魔法陣が展開し、次々と人影が出現する。

現れた人影は総勢十五人―――全員が女性、多種多様の年代や種族の眷属悪魔達が其処には終結していた。

 

「(……何だ、碌な奴が居ねぇじゃねぇか)」

「(そうですねーアキラさん、何だかやけに自慢げだったからどんなものかと思いましたけど)」

 

現れたメンバーにチラッと目を向けたアキラとアーシアはひそひそと聞こえないように呟く。

先程、ライザーは『自分の眷属に太刀打ち出来るのは朱乃位』という旨の暴言を吐いていたが、それは余りにもリアスの眷属を過小評価し過ぎである。

彼ら二人が見て察するに十五人いる中で目立った実力を持って良そうなのは三人~四人も居れば良い所か、それでも感じる気配からは精々木場や小猫に毛が生えた程度の力しか感じない。

あれで良く実力者だなどと偉そうな口が叩けるものである―――あの程度で強いと感じれると言う事は余程今まで戦った他の連中の眷属が弱いか、それとも八百長でもしてたかと言った所だろう。

―――グレイフィアの言っていた『常勝無敗』とか言う戦績も当てにならない、肩を竦めながらアキラは極めて退屈そうに小さく舌打ちをしていた。

 

「どうだリアス、これが俺の可愛い下僕達だ。

それにどうだ其処の奴―――俺の可愛い下僕達は、羨ましいだろう?

お前のような愚図そうな男には一生縁が無いだろうがな……こんな事も出来るんだぞ俺は、ユーベルーナ来い」

 

不意に見せつけるようにライザーが眷属の一人と熱いディープキスをする。

恐らく先程のアキラの舌打ちを『ハーレム状態の自分を羨んでいる』とでも勘違いしたのだろう。

酔い痴れているのだろうか、ユーベルーナと呼ばれた眷属も頬を真っ赤に染めて痴態を愉しんでいるが、次のアキラの言葉で態度は豹変する事になった。

 

「いや、別に羨ましくねぇし。

てかお前のハーレムってのガキか年増しか居ねぇじゃねぇか……もしかしてそういう趣味か?」

 

嘲笑を向けていたライザーとユーベルーナ、眷属達の空気と表情が一瞬で凍る。

アキラは別に羨望や嫉妬で言葉を吐いた訳ではない、寧ろ思った事を口に出しただけだ。

そもそもライザーの眷属程度以上の容姿の輩などアキラの周りには掃いて捨てる程に存在する―――翼が生えていたり、大きさがまちまちであったり、明らかに人型でない部分を容認すればの話だが。

アキラにとってはライザーの陣営程度の女性など見飽きていると言える……そもそもの話、かつての東京の戦友達が裕に彼女達を越えているのだから当然と言えば当然の話であろう。

……ついでの話だが、アキラの言葉に若干ダメージを受けていたリアス陣営の眷属が居たとか居ないとか。

 

「リアス、領土の奴隷の躾がなっていないぞ―――ユーベルーナ、その人間に身の程を教えてやれ!!」

 

ライザーの言葉に怒りを露わにしたユーベルーナがアキラに迫る。

確実に殺す気満々なのか掌に魔力を込め、そのまま叩き付けようとした―――止めようとするリアス陣営だったが、その前に逸早く乱入した人影の一撃によってアキラは叩き伏せられて倒れ込む。

ユーベルーナの間に割って入り、アキラを叩き伏せた人物……それは棍を持つ、感情表現が少なそうな和服の少女であった。

 

「ミラ―――貴女、それは何の真似?」

「……申し訳ありませんユーベルーナ様、あのような雑魚に身の程を教えるのには私で十分だと思いました」

「フン、そんなにライザー様に言い所を見せたいのかしら? 雑魚の癖に生意気よ」

 

眷属と言えば仲間の筈だ、なのにそのミラと言う少女に対しての周りの視線は冷たい。

汚らしいモノを見る侮蔑の眼、嘲笑の眼―――そんな目を向けられても少女は表情一つ変えず、唯頭を下げるだけだ。

 

「もう良いわ、目障りだから……ライザー様、愚図のミラがやりましたが宜しいですか?」

 

ユーベルーナの言葉にライザーは少々気分が悪そうに言葉を返す。

どうやら彼女、唯“弱い”という理由でライザーからも、他の眷属からも虐げられているようだ。

……いや、その中で一人だけだが少女に対して心配そうな目を向けている人物も居たが。

 

「チッ、ミラ……余計な真似をするんじゃねぇよこの役立たずが。

テメェは所詮、大した能力も持ち合わせてない『兵士』の数合わせだろうが……囮程度にしか役に立たねぇメスブタが一々俺の前に面を見せるんじゃねぇよ」

 

散々に暴言を吐かれ、頭を下げながらも肩が震えるミラ。

そんな彼女にまだ言い足りないのか、嫌な哂いを浮かべながらライザーは言葉を続けようとする。

しかしその時……彼の眷属の中に居た、小柄ながら存在感のある独特な髪形の少女が怒鳴りながら口を開いた。

 

「お兄様!! 自分の眷属になんて事を言うのですか!?

ミラをこれ以上貶める心算なら私にも考えがありますわ―――ミラと共に眷属から抜けさせて頂きます!!」

 

どうやら彼女、ライザーの妹らしい。

彼女の言葉を聞き、途端に表情を変えるとライザーは言葉を返す。

 

「じょ、冗談だレイヴェル……そんなに怒った顔をするなよ。

ミラ、もう良いからとっとと戻れ―――レイヴェルに免じて勝手をした事は許してやる」

 

ライザーの言葉にもう一度深く頭を下げると歩き出すミラ。

途中、倒れたまま起き上がらないアキラの横を通り抜ける際に彼女はほんの小さな声で何かを呟いた。

 

「…………さい……」

 

本当に微かな声であった故に何を言ったのかは不明だが……。

自らの元に戻って来たミラを一瞥し、ライザーはリアスに対してニヤニヤしながら言葉を続ける。

 

「リアス、今のは俺の所の一番最弱の眷属だ。

それでも一応、レーディングゲームに参戦してるから実戦経験は君や君の眷属より上だろ。

君の下僕達じゃ恐らくアレも越えられん―――だが、あまりにも差があり過ぎても面白くないからなぁ。

よし10日だ、10日間時間をやるから精々自分と自分の下僕の修行でもする事だ。

因みに負けた場合は有無も言わさずに直ぐに結婚して貰う、それと君と共に君の『女王』と『戦車』も貰い受ける……待ってやるんだ、この位の条件は呑んでもらうぞ?」

 

それは余りにも分の悪過ぎる条件だ。

しかし今のリアスにはその条件を呑む事でしか“自由”は無い。

朱乃、小猫、蚊帳の外の木場に促され、心底悔しそうな表情でリアスはゆっくりと首を縦に振った。

 

「結構……なら10日後を楽しみに待ってるぜ、結果は解ってるようなもんだがな。

ああそうだ、下僕の人数が足りないなら其処で伸びてる人間とシスターの嬢ちゃんも入れて良いぞ?

人のモンを奪うのが大好きでな、シスターをハーレムに入れるってのも面白いし結構タイプだからよ……まあそんなゴミクズ程度の人間入れた所で物の数でもないがよ、アハハハハハ!!!」

 

高笑いを上げながら魔法陣に消えるライザー、続くように眷属達も消えていく。

其処で最後まで残っていたライザーの妹・レイヴェルがリアス達に深々と頭を下げる。

 

「リアス様、不肖の兄が申し訳御座いません―――

もしも御気が進まないのなら今回のレーディングゲームは辞退して頂いても構いませんわ。

その時は両親の説得を私が責任持って致します……ですので、どうか……」

 

レイヴェルの場合はこの結婚に反対しているようだ。

だがリアスは頭を横に振ると、先程ライザーに向けていたものとは全く違う優しい眼差しで返す。

 

「有難うレイヴェル、でもそれは出来ないわ。

例え其処で一度は何とかなったとしても、次はその事をだしに逃げ場のない婚礼を組んで来る。

今回だけ、今回だけしかないのよ……私が自分の夢を叶える為に無茶が出来るのは」

 

リアスの言葉にレイヴェルは残念そうに顔を伏せる。

確かに彼女の言う通りだ―――今回は何とかなったとしても、所詮は焼け石に水程度なのだと。

ならば彼女に出来る事は一つしかない、強い意志を湛えた目でレイヴェルは言う。

 

「……解りました、なら私に出来る事はもう在りませんわ。

不肖の兄とは言えども兄は兄、その兄を見限って手を抜く訳にも参りません。

リアス様、いえリアス姉様―――10日後のレーディングゲーム、全力で行かせて頂きます。

結婚の云々はゲームが終わってから追々考える事に致しますわね」

 

と、其処で不意にレイヴェルは突っ伏したままのアキラを見ながら申し訳なさそうに言葉を続ける。

 

「リアス姉様、其方の殿方が目を覚まされたら謝っておいて頂けますか?

言動が少々引き金を引いたとは言えど虐げたり貶める為に言ったのではない事は見てた私が良く解ります。

それに力を感じない唯の人間をレーディングゲームに参加させる事は出来ませんから……全てが終わった後に改めて謝罪に参ります、では失礼致しますわ」

 

言い終わると優雅に頭を下げるとレイヴェルも魔法陣に消えていった。

 

※※※※※

 

ライザー陣営が居なくなり、途端に気温の下がる部室内。

溜息を吐くリアスの横で突っ伏していたアキラが何事も無かったように立ち上がる。

 

「アキラ君、ごめんなさい―――それと大丈夫だった?

行き成りの一撃で避ける事も出来ないままだったみたいだけど勘違いしないでね、悪魔はあんな奴ばっかじゃないから。

それにしてもライザー、クズだって事は昔から知ってる……でも眷属に対するあの態度は許せないわ、幾ら自分の望んでいた強さを持たない眷属だからって……」

 

再び溜息を吐くとアキラを見るリアス。

どうやら傷は無いようだ、まあ当然だろうが……そもそも駒王町を滅ぼす程の存在を討った彼がライザー陣営の『最弱の駒』に傷を付けられる訳があるまい。

しかしあのミラと言う少女、何故あそこまで虐げられてまでライザーの陣営に居るのか解らない―――眷属にされてしまったと言う理由もあるだろうが、それ以外にも理由があるようにも感じるが。

だがアキラはリアスに対して思ってもみなかった言葉を返した……恐らく、対峙した者しか分からない『驚くべき事実』を。

 

「……先に言っとくが、さっきの嬢ちゃん強いぞ。

叩き伏せられたように見えただろうが実際は棍の先で軽く押されただけだしな。

それにあの嬢ちゃん、最初から誰であっても傷付ける気はなかったと思う……叩き付けられたのに皆が目が云った一瞬の隙を利用して『気絶した振りをして』と囁いていた。

まあこっちも意趣返ししたから別に良いが、何であの中で『一番強い気配』を持つ奴があそこまで貶されて我慢して弱い振りしてるんだかな……」

 

『まあ大体理由は解る』と呟くと、不意にアキラが口から何かを吐き出す。

地に落ちたそれは咬み千切られた木片―――喰い千切ったかの如き断面を表すソレが何なのかを理解するまでリアス達は少々の時間を費やしたと言う。

 

 

●●●●●

 

 

冥界の上級悪魔の眷属の部屋にしては実にみすぼらしい部屋の中。

同じ眷属から貶められ、蔑まれていた無表情の和服の少女・ミラはボロボロの部屋の切れ間から見える夜空を見ながら呟く。

 

「……やっと此処まで来たよ、お姉ちゃん。

やっと、やっと……お姉ちゃんを追い込んだアイツの尻尾を掴んだよ。

辛かったよ、苦しかったよ、悲しかったよ……でもそれ以上にお姉ちゃんを苦しめたアイツを許せない気持ちの方が勝ったんだ。

復讐なんてしても自己満足かも知れない、何もならないかもしれない、許す事が大事だっていう人も居るかもしれない。

だけどボクはお姉ちゃんが利用されて、慰み者にされて、ボロボロになって捨てられた事を無理矢理忘れて生きるなんて人生は……絶対に御免だから!!!」

 

その眼差しはあの死んだ魚のような目をしている時とは全く違う。

恐らくこれこそが彼女の……ミラと言う少女の本当の姿と言う事なのだ。

 

 

彼女の目的は一つ―――それは姉の復讐。

ある人物に想いを寄せたが故に利用され、散々男たちの慰み者にされ、ボロ雑巾の如く捨てられた。

更に『ある事情』と『穢された事』により精神を病み、やがて自ら命を絶つ―――両親はその後を追うように二人とも怨嗟の中で死んだ。

 

彼女は捨て子でありながら愛されていた。

本当の親、本当の姉の如く接し―――“自らの正体を認識した後”も変わらぬ家族でいてくれた。

それを奪った者が憎い、安らぎを奪った者が許せない、だからこそ少女は『無能』と蔑まされながらも必死に耐え、機会を待っていたのだ。

―――自らの義姉の人生を狂わせ、死を決意させた男を殺す為ならどんな事も厭わない。

 

ミラは壁に立て掛けてあった棍を見る。

棍の先端は歪に避け、千切れ、折れている……間違いない、これを行ったのは先程出会った人間だ。

“彼”は強い……全力を出しても勝てるか解らないと思える相手に出会ったのは初めてである。

あの人物は『仇』が執心する女性の知り合いだ、ならばもう一度出会う事もあるだろう。

 

万が一の時の『保険』として―――

 

 

少女の偽りの名はミラ、冥界の上級悪魔ライザー・フェニックス最弱の駒。

他の眷属から蔑まされ、貶められ、役立たずの烙印を押され、囮程度にしか使われない存在。

 

しかし、彼女の本当の姿は決して最弱ではない。

遥か昔……幼き頃に本当の両親を人間に殺されながらも無償の愛に触れ、人の心を得た正真正銘の怪物。

本当の父と母から受け継いだ圧倒的な力は、封が解かれた後に悪意を持って振えば忽ち“災厄”へと変わるだろう。

 

『鬼の王』と『片腕の鬼女』との間に生まれた娘。

その名は“滝夜叉姫”、又の名を“五月姫”―――其れこそがミラと名乗る鬼人の少女の本当の名である。

 




皆様の温かいご意見、ご感想を心よりお待ちしております


【今回の改変(HDD)】

ミラ……原作におけるライザーの眷属
本来、ライザーは女癖が悪いですが女性を大事にするフェミニストです
しかしこの作品においては下種な部分を強く強調し、眷属最下位の実力(を装ってる)のミラを役立たずとして蔑んでます
しかし彼女も蔑まれながらも己の目的(育ての両親や義理の姉の復讐)の為に耐えていると言った感じですかね
尚、彼女の本当の正体は鬼人であり本来はユーベルーナよりも強いが、生来の優しさも併せ持っている
(実際、聞こえなかったがアキラを殴った際に『ごめんなさい』と謝っていた)

※)因みに彼女の本当の名の【滝夜叉(五月)姫】は、本来は平将門公の娘
しかしこの小説では鬼の王とその愛人(だったとされる)片腕の鬼女の娘となってます
鬼女は他にも信州戸隠(とがくし)や鬼無里(きなさ 現長野県長野市)に伝わる紅葉伝説の呉葉(紅葉)や坂上田村麻呂の妻・鈴鹿御前なども有名


ライザー……原作よりもクソ野郎に


レイヴェル……原作とは違い、クソになった兄と反目しています
ミラは心からの親友であり、ライザーの眷属の中でも唯一無二の信頼する相手
兄や兄の眷属達からミラを庇う為に眷属に、レーディングゲームにおいてのブレイン
リアスの事はクソ以下の兄とは違い、本当の姉のように慕っている


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