八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第十二話

はぐれ12 ヴァンパイア

 

『──ようやく世界が動くときがきた。キミも手伝ってくれないか?』

 

「あら曹操?それについては前にも言ったはずよ。彼(・)がそちらにいるのなら考えてあげると」

 

『ああ、確かに聞いた。だか、こちらもこう言ったはずだ。彼が加わったとき、もう一度声をかけると』

 

「!……そう。いるのね、そっちに」

 

『いるよ。3回目くらいだったかな。彼が僕らの仲間になったのは』

 

「いったいどんな手を使ったのかしら?彼、一度決めたことはよほどのことがない限り曲げないはずだけど」

 

『それについては俺からはノーコメントだ。知りたければ直接聞くといい』

 

「そうね。そうするわ」

 

『それで、こちらに来る気はあるか?』

 

「そうね。前言った条件は満たしてるみたいだし。……いいわ。入ってあげる」

 

『そうか。それはなにより。すまないがこちらの隠れ家にはまだ招けそうにない。しばらくはいまのまま《神の使者(ヘヴン・アポストロ)》として行動して欲しい』

 

「それは別に構わないわ。でも一言あるのでなくて?」

 

『ん?なんのことだ』

 

「わたくしがわざわざあなたの組織に入ってあげるのよ!もっと喜びなさい!そしてわたくしに愛を捧げるといいわ!」

 

『……そう、だな。確かに、キミほどの人物がこちらについてくれるんだ。愛を捧げるかはわからないが、俺たちはキミに感謝しよう』

 

「そうよ!それでいいのよ!それから、わたくしがそちらに着いたときにパーティーは開きなさい!これは命令よ?わかる?」

 

『ハハハ。わかった。キミが来たときは盛大なパーティーを開くとしよう。それでどうだい?』

 

「えぇ、それでよくってよ!さてと、わたくしも準備をしなければならないから今度はそちらの準備が整ったときに連絡なさい」

 

『ああ了解だ。……ではな』

 

「えぇ、今度は顔合わせの時に」

 

 

 

とある男から連絡を受けた影は月の光によって姿を映し出す。

 

そこには幻想的な神々しい女性がうっとりと頬を紅く染めて立っていた。

 

プラチナブロンドに淡い桜色がかった長いウエーブの髪は月の光を反射して女性をさらに際立たせる。

 

足元には無数に骸が転がっており、その場違いな女性はとても目立っていた。

 

女性の立つ地は冥界でも有数の絶景の観れる地として有名で、悪魔が絶えることなく訪れていた。

 

だが、周囲には悪魔どころか生物は存在しない。

 

すべて殺したから。

 

それは誰が。

 

その神々しい女性が。

 

白かったであろう手は先ほどまでいたであろう生物の血で赤く染まり、血がしたたっている。

 

カツンッ

 

先ほどまである男と通じていた機械は血がべっとりと付着しており、もう使えなくなり骸の転がる血の海に捨てる。

 

月の光が女性の顔を照らし出し、その顔が見え始めた。

 

悪魔の血で顔どころか体全体が紅く染まり、それに女性は肩を抱き体を震わせる。

 

恐怖からではない。

 

歓喜からだ。

 

もうすぐルシウスに会える。

 

自分の持つすべてを捧げてでも添い遂げたい愛しい男。

 

体を紅く染める血は暖かく心地が良い。

 

女性は笑う。

 

誰もが見惚れてしまう笑顔で。

 

「あぁ、楽しみねルシウス。今度こそわたくしを愛して。わたくしだけを。わたくしはもっとあなたを愛すから」

 

女性はそう言うと次元が歪み姿を消した。

 

 

 

冥界のとある地に血の花が咲き、そこは美しくも恐ろしい血薔薇(赤バラ)の園となった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

キリスト教

 

カトリック教会総本山サン・ピエトロ大聖堂を冥界での任務を終えた女性が微笑を浮かべて歩いていた。

 

彼女が微笑を浮かべて歩いているのはある目的を果たしたから。

 

彼女は聞いたのだ。

 

ある少女が話していた、彼女にとって最優先事項にあがる情報を。

 

『聞いてよみんな!次の任務にルシウスくんが来てくれるんだって!』

 

『ルシウスさまが⁉︎なんて羨ましい!!ねぇイリナ、変わってくれない?』

 

『うんうん。この前の任務でもルシウスさまに会ったそうじゃない!あなただけズルいわ!』

 

『イヤよ!それに今回の任務はミカエルさま直々の使命だもの。無理よ』

 

『イリナばっかりズルい!前だってルシウスさまの部下だったから私たちよりずっと一緒にいるのに』

 

『そうよ!少しくらい私にもルシウスさまと一緒にいられる時間が欲しいわ』

 

『イリナも私たちの気持ちわからなくもないでしょう?』

 

『それは……そうだけど。でも、私が選ばれたんだもん!ぜったいに譲りたくないもん』

 

『はぁ……そんな泣きそうにならなくても。それで、今度はどこ行くの?』

 

『前の任務でいったところ』

 

『前の任務でって駒王町だっけ?日本の』

 

『うん』

 

『日本かぁ。遠いなぁ。ヨーロッパだったらルシウス様への愛で飛んでいったのに』

 

『会いたかった。いえ、一目でもあの麗しい姿を拝見したかった』

 

『そ、その私もルシウスくんに戻ってくるよう説得してみるから』

 

『約束よ』

 

『うん。無理かもしれないけど、頑張ってみるわ』

 

『あれ?そういえばなんでイリナ、ルシウスさまが来るの知ってるの?』

 

『……』

 

『目をそらした……っ!まさか、連絡先を知ってるの?あ、また目そらした!しってるのね⁉︎教えなさい!いえ、教えてください!』

 

途中から彼女も乱入してやろうかと思ったが、最も求めていた情報を手に入れることができたから自粛することができた。

 

日本。

 

駒王町。

 

そこにルシウスが来るということを。

 

それを知った彼女はすぐさま行動に移した。

 

教皇のところまで行き、任務報告をし、駒王町の任務にわたくしも参加すると言った。

 

どこで知ったのかと聞かれたが、そこは彼女の万能の『言』で誤魔化せる。

 

その任務につく『神の使徒(ヘヴン・アポストロ)』はすでに選出済みとわかると、今度は選出されたうちの一人、第十一位『聖女(オルレアン)』エミリア・ダルクの元に向かった。

 

エミリア・ダルクは気が弱い。

 

だから、少し脅すとすぐに譲ってくれた。

 

彼女は笑顔でエミリアにお礼を言うとその場から出て行くと、後ろからうぅ……弱々しい声が聞こえてきたが無視をした。

 

そして、笑顔でサン・ピエトロ大聖堂を歩くのだ。

 

これからの行動をシミュレートして。

 

──本当に楽しみね。

 

これから起こりうる災厄に。

 

これから起こりうる戦争に。

 

これから満たされる絶望に。

 

一体化け物たちはどんな声で泣くんだろう。

 

「本当に、楽しみ」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

《本当に良かったのかの?》

 

ルシウスの頭に声が響く。

 

(なにが?)

 

《『禍の団(カオス・ブリケード)』とやらに入ったことじゃ》

 

(なにか問題でもある?)

 

《あるから聞いとるのじゃろう。もし主様がそれに属しとると天界の者たちにバレてしまえば、主様、聖人(ホ・ハギオス)では無くなり、それこそ復讐を果たせなくなるぞ》

 

ルシウスの頭に響く声の主、八咫烏の言っていることは正しかった。

 

聖人(ホ・ハギオス)は天然物では無くなり、神あるいは熾天使(セラフ)によって祝福され刻印が刻まれた者。

 

よって神あるいは熾天使(セラフ)と敵対しようものなら即座に刻印は消滅、ただの人間に成り下がるだろう。

 

だが、

 

(そう成る前に別の儀を執り行うよ)

 

抜け道はある。

 

それは禁忌の秘術。

 

《まさか、あれをおこなうのか?》

 

(いまはしないよ。でも、そうだな、やるとしたら曹操たちが表舞台に立ったらかな。その時にはバレるかもしれないし。それまでは適当にリアス・グレモリーたちを観察してるよ)

 

《……そうか。妾は別の道もあると思うがの》

 

(別の道?)

 

《そうじゃ。主様はアーシア・アルジェントが好き。そうじゃな?》

 

(そうだね)

 

《ならば、復讐などせずアーシアと一緒に暮らせば良いのじゃ》

 

(僕も考えたことあるよ。アーシアとふたり、幸せな日常を。でもそれは無理だよ。アヤメ(・・・)だって覚えてるだろ?)

 

《……あの時のことかの?》

 

ルシウスの怒りに満ちた声にアヤメと呼ばれた八咫烏が悲しみを含んだ声でつぶやく。

 

(そうだ。父さんと母さんが殺された時、僕は誓ったんだ。『僕が仇を討つ』って。他の誰でもない僕が討つって。だからやめられないよ)

 

《復讐を果たした後に幸せは無くなっておるやもしれぬのにか?》

 

(うん。復讐を果たして幸せになれないならそれはそれでいい。もちろん幸せになるにこしたことはないけど)

 

幸せになれるならなりたいと言うルシウスにアヤメは提案する。

 

《ならば、アーシアのいるリアス・グレモリーと協力関係になればよかろう。主様の戦力なら無下にもしまい》

 

(僕に悪魔と手を組めって?)

 

《そうじゃ。主様が敵視しておるのは悪魔ではなく堕天使じゃ。何も問題なかろう》

 

(いやいやアヤメ。何をいってるの?いま、悪魔は堕天使の『神の子を見張る者(グリゴリ)』と天界の『熾天使(セラフ)』と同盟を組もうとしている。もしリアス・グレモリーと手を組んだとしたら僕は堕天使を受け入れないといけない。それは無理だ)

 

《じゃが、それも間接的にじゃ。主様は3大勢力にいまは属しておらん。堕天使との関わりもほとんどないじゃろう。それならば間接的に関わるとしてもまだこちらの方がテロリストになるよりか良いはずじゃ》

 

(確かに曹操たちは神や魔王を殺すためにならなんでもやるだろう。でも、それはすべて人間の為だ。僕からしたら彼らはテロリストじゃないよ。リアス・グレモリーたち悪魔といった異形の方が害悪だ)

 

《アーシアから嫌われるかもしれんぞ?》

 

(それでもだよ)

 

ルシウスの言葉に呆れた様子でアヤメはため息をついた。

 

《……そうか。ならば妾は何も言うまい。妾は主様について行くだけじゃ》

 

(ありがとうアヤメ)

 

《なに、妾と主様の仲じゃ。それに付き合いの長さだけならもう10年になる。主様のことは誰よりも知っておるのじゃからの。今回のことも妾がなにを言おうと変わらんこともわかっておったよ》

 

(そうだね。もう10年だ。僕のことならなんでもわかるね)

 

《そうじゃ。それで向かうのか?駒王の地へ》

 

(うん。曹操にも言われてるし、イリナにも行くって連絡したからね。はぁ、2日前に日本を出たばかりなのにまた日本かぁ)

 

《妾はとっては嬉しいことだの。日本は妾の故郷じゃから》

 

(あぁ、そういえばそうだね。それじゃあ、アマテラスに挨拶にでも行く?)

 

《フハハハッ!それは良い提案だが、やめておこう。主様も妾も滅されかねんわ》

 

(どうしてアヤメはともかく僕がアマテラスに滅せられるの?)

 

《妾がこの神器(セイクリッド・ギア)に封印されておるからじゃ。それに主様が戦をふっかけそうじゃしな》

 

(神器(セイクリッド・ギア)については僕は関係ないんじゃないかな。まぁ戦ってみたいとは思うけどね。いい勝負できるかもしれないし)

 

《たわけ、無理に決まっておろう。天照様は先日のコカビエルなどあくび混じりで滅しておるわ。主様が戦ったところで、5分が限界じゃな》

 

(5分は保つんだ。ならあと少しだね)

 

少し戦いたそうなルシウスにアヤメは忠告する。

 

《……もし天照様に会うたとしても戦ってくれるなよ?》

 

(大丈夫だよ。さっきのはジョークだから。流石に僕もまだ神とは戦いたくない。もう1、2年したらだね)

 

《……妾としては一生戦って欲しくないんじゃが》

 

ルシウスふと視界の端に映った海岸を見る。

 

(まぁ、そんなことはどうでもいいよ。そろそろ終わる頃かな?)

 

《妾にとってはそんなことでは済まないのじゃがな。そうじゃな、もう2時間ほど経ったじゃろうから、もうすぐじゃろうな》

 

ルシウスたちはいま『英雄派』のアジトから離れ、 港町まで来ていた。

 

そこにはルシウス・ランスロットが所有する別荘があり、自然に溢れておりルシウスの気に入っている町のひとつだ。

 

人口はおよそ2千人ほどで町としては小さいが自然に溢れている為とてものどかで平和な町だ。

 

ルシウスがこの地に別荘を建てたのもこの町でいつか好きな人と過ごしたいからといった想いからだった。

 

今回ここを訪れたのは別荘の地下室に保管しているとある武装を取りに来たからだ。

 

『禍の団(カオス・ブリケード)』に入ったからにはいままで以上に危険になると思ったからだ。

 

ルシウスはそう考えてここに来たのだが、正直黒歌とアヤメからすればいままでルシウスが危機に陥ったことなどなく、怪我をしたのも数える程だ。

 

その為、今回武装を取りに戻ったことはあまり意味はないものでは?と思っていたりする。

 

別荘にはランスロット家の使用人ではなく、ルシウス個人が雇ったこの町の娘数人が住んでおり、黒歌もルシウスが教会を抜けるまではここに住んでいた。

 

その為ルシウスよりも黒歌の方が使用人たちとも仲が良く、武装の回収も任せていた。

 

それにルシウスは基本的に人付き合いが苦手だ。

 

両親や兄妹が死んでいったこともあり、あまり人と関わりたくない。

 

そんなこともあり黒歌に任せたのだが、黒歌からしてもそれは好都合だった。

 

使用人たちは皆ルシウスになんらかの好意を抱いていたのだ。

 

だからあまりルシウスを彼女たちに近づかせたくはなかった。

 

黒歌にとってルシウスは主であり弟でありこれはルシウスは否定していることだが恋人だから。

 

ルシウスが海岸を見つめていると後ろから声が聞こえてくる。

 

「お待たせ。頼まれてた武装とってきたにゃん。これでよかった?」

 

黒歌は背負っていたバックを下ろし中から武装を取り出す。

 

取り出されたのはボロボロの枝(・)だった。

 

なんら変哲もないどこぞの木から折られたような枝。

 

長さは50センチもなく、太さも3センチほどだ。

 

黒歌はその枝をルシウスに手渡す。

 

正直黒歌はこれがルシウスの探していた武装のひとつだとは思えなかった。

 

「うん。これで合ってるよ」

 

ルシウスはその枝を受け取り微笑を浮かべる。

 

そしてアヤメはその枝を見て驚愕していた。

 

《……主様。あなたは一体それをどこで手に入れた?》

 

「あぁ、やっぱりアヤメはわかるんだ。黒姉はわかんなかったみたいだけど」

 

「なんのことにゃん?」

 

ルシウスはこの枝の正体に気付いたアヤメに賞賛をおくり、黒歌は突然何が何だかわからなかった。

 

「これはさ。拾ったんだ」

 

《拾った?》

 

「そうだよ。アヤメが封印されて(眠って)いる間にね」

 

《……そんな嘘で騙されると思うたか、ルシウス(・・・・)》

 

ルシウスのふざけた回答にアヤメはルシウスに殺気を放つ。

 

「これは一体なんにゃん?」

 

黒歌だけはついてこれずこの枝がどういったものか問う。

 

《これはひとつの神話を終わらせることのできる最悪の武装のひとつじゃ》

 

それに黒歌は驚く。

 

こんな枝にそんな力があるなんて思えなくて。

 

でも、ふと考えてそれに該当するものがひとつだけ脳裏に浮かんだ。

 

「これは、もしかして……?」

 

《お主が浮かべたものでおうとると思うよ》

 

アヤメの言葉に黒歌は顔を青くする。

 

それは確かに最悪の武装だから。

 

《それでルシウスよ。お主は一体どこでこれを手に入れた?》

 

アヤメは偽ることを許さぬという声音で言った。

 

「……それは、言えない。でも僕は起こすつもりはないよ。それだけは信じて欲しい」

 

《……わかった。信じよう主様》

 

ルシウスの返答から何が何でも言えないという意思を感じ取ったアヤメは仕方なしに聞くのをやめた。

 

「黒姉も信じてくれる?」

 

「私はもともとそんな心配してないにゃん。これがどんなものか知って驚いただけだしね。それに私はルシウスのお姉ちゃんだから、弟のことはどんなことでも信じるにゃん」

 

「ありがとう」

 

黒歌の言葉にルシウスは頬を緩ませ、感謝する。

 

「これで武装の回収はあらかた終わったし、そろそろ行くにゃん?」

 

「そうだね。イリナに聞いたのだと3日後だった気がするしそろそろ行こうかな」

 

《うむ。行くのは良いがくれぐれも天照様のところには向かわんでくれよ。妾も主様も無事では済まんからの》

 

「わかってるよ。僕もまだ死にたくないしね。それじゃあ、しゅっぱーつ」

 

「にゃははー。楽しみにゃん♪」

 

《天照様、どうか妾たちに気付いてくれるなよ。妾はまだ死にとうなにからのう》

 

目指すは駒王の地。

 

様々な思惑が重なり合った闘争の町にまたひとつ、最厄が飛び立った。

 

 

 

 

 

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