ハイスクールD×D ~『神殺し』の新たな軌跡~   作:ZERO(ゼロ)

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国を憂いて幾星霜―――

  必殺の霊的国防兵器 此処に見参

御国の為に いざ往かん




第四話

『必殺の霊的国防兵器』―――現代日本においてこの名を知る者は少ない。

その正体は『富国強兵』と言う願いの下、日本防衛の為に使役された強大な力を持った日本の神々の事だ。

元々は第二次世界大戦時に国を霊的側面から守ると言う目的の下に帝国陸軍が召喚した悪魔、アキラの本来育った東京において各々が強大な力を誇ったが同盟側のより強大な力を持った悪魔の前に敗北する。

 

その凶悪無比な力をかつて利用し、再び強き国を再建しようとした者もいた。

しかしその目論見はミカド国の英雄にして救世主(メシア)と現在は呼ばれる当時のフリンによって妨害される。

 

龍神コウガサブロウ

英傑テンカイ

英傑ミチザネ

天津神オモイカネ

英傑ヤマトタケル

邪神ヤソマガツヒ

天津神タケミカヅチ

 

そして、東京を護る防壁となりし破壊神マサカド

隠されし九番目の霊的国防兵器、女神イザナミ

更に今は正体すら明かされぬ十番目の霊的国防兵器とそれらの頂点に存在する“零番”。

 

―――八柱(正確に言えば十一柱)の神々は一部の例外を除き再び眠りにつき、東京を支える礎に戻ったのであった。

(東京を護る防壁となっていたマサカド公、アキラと契約したタケミカヅチとテンカイとイザナミを除く)

 

 

しかし……何時からだろうか?

東京にて石塊となり、国の行く末を見守り続けていた筈の“彼ら”が姿を消したのは。

恐らくは東京の未来は既に守られた、人の手によって未来は紡がれていく―――その行く末に自分達の力は必要ないと理解したのだろう。

 

彼らは何処へと向かったのか?

決まっている、それは彼らの力を必要とする場所へだ。

ならばその場所とは何処なのか―――それは、未だ水面下で争いの続く別次元の宇宙であった。

 

 

●●●●●

 

 

「……仕事が無い?」

「えぇ……此処の所、急に『はぐれ』を撤回してくれってクソ貴族様達からのお達しが多いモンで」

 

詳しく話を聞けば、件のニスロク家の虐殺事件(表向きは病死)を切っ掛けに『はぐれ悪魔』を撤回するものが増えてるのだと言う。

まあ此処は表立って解決出来ない『はぐれ悪魔』を始末する事を目的として存在する斡旋屋だ、依頼の中には人様には言えない理由で秘密裏に野良犬の始末を頼みたい者だっているだろう。

先の『黒歌』も、ニスロク家当主は息子可愛さに賞金を懸けたのではない……己の身の保身の為に、危険であろう人物を真っ先に消そうと思ってしただけの事だ。

何処の貴族も当たり前にしている事―――しかし、その当たり前にしている事が原因で凄惨に殺されてしまっては身も蓋もないと言う事。

 

―――だからこそ貴族達は裏の斡旋屋に依頼を頼む事を止めたのである。

恐らくその裏の斡旋屋は『狩人』の行き付け、そんな所に脛に傷を持つ存在が依頼を頼むなど自殺行為。

下種で愚劣で愚図で最低な悪魔の貴族達でも、己の危機には無駄に敏感と言う事だ。

 

「……困った、今は別の仕事も無いから暇になっちまった」

 

はぐれ悪魔の掃除人(狩人)以外にもネットを利用して人外ハンターを営むアキラ。

まあ人外ハンターとは言ってもこの東京においてはどんな仕事でもこなす便利屋か探偵の如き仕事内容だ。

そちらの方もそこそこに盛況なのだが、既に今回の分の依頼(失せ物探しや猫探しなど)は仲魔達に任せている。

 

一応、お得意様とも言える人物から依頼を受ける仕事もあるが……。

だがそっちは魔法少女に憧れている世紀末覇者の漢の娘(間違っても“男”ではない)の濃い話とアニメ鑑賞に一日中付き合わされる事になる。

何せ一度、仲魔が行った際は高々2~3時間程度で降参し、それ以降はアキラ以外は依頼主の所に行く事は無い程だ。

……尤も、そんな人物と気さくに付き合えるのもアキラの良い所とも言えるが。

(実際、依頼主との付き合いは一番長い)

 

「旦那、お暇なようでしたら私に少し良い考えがあるんですが……」

 

不意にそう話しかけてくる斡旋屋の主。

良い考えとは何だろうか? もしや別の仕事に当てでもあるのか?

しかし斡旋屋の主は依頼書ではなく、何かが入っている袋を奥から持って来るとカウンターに置いた。

 

「旦那はこの東京の礎を創ったとされる『護り神』ってのが居るのを御承知ですか?」

 

護り神、こっちに来て聞いた事がない。

一応、此処も東京なのだから存在しているかと調べた事もあった。

しかしこの東京は向こうの東京と街並みも作りも大きく違い、結局解らなくて諦めざるを得なかったのだ。

 

アキラがかつて居た東京には防壁と化して『神の御業戦争』から民を護ったマサカド公が居た。

更に確かテンカイやタケミカヅチから聞いた話によれば『必殺の霊的国防兵器』と呼ばれた存在が居たらしいが……事件後に参拝しようとしたが、本来ある筈と言われていた場所に塚は存在しなかったが。

そんな事を考えていたアキラは次に飛び出した斡旋屋の主の言葉に驚く事になる。

 

「存在しますよ、護り神は。

まあ旦那の“住んでいた東京”とは随分こっちは違いますし、彼らの力をクソ悪魔やクソ天使やクソ鴉に悪用されたくないんで―――失礼ながら、私が結界で封印させて貰ってます」

 

瞬間、腰の刀の柄とガンホルダーの拳銃のグリップを握るアキラ。

今、何と言った? この男は『旦那の住んでいた東京』と言った……この男は自分の事を知っている。

馬鹿な―――この東京は『彼方の東京』とは違うのではなかったのか? 確かスティーブンはそう言った筈だ。

ならばこの人物は何だ……そんな考えを見透かすように斡旋屋の主は再び口を開く。

 

「御心配なさらず、私は貴方の敵ではありません。

まあそれを行き成り信じろと言うのも無理な話でしょう、故にこれは私からの敵ではないと言う証です。

龍蛇の双鱗、黄泉の穢れ土、八意脳髄、飛梅の苗木、焼津の火打石―――明光の輪宝はお持ちになられてますね。

この東京には其々五方に一つづつ東京の礎を創った武士達が封印されてまして、その場所でこれらの宝具を使う事で彼らを目覚めさせられます……勿論、相応の能力は必要となるでしょうが」

 

……この人物は『テンカイ』と契約している事も知っているらしい。

だがどうやら本当に敵意は無いようだ―――いや、寧ろこの気配は何処かで感じた事があるような気がするが。

あの時感じた気配とは何処か違う、しかし確かにこの気配を……この人物を知っている。

そんな疑問をまた心を読んだかのように斡旋屋の主は口を開く。

 

「結界は解除しておきますので。

あぁ……私の正体は、貴方が日ノ本の礎たる『憂国の徒』達と全て契約出来た暁にお教えしましょう」

 

これ以上、何も答えてはくれないだろう。

ならばまずは成すべきを成す、それだけの事……今までだって何度もやって来た事だ。

カウンターに置かれた袋を掴むと、アキラは振り返る事無く店を後にした。

 

 

●●●●●

 

 

其処からアキラは東京の各所を巡る。

最初は龍蛇の双鱗を依代としたコウガサブロウ。

底の国を彷徨った挙句、その体を蛇と化し、諏訪大社に祀られた蛇神。

どうやら宝具で解放した際はある程度の記憶は有しているらしく、契約の儀式として『速さ』を試された。

アキラの鍛え抜かれた『速さ』に心服したコウガサブロウは『力を貸す』と約束してくれたのだ。

 

『良かろう、オレを心服させる速さを持つお前に敬意を。

国を憂いて幾星霜―――龍神コウガサブロウ、御国が為にいざ行かん。

さあ共に往こう我が主よ、己が誇りを貫く為に―――』

 

 

続いて黄泉の穢れ土を依代としたヤソマガツヒ。

日ノ本の主神・伊邪那岐命が黄泉国より戻り、穢れを禊にて落とした際に生まれし邪神。

基本的には同じ事しか言わぬが、契約の儀式としてアキラの『運』を試し、結果的に彼を認める。

外見は少々禍々しいが愛嬌があり、まるで動物かの如く懐いてきた。

 

『ヤソマガツヒぃ……ヤソマガツヒぃ♪』

 

 

八意脳髄を依代としたオモイカネ。

思念と言う『概念』を神格化した存在であり、知略に長ける英知の神。

契約の儀式としてアキラの智へと繋がる『技術』を試し、技術の高さに納得すると己の力を託す。

 

『汝が智、確かに見定めた。

思い巡りてオモイカネ……智を知り、人知りて幾星霜。

智を持ちて国の恩に報いろう……往こうぞ我が主、いざ思いを共にして』

 

 

飛梅の苗木を依代としたミチザネ。

学者・歌人としての優れた力を持ちながら、荒魂としての側面も持つ雷神。

契約の儀式としてアキラの『魔』を試し、その溢るる魔の才能に未来を見出して力を貸した。

 

『この若人が進む道は果たして御国か修羅道か。

なればその道、この雷光が化身が見定めよう―――進むべき先を照らさんが為。

我は英傑ミチザネ―――共に歩まん主殿、己が道筋見極める為』

 

 

そして―――焼津の火打石。

日ノ本の神話における勇猛にして勇敢、更に最も武に秀でたる英雄ヤマトタケルの依代。

このヤマトタケルの宿りし塚、その場所に向かってアキラは歩み続ける―――その先にある未来の為に。

ヤマトタケル眠りし塚、祀られる場所の名……その名は『姫島神社』。

 

※※※※※

 

「……此処が、姫島神社か?」

 

長い階段を上り終えた先に見えたのは一つの大きな神社。

どうやらこの場所は神社と生家が一緒になっている類のものらしく、中々立派なようだ。

……しかしやけに人気が少ない、これだけ綺麗で隅々まで清掃が行き渡っている神社などそうは無い筈。

時は昼過ぎ、人々が眠りにつくような時間でもない―――なのにこの違和感は一体何なのだろうか?

 

「……あの、ここにごようじですか?」

 

言葉のした方を振り返るアキラ。

見れば其所には着物(恐らく巫女服)を着た可愛らしい上品そうな少女が見つめている。

巫女服と言う事は、恐らくこの姫島神社の関係者か何かなのだろうか? それを訪ねようとすると、もう一つの声が響く……今度は優しげな大人の女性の声だ。

 

「何方様でしょうか? 此処に御客様が来られるなんて久し振りですので。

もしや泥棒様ですか? でしたら此処は私と娘と主人とで三人で暮らしているだけでお金になるようなものは御座いませんわ……それとも、また主人と別れさせるようにと来られた方ですか?

でしたらお伝えください、私は自分の意志で主人と結ばれました―――貴方達の勝手な思い違いで、私達家族のこの尊い時間を邪魔しないでください、と」

 

優しそうな女性だが芯は凛とした人物のようだ。

恐らく『大和撫子』や『賢母』というのはこのような女性の事を言うのだろう。

 

―――アキラには幼い頃から母親の記憶が無い。

当然だ、物心付く頃には既に孤児だった……アサヒの父親である今は亡きマスターが居なければ野垂死んでいた。

だからこそ思う、自分の父親や母親とは一体どんな人物であったのかと。

まあ今更、精神年齢的に母親を恋しいなどと言う歳でもないが。

 

「何かを勘違いしているようだが」

 

どことなく鋭い目付きで見つめて来る母親と、不安げな表情で見上げる少女。

彼女達の警戒心を解く為に掛けていたサングラスを外し、普段よりは若干和らげな口調でアキラは口を開く。

 

「俺は別にアンタの言う泥棒じゃない。

こんな真昼間から堂々と正面から入って来る泥棒が居るならぜひお目に掛かって見たい。

ついでに訂正しておけばアンタの言う旦那と別れさせる為に説得に来た訳でもない、アンタがどんな男に惚れようが結ばれようが俺には関係ないからな。

俺が此処に来た要件は一つ―――変な事を聞いて悪いが、此処の神社に古い塚か御神体とような石塊は無いか?」

 

端的に言い、答えを待つアキラ。

どうやら思い当たる節があったらしく、再び警戒するような表情を見せる妙齢の女性。

しかしアキラの眼を確りと見据えた後に表情を和らげ、優しい口調で答えを返した。

 

「そうですか―――それは大変失礼しましたわ。

名乗り忘れておりました、私はこの神社で巫女を務めております姫島朱璃と申します。

そしてこの子は娘の朱乃と申します……朱乃、きちんと挨拶をしなさい」

 

「は、初めまして……ひ、姫島朱乃です……」

 

自己紹介をする母娘。

相手にばかり名を名乗らせて自分が名乗らないのは失礼だろう。

アキラが名を名乗ろうとすると、母娘の母の方・朱璃が優しく微笑みながら言葉を続ける。

 

「存じております―――神藏晃様、ですよね?

お会いするのは初めてですが、貴方様の事は知らされておりました。

うふふ……尤も、私はもっと御歳を召した方だと思い違いしておりましたので大変失礼をしましたわ」

 

知らされていた……?

再び疑問を抱くアキラ、どうやら自分が来る事を事前に此処には知らされていたらしい。

一体誰がと考えた際に真っ先に思い浮かんだのはあの正体不明の斡旋屋の主―――と言うか、それ以外の人物が思い浮かばない。

 

「この姫島神社はかつて国の礎を築いたとされる英雄を祀った神社です。

本当ならばその英雄ヤマトタケル様を信仰する方も多いのでしょうけれど、私達親子の事情で最近は参拝の方々も減りまして―――ですので誰に聞かれる事もありませんわ」

 

―――成程、どうやらこの朱璃と言う女性は中々に胆が据わっている。

事前に知らされていたからと言って、普通に考えれば得体の知れない人物が来る事を受け入れるなど簡単には出来ない……しかもこの人物、アキラの“事情”も凡そ理解してるようだ。

普通の人間でありながらそう言った“事情”に寛容な理由は……多分、先々から何度も仄めかされている『彼女の夫』と言うのが関係してるのだろう。

 

まあその正体は朱乃と言う彼女の娘が発する気配から『ある程度』は理解出来た。

しかしそれを無作法に口にする程アキラはデリカシーに欠けてる訳ではない、夫婦双方は納得でも他人には言って良い事と悪い事もある。

アキラのそんな気遣いを朱璃も理解したのだろう、小さく頭を下げると娘の肩にそっと手を置く。

 

「ヤマトタケル様の塚へはこの娘がご案内致します。

良いわね朱乃、初めてのお役目だけど落ち着いて―――大丈夫、貴女ならご案内出来るから」

 

小さく頷く朱乃、すると小さな手でアキラの手を握る。

そのまま先程までの緊張したような面持ちではなく、控えめだが人懐っこい笑顔を浮かべると走り出した。

 

 

―――アキラと朱乃が神社の裏山に消えたのを確認し、一人朱璃は呟く。

 

「朱乃……貴女なら大丈夫。

運命は残酷だけど決まってしまっている―――私にはそれが解るから。

だけど何があっても貴女だけはそんな残酷な運命から私が護って見せる、だから貴女は気負う事無く生きなさい。

だって貴女は……私とあの人が愛し合い、結ばれて生まれた私達の掛け替えの無い宝物なのだからね」

 

その言葉の意味は一体何なのか。

誰にも解るまい―――『先読み』と言う唯一無二の力を受け継いだ巫女の苦悩など。

 

 

●●●●●

 

 

其処から裏山の塚までの間、アキラと朱乃は色々な話をした。

彼女の事、アキラの事、あまり外に出た事のない少女に東京の話をするだけで目を輝かせる。

その話の途中で気付いていたとは言え、少女が純粋な人間でない事もアキラは知った―――当然だ、彼女から感じる気配はかつての東京の戦友・ハレルヤと似ていたのだから。

 

やがて英雄ヤマトタケルの眠る塚の場所に到着する二人。

朱乃はもっと話をしたがっていたようだが、母親から『お役目』と頼まれた以上は我儘は言えない。

少々拗ねた表情の少女に『2~3日程逗留させて貰うから』とアキラが言った時は、目を輝かせて喜んでいた。

 

 

焼津の火打石を依代として呼び出された日ノ本神話最高にして最上の武を持つ英雄ヤマトタケル。

国を憂い、和を重んじ、民と民との絆を尊び、御国の為に戦い―――他の霊的国防兵器と同じく、望まぬ主に使役され失意の下に散った英雄。

御国叶わなかった失意と、それでも国の未来の繁栄を願う彼は、アキラの『武』見定め……自らの魂を託す事を誓う。

 

『汝が武、確かに見極めた。

禍を纏えど、人の身でありながら天晴也―――なれば我が力、託すは道理か。

我が大地の力、依代に導かれ再び此処に馳せ参ず―――我は英傑ヤマトタケル、いざ御国の姿を探すべく』

 

 

―――こうしてアキラの元にマサカド公を除く霊的国防兵器が揃った。

一応は斡旋屋の主の出した条件はクリアした、後はその証を持って再び店を訪れれば良いだけの事。

だがその前に、大人しく待っていてくれた少女との約束を果たさねばなるまい。

嬉しそうな笑顔の少女と再び手を繋ぎ、アキラは神社へと向かうのであった。

 

 

それから一週間程の時を姫島神社で過ごす。

本当ならばもっと早く発つ筈であったが、朱乃の泣きそうな顔と朱璃の優しさから結局は一週間も時が経ってしまっていた。

 

別れに涙ぐむ朱乃。

一週間も共に居れば別れを惜しむのは当然の事。

しかしアキラには成すべきがある……何も成すべきが無ければこの暖かい揺り籠に居続けたいとも思った。

家族の温かさを、かつての幼馴染のアサヒと父親代わりだったマスターのお陰で感じていた心の温かさを久しぶりに思い出せたのだから、姫島母娘には感謝してもし切れない。

再びの再会を約束し、アキラはゆっくりと姫島神社から去っていくのであった―――少女の言葉を背に。

 

 

「絶対、絶対にもう一度……もう一度、此処に来てね―――っ!!

私待ってる、母さまと一緒に此処で兄さまの事を待ってるからぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

※※※※※

 

姫島神社から戻ってきたアキラは一路、斡旋屋へと向かう。

己のやるべき事は果たした―――ならば今度はあの男が約束を果たす番だ。

見慣れた斡旋屋の入口の扉を開き、中へと入ったアキラ……彼の目に飛び込んできたのは、見慣れた店内ではなかった。

 

「こ、これは……馬鹿な!? こ、この空間は……」

 

忘れる訳がない、簡単に忘れられる訳がない。

アキラの眼に映る光景―――正体不明の禍々しく、見ようには吐き気を催す空間。

かつて『死を齎す者』らと命を懸けて戦い抜いたかつての東京の“在り得たかも知れない姿”。

 

―――魔都・東狂。

斡旋屋があった筈の空間は全てをあの死が蔓延する世界へと様変わりしていたのだ。

 

『―――此処はかつて『アマラ深海』とも呼ばれた場所。

兄には『東狂』と語った方が理解し易いかな、神藏晃殿―――それともアキュラ王と呼んだ方が宜しいか?』

 

声のした方を向くアキラ、其処には斡旋屋の主が居る。

だが今までと気配も口調も違う―――何だ、この押し潰されそうな圧は。

まるで初めてあの凶悪無比たる『魔人』と対峙した時の如く、全身中に震えが走った。

 

『我が同胞(はらから)全てに認められし御身、見事也―――

彼らは国を憂い、強き国を創り出す為に呼ばれ、列国の数に任せた暴威により一度は滅びる。

しかし憂国の想いは消えず幾星霜、再び誇りある日ノ本にて己が力を振るわんと望むも―――己が望める主には出会う事叶わず、恥辱の下に誇りを穢された。

されど三度目を覚まし、今度は己が真に仕えるに値する主を見つける事叶った―――なれば霊的国防が祖たる余もまた、御身にこの刃を託すか否かを見定めねばなるまい』

 

そこでアキラは理解した、この空間はこの男の創り出したものだと。

いや、そもそもあの斡旋屋自体が創り出された空間の一部だったのだ―――思えば何故、斡旋屋に悪魔などからの刺客が来ないのかと疑問に思った事もあった。

固有の空間を生み出せるなどと言うのは一部の上位の仲魔か、それとも魔人や英傑に固有種族位だ……つまり斡旋屋の主はその種の存在と言う事。

 

しかも彼は言っていた、彼は『霊的国防の祖』だと。

一柱一柱が悪鬼羅刹かと思うが如き強さを持つ一騎当千の武士(もののふ)達、その基礎となった存在。

どう考えても強いに決まっているだろう―――体の震えとは反し、アキラは笑っていた。

恐らく武者震いだ、この東京に来て久しく会う事の無かった……アキラが全力で戦える相手。

そんな相手に会えたのだ、この魂や心が震えない訳がない―――

 

『―――僥倖、強き魂を持つサムライとの出会いに感謝を。

まだ日ノ本において余が心震え踊る強者が居た事に最上の喜びを。

そして―――余が本来の『全力』を尽くすに値する相手との戦の機会を与え賜うた異界の超人に敬意を』

 

―――膨れ上がる闘気、周囲を震わせる覇気。

そして彼の背に現れる二柱の見覚えのある存在、それはどちらもフリンと共に国を護った破壊神。

 

巨大なる体躯を誇りし公が影、敵陣の刃より全てを護る盾

覇気を纏いし公が首、敵陣の盾を悉く打ち破る必殺の矛。

別たれた二つの力―――それが今再び“公”の命の下、一つとなる。

 

周囲を包み込む閃光。

それが晴れた時……既に其処に斡旋屋の主も、公の影も、公の首も存在しない。

代わりに其処に存在するは―――唯一人の武士のみだ。

 

蒼き髪を靡かせ天に舞うその漢こそ―――

 

 

『余が名は護国神マサカド―――

全力で来るが良い、剛の者よ……汝が魂と誇り、余が刃にて見定めよう』

 




皆様の温かいご意見、ご感想を心よりお待ちしております


【今回の改変】
姫島神社と朱乃と朱璃
原作では結構有名な神社らしいので、ヤマトタケルを祀られてるって事にしました
参拝客が居ないのは朱璃とバラキエル関係が原因、親族に腫物扱いされてるのも理由の一つ
『先読み』の関係はいずれ


【護国神マサカド】
影でもなく、首でもなく、本当の意味で全力となった全盛期のマサカド公
元ネタはメガテンフリーク様方には理解出来るであろう、歌舞伎役者風の“猛将”の頃のマサカド公(簡単に言えばSJやメガテン3のマサカド公)

尚、この作品における『必殺の霊的国防兵器』は以下

壱・龍神コウガサブロウ
弐・英傑テンカイ
参・英傑ミチザネ
肆・天津神オモイカネ
伍・英傑ヤマトタケル
陸・邪神ヤソマガツヒ
漆・天津神タケミカヅチ(ペルソナ4基準)
捌・破壊神マサカド(正確に言うと“公の影”)
玖・女神イザナミ
拾・現在はまだ不明
零(祖)・護国神マサカド
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