世界が俺を求めてる   作:ゴーゴー

17 / 24
※2018 11/19
 詳しくは活動報告の方へ。09は旧10をほんの少しだけいじった、ほぼ変わらない話です。


09 千冬さんが放課後授業してくる

 朝、目が覚めると当たり前と言わんばかりに例の四人(ミコトハーレム(笑))が朝食や洗濯、諸々の家事をしていた。

 勿論鍵はかけている。とはいっても合鍵がすでに出回っていたのでチェーンロックを千冬さんに頼み、後付けしてもらったものだ。つまり、鍵を持っていようがなかろうが、物理的に入って来れないようになっていたがこの有様である。

 更に恐ろしいのが、件のチェーンロックに傷が一つも付いていないことである。これが切られていたなら、納得はしたくはないが、理解はできる。切れば開くのだから当たり前だ。だが無傷となれば話が変わってくる。

 至極当然、切れば開くが、切らねば開かない。俺自身が開けない限りは不可能である。切った後に繋げるとか、新しいのを付け直すとか、方法はあるにしろ、どれも現実的ではない。

 いや、そもそもチェーンをどうにかできるはずはないのだ。束さん特製といえばお分かりいただけるだろうか。もしそれをどうにかできたのなら、この四人の中に束さん並みの化物がいるということになり、イコール地球破滅まったなし。恐ろしや。

 

「そうだ、ミコト。窓が全開だったわよ。学園内だから安全とは思うけど数少ない男のISなんだから気を付けなさいよねっ。本当無用心なんだから」

 

 とは鈴ちゃん。流石その無用心を利用しただけはある。説得力抜群である。全力で気を付けることにした。

 

「そう言えば、一夏。クラス代表になったんですってね」

 

「おう、本当はミコトがやる予定だったんだけどな。千冬姉が却下して流れ流され俺がやることになった」

 

「そ。ならちょうど良いわ、久し振りに賭けしない?」

 

「お、良いな。俺はIS学園に来てからのやつをダースで賭けよう。はじめてのISスーツがメインのやつ」

 

「くっ、そんなの賭けられたら私も秘蔵コレクション出すしかないじゃない」

 

「期待してるぜ?」

 

「……まぁ、良いわ。どうせ勝つのは私だからね!」

 

 朝食時。セシリアちゃんによるイギリス式の朝食に舌鼓を打ちながらの会話。

 一見、久し振りにあった友人と恒例であった賭け事の約束をしている青春ど真ん中の会話だが、素直にそう思えないのは気のせいか、それとも賭けられた商品に違和感があるせいなのか。

 秘蔵コレクションってそれ男同士の会話だと思うの。

 

「私は一夏に二ダース賭けよう」

 

「ならわたくしは倍で鈴さんに賭けますわ」

 

 そして他の友人達もその賭けにのり、かつては二人で行われていた遊びがこうして大勢で行われているところは大変微笑ましい。友人の輪が広がっていく感じがなんとも青春ぽい。ぽいぽいぽい。

 しかし、悲しいことにこの賭けに俺は参加させてもらえない。中学の頃から始まった遊びだが、織斑と鈴ちゃんと弾の三人でこそこそするばかりで、俺が何をしているのかを聞いても教えてくれないのだ。

 それは多分、低スペックすぎて勝てないであろう俺への配慮なのだろう。けして商品が俺だからとかそんなんじゃない。そう思いたい。真剣に。

 

「とりあえず参加費として一枚ずつ交換しましょ」

 

 俺が写った写真とか見てないし、存在しない。そうに違いない。早く授業にいこう。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 

「失礼します、織斑先生」

 

「よく来た。……ああ、それと今はプライベートだからいつも通りで構わん」

 

「わかりました千冬さん」

 

「ん」

 

 夕食を食べ終わり、冗談かと思われた千冬さんの部屋の掃除をやりにきていた。

 とは言ってもほぼ毎日来ているので、脱ぎ捨てられた服とか、散らばった書類やらを整理するだけなのですぐに終わる。

 この日も例にもれず三十分ほどで終えたので帰ろうとしたところで千冬さんに呼び止められた。

 

「ところで授業のほうはどうだ? ちゃんと理解できているんだろうな?」

 

「も、勿論ですたも」

 

 噛んだ。

 

「……ふむ。まぁたまには良いだろう。ミコト、教えてやるから少し座れ」

 

 加えて声が裏返ると言う動揺丸出しな嘘が通じるはずもなく、見破られた。

 しかし、教えてくれるとは思わなかった。怒られて織斑のように一週間で覚えろとか言われるものとばかり。

 予想外のできごとに驚きつつ、世界最強から一対一でISの授業を受けられるのは滅多にないことなので素直に受けることにする。

 おそらく単位をとれていなくても男性IS搭乗者ということで卒業はできるだろうけど、流石に格好悪いので願ったり叶ったりである。

 この際、わからないところを一つでも多く潰しておきたい。

 

「……あの、千冬さん?」

 

「どうした。む、そこは先程やっただろう。前のページをよく見ろ」

 

「あ、いえ、そのことではなくてですね……」

 

「ならばなんだ」

 

「……いえ、あの、この状況はなんですか」

 

「む……?」

 

 良くわからないと首を傾げる千冬さん。年上なのに可愛らしく見える大変素晴らしい仕草ではあるが、首を傾げたいのは俺の方である。

 今の状況を言えば、千冬さんに後ろから抱き締められていた。

 右肩の方から顔をだし、囁くように優しく教えてくれている。なんだこれ。

 それに背中に感じる圧倒的双丘。寝るときはしない派なのか、常識的に寝るときにはつけないのかは男なので知らないが、その、千冬さんはつけていなかった。布二枚を隔てているにも関わらず存在を大いにアピールしている。頑張れミコトジュニア。粘れ。

 

「あの、引っ付く必要は……」

 

「この方がすぐにミスに気がつけるからな。効率が良い」

 

 よりいっそう拘束が強まった。もはや勉強どころではない。これだから中身魔法使いは。

 

「……明日も授業だからな、そろそろ終わるか」

 

「あ、はい」

 

 なんとかバベルの塔を押さえ込み、どきっ放課後授業を乗り越えることに成功した。

 

「ミコト」

 

 さて、帰るというときに、またも千冬さんに呼び止められる。

 

「ん」

 

「ち、千冬さん?」

 

 立ち上がって俺を抱き締めると千冬さんは何事もなかったかのように敷かれた布団へ潜っていった。

 

 なんだこれ。

 

 

 

 

 

 

 ――我輩は猫である

 

 

 名前はまだない、という安直でありながら本人お気に入りのネーミングのラボにて。

 名付け親たる彼女は鼻唄混じりにキーボードを叩いていた。

 

「いっくんにも活躍の場をあげなきゃねっ」

 

 空中に投影された幾つものディスプレイの一つにはフルフェイス型ISの設計図が表示されている。そのISの名は――golem。

 

「ふふん、細工は流々、後は仕上げを御覧じろってねー」

 

 ――黒幕始動

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。