世界が俺を求めてる 作:ゴーゴー
チュンチュン。
なんとか
しかし、一歩間違えば朝チュンになっていたほどに過酷な戦いであった。証拠に一睡もできていない。少女特有の柔らかさと優しく良い匂いが理性を攻撃して寝るどころの話ではなかったのだ。
「寝るな」
だからと言ってそれを言うわけにもいかず、千冬さんに叩かれる始末。言ったところでこの未来は変わらないだろうけど。
授業中、睡魔に負けて沈黙していたところ撃沈したのが現状である。寝たい。
「では授業を終える」
残りの時間を眠らずに耐えて本日の授業は終了。千冬さんに叩かれた数知れず。早く帰って寝よう。
しかし、この調子でいくと俺は死ぬのではなかろうか。なにせシャルルちゃんと同じ部屋である限りあの添い寝は回避できず、即ち寝れないのである。……もしやこれが狙いなのか?
今までのは全て演技で、眠らせないようにし、自滅させデータ取り放題という巧妙な策とか。むしろ男許すまじの女組織が企てた暗殺の可能性もある。証拠を残さず手を汚さず、完璧じゃないか。
……いや、睡眠不足で殺すとか有り得ない。死ぬ前に寝ちゃうもの。そもそもフランスの代表候補生として来ている時点で暗殺よりはデータの収集の方が有り得る。
ダメだ、眠すぎて頭が上手く動かない。当初の予定通り帰ってシャルルちゃんが帰ってくるまで寝よう。
「御山ミコト、話がある。少し付き合え」
いつものメンバーを振り切り、自室に向かっていると銀髪の少女、ボーデヴィッヒちゃんに呼び止められた。
早く寝たいところではあるが、彼女には俺がホモかもしれないと困惑していたところを助けくれた恩がある。
少しくらいなら我慢できるので彼女に付いていくことに。
「応じてくれて感謝する。先ずは一言謝罪させてくれ」
「……あぁ、いや」
人気のない場所に連れていかれ、最初はカツアゲ的なことかと思ったが違った。
何故か謝られている。正直心当たりがない。彼女に謝られるようなことはされていないのだ。
「ありがとう、優しいのだな。あの時のビンタもわざと受けてくれたのだろう? 本当はお前の実力を見てから判断するつもりだったのだが……カッとしてしまったのだ。押さえられなかった。
恐らくあそこで受けるか避けられでもしていたら余計に頭が沸騰していただろう。だが一発叩いてスッキリしたことで冷静になれた」
ふむ、いやしかし、見れば見るほどキャラの濃い娘である。
銀髪に赤目、眼帯をつけて容姿もいわゆるロリ体型でしかも軍人。千冬さんから聞いた話では眼帯の下は金色らしい。確かその目はISを補助するための手術かなにかの結果だとか。それに彼女自身は試験管ベー――いや、待て千冬さん喋り過ぎだこれ。凄い込み入ったところまで話してるぞ。俺はどんな風に彼女と接すれば良いんだ。気まずいとかいうレベルではない。しかも一方的に知ってるとか人として有り得ないのではないだろうか。しかも人伝で聞くという。
「もう教官に相応しくないなどということは言わない。イギリスの代表候補生との戦い、無人機との戦い、明らかに私を越えている。それにどの戦いも全力ではないと見た。教官もその実力を買ってい――む、どうしたこちらを見て固まって」
急に昼休みに呼び出し、世間話をするようなノリでここまで話しちゃった千冬さんとそれを何の突っ込みもなしに聞き終えた俺にドン引きである。
眠たくて正常な判断ができなかったと言い訳しつつ、聞いてしまったことは仕方がないと割りきることにした。
「……聞いているのか?」
彼女のけして普通ではない、簡単には触れてはいけない過去を一方的に知ってしまった俺は、大人としてどうすれば良いのだろうか。
いくら中身がおっさんでも、このような経験はない。社会にでていれば少しは違ったのかもしれないが、生憎と高校生で死亡、二回目の高校生という摩訶不思議なおっさんにはこれをどうにかすることはできない。
素直に聞いてしまったことを謝るのが良いのだろうか。それとも黙っているのが良いだろうか。悩めど答えはでない。眠さも助け、頭が回らないのだ。回ったところで答えはでないのだろうけど。
あー、ダメだ、眠すぎて何を考えているのかすらあやふやになってきた。
「……無視は良くないぞ、御山ミコト」
思考が混濁し、視界もぼやけて平衡感覚が失われてい――
――ミコトはついに睡魔に負けて眠りに落ちた。
「おい、御山ミ――」
返事もなく、フラつくミコトに首をかしげるラウラ。どうしたのかと聞こうとしたところでミコトはバランスを崩し、ラウラの方へ倒れこんだ。
予期していなかったそれに判断が遅れたラウラもそのままバランスを崩す。そして、背後にあった壁に押し付けられた。
(こ、これは壁、ドン……!)
瞬間、ラウラの脳裏に彼女の部下であるクラリッサとの会話が過る。
『む、それはなんだクラリッサ』
『これは少女漫画といって日本の恋愛について綴られている書物です』
『日本……教官の故郷だな。……それでこの男は何をしているのだ?』
『壁ドンですね』
『……壁ドン? カツ丼とか親子丼の仲間か?』
『いえ、これは愛情表現の一つで、つまり――プロポーズの一種ですね』
『……日本には変わった風習があるのだな』
(つ、つまり御山ミコトは私のことを……!)
様々な勘違いと偶然と陰謀が重なり、ラウラはとんでもない結論にいたった。
そして、脳の許容量を越え、気絶してしまう。そのことにより、ミコトもろとも地面へ倒れてしまった。
――そんな勘違いを残した放課後の一幕
間が開きましたが生きてます。
設定やら方向性やら難しい。
とりあえず福音まではいきます。