世界が俺を求めてる 作:ゴーゴー
いきなり一人称になるという。実力がないから是非もないよネ!
「やーい! 男女!」
「男女! 男女!」
なんともまあ、微笑ましい光景であろうことか。
一人の少女を囲む数人の男子達。男女、男女と一つ覚えに連呼する様はどこからどう見てもガキのそれ。
男が女をいじめるのはなんとやら、察するに真ん中のガキと左端のガキは彼女に気があるようだ。他はとりあえず騒ぎたいだけのクソガキだろう。
確か理不尽に殺されたのが高校卒業間近の頃だったから今世を含めれば約十年以上前の光景が目の前に広がっている。
普通はこんな体験はできないと喜ぶべきか、また十年程やり直さなければならないことに面倒がるべきか、強くてニューゲームに嬉しがるべきか、しかしその“強くて”が世間一般から見れば“雑魚”なので何時まで保てるか心配すべきなのか。
目眩く思考や感情、してしまったものはどうしようもない。喚こうが喜ぼうが戻ることはない。
なればこの二度目の人生、悔いのないように――とか言いつつ人間とはそう変わるものではない。死んでも治らないのは伊達ではないのだ。
三日坊主なのも助け、気付けば前世と同じく流れていくだけの人生を送っていた。これからもそうありたいと切に思う。
さて、未来像を描けたところで彼らのいじめ紛いの行為を止めるべきか否かの選択肢が俺に突きつけられている。
放っておいて帰ってしまえばそれで仕舞いなのだろうが、織斑に掃除を手伝ってくれと頼まれている身である俺にその選択肢はない。
どうするか思考する前に話の筋を一度逸らして織斑について少し触れておこう。
――織斑、織斑一夏とは子供ながらイケメンであり、尚且つ鼻につかない性格で運動もできて勉強もできる、そんな奴だった。
彼とは当時、ガキどもと仲良く遊ぶだなんて苦痛から逃れ、且つ大人達には心配や不審を抱かせないようにとノラリクラリしていた俺を“友達ができない可哀想な奴”と勘違いした織斑に声をかけられてからの付き合いである。
“良い奴”なのは確かだが、この織斑少年には少し不思議なところがある。
具体的に言えばやたらと姉に会わせたがる。
「ちふゆねーはすごいんだぜ!」
「ちふゆねーはな、かっこいいんだぜ!」
単なるシスコンか、イケメンが台無しだなこりゃ、と思っていたが行動がチグハグだった。
シスコンならば姉と他の男を引き合わそうとするだろうか。自慢したいだけの可能性もあるがどうも織斑の姉――織斑千冬を友人、あるいはそれ以上か、そんな仲にしようとしている節がある。
やたら家に俺を呼び織斑姉と二人きりにしようとしたり、泊まっていけと強引に俺を引き留め風呂で鉢合わせるように仕組んだり。
絵面が小学生と高校生なのだから一部の性癖の持ち主を除けばなんともない場面なのだがそれを小学生たる織斑弟がしているのがなんとも奇妙だ。
ひょっとしたら彼も転生しているのかもしれない。でないとこの年で色恋とか、どう説明すれば良いのか。
何がしたいんだ織斑。そんな疑問。
あー、そう言えば織斑姉も姉で変な人だった。俺の顔を見るなり「なるほど、聞いていた通り隙がない」とか訳のわからないことを言ったり、竹刀を俺の目の前で当たらないように振った後に「今のを避けるか、やるな」と言ったり、いやいや貴女が外しただけですよ、とは言えず。
ともかく、織斑家は姉弟揃ってどこかおかしいらしい。早々に縁を切りたかったが許してくれず。
というわけで今でも交流は存在している。できれば織斑とは距離を取りたいので本当であれば掃除を手伝うなんてしたくはないのだが、言い難い恐怖がそれを邪魔する。
というより、一度断った時に凄く面倒なことになったので聞ける範囲なら彼の願いを聞いてやろうといった次第である。
戻して、止めるか否か。
俺が本当の子供であれば本能のままに行動に出ていただろうがなまじ中身が大人なので介入すべきかどうかの葛藤が生まれてくる。
子供の喧嘩に大人が介入すれば確かにその場はおさまるであろう。しかし、子供同士のことで大人が出しゃばるのはどうであろう。
危険な場合はそれが正しいだろうが、ある程度は放っておいて自分達で解決する場を与える必要もある。
どれが正しいかわからない故の葛藤。勢いに任せれば楽なのだろうが、勢いに乗れるほど彼らに思い入れはない。
ま、どうせ何時ものごとく織斑が止めて大団円だろう。そうやって女の子を落としているところを何度か見たことがある。この年で凄いな織斑。
長々と思考しておいてこの結果である。
掃除という単純作業中の暇潰しとしては上々なので問題はない。
「お前ら寄ってたかって楽しいのかよ!」
ほら、言っている側から
「なんだよお前、その男女の味方すんのかよ!」
「もしかしてお前そいつのこと好きなのかよ!」
なんともぶっ飛んだ等式であろう。味方するイコール好き、ガキ特有の算数である。
「好きとかそんなの関係ないだろ。困ってる奴がいたら助ける、それが男ってもんだろ」
やだ格好良い。織斑、やっぱりお前転生してない? 格好良すぎる。とても小学生の台詞には思えない。俺が本当の小学生であった頃はどちらかと言えばクソガキの側だったからその年でその台詞が出ることが信じられない。織斑、お前俺の中じゃ疑惑の存在だぞ。
「だよな、ミコト!」
「……ん?」
どうしてそこで俺に振るんだコイツ。いつもなら一人で解決するするだろうに。びっくりして返事の前に変な間が空いたじゃないか。いや、返事とも言えない返事ではあるが。
「だから、ミコトもそう思うよな!」
「え、あ、うん、そうだね」
何故このタイミングで俺を巻き込んだ織斑。なんやかんやとそれだけはしなかっただろうに。
「それに男女ってのも気に食わない。どこからどうみても可愛い女の子じゃねーか! リボンも似合ってて可愛いだろ!」
織斑必殺の真剣な顔で異性を褒める、頂きました。これで落ちた女数知れず。小学生なのに凄いよ織斑。
「だよな、ミコト!」
「……ん?」
なんなの、今日の織斑なんなの。一々俺の同意を求めなくて良いんだよ?
いつもみたいに俺を巻き込まずに穏便に済ませてくれるとミコトさん嬉しい。
いいや、聞こえなかったことにして掃除を続けよう。優先すべきは掃除である。掃除万歳。ビバ掃除。
「だよな、ミコト!」
掃除。掃除っと。
「だよな、ミコト!」
掃除。掃除。掃除をしましょう。
「だよな、ミコト!」
「そーですね!」
織斑お前は村人か、それしか喋れないのか“はい”を選択しないと進まないイベントかこれは。
「なんだよ、
「いや、別に」
「男女が好きとか物好きなやつー!」
「人の話聞いてくれると嬉しいな」
「やーい! やーい!」
「……」
ガキ面倒くせぇ。
しかし参った。標的が織斑から俺へシフトしてしまった。どうにかまた織斑に矛先が向くようにしかけたいがどうしたものか。
……仕方あるまい、大人の力見せてやる。
「あのな――」
恥ずかしいのでカット。正論に正論を重ねて反撃させない大人気ないやり方で説き伏せ、言葉で勝てないと判断したガキどもが手を上げたところで織斑がカウンターパンチ。
暴力沙汰で先生に呼ばれたりと大変だったが概ね問題なく事は終わった。
「そ、そのだな……ミ、ミコトのことは名前で呼ぶから、特別に私のこともほ、箒と呼んでも良いぞ」
問題なのは自意識過剰でなければ俺にホの字っぽいこの娘である。普通は織斑の方にホの字になるだろうに。俺殆ど何もしてないんですけど。放棄しても良いですか。箒だけに……ごほん。
しかし不思議なのは何故今回にいたって織斑が俺を巻き込んだのか。ま、織斑が不思議なのは今に始まったことではない。考えるだけ無駄か。
そんな小学生時代の一幕。
モッピーさくっと攻略。他のヒロインもさくっと攻略していくよ!