世界が俺を求めてる   作:ゴーゴー

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良くあるお話


旧11 世界が俺を覚醒したように見せかけてくる

 

 亡国機業は“天災”が無人機でIS学園を襲撃するという情報を掴んだ。

 

 この混乱に乗じて襲撃し、御山ミコトを誘拐できれば、天災へのジョーカーカードになる。

 織斑一夏ではなく、御山ミコトの方が望ましいのは第二回目の時のあの事件のときのあの対応力と、ブリュンヒルデが助けに来るまでの間だけとは言え、生身でISから逃れる能力を買ったからである。それにIS学園に入ってからの戦闘も織斑一夏を軽く凌駕していた。

 その彼を交渉、あるいは洗脳してでも引き込むことができれば戦力の大幅な強化に繋がる。

 加えて身内であるブリュンヒルデも迂闊には手を出せなくなるだろう。

 

 

 ――天災と亡国機業、二つの最悪が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在、クラス対抗戦開始の数秒前。

 

「はっ、こっちの作戦はお見通しってか?」

 

「……」

 

 亡国機業、その実働部隊“モノクローム・アバター”に所属するオータムはそう言った。

 目の前には男――御山ミコトがいる。数年前に出会った時の逃げることだけを考えていたそれとは違い、戦う者の目をしていた。

 背後にいる生徒達を守らんとするように立ち塞がるミコト。何人たりとも通さないという意志は鋭く冷たい殺気となりオータムへ放たれる。

 

「良い顔になったじゃねぇか」

 

 対してオータムは笑顔を浮かべた。触れてしまえば斬れてしまいそうな殺気、明確な殺意。

 肌がピリつく。まさに戦場のそれ。戦闘狂の側面もあるオータムは歓喜に震えた。

 オータムは男が嫌いだ。存在そのものが嫌悪の対象だった。

 だが、この男だけはどうも嫌悪感が沸かない。他の男とは何かが違う。

 だからこそ当時も亡国機業に勧誘したし、ペット感覚で可愛がってやるのも良いかもしれないと思っていた。

 そして今、確信する。彼は同類だと。こちらの動きを観察し、いつでも動けるようにしている。

 冷静であるし、落ち着いていた。だがその内に秘めるのは荒々しい獣。

 まだ未熟なのか、獣の気配が滲み出ている。少しでもオータムが殺意を見せればその息を止めるため、爪を、牙を、持ちうる全てを惜しみ無く振るうだろう。

 彼もまた戦闘狂なのだ。オータムは再び震える。早く、早く牙を交えたい。そして本能のまま、貪るように殺し合いたい(愛し合いたい)

 オータムからドロドロとした殺気が溢れだす。ミコトの鋭く冷たい殺気とは違い、荒々しく燃えるような殺気。それぞれがぶつかり合う。

 殺気を通して重なりあう二人。感覚は研ぎ澄まされ、互いの全てが手に取るようにわかる。

 息遣い、心臓の鼓動、まるですぐそこにいるかのような、抱き合い互いを慰めあっているそんな感覚。

 

 最高の殺し合いにするために最高のタイミングを探る。

 

 当初の目的などオータムの頭のなかにはない。ただ、ミコトと愛し合うことで頭は一杯だ。

 一瞬、恋人のスコールの顔が過る。だがそれでも我慢ができない。こんな感覚は初めてであった。

 

『それでは両者、試合を始めてください』

 

 オータムの視線の先、ミコトの背後でクラス対抗戦が始めるための合図。

 同時にそれはこちらの合図ともなった。現れる乙女(戦神)とそれを狩らんとする蜘蛛(アラクネ)

 

 展開された大口のレーザー兵器。寸分の狂いもなく乙女へと吐き出される。

 それに対し、避ける必要もないとばかりに優雅に揺れる乙女。直撃の寸前、顕現した刀でそれを切り裂く。

 

「良いねぇ!」

 

 八本の足を利用した変則的な動き。オータムの操縦技術も加わり、それを捉えるのは容易いことではない。

 戦神の【戦死者を選定する女達】により、全てのISコアから戦闘データを取り出し再現する事ができる。

 それはあのブリュンヒルデの動きすらトレースすることができる。

 しかし、だからといってブリュンヒルデと同等の戦闘ができるかと聞かれれば答えはノー。

 ブリュンヒルデの強さは、その人離れした反射神経と圧倒的な戦闘センスにある。

 それらによりブリュンヒルデはその場、その場で新しい対応をできるが、戦神は既存の対応しかすることができない。

 言ってしまえば何千、何万という戦闘データでも対応できない動きをされれば対応不可なのだ。

 それに何万という数、いや、それ以上存在する戦闘データだが本当の意味で“使える”データはそれこそモンド・グロッソ出場者のデータくらいのもの。

 

 そしてオータムの操るアラクネは表舞台に出る前に強奪された機体――つまりそれに対するデータは一つもない。

 アラクネ自体のデータは存在するが、それと相対したISのデータどれも使えないものばかり。オータムの能力が高すぎて、戦闘にすら発展していない。

 

『……まずいぞ、旦那様』

 

 神殿。戦神のISコア、ユリアの造り出した世界。戦神を操っているのはミコトではなく、彼女だ。

 そしてその彼女は焦っていた。並大抵のIS相手なら問題は皆無だ。もし、その範疇を越えていたとしても瞬間に動きをトレースして食らい付き、隙をついて有効的な攻撃を再現すれば勝つことは難しいことではない。

 アラクネはISの中では異形の八本足。その動きをトレースするのはほぼ不可能だ。

 今はなんとか食らい付いているが、時間の問題。このままでは負ける。

 

『くっ、どうすれば良いのじゃ』

 

 焦るユリア。不意にその肩が叩かれた。

 

「――どけ、ユリア」

 

 いつも温和な彼の表情は酷く冷たく、無表情。瞬間、音を立て神殿が崩れる。

 真っ白だったそれは漆黒に塗り潰され、やがて世界を生み出す。

 

 【戦死者を選定する女達】が解かれる。それは死を意味していた。それがない戦神はただの糸の切れた人形でしかない。

 停止する戦神。オータムがそれを逃す訳はない。瞬時加速、目前、その命を刈るため足が振るわれる。

 

「おいおい……!」

 

 四本の足が消し飛んだ。白銀の槍。巨大な槍が戦神の右手に握られていた。

 

「邪魔だ退け」

 

 オータムが驚き喜んだ束の間、槍が迫る。死。抗うため差し出された足は、氷が溶けるようにいとも容易く拉げた。

 足のもがれた蜘蛛は地を這う。間も無く解け、オータムは生身で神の前に転がる。

 

「――殺れよ」

 

 オータムは死を覚悟した。いや、受け入れた。敗者にあるのは死のみ。

 それが戦闘狂同士の戦いなら尚更。

 

「……」

 

 だがミコトはISを解除した。オータムなど眼中にないかのように隣を素通りしていく。一度も振り返ることなく、去っていった。

 

「舐め腐りやがって……!」

 

 痛む身体に鞭を打ち立ち上がる。本当は追いかけて殺してやりたいがダメージが大きくアラクネも使えない。

 憎悪()がオータムの中で生じた。そしてそれはヤるだけヤって捨てていったミコトを思うほどに増加していく。

 顔が怒りによって歪む。怒り()が身体を蝕んでいく。今すぐにでも撒き散らしたいほどのそれ。

 だがオータムはなんとかそれを押し止めた。

 次、次だ。次会ったときに殺す。楽しむことはしない。憎悪をもって惨たらしく殺してやる。

 オータムはそう決意し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 一方ミコトはクラス対抗戦の会場より、結構な距離がある男子トイレで用を足していた。

 

「しかしあのISなんだったんだ? ……まぁどうせ束さん辺りの仕業だろ」

 

 対抗戦が始まる直前、我慢していた尿意に勝てず、対抗戦に出る友人二人には悪いと思いつつトイレへ向かった。

 そして立ち塞がる謎の女。誰だ? なんて考えていると彼女はISを展開した。

 それに反応し、自動的に戦神が展開される。そこらからミコトに記憶はない。偏にトイレに行きたい、それだけが記憶に残っている。

 気が付けば女は倒れており、戦神も待機状態へ移行していた。

 訳がわからなかったがいつものようにユリアが勝手に倒してくれたのだろうと判断し、トイレへ一直線。

 

 ことの真相はこれである。

 

「もう終わったかな」

 

 オータムから憎悪を抱かれ、ユリアはより一層惚れ込み、その様子を影で見ていた生徒会長は微笑み、モニター越しに天災は手を上げ喜び、その報告を受けて世界最強は当たり前だと笑った。

 

「……鈴ちゃんに怒られるぞこれ」

 

 心配すべきはそこではないが、本人は何も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 ――そんな一幕

 

 

 

 




尿意には勝てないからね、是非もないよネ。

オータム「良いねぇ……!」

ミコト「トイレトイレトイレ」

ユリア「まずいぞ、旦那様」

ミコト「トイレトイレトイレトイレ」

思い付かなかったからこれで勘弁してくれると嬉しいな!


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