亜神と龍 作:自衛隊隊員A
炎龍による襲撃で生まれた身寄りのなくなった子供や老人、怪我人は自衛隊が保護するらしい。
村人達にそんな余裕はないからだ。
まあ仕方ないかな?人間は何時だって他人より自分を優先する。人を助けるのは余程の善人か助けられる余裕のある奴だけ。生物として正しい。
「「「「………………」」」」
見られてるなぁ。特に黒髪の女は完全に警戒してるな。ま、山消し飛ばしたりしたしな。
敵対したときの脅威を考えてるんだろうな。自慢じゃ無いが警戒するだけ無駄だと思うぜ?
俺ほぼ不死身だし、水爆でも生きてるだろうし。放射能や毒も効かない。仮に気分で眠ったとして、その間に閉じこめたとしても檻の元素を吸収したり形を変えたり、もしくは二次元や五次元に移動して抜け出ることも出来るしな。
「さっきのアレは魔法?」
『ン?ナンダコノチビ』
「ちびじゃない。レレイ。アナタの大きさが変わったのは魔法?」
『生憎オレハ魔法ハ使エナインダ。知識ヲモッテイルカラトイッテ全テノ人間ガ魔法ヲ使エルワケジャネエダロ?』
「つまり、知識はあると?」
『…………サアナ』
もちろんあるぞ。それこそ魔法が生まれたばかりの時代から魔法が全盛期だった頃の知識まで。だがまあ、教えてやる義理はない。
『テイウカオレガ喋ッタコトニハ驚カナインダナ?』
「…………あ、本当だ。喋ってる」
反応おせぇよ。
と、今度はじいさんが俺を見てワナワナ震えている。なんだ、年か?
「ま、ま、ままま、まさかアナタは………人に言葉や知恵を与えたと言われるエンシェント・ドラゴン!?」
エンシェント・ドラゴン?聞いたことあるぞ。人々に火の扱い方を教え、家の建て方を教え、、言葉を教えたとされる龍がいると言う伝承。とっくに廃れた伝承なのかと思っていたが、魔導師は『魔』に導かれる者。そう言うある意味では異教の伝承を調べる者もいるのか。
『リュウ違イダ。オレハ人ニ言葉モ知恵モ授ケテイナイ。マア英知デアルコトハ否定シナイガ』
したことと言えば哺乳類の天敵ぶち殺したり数を減らさせたりして人類の誕生を早めたぐらいだ。
まあたまに俺の予想以上の結果も起こったりしたが。
お、アルヌスが見えてきた。
『因ミニ、オレノ食事ハ用意シナクテモイイゾ?』
俺は自衛隊の男、伊丹に伝えロゥリィの頭の上に戻る。
『ンデ、コレガアノ馬ノイナイ馬車ヲ動カスエンジンノ原理ダ』
「……理解、しきれなかった」
保護することになった少女が連れてきた小さなドラゴンが別の少女に車の原理を教えている。
少女は一部理解できてもやはり理解出来ない部分もあるらしい。特に、エンジンに空気を入れる理由がわからないらしい。ドラゴンは酸素だ何だと教えているがそもそも酸素とは何か少女は知らない。
「………あのドラゴン、何者なんですかね?」
「フユノリュウって種族らしいぞ?略してフユノ」
「いえそう言うことではなくて」
黒川の言葉に伊丹は適当に返すが面倒くさいからではなく現実逃避だ。あのドラゴン、フユノは明らかにこの世界の知を上回り伊丹達の世界に匹敵する知を持っている。
あれだけの力を持ち知性も人並み。今時のRPGのボスキャラでも居ない。
『次ニ蛍光灯……光ル棒ノ仕組ミダガ───』
そして、難民達の住居が完成した。
ロゥリィは面白くなかった。フユノは最近、会ったばかりの少女に付きっきりで何かを教えている。
生憎ロゥリィにはその少女より頭が良いわけではなく、少女ほど探求心があるわけでもない。話の途中で寝てしまう。
「あ、ロゥリィさん。住居が出来たので集まってください」
「はぁい」
集まった中にはフユノもいた。フユノはロゥリィに気づくとロゥリィの頭に移動して、ロゥリィは少しだけ満足した。
「はーい。集まってくださーい。名前登録しまーす」
ようは自己紹介しろということだろう。
「儂はカトー・エル・アルテスタン。こっちはレレイ・ラ・レレーナ」
「私はコアンの森のホドリューが娘、テュカ・ルナ・マルソー」
「暗黒の神エムロイに仕えるロゥリィ・マーキュリー」
『フユノリュウ。名前ハ持タナイカラフユノリュウデモフユノデモ好キニ呼ンデクレ』
その夜、難民達は一つの部屋に集まることにした。
『……ロゥリィ、苦シイ』
「~~♪」
すっかりご満悦のロゥリィの膝の上で抱きしめられるヒト種の子供程度のサイズになったフユノ。実際は苦しくはないのだが気分で愚痴っているだけだか。
「彼らには何から何まで世話になってしまった。生活費はどうにかしたいが……年寄りと怪我人と子供ばかりじゃなあ」
「丘の兵隊に身売りするしかないかも……」
『丘ノ周リノ翼龍カラウロコヲ剥ギ取ッタラドウダ?自衛隊アレニ興味ガナイラシイ』
そして、難民達が翼龍の鱗や爪を取りに行っている間。俺は自衛隊のある女と茶を飲んでいた。
「……食事はしないんじゃなかったんですか?」
『アアソウダ。「デキナイ」ノデハナク「シナイ」。味覚ヲ造レバ味ヲ楽シムコトガデキル……』
「自分の体を、そうまで変えられるんですか?」
『大キサヲカエラレルダケカト思ッタカ?アメェヨ。オレハ全能。前撃ッタブレスダッテ、電子、重イオン、陽子ナンカヲ加速サセテハナッタンダ。フツウノリュウニハデキナイコトダ』
「それって……荷電粒子砲?」
『博識ダナ』
あ、顔が引きつった。
『ソノ気ニナレバ核融合モ重力ヲ一点ニ集中サセタ疑似ブラックホールモデキルゾ』
「アナタは神か何かですか………」
『オレニソンナコトヲ聞キニキタノカ?』
「あ、いえ………実はテュカの事で───」
『ソイツハパーソナリィティ障害ダナ』
「……葬送の一環ではない、と?」
『ソンナ葬送見タコトモ聞イタコトモナイナ。事実オレガ昔殺シタ妖精種ノエルフノ家族モソンナ葬送ハシテナカッタ』
「経験がおありなんですね」
『向コウガ勝手ニオレヲ敵ト判断シタンダ。家畜モ同胞ニモテヲダシテナイトイウノニナ』
まあ近くに自分をいつでも殺せる生物がいて、安心しろと言うのは酷なのかもしれない。天敵がいなくなって数千年の時点でその辺はもう理解できなくなっちまったからな。
「だとしたら、彼女を救うには………」
『救ウ?希望ニ満チアフレタ嘘ヲ絶望ニ染マッタ真実デ壊スノガカ?テュカハ父親ヲ生キテルモノトシテ扱ッテイルカラコソ今ノ状態ナンダ。下手ニ真実ヲ話シタラ壊レルゾ』
「そうならないためにも……!」
『笑ワセンナ小娘。感情ッテノハオ前ラガ思ッテイルヨリ脆クテ複雑ナンダ。オレデスラ把握シキレナイホドニナ。セイゼイ数10世紀シカ歴史ヲモタナイオマエラガ把握シキレルハズガナイダロ』
俺の言葉に黒川は言葉を詰まらせる。精神医療だ何だの言われているが人間が知っている精神なんてのは見てきた反応だけ。一度こういう例があったからと言って全ての存在が同じ方法で救えるわけでもない。
「何か、無いんでしょうか…」
『ヨウハエンリュウガ父親ヲ殺シタコトニタイシテ恐怖ヲ感ジテンダ。テュカガエンリュウヲ殺セバアルイハ………モシクハ記憶ヲ消スカアトハ──』
『──テュカノ父親ヲ生キ返ラセルトカナ』
「ッ!?」
黒川は目を見開き俺を凝視する。その目に浮かぶのは警戒ではなく恐怖。
『……………冗談ダ。忘レロ』
人を生き返らせることは簡単に出来る。ほら、人間のレシピも錬金術師がでる漫画であったろ?
あれ、構成する元素だっけ?まあとにかく、人体を作り生命活動を行わせ後は魂を埋め込めばいい。魂が見つからないなら記憶を埋め込めば終わり。感情を作るのは記憶だからな。
『デモ流石ニ、生キテルヤツヲ復活サセルノハムリダナ』
それは単に分身を生み出しただけだ。