世界が俺を求めてる 作:ゴーゴー
「女装が趣味だから!」
そう宣うほぼ裸の美少女を目の前に俺はただただ黙ることしかできないでいた。むしろこの状況で何か言える人がいるとは思えない。いたら尊敬してしまう。
しかもそれがたわわに実った果実を誤魔化すための一言なのだから余計に何も言えなくなる。まだ服を着ていたのなら詰め物をしていたとか、女装で納得できなくもないが、タオル一枚では誤魔化せないだろう。
付け加えると、その言い訳でドヤ顔しているのが理解できない。彼女の中では誤魔化せているのだろうか。あれだ、この子アホの子だ。
と、こんな風に突然のポンコツさにどう反応すべきかと無言のままいたのが彼女の不安を煽ったのか再び慌てだした。視線を泳がして時折こちらをチラチラと見ては口笛を吹いたりしている。吹けていないけど。
「これ取り外し可能なんだよ!」
そして俺の視線に、やはり先の言い訳が通じないと思ったのか、また破茶目茶なことを言い出した。取り外し可能か……そうきたか……ドヤ顔可愛いなぁ。
「本当だからね! ちょっと待ってて外してくるから!」
小走りでシャワー室に戻っていく彼女を見送り、ベッドに腰をかける。
どうしたものか。無論、男装少女のシャルルちゃんについてである。千冬さんに報告すべきか、否か。
本来であれば即刻報告すべきなのだろうが、シャルルちゃんのぼっちぷりとか、馬鹿っぷりとか、そこらを見ると躊躇われる。
まだ一日と経ってはいないが悪い子ではないのだ。騙されていたと考えるとなんとも言えない気分にはなる。しかしそれでも報告を躊躇してしまう程には彼女に好感を抱いていることも確かだ。
あー、いや、やめよう。躊躇している時点で答えは出ている。
よく考えればあの千冬さんが見抜けないとも思わないし、スパイの対象が俺だけではなく織斑も含まれているなら束さんも黙ってはいないだろう。
その絶対的な双璧が何もしないなら俺ごときが何かをする必要はない。ここは騙されてあげよう。
「ほら、取れてるでしょ?」
ドヤぁ。シャワー室から帰ってきた彼女は胸を張る彼女を見て、というよりは胸を見て唸る。
あの巨大な二つの丘をどうやって平らにしているのだろうか。押し潰すにも限界があるだろうに。
「デュノア社の英知の結晶だからねっ」
その意味も含め、本当に取り外せるのかと言うと自慢気に再び胸を張った。やだこの子可愛い。
でも取り外し可能な胸が俺でも知ってるような会社の英知の結晶だというのはなんというか……悲しくなる。しかし自慢気なところを見ると取り外しは嘘なのは確かだろうが、胸が消える技術はもしかするとデュノア社の英知の結晶なのかもしれない。
「さ、触ってみてよ」
半分呆れながら、そうなんだね凄いね、と返すとそれを俺が信じていないと解釈したのか本日最大の爆弾を投降してきた。おい、待て。違う。
流石にサラシか何かで保護されているとは言え触るわけにはいかない。
しかし止まらず、触って、触らない、というやり取りを繰り広げることに。
「ミ、ミコトぉ……」
悩ましげな声を出すんじゃない。結局負けて触ることになった。この状況はなんだ。本当なにをしているのだろうか俺は。
顔を赤く染め、きゅっと目を瞑るシャルル。やめろ、変な気分になる。そもそもこれは不味い。だってシャルルは男ということになっているが女だ。その胸を触るというのはやはり不味いだろう。これが男同士ならまだしも……いや、どっちにしても不味い。
「早く……」
とりあえず自分の頬を殴って冷静になる。なったところでおかしなことには変わりはないが、もう一発殴っておいた。煩悩消え去れ。
少し触れて、本当だね取り外せるね、と感情を込めれば終いである。何を恐れることがあるのか。
男、御山ミコト、いきます。
「……」
外はカリッ、中はフワフワ、そんなフレーズが脳を過った。触った感触は固く、しかしその奥に感じる柔らかさ。まさにカリフワ的な感動がそこにはあった。何を言っているのかわからないかもしれないが、カリフワなのだ。触れれば触れるほど癖になる感触というか、状況も相まって一瞬でやめるはずが手が吸い付いたように離れない。
「……んっ……」
「わ、悪い」
催眠にかかったように思考が停止していた俺。シャルルの声によって戻ってきた俺は慌てて手を離した。
罪悪感というか自己嫌悪というか思春期だから仕方ないよねとか、頭を抱えているとシャルルがこちらを覗き込み――
「ミコトのえっち」
――そう言った。
この子、女であることを隠す気があるのだろうか。そう思いました。
「……寝よう」
いつもに比べればまだ早い時間だが寝ることにする。今日は色々とありすぎた。寝巻きに着替え、布団に潜る。今日の出来事は忘れてしまおう。それが良い。そして明日からシャルルが女だということには一切触れず普通の友達として過ごそう。
「……シャル、ルさん?」
「なに?」
首を傾げるシャルルさんはとても愛らしいがそういう問題ではない。
「……何故俺のベッドに入っているのでしょうか」
「友達でしょ?」
言われましても。俺にそんな習慣はないし、多分日本にもない。そのことをやんわりと伝えるとまた首を傾げた。
「お母さんが子供の時はそうしてたって」
それはお母さんが女だからではなかろうか。勝手なイメージではあるが女の子のお泊まり会とか同じ布団で寝てるようなそんなイメージ。
「ダメ……?」
ダメじゃないです。
恐らくこの子に勝てる日は来ない。結局一緒に寝ることになった。
まるで在り来たりな恋愛ものの主人公になった気分である。俺は明日死ぬのかもしれない。
ちょっとなに書いてるか自分でもわからない。
方向性もくそもないね。仕方ないよね。