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――ギルド。マナトに教えてもらった、聖槍士のギルドへ足を運ぶ。そもそも、ブリちゃんが言うには一度は所属していたということなので、入れてもらえるかさえも分からないのだが。もし、行ったところで「お前はもう手習いをしただろう」とか言って追い出されるのではないか、少しばかり不安である。
「……ここかなあ」
思っていたより、華やかな建物だ。通りのあちこちには花が植えられていて、アーチみたいになっている。
(……アーチってなんだっけ)
少しだけ緊張した顔で、扉を開ける。見た目はずっしりしていて、重そうな鉄のかたまりのようなのに、案外軽快に開いてアズはびっくりしながら中へはいる。階段を下り、灯りがいくつか見える。中心には女性と男性、どちらも白と青基調の服を身にまとっている。
「あの」
話しかけてみる。2人とも、アズに対して背を向けだんまりで、ちょっと傷ついた。
「あの、こんにちは?」
「……」
引き続きのだんまり。俺に、どうしろと?……もしかして、案の定お前はもう入ってるだろ、出てけ!みたいな?それは困る。過去は過去、今は今。自分さえもよくわからないのに、過去も何もないのだが。
それに教えてもらえないと、パーティの役立たずになってしまう。
「む?」
男性が振り向く。どうやら気づいていなかっただけらしい。俺の顔を見て、焦ったように身振り手振りした。なんだかおもしろい人だ。女性もすぐに気づいて、書類を落とす。ああ、拾わないと。せめて近くのものだけ拾って渡すと、お礼を言われた。
「君は……、まさか……アズくん?」
「……アズくんだ、何だか久しぶりね。そんな身なりで、いったいどうしたの?」
やはり俺を知っているようだ。俺は2人を知らないのに。俺もよくわからない事情を、とりあえず話す。話したところで、信じてもらえるのかまるで不思議だが。
「記憶が……そうか……。
男性。名前はレイス、と言うらしい。もちろん聖槍士として、なかなかに腕が立つらしい。女性――フレアは元神官の聖槍士。神妙な表情で、アズを見てから何かを納得したように、うんうんと頷いている。どうやらこの2人、双子だそうだ。よく見るとたしかに似ている。
「君の事情は分かった。見習いの時に教えていた基礎は全て忘れているだろうから、一から教え直そう。もちろん最初にお金はもらっているが、タダとは言えない。今は2シルバーはもらおうか」
本来なら8シルバー掛かるところを、事情を知って2シルバーにまけてくれた。破格だ。でも、以前の俺が払っていたのだから、いいのかな、なんて甘えてしまう。でもよくよく考えたら、以前の俺と今の俺、10シルバーと5シルバーをもらったわけだよな。それっていいのかな。よくないよな……。なんていうか、ルールを破っているような、罪悪感もある。かといって、出せと言われても出せないし、返せと言われても返せない事情がある。いつか、恩返しができればいいんだけど。
7日間。聖槍士としての基礎、技能、戦法などを習う。槍の持ち方、選び方から、身のこなし方まで。聖槍士はどうやら槍で突撃するだけの無能と思われることもあるらしいので、舐められないようにと言って、ついでに作法とかも教えられた。必要なのかはともかく。
意外と楽しくて、2人と別れるのは少し名残惜しかった。またスキルを教えてもらう時に訪れることにはなるが、気さくでいい人たちだったし、休憩がてら聞かせてもらった世間話はこれまた意外と面白かったからだ。
ともあれ、手習いの期間は終わった。修了の祝いで、羽織りや使い古された槍、必要なのかと不思議な錫杖と、聖槍士の靴。どれもお古だけれど、それを身に着けるだけでも何とも聖槍士っぽかった。ちょっとかっこいいかな、なんて思ったりして。そんなことはこれっぽちもないのだが。
るんるんと鼻歌を歌いながら、待ち合わせの場所へ向かう。皆、もう終わって待っているのかな、と思うと少しだけ胸が躍った。7日ぶりに会えるのだから、楽しみでしょうがない。
市場はさほど混んではいないとはいえ、それなりに人はいる。どうにかかき分けていると、ふと目の前で誰かが止まる。
「……え?」
驚いた顔をしている。ランタたちだろうか、と思えばどう見たって違う。知っている人?それも違う。そもそもここで最初にあったランタたち以外に、知り合いなんていないし。
「あの、俺に、何か?」
思わず尋ねると、長い髪をワンポイントだけ結んで、サイドに垂れてさせている女の子――とても綺麗で、見た者のほとんどがきっと惹かれてしまうであろうほどの美少女。
「……いえ、ごめんなさい」
女の子は、信じられないと言ったふうにその場からアズの横を駆け抜け、いなくなってしまった。呆然としていたが、視線の先に串肉を売っていた屋台にランタとユメ、それにハルヒロが居た。さっきの子も気になるけど、知らないし、忘れよう。そう思いながら、3人の元へ向かった。
(見たことがないなんて、嘘だ。誰かがそう言っている…そんな気がした)