中学一年生になったら、妖怪百鬼できるかな♩………なんとなしに歌ってみたけどこれはないな。うん。やめよう、これは。というわけで中学生になった。いつもと変わらない日常といえばそうなのだが、清継くんが妖怪に興味を持ってしまったのが心残りでもある。だが、あのとき助けなければガゴゼに殺されていた。カナちゃんも他の子もみんな死んでしまっただろう。だから助けた、というわけではない。自分の意思でやったのだ。まぁ、そこは置いておいておこう。うん?クラスに清継くんがいる。どうかしたんだろうか。確か清継くんは2組なのに。
「やあやあ、みんな。清継だよ〜。今日は妖怪が出るところに行きたいと思ってね」
「あれ、清継くん、妖怪は信じてないんじゃなかった?」
「いやいや、あのとき君も主に助けられただろう?憧れたんだ!あの方に!」
「そうなんだ」
と、何やら話をしている様子。何か変なことをやらかさないといいが……。
「おや、奴良くん。前は妖怪を否定して申し訳なかったね。訂正するよ」
「あ、ああ。別にいいんだよ」
清継くんの価値観に何かあったのか。まぁ、"あの時"助けたことが関係しているのだろうが。
「ところで奴良くん。学校の裏校舎に行ってみないかい?あそこは出るらしいんだ。………妖怪がね!」
えぇ?なんて?妖怪?内の組のモンじゃねぇな。多分どっかのワケェ奴らだろうか、古参妖怪かだな。
「そうか、わかった。行かせてもらう」
「そうかそうか!行ってくれるか!ありがとう、奴良くん!」
「え、奴良いくのかよ。やめといたほうがいいぜ。胡散臭い」
「コラッ!紗織、そんなこと言わないの!」
「ええ〜、でもさ鳥居」
そんな不毛な話し合いを続け早五分経過したところで、他クラスの方から倉田くんと及川さんが来た。
「俺も頼めるか」
「それ、私も行っていい?」
「もちろんだよ。いいに決まってるさ」
ええ!……不安だな。しかも、及川さんと倉田くんみたことあるような?いや、でも気のせいだと思ったのでこの妙な既視感を取り払うことにした。そうして夜になった。涼しく、春の夜としては最適な心地いい風が吹いている。春風てやつだ。母二人に見送られ、少しだるげに行く。カナちゃんも付いてくるらしいし、島くんも来るし、なんか守れる気がしないのだが何がなんでも守ってみせる。そんな覚悟を心の中で呟くと、とたとたと歩いていく。はぁ、今から学校に行くなんて杞憂すぎるかもしれないけど陰鬱な気持ちになってしまう。溜息をつくと幸せが逃げてしまうからそこまでつくのはやめよう。
★
「みんなついたかい?」
「う、うん」
「大丈夫っすよ。清継くん」
「大丈夫だよ」
「大丈夫よ」
「問題ない」
みんな揃って、漸く廃校舎に行くところだ。物々しい雰囲気で、今にもワケェ連中が出てきそうだ。奴らは畏れに飢えているからな。だから余計注意しないと。
「じゃあ、行くよ〜!」
「はい!清継くん」
島くんと清継くんが喋っている頃、カナちゃんが喋りかけてきた。
「ねぇ、リクオくん。本当に出るのかな?妖怪」
「ま、まさか。出るわけないよ。大丈夫大丈夫」
気休めにもならない言葉を送ってしまったバカな自分がいた。安心させるためには仕方のないことなのだが、罪悪感が芽生えなんだか申し訳なくなってくる。もう、妖気はすごく充満しているのでいるのは確実なのだ。だからこそ申し訳ない。なんとかなるのか?完璧に防げるのか?と聞かれるとわからないんだが。廃校舎に入り周りの妖怪からの視線が痛い中、やらかしやがった若い連中がいた。なんとヘビ型妖怪が現れたのだ。まだみんなは気づいてないようだが早急に手を打たないとまずいことになる。
「おおっとー!足が滑ったー!」
勢いよくヘビ型妖怪に向かって飛び蹴りをかまし、ことなきを得た。その後もたくさんの妖怪が出現し、僕がバリケードをしてきた。漸く妖怪の波が収まったかと思うと、冷や汗が吹き出してしまった。
「なぜ妖怪が出ないんだろうね〜。本当にいないのかな」
「本当だね。リクオくん。やっぱりいないんだね。妖怪」
「そうだね!いないね!」
「残念っすね。清継くんの世紀の発見になるかと思ったんすけど」
本当に危険な橋を綱渡りしているかのような紙一重の防御。自分を棚に上げすぎかもしれないが、正直言ってかなり辛い。主に心臓の動悸が激しくて精神に悪い、という面でだ。
「じゃあ、この教室で最後にしようか」
「そうっすね」
「そうだね」
ん?………!その教室はまずい早く伝えなければ!ばったり奴らの食事にまみえてしまうやもしれない。
「そっちは……「そっちはダメよ!」
狼の妖怪がいてカナちゃんは気絶し、清継くんと島くんが逃げ出してしまった。まさかの展開だ。そしていきなり僕の声が遮られ、及川さんの声が上がる。………やっぱりそうか。自分の中にあった疑問がすべて解け、楽になったところで。本気を出すか。
「奥義・明鏡止水・桜」
俺が技を放った瞬間、妖怪どもが炎に包まれ轟々と激しい音を立てて燃えている。俺の炎は波紋が鳴り止むまでその炎が消えることがない。
★
「さて、と。種明かししとくかい?氷麗、青」
「気づいてたんですかい、若」
「ああ。ばればれだ」
「どの時点でお気づきになられたのですか?」
「小3の頃からだろう。いつもいつも周りにいて露骨すぎるぜ。どうせ達磨とかカラス天狗とかが口をすっぱくして護衛をつけろと言ってたんだろ。だいたい想像はつくぜ」
「そうでしたか。この女はどうします?家に帰すのなら我々の姿を見られずに、起きられる前に家に送りますが」
「そうだな。青、頼んだぜ」
「はっ!若のご命令ならば、やってやります!」
こうしてひと段落。ひと段落したところで氷麗にこんなことを聞いてみる。
「なぁ、桂花はどこだ?」
「桂花は今は潜んでおります」
「そうか。どうりで校舎に入った時周りの妖怪どもとは違う見守る視線があったのか」
「……!気づいておられたのですか」
「ああ。まあな」
そんなことを話していきちょうどいい風なので、氷麗を連れ家に帰る前に散歩をすることにした。夜の風が心地よく、家を出て行く時と何ら変わらないぐらいの風が吹いてくる。肌にあたり、妖怪の血で温かくなっている俺の熱を下げてくれる。隣にいる氷麗の肌の冷たさも相まみえて。氷麗の肌はすべすべしてて、人間の肌と同じぐらい、いやそれ以上に綺麗だ。可愛くて可憐で、誰にも渡したくない。誰にも傷つけさせやしない。多分俺は氷麗のことが…………。そんなことを考えるうちに、家に着いた。氷麗との散歩の中では言葉はいらない。俺らは静寂を好き合っているようだ。そう、会話などなくても氷麗は察してくれている。俺も氷麗の考えていることは大抵わかる。だからこそ二人とも黙っているのだ。恥ずかしいから。自分から言う勇気は俺らにはないとお互い知っている。それは楽しみだから。何が楽しみだって?それはどちらかが先に告解するか、だ。俺らのペースでやっていけばいい。決して早くはないが遅くもない。だから、もし二人の勇気が合致したらその時は…………、その時はお互いに胸の内にあるこの激しい心の病を打ち明けるだろう。それはいつになるのか誰にも予測できない。俺は当然知らないし、氷麗にもわからないだろう。神のみぞ知るのだろう。俺ら二人はその答えに向かってまた一歩、また一歩踏み出して行く。
どうだったでしょうか。久しぶりのぬら孫は?楽しめていただけたら幸いです。さて、前書きに書いてあったとうりなのですが、最近忙しく。今日ようやく一年生の授業課程が終了いたしまして、ようやっと羽を伸ばせる……わけではないんです。私、部活動をやっていまして、休みがほとんどないのです。それは他の部員の方々と同じなのですが、言い訳がましく申し訳ございません。時間をかけないとクオリティが上がらないので。お時間をおかけしましたが読んでいただきありがとうございました。あ!あとサ◯◯クヘッ◯さん新巻ありがとうございます!