灰と幻想のグリムガル―その先に見えるもの―   作:汐見

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2話

 閉ざされてしまった塔の扉に気づいた皆が、落胆する。けれどそれだけじゃない。

これからどうするのか。どうすればいいのか、見当もつかないからだ。そこに颯爽と現れる誰か。

 

「と、そこに、絶好のタイミングでえ……!」

 

 甲高い女の子の声が響き渡る。全然、絶好のタイミングなんかじゃない。

 

「現れちゃうんですねえ、参上しちゃうんですよねえ、どこだーっ!? ここだーっ!」

 

――とてもじゃないが、仲良くなれる気がしない。そう思ってしまうアズだった。いや、もちろん気がしないだけで、俺は仲良くするつもりだ。どうせなら、ここにいる皆と友達になりたい。少なくとも、それだけは揺らがない。

 

「どこだよ!?」

 

 といかにもチャラそうな男が立ち上がって叫んだ。女の子は、「慌てなーい、騒がなーい、なおかつ気を抜かなーい、毛も抜かなぁーい」などとアホっぽいことを言う。どうやら塔の裏手に居たらしい。趣味、悪いなあ……、俺たちの反応を、後ろからニタニタ笑ってたのかもしれない。はあ。

 

「どーもー。元気ですかー。ようこそグリムガルへー。案内人をつとめさせていただく、ひよむーですよー。初めましてー。よろしくね? きゃぴーっ」

 

「…よろしくな、ひよむー」

 

 いざ行動せねば、信頼関係など築けない。即座に手を差し伸べてみると、「きゃっ!……あれっ?」などと少しばかり照れ、首を傾げた。「あなた、どこかで……」とよくわからないことを言っていたが、握手し返してくれた。何だよ、きゃって。

ひよむーは敬礼のようなしぐさをして丸刈りの男を宥めこんだ後、「そろそろ話を進めてもよいです? 仕事しちゃっても?」と言った。最初からそうしてくれたら、ややこしいことにはならなかったんじゃないのか。

 

 「早くしろ」

 

 銀髪の男が低い声で言った。威圧的だけど、ひよむーに臆した様子は見られない。中々肝が据わっている……のかもしれない。

 

「じゃ。仕事しちゃいますね?」

 

 アズは空を仰ぎ見た。早く終わらないかな。――さっきよりも空は明るくて、黄昏どきとは言えなくなっていた。朝だ。まさに今、夜が明けようとしている。

 

「とりあえず、ついてきてくださーい。置いていきますよー」

 

 二本の髪をぴょこぴょこと揺らしながら歩き出した。どこへ連れて行くつもりかは分からないが、丸刈り男を戦闘にそれぞれ歩き出した。

俺はまた後方の方でゆったりとついて行く。よく見ると、月が赤い。綺麗だが、赤い月など見たことがない。まるでルビーのようで、きらきらと輝いている。おかしい、ここは本当に、どこなんだ……?

 

 

 

 連れられた先は、街だ。石造の建物が並んでいたり、木造ばかりの地区もある。道はまっすぐでなく、くねくねとしていて、見通しが悪い。

街の名前は、オルタナと言うらしい。やはり聞き覚えがない。人はそれなりに住んでいるようで、見たことのない服装だ。ていうか、俺たちが不審者かのようにまじまじと見られている。住民はと言うと、飾り気がなくて、みすぼらしい、と言っては失礼かもしれないが。

皆、記憶がないらしかった。せいぜい覚えているのは名前で、それ以外は()()()()()()()()。と言った。まるでさっきまでは覚えていたかのように。

 

 「名前…」

 

 くりくりして、赤い髪の男は自分の胸元をとんとんと叩いた。名前はランタと言うらしい。記憶消失だという彼に、丘に居た時隣にいた茶髪の眠たげの目をした男が「記憶喪失だろ……」と突っ込みを入れていた。中々いいコンビになりそうだな、とアズは笑う。

目が合う。お互いに少しだけ笑って、自己紹介をした。茶髪の男はハルヒロと言うらしい。せっかくだから、ハルと呼ばせてもらう事にした。そう呼ばれたことはないらしくて、くすぐったそうにしていた。何か、良い奴っぽそう。仲良くしたいな、と思えた。ランタはうりうりとアズの髪をくしゃくしゃに撫でまわす。「なんかお前、いぬっころみてーだな!」いぬっころ?俺、犬なのか……?

 

 それから後、爽やかそうな青年マナトにも声を掛けた。これが中々かっこいい。それからほかのメンツにも声を掛け合って、自己紹介を交わした。中々皆いい人そうだ。ぱっと見、だけど。

しばらくして、ひよむーが足を止めた。石造二階建ての建物らしい。白地に赤い三日月の旗と、看板がでていた。

 

「おれ……おる、たな……?」

 

オズが読み上げていると、ひよむーが看板を手で差し示して、「到着しました!」と声を挙げた。

 

「ここ、がっ! かの有名なオルタナ辺境軍義勇兵団レッドムーンの事務所ですよん!」

 

 なるほど……そう読むのか。アズはぽんと手を叩いた。すぐにうながされて建物に入ると、広い部屋にテーブルとイス。奥にはカウンターがある。カウンターの向こうには、腕組みをして立っている男がいて、なかなかケバい顔をしている。ひよむーは男に一礼すると、ばいばーいと手を振ってドアを出て行った。え……?ここでいなくなるの?部屋は妙な緊張感が漂っていて、少し怖い。

 

 

 

 

 ブリちゃんと呼ばれた男は、怪しい雰囲気を醸し出して、口を開いた――。

 

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