世界が俺を求めてる 作:ゴーゴー
鈴ちゃんも強制力の犠牲になったのだ。
束さんとの出会いは例の放棄事件の翌日。放課後の帰り道であった。
彼女はなんというか、騒がしい人だった。俺を見つけるなり「殺す」宣言をしたかと思えば手のひらを返して「ミーくん、愛してるぜっ!」と謎の愛を叫び去っていった。
情緒不安定なのかなぁ、と心配して見送ったのは記憶に新しい。
それから間もなく、各国から何故か日本へ向けて放たれた無数のミサイルをフルフェイスのパワードスーツが斬り伏せるという事件、白騎士事件が起こった。
そのパワードスーツ――インフィニット・ストラトスを開発したのがなんと束さん。
高校生にもなってフリフリのエプロンドレスに身を包んだ痛い人かと思っていたが凄い人だったらしい。
頭の良い人はどこかネジが飛んでいることが多いので束さんの奇行はそういうことなのだろう。
そしてこの変人束さんが大和撫子筆頭の箒ちゃんの実姉だというのだから世の中わからない。
知力の姉、武力の妹、実はこの姉妹とんでもないのではなかろうかと俺の中で一時期話題となった。
武力の姉、家事の弟のあの姉弟と並ぶ濃さであった。
その後、この二組が知り合いどころか家族ぐるみの付き合いと知って俺はこの人達は敵に回さないよう気を付けようと思った。それほどにヤバい。
特に姉二人。束さんの方はISの開発者であるところからお察し、千冬さんの方は……素手で鉄板に穴を空けると言えばおわかりいただけるだろうか。因みに鉄板は数センチ以上の厚さであったことをここに記す。やべぇ。
「あ、ありがとうミコト。……大切にする」
リボンを胸に抱き、満面の笑みを浮かべる箒ちゃん。
“ISやべぇ”となったため、その開発者である束さんの血縁者はどこかしらに狙われる可能性があるとかなんとかで箒ちゃんは引っ越すことに。
その時にやたら“箒が新しいリボン欲しがってたアピール”や“ふむ、そう言えばリボンが安く売ってたなアピール”などの
いや、プレゼントするのは良いけどさ。強制するのは良くないよ。こういうのは本人の気持ちというかなんというか。せめて俺に選ばせてよ。
なんて言えず。まぁ、喜んでいたので良しとしよう。
「その……だな。こ、これを私だと思って持っていてくれ」
箒ちゃんはプレゼントしたリボンをその場でつけ、元々していたリボンを俺にくれた。
……あれ、このリボン交換どこかで……確かリリカ……これ以上はやめておこう。
「パンダ! パンダ!」
「片言! 片言!」
「中国! 麻婆豆腐!」
なんだこの既視感は……。そして悪口か何かわからない悪口は……。
箒ちゃんと入れ替わるように中国から転入生がやってきた。
名を凰鈴音。ツインテールと八重歯が可愛らしい少女。片言の日本語が可愛らしい。頑張ってるけど舌足らずっぽくなる片言が愛らしい。
そしてこれは友達をつくろうと四苦八苦している姿を影ながら応援していた頃の話。
影ながらではなく、手を差し伸べれば良かったかもしれないがしかし大人である俺がそれをしてしまうと少女の成長を邪魔することになりかねないのでやめておいた。
精神が大人な俺が子供達に関わるのはあまりよろしくないだろう。
ともかくそんな時期。
凰ちゃんはいじめの標的となった。日本という外国に放り出された彼女は不安でオドオドした性格だったのでそれらが原因なのだろう。
箒ちゃんの時と同じく俺が出ていけばこのいじめはなくなるかもしれない。だがそうはしない。
大人が子供に手を差し伸べるのは本当にどうしようもなくなった時だけにするのが望ましい。
その結果、傷ついたとしてもそれは成長に繋がる。命に関わること以外は放置するのが一番だと俺は思うのだ。箒ちゃんの時以来、そうすることにした。考えるの面倒だし。
しかしそう心配する必要ない。なんてったってこのクラスにはヒーローが――織斑一夏がいるのだから。
「だよな! ミコト!」
ま た か。
織斑よ、お前は俺に何をさせたいのだ。この前女の子がいじめられてた時は俺を巻き込まずに解決したろうに。
そのたまに俺を巻き込むそれはなんなんだ。いや、本当なんなんだ。
「なんだよ、御山。文句あんのかよ」
「あ? もしかしてお前リンリンちゃんのこと好きなのかよ!」
「ヒャッハー!」
既視感が凄い。なんだこれ。
俺がいったい何をしたって言うんだ……。
「好きってなら守ってみせろよヒーロー!」
何そのザ・悪役みたいな台詞。
心の中で泣いていると俺の知らぬところで話が進んでいたらしく、いじめっ子の一人が凰ちゃんを殴ろうとしていた。
拳を振りかぶり、顔に向けて一直線。うわ、女の子殴るのは良くないよ。なんて思いつつ傍観。
暴力云々は俺の仕事ではない。織斑の仕事である。そもそもトップスピードに到達した拳を止められるのは織斑くらいしかいない。俺には無理だ。頑張れ織斑。
「……」
「……」
何故か織斑は助けにいかず、いじめっ子も拳を途中で止めた。
そしてその場にいた全員が期待を込めた目で俺を見つめた。
「好きってなら守ってみせろよヒーロー!」
まるで俺に止めろと言わんばかりのアイコンタクトの後、彼らはまるで何事もなかったかのように繰り返した。
「……」
「……」
何この茶番……。俺に何をさせたいの本当に。束さん以上に奇妙すぎだ。病院に行った方が良いと俺は思う。
依然として止めぬ俺に痺れを切らしたのか、凰ちゃんは俺の背後に、いじめっ子は俺の前に移動して拳を振りかぶり顔スレスレで止めた。
そしてその拳を止めてカウンターを入れろとばかりの無言の圧力。
仕方ないので軽くさわる程度にいじめっ子の頬に拳を当ててあげると有り得ない程の勢いで吹き飛んだ。
「お、覚えていろ!」
負け犬の如くいじめっ子ズは去り、凰ちゃんは頬を赤く染め「ありが、ト」と言った。
織斑は満足そうに腕を組み、頷いていた。
……なんだこれ。
「料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?」
「いや、流石に毎日は……せめて週一くらいだと助かる」
後から「あれって味噌汁告白の酢豚版では?」と気が付き、マジレスしたことによる羞恥に悶えた。
しかし酢豚をチョイスした鈴ちゃんにも問題があると思うの。
あの謎の茶番からこれまたしばらく、中国に帰るときに彼女はそう言った。
あれから日本語も上達した鈴ちゃんは元々の性格を取り戻したのか活発になり、元気で健康的な少女になった。
男勝りなとこもあったりするが少女らしいところもあり、まさに美少女。
初期のオドオドしていた鈴ちゃんも可愛いが今の鈴ちゃんはもっと可愛らしい。
ファーストコンタクトは謎の茶番だったがあれ以降は普通だったので助かった。
……問題は鈴ちゃんも箒ちゃんの時と同じく俺にホの字となっているところである。
いや、もうチョロインとかいうレベルじゃないんですけど……。
……考えても仕方がない。きっと若気の至りとかそんな感じのやつだろう。
そんな現実逃避をした中学時代の一幕。
ミコトくんがもうちょっと乗り気だったら違和感なくラブコメれた模様。
強行手段の結果がこれである。
これで良いのか世界よ。
……え? 投稿の間隔?
なんのことかサッパリさ!