亜神と龍   作:自衛隊隊員A

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龍と亜神

 どうも、転生者です。何を言っているんだお前はってか?

 いやいや本当。

 目が覚めたらエレメントハンターのフユノリュウになってたんだよ。知ってる?フユノリュウ。

 最強の存在ですよ。ああ、退屈。純粋な生物じゃないから腹も減らないし眠くもならない。寝ることは出来るよ?でもすっきりしたりはしない。

 この世界の文明レベルも低すぎる。どうやらエレメントハンターの世界に来たわけではないらしい。暇だ、暇だ、暇だ。

 …………ん?

 ふと明かりを感じ顔を上げると、遠くの方で火の手が上がっているが見えた。火事か?まあ俺には関係ないことだ。

 確かあそこはアルヌスだったか?

 

「相変わらず暇そうねぇ?」

 

 ………ん?

 ふと足元を見るとそこには黒い衣装を纏った少女がいた。その背にはハルバードが担がれている。

 見知った顔だ。六百年ほどの付き合いのロリ・マーキュリー間違えた、ロゥリィ・マーキュリーだ。

 

『ナンノ用ダ?オレハ眠インダ』

「五百年ほど前、あなたは眠る必要がないって聞いたわよぉ?」

 

 そう言えば言ったなそんなこと。よく覚えてるなこのロリババア。

 突然ロゥリィが俺の足を叩いてきた。

 

「今、失礼なこと考えなかったかしらぁ?」

『気ノセイダロ。デ、ナンノ用ナンダ?』

「アルヌスに連れて行って欲しいのよぉ。アナタと私の仲でしょう?」

『………フン』

 

 俺が背をロゥリィに向けるとロゥリィは俺の背の上をスルスル上り翼辺りに座る。俺の翼は背中から生えている訳ではなく背中から生えた突起物から生えている。ロゥリィはその突起物を背もたれにしている。

 

「……っ、この感覚、なれないわねぇ」

 

 重力子と半重力子を偏向に生成しているらしい。らしいというのは前世の知識として知っているだけで俺は感覚でやっているからだ。

 まあとにかく、普通なら動けなくなるのだがそこは全能のフユノリュウ。ロゥリィの周りだけ重力子も半重力子も外界と均等にしてロゥリィの自由を戻す。ただ、戻るまでの一瞬が苦手らしい。

 なら乗らなきゃいいのに。

 

『ナラ乗ラナキャイイノニ』

  

 声にでた。 

 幸い聞かれてなかったらしく、俺は地を蹴り空へと飛び立った。

 あっという間に雲を突き抜け巨大な太陽が見える。温度も湿度も酸素濃度も調整しているからロゥリィは気持ちよさそうにスヤスヤ眠った。

 

 

 

 

「ん……はぁ……あん」

 

 ロゥリィが艶めかしい声を出し起きあがる。つまり誰かが死んだ(ロゥリィ風に言うなら召された)のだろう。割と近くで。

 

「……フユノ、一度地上に降りてくれるかしらぁ?」

『ハイハイオ姫サマ』

 

 俺の視界には殺された男と、盗賊。そして今まさに犯されている母娘の姿がとっくにうつっていた。俺はそちらに向かい急降下した。背中でロゥリィが妖艶に微笑んでいるのを感じながら盗賊達に同情を………しないな、全く。

 

 

 

 

 その盗賊達はそんな脅威に気付かず、妻と娘を守るために挑んできた結果返り討ちにあった父親の死体を放り母娘を欲望のままに犯していた。

 この一家は炎龍の出現によって、村から一足先に逃げたらしい。つまりもうじき村丸ごと逃げてくると言うことだ。これを襲わない手はない。だが数が足りない。しかしそれは手下を集め留きっかけにもなる。

 頭数を増やせば村や町も襲えるし、領主を追い出して自分が領主になれるかもしれない。そんな夢を見た瞬間、絶望は降りてきた。

 

『オオォォォォォォォォォッ!』

「へ?………なっ!?龍!?」

 

 ズンッ!と地を揺らし現れたのは巨大な龍。巨大と言っても古代龍に比べれば大きさは一回り小さい。それでも十分な驚異には変わらないが。

 すぐさま逃げようとした男達の上を何かが跳び、目の前に降りる。それは美しい黒い少女だった。

 少女がその体躯に見合わない程大きなハルバードをふるうと、我先にと逃げた先頭の盗賊達の体が二つに分かれる。

一瞬、目の前の現象を理解できなかった盗賊達もドシャリと肉が地面に落ちた音を聞いて理解する。恐怖に固まる盗賊達を見て少女は微笑む。

 

「クスクスクス……おじさま方ぁ、今宵はどうもありがとう。生命をもってのご喜捨を賜りホントにありがとう。主神に代わってお礼申し上げますわねぇ。神はあなた達の振るまいがたいそう気に入られてぇ、おじさま方をお召しになるっておっしゃられてるのぅ」

「……な、なんでぇ!てめえはっ!」

 

 龍の背から降りてきた時点でただ者ではない。このサイズの龍ともなれば一軍も相手取れる災害だ。その背から降りてきた少女もまた、盗賊達にとって理解できない恐怖であった。

 

「わたしぃ?わたしはロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神エムロイの使徒」

「エムロイ神殿の神官服?………じ、12使徒の一人。死神ロゥリィ?」

「あらぁ、ご存知なのぉ?クスクスクスクス……それで正解よぉ。ああ、そっちはフユノ。数百年をいきる龍種らしいわぁ。あれ?数千年だったかしらぁ?」

 

 悪夢だ。

 使徒に龍。最悪の組み合わせ。前門の虎、後門の狼どころか前門の使徒に後門の龍。横から逃げようとした盗賊達。使徒と龍は各々の右側の敵をハルバードで頭をかち割り、巨大な腕で地面に塗りたくった。

 数秒と足らず生き残りはたった一人の男のみ。

 

「ひ、ひぃ……た、助けてくれ!」

「ふぅん?でも、あなたも助けを求めたあの家族を助けなかったのでしょぉ?」

「そ、それは……いや、俺は殺してもないし、犯してもない!」

『デモ犯ス気ダッタンダロウ?』

「へぁ?」

 

 聞こえてきた声に振り返り固まる。龍がこちらを覗いていた。まさか、今この龍が喋ったのか?

 

『アノ母カ娘デ楽シム気ダッタンダロウ?ドウセ死ヌナラ犯ッタラドウダ?』

「そうねぇ。確かにもう死んでるけど、犯ったら?」

 

 ロゥリィは蠱惑的で美しい笑みを浮かべてそういった。

 

 

 

 

 

 俺は許しを請う盗賊を見てあきれ果てた。聞けば盗賊になったばかりで罪は犯していない。手は汚していない。生きていくために仕方なく盗賊になった。これからは心を入れ替え真面目にいきるそうだ。

 俺はこの体になってから人間相手に同族意識なんて持たずどうでも良い存在となっていた。襲ってくるなら殺すし崇めるなら守ってやろうと思えるぐらいの認識だった。だがこの男には呆れ果てる。

 しかもロゥリィ相手にこの謝罪文句。ロゥリィの顔が不愉快で歪んでいくのが見て取れた。ロゥリィの主神には善悪は存在しない。盗賊になったなら盗賊として堂々果てろと言う教えを持つ神だ。

 なのにこの男は言い訳ばかり。盗賊に属した時点で手を下したかは関係ない。仕方なく盗賊になるぐらいなら飢えて死ねばいい。

 

「三つ、墓穴を掘りなさい」

「ど、道具がない………」

『オレガ造ッテヤロウカ?』

「必要ないわよぉ。だって、あなたには母親からもらった両手があるでしょう?」

 

 荒野を素手で掘れってか。

 案の定男の爪ははがれ皮膚はボロボロになっていった。やがて一晩かけ三人の親子が埋葬された。

 

「こ、これでいいのか?」

 

 その言葉を最期に男は死んだ。

 

「さてとぉ………ここからは歩くことにするわぁ。今度はフユノがわたしに乗って良いわよぉ」

 

 俺は体のサイズを子猫ぐらいに変えるとロゥリィの頭の上に乗る。ロゥリィは満足したのかルンルン♪鼻歌を歌いながら歩き出した。

 

 

 

 そして正午。

 俺は目に映った光景を唖然と見ていた。

 

「見てフユノ、馬もないのに動いてるわぁ」

 

 何故だ?何故……自衛隊がここにいる?

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