世界が俺を求めてる   作:ゴーゴー

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二話投稿しているので、まだ読んでない方は前の話からお読みください。

※この話は新規で書き直した15に合わせるため、一部だけを書き換えたものであり、内容は旧16と変わりません。2018/11/23現在、書き直しで新規で書いたのは10と15のみです。


16 ポンコツな金髪が俺にあーんを強要してくる

「私ね、愛人の娘なの――」

 

 ――から始まる彼女の独白はまさに悲劇と言えよう。

 

 涙ながらに語る彼女を見ればそれが嘘偽りのない話だと信じられる。震える彼女を見れば、これからのことへの恐怖が本物だとわかる。

 

 しかし、それでもなんとも言えない気持ちになるのは何故だろう。

 

「……あの……服を」

 

「それで会社から――」

 

「……その前に服を」

 

「男として――」

 

 多分、というか十中八九彼女――シャルロット・デュノアが裸で、そしてここがシャワールームだからである。

 

 

 事の経緯は部屋に到着したところから始まる。と言っても別段壮大なものではない。

 単にシャワーを浴びようと着替えとタオルだけを持ちシャワールームのドアを開けたのだ。

 言い訳にしか聞こえないだろうが、トラバサミやらで軽くポルナレフしていた俺はシャルルちゃん――改めシャルロットちゃんの存在が頭からすっかりと抜け落ちていたのである。

 

『あ』

 

『あ』

 

 さん、はい。

 

『きゃぁー!』

 

 というラッキースケベ。現実でこんなことが本当に起きるとは思わなかった。これ(ラッキースケベ)ってどのくらいの確率なのだろうか。多分、凄まじく低いと思われる。なんでこんなところで運を使っちゃうのかな俺は。こんなことなら宝くじでも、なんて逃避をしているとシャルロットちゃんが語り始めて今に至る。

 

 服を着てください、本当。

 

 というか本当にバレていないと思っていたシャルロットちゃんに驚かざるを得ない。

 

「君は何も見ていない、いいね?」

 

 的な良くあるごり押しに俺が同意した形だと思っていたがシャルロットちゃんは本気で隠し通したと思っていたらしい。でないと今正体を明かす理由がない。

 しかし、前回も今回も裸を見たことには変わりがないのに前回は隠し通して、今回は自白とはどういうことなのだろうか。今回も押し通せば良いのに、とシャルロットちゃんに視線を向けて察した。あれだ、あの、ほら、タオルが今回はなかったね、うん。バレたかバレてないかの基準そこなんだ。

 

 

「そ、それでこれからはどうするんだ?」

 

 視線を逸らして、今後の話をすることにした。女の子の裸を見るのは良くない。

 

「バレっちゃったから本国に呼び戻されるかな。それから多分、処分されちゃうと思う」

 

 処分。デュノア社の一員としての処分なのか、フランス代表候補生としての処分なのか、人としての処分なのか、女としての処分なのか、いずれにしても最悪の結果には変わりはないだろう。

 狭いシャワールームで二人裸で向かい合いシリアスな話をするというギャグというかシュールだな、と思っていたが思ったよりも重く厄介な話になってきた。

 いじめられていて、それを助けるくらい単純なものならすぐにでも手を差し伸べることができる。しかしことがことだけにどう動けばいいのかわからない。

 デュノア社は勿論、代表候補生だからフランスがバックにいる可能性もある。千冬さんが見逃しているのはそこら辺が関係しているのかもしれない。もしくは別の思惑があるのか。

 雁字搦めすぎて俺にはどうしようもないことである。下手をして余計にシャルロットちゃんの立場を悪くしたくはない。

 だからといって見捨てるなんて選択肢はない。たとえスパイもどきだったとしても友人として過ごした時間に嘘はなかった。

 しかし、動けない。こういうとき、織斑の正義感というか純粋さは羨ましく感じる。

 

「とりあえず服を着ようか」

 

「あ」

 

 話が終わったからなのか、ようやく気が付いてくれたシャルロットちゃんとシャワールームを出た。このままではシャルロットちゃんは湯冷めするし、俺は普通に風邪引きそう。

 

「……」

 

「……」

 

 二人揃って無言。

 

 さて、俺にはどうすることもできないと言ったのは俺個人ではということであり、協力を仰げばそれこそ世界を引っくり返すことさえできる、むしろ既に引っくり返しているほどの人脈がある。無論、千冬さんと束さんの二人だ。

 もうこの二人の名前があるだけで負ける気がしない。チートを通り越してバグである。チートもバグの内のような気もするが、兎に角この二人は凄い。

 なんというか今まで主人公が頑張ってきたことを片手間にやってしまう最強キャラのような台無し感さえあるのだ。事実、この前の襲撃も千冬さんなら生身で解決していただろう。

 ならもう早々に彼女達に頼れば良いのではないかと思うかもしれないが、何分効力が強いので代償が大きいのだ。

 例えば千冬さんに今回のことを頼めばおそらく丸一週間は拘束され訳のわからないことをさせられ、例えば束さんに頼めば丸一週間は拘束され下手をすればここに戻ってこれないだろう。過去の経験からの推測なのでおそらくそうなる。

 でもまぁ、友人のためだ。一週間くらい我慢しようじゃないか。別段、とって食われる訳でもないし。ただなんか抱き枕にされたり着せ替え人形にされたり、見つめ合うだけで三時間とかその程度のことだ。うん、ぼく、ダイジョウブ。友人のためジョーカーを切ろうじゃないか。

 

「――聞いてくれ」

 

 シャルロットちゃん。俺に良い考えがある。と立ち上がったところでポケットから何かが落ちた。

 

「――! そうか、その手があったんだね!」

 

 それは生徒手帳であった。何故か付箋がしてあり、開きやすいようになっている。そしてそのページを見てシャルロットちゃんは手のひらを叩いて喜んでいた。

 

「あっ……でも私は二人を騙して……ここに、いても、い、良いの、かな……」

 

 そして落ち込むシャルロットちゃん。その手がどの手か知らないが元々シャルロットちゃんにここにいてもらうために動こうとしたのだからそれ事態は問題はない。その趣旨を伝え

 

「――俺達友達だろ?」

 

「――うんっ!」

 

 的なことで締め括っておいた。我ながら適当である。しかしシャルロットちゃんが嬉しそうなので良しとしておこう。うん。

 

 

 因みに生徒手帳の開いたページには特記事項が書かれており、IS学園にいる間は干渉されないから安全だぜ、みたいなことが書かれていた。ぶっちゃけ三年の猶予があるだけで根本的な解決になっていないような気がするけれど、そこら辺はおいおい織斑辺りが解決してくれることを願っておこう。あまりジョーカーは切りたくないのである。

 

 

「ね、ねぇ、ミコト。あーん、して?」

 

 その後、何故か甘えん坊モードに入ったシャルロットちゃんのためにせっせとご飯を運ぶ俺でした、まる

 

 

 

 




次回より書き直しではなく、新規の話となります。話が進むよ!

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