君の声を聴く   作:コストコ

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うぅ、出したいキャラクターが一向に出せない…
早く出したいです…


第2話 好奇心は人をも殺す

 とある部隊隊長の自室

 

 ベッドの周りや家具であるタンスの上など部屋中に置かれている大小さまざまなぬいぐるみが特徴的なその部屋の個人専用ターミナルの前に一人の女性が立っていた。

 肩にかかるほどの長さの黒髪に凛とした吊り目の瞳が特徴のきれいな容姿をしているその女性はまさしく戦う女というような雰囲気が漂っている。

 しかし、それよりもさらに驚くべきはその服装である。

 下の方は普通の黒のジーンズパンツなのでなんの問題もない。

 問題はその上の方である。

 何と彼女の服装は、シャツも下着も一切つけず、黒のジャケットを上から着ているというかなり大胆な服装だった。

 そのジャケットも胸元部分までしかなく、へそも丸出しである。

 さらには前のチャックは胸元が大きすぎるのか、それとも彼女が意図的にそうしているのか全開となっていたのだ。

 そんな何とも開放的な服装をしている女性はターミナルを両手でいじくりながらぶつぶつと何かを呟いていた。

 

「んー、やっぱり実地演習前に一度アラガミの講義をした方がいいのかしら?でも調べればデータベースで確認もできるし、おおまかな部分だけ説明して、後はあの狐目…じゃなくて支部長に任せればいいか。。あ、そうだ、アラガミとの戦闘の前に神機の扱い方についても説明しておかないといけないわね…。これは…どうだろう?正直習うより慣れろって感じなんだけど説明しておかないと後が大変そうだし…ああああ!もう!考えることが多すぎる!」

「失礼しますね。…うわぁ、なんだかすごく大変そうですね。」

 

 女性が頭を両手でかきむしりながら叫び声をあげていたタイミングで部屋に入ってきたのはフェンリルのオペレーターに配給される制服を着た若い青年だった。

 部屋に入っていきなり入居人の叫び声を聞いたその青年は思わず苦笑いをしてしまう。

 

「ん?あら、テルオミ君じゃない。どうしたの、何か私に用事?」

「はい、先ほど新しく入隊したゴッドイーター二名の適性検査が終わりましたので至急エントランスまで移動してください。」

 

 テルオミと呼ばれた青年にそう言われると女性は口元を両手で覆った後深いため息を吐いた。

 その顔には緊張と不安が入り混じった何とも言えない表情が張り付いている。

 

「はぁ~、とうとう来たわねこの時が。ううぅ…緊張するわ。」

「あはは、珍しいですね。あなたがそんなに緊張している姿、初めて見たかもしれません。」

「緊張もするわよ。今までアラガミをたたきつぶすことくらいしかやってこなかったんだもの。誰かにものを教えるだなんて一回もしたことないんだから。」

「何事も経験ってやつですよ。それにほら、こうやって教練講師の打診が回ってきたということは、それだけの実力と信頼があるってことじゃないですか。むしろあなたの実力を考えてみればむしろ遅いくらいじゃないですか?」

「どうかしら?あの狐目のことだもの。きっと面倒だから私に押し付けたのよ。それに私じゃなくても、ブレンダンさんとかタツミさんとか、もっとふさわしい人がほかにいると思うの。寄りにもよってなんで私に…。」

「タツミさんもブレンダンさんもサテライト拠点の防衛等で極東支部を離れることが多いですからね、しょうがないですよ。いい加減に腹をくくったらどうですか?」

「…テルオミ君、貴方他人事だと思ってない?」

「やだなぁ、そんなわけないじゃないですか、あはは。」

 

 恨めしそうな視線を向けてくる女性に全く動じず、笑顔で受け流すテルオミ。

 そんな彼を見て何を言っても無駄だと判断した女性は、大きく深呼吸をした後、両頬を二回両手で叩いた。

 

「…よし!いつまでもグダグダ言ってなんていらんないわね。泣き言なんて言ってたら彼らまで不安になってしまうもの。いい加減覚悟を決めないと!」

「そうそう、その意気ですよ。新人二人のこれからをつくっていくんですから、しっかりお願いしますよ!」

「…ストレートにハードルあげてくるわね。ま、やれるだけのことはやるつもりよ。でも、これからの戦いを生き抜けるかどうかは最終的に、彼ら次第だけどね。」

 

 そう言ってわずかに笑みを浮かべた後、女性は自室を出て速足で昇降機へと歩いて行った。

 途中に背後から聞こえたテルオミの「頑張ってくださいね!」という声に手だけ振りながら答え、彼女は開かれた昇降機の扉をくぐり、エントランスへと向かった。

 

 

 

 ➡➡➡

 

 極東支部エントランス

 

 任務受注のための受付や複数の共同ターミナル、出撃用昇降機から各フロア移動用の昇降機などがあり、任務出撃前の準備から様々な場所への移動も可能とする場所である。

 そのエントランスにある受付の前方に設置されているソファに一人の男性が座っていた。

 先ほど詐欺まがいの適性検査を受け、無事に神機に適合することができた痣城レイジである。

 顔を下に向けたままソファに座っている彼は傍から見ても分かるほどの暗い雰囲気を醸し出していた。

 彼はしばらく視線を床に集中させていたがふと何を思ったのか自分の腕に新しく装着させられた赤い腕輪に視線を移した。

 パッチ検査だと同期に言われて安心して検査に向かったと思えば、実態は何の説明もなくいきなり自分の腕にドリルをぶっ刺しながら腕輪をはめ込むというとんでもないものだった適合検査。

 しかも腕輪がはめ込まれた後、痛さに悶絶しながらもスピーカーから聞こえてくるあの憎たらしい男の声に従って目の前にあった大剣を手に取ったらいきなりそこから黒い繊維のようなものが無数に飛び出てきて、件の腕輪に入り込んできた。

 一瞬何かが体の中を這いずり回るような感覚に襲われたものの特にこれといった変化はなくそのまま検査は無事終了。

 そしてこの腕輪はおろか先ほどの適性検査の詳細な説明もされずにエントランスに誘導され、そのまま放置されているのが今の現状である。

 ここまでの流れをかなり簡単に説明するなら就職先でいきなり詐欺にあって謎の腕輪を無理やりはめ込まれた、ということになる。

 この後、「その腕輪めっちゃ高いからお金請求するね」と言われる未来すら安易に想像できてしまう。

 そうれくらいに彼の中のフェンリルのイメージはがた落ちしていた。

 不安と憎悪が入り混じった視線を腕輪に向けていると前方からカツカツと誰かが歩いてくる音がした。

 視線を腕輪から前方に移すと、そこには少し横にはねた短い水色の髪をしている同期の少女、柏原セイラが立っていた。

 彼女はその可愛らしい顔をカクンと小首をかしげたあと、心配そうに声をかけた。

 

「あの~大丈夫ですか?なんか、凄い顔してましたけど…」

「いや、大丈夫。この先きちんとこの場所でなんの問題もなく働けるか不安になってただけだから。」

「えっと、全然大丈夫そうには思えないんですけど…」

 

 レイジの返答に苦笑いを浮かべるセイラ。

 彼の表情はいたって真剣であり冗談なのか本気なのかが全然わからないのだろう。

 

「あれ、そういえばセイラは何してたんだ?さっきちょっとこの辺散歩してくるとか言ってなかったっけ?」

 

 実はセイラもレイジと同じように適性検査を終えた後、エントランスで待機していたのだが、数分前にあまりにも暇だから少し近辺を散歩してきます、と彼に言って姿をくらませていたのだ。

 彼に指摘されたセイラは頬をほんの少しだけ赤くさせながら恥ずかしそうに呟いた。

 

「えーっと…実は…広すぎて道に迷ってしまって。…途中親切な清掃員のおばさんに道を聞いて何とかここに戻ってきたんです。」

「ああ…なるほど。確か支部の拠点だか何だかが地下にあるからアナグラって呼ばれてるんだっけ?だとしたらここって外から見た以上に広いのかもしれないなー。いやまぁ、見た目も随分と大きかったけどさ。」

「うぅ~、16にもなって迷子なんて恥ずかしいです。…あ、でも!ただ迷子になってたわけじゃないんですよ?」

 

 そう言って彼女が取り出したのは2本の缶ジュースだった。

 彼女は缶ジュースをソファのまえのテーブルに置くと自身もレイジの隣に腰を下ろした。

 

「そろそろのども乾いてきたので、さっき迷子になっていたときに自販機で買っておいたんです!」

「おお!サンキュー、セイラ!ちょうどのどが渇いてたとこなんだ。」

「えへへ、どういたしまして!あ、お金なら気にしなくてもいいですよ。今回は私のおごりです!同期入隊の記念ってことで。」

「え、いいのか?なんか悪いなぁ、俺ばっかりもらってばっかで…。んじゃあセイラも何か困ったことがあったら俺に何でも言ってくれよ。俺にできる範囲なら手伝うからさ。」

「はい!お互い持ちつ持たれつで行きましょう!」

「迷子になった時も連絡していいからな」

「その話はもうおしまいにしましょうよ…」

 

 そう言って頬を搔くセイラを見て一瞬小さく笑った後、レイジはテーブルに置かれた缶を手に取り両手の中で転がし始めた。

 

「それにしてもさぁ…」

「はい?」

「なーんか実感わかないよな、俺たちがゴッドイーターになったんだってさ。」

「…言われてみれば確かにそうかもしれませんね。適性検査が終わった後も特に何を言われるわけでもなく、エントランスで待機しているだけですからね。」

 

 レイジの言葉に思うところがあったのかセイラも両手で缶を持ちながら同調する。

 レイジはしばらく両手で缶を転がした後、また視線を自分の腕輪に向けた。

 ここに来るまではなかったこの腕輪がどういうものかはよくわからないが、恐らくはこれがゴッドイーターの印のようなものになるのだろう。

 そう思ってこの腕輪を見ると、先ほどとはまた違った感情が生まれてくる。

 

「…まぁ、今日やったことっていってもドリルぶっ刺されて無様に悲鳴あげただけなんだけどな。」

「そういえばあれものすごく痛かったですよね!ひどいですよ!私、公式FBSで適性検査はパッチ検査だって聞いてたから安心してきたのに…。別の意味で予想を裏切られました…。」

「ワクワクとドキドキが一瞬で痛みと恐怖に変わったね俺は…。まぁあれだろ?フェンリルでは俺たちの手首をドリルで穴あけパッチンする検査をパッチ検査っていうんだろ?」

「……??すいませんそれどういう意味なんですか?」

「…すまん、俺のボケのレベルが低すぎた。ほんとにごめん、だから今の発言はなかったことにしてくれ。」

 

 自分のギャグのセンスに悲しみを感じ、若干肩を落としつつもレイジは缶ジュースを開けようとプルタブに指をかけ…すんでのところで指の動きを止めた。

 彼が指を止めた理由は、缶ジュースに書かれている名前にあった。

 

「なぁ、セイラ…この『初恋ジュース』ってなんだ?俺こんな飲み物見たことも聞いたこともないんだけど…」

「あ!実はこれ、自販機に『極東支部限定!ここでしか飲めない味!』って書いてあったんです。私、こういう不思議そうなものとか限定品に弱いんですよね。」

 

 そう言って自分の分の『初恋ジュース』を見せて嬉しそうに笑うセイラ。

「なるほど、限定品か…」と呟いて自分の手元にある『初恋ジュース』を見つめる。

 彼ももちろん人並みに好奇心はあるので珍しいものなどには興味を示すことがある。

 仮に自分が彼女と同じように自販機でこんな不思議そうな飲み物が売っていたら、思わず買ってしまうだろう。

 

「あ、もしかして…嫌でしたか?それならすぐに違う飲み物買ってきますけど…。」

「いや、俺もこういう珍しい物、好きだからさ。こんな面白そうなものが売ってたら、思わず買うよな。」

「ですよね!だって『初恋』ですよ、『初恋』!一体どんな味なのか気になりますよね!」

 

 そう興奮気味に話すセイラを見て小さく笑みを浮かべるレイジ。

 そして彼は『初恋ジュース』のプルタブをあげて缶をセイラの方に向けた。

 

「よし、せっかく二人とも飲み物を持ってることだし、乾杯でもするか!ほら、セイラも缶開けて。」

「あ、はい!ちょっと待っててくださいね…っと。」

 

 セイラはレイジにせかされて慌てたように缶を開けると、彼の缶と対面するように自分の缶を向けた。

 

「それじゃあ、改めて!二人の同期入隊を祝して…」

「「乾杯!」」

 

 そう言って軽く缶を突き合わせて乾杯をする二人。

 彼らは乾杯をした後、何とはなしに二人で顔を見合わせた。

 そして、二人同時に笑った後、

 これまた二人同時に、『初恋ジュース』なる飲み物を一気に飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、ヒバリ」

「えっと、なんでしょうか。」

 

 エントランスの受付カウンターにいるヒバリに声をかけたのは先ほど自身の部屋でテルオミと話をしていた女性だった。

 その女性の手元には部屋を出た時にはなかったいくつかの資料があった。

 彼女の表情は限りなく無表情に近く、感情の起伏がほとんどみられていなかった。

 彼女に声をかけられたヒバリは苦笑いをしながら受け答えをしている。

 

「…私、テルオミ君に新人二人がいるからすぐにエントランスに来いって言われたから来たんだけど。」

「あ、そうなんですか…。」

「だからね、私はなるべくいそいで資料をまとめてここに来たの。新人二人のプロフィールとか、いろいろなデータを収集してね。…すごく大変だったのよ。」

「そ、それは大変でしたね…」

 

 そこまで会話をしてから女性はうつむいて肩を震わせた。

 その震える背中には憤怒に近い感情が見え隠れしていた。

 それを見たヒバリは、これはまずいと思いとっさに耳をふさいだ。

 その瞬間、女性はばっ!と顔をあげて大声で叫んだ。

 

「なのに!どうして!その新人二人がここにいないのよぉぉぉおおおお!!!!」

 

 うがぁああああ!と怒りの叫び声をあげる女性。

 なんで時間通りに待機してないのよ!とか私の苦労を返せ!など怒号を言う女性をなんとか落ち着かせようと声をかけるヒバリ。

 エントランスに響く女性の声のせいなのか否か、テーブルにおいてある持ち主の分からない二つの缶ジュースの内一つが倒れた。

 わずかに残った中身がテーブルに飛び散る。

 その缶の表面には『初恋ジュース』という何とも不思議な名前が表記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公とセイラちゃん達は一体どこに行ったんでしょうね?
そしてこの教練講師は一体誰なんでしょうね?
謎ばかりです。
そして相変わらずのグダグダ感。
すみませんとしか言いようがありません。

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