レベルをもつモンスターとランクをもつエクシーズモンスター。その光の星と黒き星は決して交わらぬ存在だと世間の思考は定着していた。
しかし今、そんな概念がたった一人の補習授業を賭けた遊戯で覆される事となる。
『覚醒の幽鬼うさぎ』
闇 ☆☆☆☆★★★★ ATK0
「…ゾディアック…召喚…」
目を丸くして遊蒔に、そのゾディアック召喚により召喚されたモンスター…凍えるような冷徹な瞳を宿し、吹雪を背景に現れた幼い容姿のモンスターは、驚きを喜ぶように微笑んでいた。
まさか、俺以外にゾディアック召喚を使う奴がいたなんて……無敗の教師ってのは、こいつのおかげなのか?……くっ、怯んでる場合じゃない!今はこの現状を何とか___________。
「遊蒔……さん?」
「私は、覚醒の幽鬼うさぎでMM
……なに?
光竜騎士の攻撃力は現在3100だぞ!?攻撃力0のモンスターじゃ……。
「覚醒の幽鬼うさぎの効果を発動。このカードが戦闘を行う時、相手モンスターの攻撃力守備力を合計した攻撃力となる……よって」
「……光竜騎士の攻撃力は3100、守備力は1000……4100になるってのかよ?!」
「やれ、覚醒の幽鬼うさぎ」
パワーアップした覚醒の幽鬼うさぎが幽霊体のような兎を操り、光竜騎士を包み込む。そして、まるで吸収していくようなオーラが光竜騎士を弾けさせ、最後には吹雪で光竜騎士は破壊された。
「光竜騎士ッ!…ぐあっ…!」
月邑 遊蒔 LP4000→LP3000
強烈な突風に覆われ、遊蒔は教室の机や椅子と共に吹き飛んでいく。そして、集結した物の塊が遊蒔を大きく強打し、壁に押し付けられるように終結する。
「……遊蒔さんっ!」
「…かはっ……。大丈夫、だ。それより、雪奈!絶対にこのデュエルにそれ以上近づくな…!このデュエル…痛みがリアルすぎる…」
「…なんでですか?!ソリッドビジョンを使ってるといっても…遊蒔さん!血が!」
雪奈に言われて漸く額に血が流れているのに気づく。
今は気にしている場合ではない。今、気にするべきなのは、あのゾディアックモンスターをどうにかすることだ。戦闘を行えば攻撃力と守備力を奪われ、必ず戦闘では勝てないという結果になる。
(…といっても、今、相手を効果破壊できるカードはない…やっぱり使うしかないのか…)
「私はカードを3枚伏せてターンエンド」
英語教師/3
「…俺のターンドローっ!」
月邑 遊蒔/5
「よし、俺は魔法カード『MM リバイバル』を発動!自分の墓地に存在するランク3以下のMMエクシーズモンスターを対象とし、フィールド上に特殊召喚する。そして、更に自分の墓地からMMモンスター1体を特殊召喚したエクシーズモンスターのエクシーズ素材に出来る!戻ってこい!『MM
地面に描かれた魔方陣がまるで時間を巻き戻すように紫の光を天へと放たれ、光竜騎士が天より甦った。
「そして俺は、『MM ドラグーン・レイ』を通常召喚!…準備は整った。先生!これから俺が行う行為には目を瞑ってくれることを願うよ___________俺は、ランク3の『MM 光竜騎士』と、レベル3の『MM ドラグーン・レイ』で、星座を設立!」
『MM ドラグーン・レイ』
光 ☆☆☆ ATK1600
遊蒔の声により、光竜騎士とドラグーン・レイが黒い星と光の星となり、6つの星が地面に描かれる。そして、星々が天と地を交ぜるように空間を捻らせ、白と黒の渦を顕現させていく。
そしてそれは今、爆発するように…。
「《月の影に潜みし孤高の竜…月下の翼で今ここに原点となれ!》___________【ゾディアック召喚】!来てくれ、『
『月影竜 クロノセレネ』
闇 光 ☆☆☆★★★ ATK2500
「…遊蒔さん…でも、『覚醒の幽鬼うさぎ』は戦闘を行うときに攻撃力と守備力を合計した数値となるのですよ?!…いくら、攻撃力の高いモンスターでも…」
「まぁ、見てな。俺は『クロノセレネ』の召喚時効果を発動!フィールド上に存在するクロノセレネ以外の表側のカードは全て裏側となり、既に裏側のカードは全て破壊する!___________ムーンライト・オブ・シャドウッ!」
遊蒔の指示でクロノセレネが吠え、その雄叫びと輝きで、全てカードへ影響を与える。クロノセレネ以外の表側で存在するカードは『覚醒の幽鬼うさぎ』のみ……よって、裏側となるだけの効果が適応され、既に裏側の伏せカードは破壊される。
「そして破壊したカード1枚につき、そのプレイヤーはデッキから1枚ドローし、クロノセレネの攻撃力は1枚×100ポイントアップする!」
クロノセレネ
ATK2500→2800
「でも、裏側でも攻撃すれば表側に…」
「俺は魔法カード『エクシーズ・オーバーレイパワー』を発動! このターンで墓地に送られたエクシーズ素材を持つエクシーズモンスターを対象として発動!フィールド上のランクを持つモンスターに、このターンのみ装備カードとなり、【守備表示モンスターへの貫通効果】と【このモンスターの攻撃宣言時、このカード以外の効果を発動できない】効果を与える!」
「…な、ん…だと…」
「これで、クロノセレネの攻撃力分の2800ポイントのダメージを受けてもらう!___________貫け!クロノセレネ、【月光のインナーオリジン】ッ!!!!」
「…ぐぁぁぁぁあ___________!!!!」
英語教師 LP2800→LP0
【winner 月邑 遊蒔】
「やりぃ!補習なし___________そんなこと言ってる場合じゃないな!逃げるぞ!雪奈っ!」
「…もう消えてますよ?炎」
「………帰るか」
「虚しい勝利ですね。帰りましょう」
「…テレビ終わってるな…確実に」と呟きながら、何故かシンミリとした空気の中、教室を退室した。
***
「『覚醒の幽鬼うさぎ』……俺のクロノセレネと同じく、レベルとランクを併せ持つゾディアックモンスターか。英語教師の態度が変わったのが気になって奪っておいたが…俺が持っても何ともないんだな」
月邑家、寝室。
夕食を済ませて夜の9時。
遊戯王のカードを広げた机で、遊蒔は2枚のカードを見ていた。言葉通り、それはレベルとランクを持つモンスター…星の力を備えるゾディアックと呼ばれるモンスターカードだ。一般では公開されていない種類であるゾディアックカードは、遊蒔自身もクロノセレネ以外を見たのは初めてであった。
「………そういえば、俺がクロノセレネを使ったのって初めて…だったはずだよな。………なんで使い方がわかったんだ?…見たから…なのか?」
なんだか体が重い。
そう思った瞬間、遊蒔は何故か眠りに着くのだった。