____________君は既に負けてるよ?
「負け…か」
今、気づいたのだが…ベッドから落ちていた。
遊蒔の敗北から1日が過ぎ、現時刻午前7時。
案外早く起きてしまったらしく、まだ目蓋は重い。頭も少し痛い…ような気がする。
そんなこんなの10分が経過し、怠い体を無理やり起こさせる。立ち上がった遊蒔を待っていたのは、机の上で光るクロノセレネだった。
「…悪い。お前を使いこなせなかった」
カードを持ち、クロノセレネへと語りかける。
勿論、返答などなく、感じたのは
「お目覚めですね、マスター」
***
「
「…俺が聞きたい」
寝起き確定のパジャマを着た瑠璃色の瞳に黒髪の少女____________『月邑
そしてその妹が驚愕している表情の先に写る存在____________名前は『クロ』。犬のような猫のような名前なのだが、頭のネコミミを除いて容姿は歴とした人間で、言語は忠実性たっぷりな口振りを使う。髪質も名前通りの黒髪ロング、そして謎の出現生命体あり、今もまた主の前で手を組んで立っていた。
「ユウジ様の妹様ですね。此度の一件からユウジ様をマスターと認識しました『クロ』です。宜しくお願いします、ミコト様」
「…へ?あ、ども。此方こそ不甲斐ない兄がお世話に____________って、そんなんじゃないよね?! 遊にぃが主?!」
「yes、ユウジ様はクロのマスターです」
「…遊にぃ、内はペット禁止なんだよ?」
どう見たってペットじゃないだろ?!____________とは、突っ込まず、取り合えず朝食を終え、学校への身支度を済ませていく。朝食も身支度も全てクロが行い、なんだか王様にでもなった気分であった。
しかし、家を出る前に事件は起きた。
「クロはお留守番ってことでいいな?」
「駄目です。ユウジ様と離れることはできません」
「……いや、ネコミミメイドとかヤバイから。大いにヤバイから。特に雪奈がヤバイから」
そう、学校へ着いていくと言い出したのだ。
自宅では巫音と遊蒔以外に人がいない為、巫音の口を封じておけば情報は広がらずに済む。しかし、学校など外に出向けば公開処刑だろう。
「問題ありません。私は特定の人物にしか見えませんので、マスターは精霊というのを御存じですか?」
そんな問いを考えながら巫音と共に自宅を出る。
精霊…聞いたことはあるが、そこまで詳しいわけではない。幽霊に近いものだとか、何かの守り神だとか。そんなことを口に出してみる。
「精霊とは、力の集合体です。マスターの言った守り神や幽霊…信仰、傲慢、感情、怨念などの力を持つ空想的力の結晶といえます」
「へぇ…。ん?それと特定の人物にしか見えないってのは関係性あるのか?」
「あります。マスターを基準とする人間の質という枠内である程度のラインを超越出来れば、我々精霊を確認することができます」
なるほど…ということは、巫音も越えているってことになるのか。すげぇな…もしかしたら、既に見えていたのかもしれないとなると我ながら天賦の才能と言えよう。
その天賦の才能様が背後から睨んでおられるのだが。
丁度、学校の正門辺りで巫音は立ち止まり、振り返る遊蒔に対して言葉を溢す。
「ねぇ、遊にぃ…つい最近なんだけど、【クロノセレネ使ってるよね?】」
「……少し事情があって、な。大丈夫、他の人にはバレてない程度だから」
「…でも、負けたんでしょ?」
「____________っ!」
正門付近で話し合う2人。
クロノセレネや負けたなど、このデュエルキャッスルにおいて、どうでもいいことだ。そしてましてや兄弟の会話だ。聞き取る必要はない…が、遊蒔には反論したくなるほど、受け流すことは不可能だった。
「伝わってくるの…遊にぃの痛みが……私の『
「…悪い。もう負けないから…絶対に」
「……うん。じゃね!遊にぃ」
最後は最大の笑みで走り去る巫音。
『NNo.』とは、巫音が持つ恐らく世界に1つだけのカード。そして、ヌメロン=アゾット・ヨハンとは____________クロノセレネと同じく、ゾディアックだ。
もしかしたら共有しているのかもしれない。
そんなことを考えながら遊蒔は教室へと向かった。
***
「俺は『MM
「ぐぁぁぁあ____________!!!!」
最終授業…デュエル対戦。
連続5連勝した者から終わりにできるルールで、遊蒔のクラスは体育館を使用し、デュエル大会となっていた。
現在4連勝。
遊蒔は、ふぅ…と息を整え次の相手を探す。
すると、目線が混じり会うように雪奈と合う…が、それは逸れるように崩れていった。
(まだ怒ってるのか…まぁ、嘘ついてるんだし、そりゃそうなのかもだが…)
「遊にぃ」
不意に声がかかる。
というか、この呼び方をするのは1人しかいない。振り返ると、やはり巫音であった。
「此方は早く終わったの。ねぇ、遊にぃ!私とやらない?相手の制限はないんでしょ?」
「…ランキング17位様が55位に挑むのかよ…笑えねぇ冗談なんだが」
「いーじゃん!勝負は時の運!ねぇ、いいでしょ?」
「…はぁ、俺の5連勝が……」
そして、そんなのはお構いなしに…。
「「デュエル」」
あまり気の乗らないデュエルだが、遊蒔は5枚の手札を目にして目を細める。それは紛れもなく、あのときの…サイトとデュエルした時と、ほぼ同じ手札であった。
「遊にぃ?」
「…あ、悪い。先行は貰う____________俺は『MM ホワイトリザード』を召喚!効果で1枚ドローし、相手に1枚捨てさせる!俺は、一番右のカードだ」
「じゃー私も!」
「俺は、カードを1枚伏せてターンエンド」
『MM ホワイトリザード』
光 ☆☆☆ ATK1000
今伏せたのは『MM チャンス』…あのときは破壊されて墓地効果しか発動できなかったが、これは自分の『MM』モンスターが破壊されたとき、デッキから攻撃力1500以下の『MM』カードをサーチできる。
(さて…ランキング17位様はどうくる?)
月邑 遊蒔/3
「私のターン、ドロー____________私はフィールド魔法カード『エクシーズ・ゲート』を発動!」
巫音の放ったカードがフィールドをみるみる変化させていく。水色の結晶のようなデータが幾つも天へと流れ、まるで電脳空間のような風景を作り出した。
「エクシーズ・ゲートは1ターンに1度、デッキから『エクシーズ』、『ナンバーズ』と名のついたモンスターを1体、効果を無効にして特殊召喚できる____________私は『エクシーズ・チアガール』をデッキから特殊召喚するね!」
『エクシーズ・チアガール』
地 ☆☆☆☆ ATK1400
光の鼓動が木霊し、1つの力がデータのゲートより現れる。そのまんまチアガールの格好をした金髪のモンスターは、フリフリのスカートを揺らしながらウインクした。
「そして手札からもう1枚魔法カード『エクシーズ・レセプション』を発動!自分のモンスター1体を対象として、同じレベルのモンスターを手札から効果を無効にして、特殊召喚!来て!『エクシーズ・パンダック』」
『エクシーズ・パンダック』
地 ☆☆☆☆ ATK1800
モノクロのパンダ模様のアヒルが見事な羽ばたきを見せながら飛翔する。
「初ターンで召喚権を使わずレベル4のモンスターが2体……やっぱ凄いな…」
「いっくよー!私は『エクシーズ・チアガール』と『エクシーズ・パンダック』でオーバーレイ!オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚____________《洗礼された原形の魂、希望の段階を踏む使者よ!今こそ高鳴る真実を述べろっ!》『NNo.39
ナンバーズ……それは、伝説と言われたエクシーズモンスター。ニヒリティとは虚無を示す言葉…何故巫音に宿ったのかは不明なようにそれも知ることすらできぬ虚無の数字。
神々しい黄金の鎧を纏う化身。
伝説のナンバーズの1つ『希望皇 ホープ』という基準をねじ曲げた原点的な存在。水色の波動を放ち、巨大な剣1本で戦慄を砕く威圧を放っていた。
『希階皇 ホープ・ディフォルト』
光 ★★★★ ATK2500
「ニヒリティ…ナンバーズ…」
「いくよ!遊にぃっ!私はホープ・ディフォルトで『MM ホワイトリザード』を攻撃____________《ホープ剣・ディフォルトスラッシュ》ッ!!!」
「ぐっ…ホワイトリザードっ!」
月邑 遊蒔 LP4000➡LP2500
「罠発動!『MM チャンス』ッ!デッキから『MM ブラックリザード』を手札に!そして破壊されたホワイトリザードの効果でデッキから『MM ブラックリザード』を特殊召喚!」
「さっすが、遊にぃだね。メインフェイズ2!私は『希階皇 ホープ・ディフォルト』のモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使って、遊にぃは次のターン、バトルフェイズを行えないっ!」
「なるほど…警戒は怠らないってか?」
「うん。遊にぃは臨機応変なデュエルをするからね?念には念をだよ。私はこれでターンエンド」
月邑 巫音/3
「俺のターン、ドローッ!」
現在、遊蒔のフィールドには『MM ブラックリザード』のみ…。
手札が5枚ある現状だが、巫音のモンスター『希階皇 ホープ・ディフォルト』の効果により、このターン遊蒔はバトルフェンズを行うことが出来なくなっている。
(次のターンも使われれば、俺は次も攻撃ができない……かといって、なにもしなければ永遠と攻撃が続くのかよ…ま、それなら)
「次に繋がる行動を取ればいいだけだよな____________俺は魔法カード『
「素材もなしにエクストラデッキからモンスターを?!」
「俺が呼ぶのは『FMM アビスライト・ルナ=ドラゴン』ッ!!!」
異次元のゲートが空間をねじ曲げて素材のいらぬ命を造り出す。遊蒔の目の前には紛れもなく、アビスライト・ルナ=ドラゴンが現れた。
『FMM アビスライト・ルナ=ドラゴン』
闇 ☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK3000
「……いいね、いいよ!遊にぃっ!面白くなってきた!」
「あぁ、全力で楽しんでやるさ!このデュエルッ!」
「うん、さーこいっ!」