八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第十六話

はぐれ16

 

目の前に凶悪な魔力を纏う悪魔がいる。

 

ビリビリと肌に感じる魔力の質はいままで滅してきたどの悪魔よりも高く、想い人と再会して高まっていたものがより高揚とする。

 

──ああ、これよこれ。

 

これだから殺し合い(たたかい)はやめられない。

 

一瞬の油断が、一つの行動が命よりとなる強者との殺し合い(たたかい)。

 

命の危険にさらされた時、身体に走るのは恐怖ではなくとてつもない快楽。

 

それを感じるたびに濡れてしまう。

 

──たまらない、もっと、もっと!わたくしを楽しませて!!

 

目の前の悪魔から繰り出される魔法を紙一重でかわしていく。

 

ところどころを擦り、露出の高かった衣服がさらに大胆になっていく。

 

ほのかに赤く染まった頬に、濡れた瞳、息は乱れ口から漏れる息は艶っぽく、とてもいやらしかった。

 

もしイッセーがここにいたならば露出の多い大胆な服の横から覗く乳房や尻を、その表情を見て鼻血を吹き気絶していたであろう。

 

「前までの威勢はどうしました?先ほどから防戦一方ではありませんか。やはり人間ごときが私たちに勝つことなど不可能なのです。もう消えなさい」

 

カテレアは右手に魔力を集めいままでで1番大きな魔弾を作り出す。

 

それを人間の女に向けると直ちに放った。

 

女はそれを見て、とびっきりの笑顔を見せた。

 

あんなものが当たったら死ぬわね。

 

もう回避は不可能。

 

なら。

 

女は脱力するとある呪詛を紡いだ。

 

『神言』神降ろし。

 

紡いだとたんに女の周りに神力が溢れ出し、天から一筋の光が降りる。

 

女の両の目の下と額に聖痕(スティグマ)が浮かび上がり瞳の色が碧から金へと変わる。

 

カテレアから放たれた魔弾は女の周りに溢れる神力によって弾かれ地上の魔術師たちに降りかかる。

 

勝利を確信していたカテレアは目の前で自分の魔弾を弾かれたことに動揺する。

 

なぜ、弾かれた。

 

あれならば確実に殺せたはずなのに。

 

女の周りの神力が収まるとそこには一柱の神が降臨していた。

 

これが御子。

 

自身の身体に神を降ろしその力を振るう。

 

言葉を紡げば、その通りの事象が起こし。

 

言葉を紡げば、人を操り。

 

言葉を紡げば、災厄とならん。

 

これが御子。

 

神器(セイクリッド・ギア)もなく今代の化け物揃いの中序列3位という上位にまで登りつめた女だけの力。

 

神に愛され、人に愛され、獣に愛され。

 

この世の生きとし生けるものによって愛された女だけの力。

 

『特務機関イスカリオテ』序列第3位『女帝(エンプレス)』メルティリア・クレオパトラ

 

神力を両手に集めるとそこには草木で出来た弓が現れる。

 

それを構え弦を引くとゆっくりと高密度の神力で形成された矢が現れ、カテレアに狙いを定めていく。

 

「楽しかったわ。でも、あなたじゃわたくしは殺せない。わたくしを殺せるのはわたくしだけ。わたくしに勝てるのはルシウスだけなの。それではさようなら」

 

矢から手を離した。

 

それは一筋の光となってカテレアの胸に吸い込まれていき──

 

 

 

 

旧校舎へギャスパーと子猫の救出に来ていたイッセーは目の前に落ちてきたのは

 

「……チッ。やっぱりお前はそっち側だったか」

 

堕天使の総督だった。

 

「そうだよ、アザゼル」

 

まばゆい光を放ちながら、イッセーたちの前に白龍皇が舞い降りる。

 

「いつからだ?いつから、そういうことになった?」

 

「コカビエルを本部に連れ帰る途中でオファーを受けたんだ。悪いな、アザゼル。こちらのほうがおもしろそうなんだ」

 

「ヴァーリ、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』がオーフィスに降るのか?」

 

「いや、あくまで協力するだけだ。魅力的なオファーをされた。『アースガルズと戦ってみないか?』──こんなことを言われたら、自分の力を試してみたい俺では断れない。アザゼルは、ヴァルハラ──アース神族と戦うのを嫌がるだろう?戦争嫌いだものな」

 

「俺はおまえに『強くなれ』といったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言ったはずだ」

 

「関係ない。俺は永遠に戦えればいいだけだ」

 

「……そうかよ。いや、俺は心のどこかでおまえが手元から離れていくのを予想してたのかもしれない。──おまえは出会ったときから今日まで強いものとの戦いを求めていたものな」

 

ヴァーリは自身の胸に手を当て、イッセーに向かって言う。

 

「俺の本名はヴァーリ。──ヴァーリ・ルシファーだ」

 

「…………な、何?……ルシファー?」

 

イッセーの口から言葉が漏れる。

 

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間の間に生まれた混血児。──『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器(セイクリッド・ギア)は半分人間だから手に入れたものだ。偶然だけどな。でも、ルシファーの真の血縁者でもあり、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』でもある俺が誕生した。運命、奇跡というものがあるなら、俺のことかもしれない。いや、それは彼もか」

 

ヴァーリの背中から光の翼と共に悪魔の翼が幾重にも生えだした。

 

「嘘よ……。そんな……」

 

リアスも驚愕の表情を浮かべる。

 

しかし、アザゼルが肯定した。

 

「事実だ。もし、冗談のような存在がいるとしたら、こいつのことさ。俺が知っているなかでも過去現在、おそらく未来永劫においても最強の白龍皇になる」

 

リアスとイッセーが驚愕のあまり動けない中アザゼルに動きがあった。

 

アザゼルは愉快そうに懐から一本の短剣らしきものを取り出す。

 

「それは──」

 

「……神器(セイクリッド・ギア)マニアすぎてな。自分で製作したりすることもある。レプリカ作ったりな。ほとんどものもがクズでどうしょうもないが」

 

アザゼルの持つ短剣が形を変えていきパーツにわかれて光が吹き出していく。

 

「禁手化(バランス・ブレイク)……ッ!」

 

一瞬の閃光が辺りを包み込み光がやむとそこにいたのは黄金の全身鎧を身につけた者だった。

 

金色に輝き、生物的なフォルムをしたそれはまるでドラゴン。

 

背中から十二枚もの漆黒の翼を展開し羽ばたいた。

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』と他のドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)を研究して作り出した、俺の傑作人工神器(セイクリッド・ギア)だ。『堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』、それの擬似的な禁手(バランス・ブレイカー)状態──『|堕天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》』だ」

 

「ハハハ!さすがだな、アザゼルは!やっぱり、すごい!」

 

ヴァーリは笑う。

 

自分の望む強敵を前にして早く戦いたいと本能が告げていた。

 

「ヴァーリ、覚悟はできてんだ……ッ!」

 

ヴァーリに向かって行こうとしたところで高質量の神力の光が行く手を阻んだ。

 

「ヴァーリ、アザゼルの相手は私がやるわ。あなたはそこのアホずらし晒してる『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』の相手をなさいな」

 

「ッチ!次から次へと裏切り者が出やがって!」

 

そこにいたのはメルティリア・クレオパトラ。

 

アザゼルはメルティリアを見て悪態を吐く。

 

「アザゼルと戦ったほうが楽しそうなんだが」

 

「ダメよ!わたくしまだ不完全燃焼で身体が火照って仕方ないの。あのオバサンにトドメを刺そうとしたところで止められてしまって──だからわたくしに譲りなさいな。あとで相手してあげるから」

 

「本当か?かの有名な『神の御子(デミゴッド)が相手してくれるのなら、譲るしかないね。悪いな、アザゼル。俺は赤龍帝と戦うとするよ」

 

ヴァーリがイッセーへと構えるとそこには顔を赤らめ鼻血を流す変態がいた。

 

「……やばい、なんておっぱいなんだ!部長や朱乃さんのおっぱいも大きくて魅力的だけど、あのおっぱいはそれ以上!!くぅー!元浜の特殊能力(スカウター)があればどのくらいの大きさがわかったのに!俺には100以上としかわからない!はぁ、あのおっぱいに埋もれたい」

 

自分の欲望を余すことなく口にしたイッセーにリアスは頭を抱え、アザゼルは大笑い。

 

ヴァーリはどうしたら良いのかわからず苦笑いし、メルティリアはむしろ見せるかのように胸を張った。

 

「ごめんなさいね、赤龍帝。残念だけどこの胸に埋もれさせることはできないわ。もう予約が入ってるもの!」

 

「なにぃ!どこのどいつだ!あんなおっぱいを独り占めできるうらやまけしからんエロ坊主は!!」

 

「ルシウスよ」

 

激昂したイッセーに素直に答えるメルティリア。

 

そして男の名前を聞いて固まるイッセー。

 

「……ルシウス?それって、ルシウス・ランスロット?」

 

「ええそうよ。わたくしの愛しいルシウス。強くて優しくてカッコよくてお金持ちで、そして儚い彼」

 

イッセーは最初の肯定の部分しか聞いておらず、体を震わせる。

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!またか、またなのか!アーシアのみならずあの小猫ちゃんのお姉さん?やこんなダイナマイトボディのお姉さまにまで手ぇだしやがってぇぇぇぇ!!!クッソォォォォオオオオ!!イケメンなんて消えちまえぇぇぇぇ!!」

 

『Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) Over(オーバー) Booster(ブースター)!!!!』

 

イッセーの嫉妬心に呼応したのか、神器(セイクリッド・ギア)が真っ赤で強大なオーラを解き放ち始めた。

 

アザゼルからもらったリングも作用し、イッセーは『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を装備した。

 

「──っ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ。怒り、というか嫉妬心という理由が引き金だが、これは……ハハハハ、心地よい龍の波動だな」

 

『神器(セイクリッド・ギア)は強い思いほど力の糧とする。兵藤一誠の嫉妬心は余すとこなくルシウス・ランスロットに向けられている。──真っ直ぐな者、それこそドラゴンの力を引き出せる心理のひとつ』

 

「そうか。そういう意味では俺よりも彼のほうがドラゴンと相性がいいわけだ。……よし、兵藤一誠。俺にその思いをぶつけるといい。キミのことを知ったとき、落胆よりも笑いが出た。『ああ、これが俺のライバルなんだ。まいったな』って。だが、いまのキミを見ると少しは期待できそうだ」

 

「そういや、お前もイケメンだったな。なら、お前から消してやる!!」

 

イッセーはヴァーリへと向かっていき、ヴァーリはそれを嬉々として受け止め戦闘に入っていった。

 

 

 

「ミカエルの奴、見る目が落ちたな。……いや、それは俺も言えないか。なぁ神の御子(デミゴッド)?」

 

「たしかにそうね。ミカエルはわたくしを信用しすぎね。おおかたルシウスのいない禍の団(カオス・ブリケード)に入るはずがないとでも思っていたのでしょうけれど、それは教会も同じ。ルシウスのいない教会なんてわたくしがいる価値はないわ」

 

「はぁぁ、揃いも揃ってこのざまとはな。それより、おまえはカテレアと戦っていたな。仲間であるのに何故だ?」

 

「そんなこと決まってるわ!カテレア・レヴィアタン(・・・・・・)が、悪魔が嫌いだからよ!殺しても殺しても湧いてくるんだもの。嫌になるわ」

 

「湧いてくるって、あいつらは虫か何かかよ……。さっきカテレアにトドメを刺すのを邪魔されたと言ったが誰にだ」

 

「ルシウスよ」

 

「『聖騎士(パラディン)』は今回戦いに参加しないってサーゼクスから聞いたがどういうことだ」

 

「知らないわ。でもトドメは譲って欲しいって言うんですもの。譲ってあげたわ。ルシウスのお願いだから」

 

 

 

放たれた矢がカテレアひ刺さるというところで矢は何者かに捕まれ砕け散った。

 

目の前まで死が迫っていたカテレアも仕留めたと思ったメルティリアも気配に気づかずここまで接近されたことに驚く。

 

「あぁぁ、危なかった。もう少し遅かったら、カテレアが死んじゃってたよ」

 

矢を止めたのはルシウス・ランスロット。

 

すでに禁手化(バランス・ブレイカー)状態となったルシウスがメルティリアに話しかけた。

 

「久しぶりメルティ。元気にしてた?」

 

「どの口でそんなこというのよ!わたくしのことなんかなんとも思ってないくせに!」

 

「そんなことはない。たしかに面倒な奴だと思うことはあるけど、メルティは僕にとって数少ない親しい人だ」

 

「そ、そんなこと言われても……。わたくしを置いて教会から姿を消したじゃない!せめて一言くらい言っていってもいいじゃない!」

 

「あのときは周りが見えてなかったから。僕の特別、アーシアが司祭(ゴミ)どもに追放されたんだ。探しに行かなかったらそれは僕じゃない」

 

「……どうしてそこまであの聖女(・・)のことを……」

 

「……やっぱりメルティは優しい。知らない奴からしたら唯我独尊の女帝に見えるだろうけど、まだ、アーシアを『聖女』って、呼んでくれる」

 

「そ、それは……」

 

メルティリアが言い淀む。

 

そこへ死の恐怖から解放されたカテレアが声を出す。

 

「あ、あなたたち、私を無視とはいい度胸ですね!あなた」

 

「少し黙ってろ。『俺』がいま話してる」

 

「……ッ!」

 

カテレアが言い終わる前にルシウスが威圧し黙らせる。

 

「それは、なに?」

 

「それは……ルシウスが、嫌がると思って」

 

別にルシウスのためじゃないわ!

 

そう言おうとしたのに口から出たのはあんな弱々しい言葉。

 

「そっか。やっぱり優しいね、メルティは。その優しさにつけ込むようで悪いけど、そこの悪魔(ゴミ)の処分は僕にやらせてくれないか?」

 

「どうして?」

 

「僕の両親の死に間接的に関わっているから。僕は現旧魔王の血筋とその眷属。堕天使幹部を殺すって誓ったんだ。それは最初の仇さ」

 

「……わかった。でも、お願いを聞いてもらってもいい?聞いてくれたらこれからもルシウスの仇打ち手伝うから」

 

メルティリアの顔を見つめふっと笑う。

 

「ありがとう。お願いってなに?」

 

メルティリアはルシウスにそっと近づくとその胸に抱きついた。

 

──もっと、わたくしを見て。

 

聖女(アーシア)じゃなくて。

 

猫又の悪魔(黒歌)じゃなくて。

 

──わたくしを見て欲しい。

 

「メルティだけを見ることはできない。2人は僕の特別なんだ。でも、わかった。メルティも僕が見守ろう。僕が守ってあげる」

 

ルシウスはそっと抱きしめ、そう、つぶやいた。

 

 

 

 

 

「ようやく、ようやく1人、殺せるよ。永かった。ほんとに永かった。でも、これで、母さんや父さんが喜んでくれる。さあ、『俺』よ。早く殺そう。母さんと父さんが待ってる。早く殺せと『俺』に囁いてる。

分かってる。まだ1人目だ。楽しんで殺さないと」

 

《主様……》

 

メルティリアを他の戦場に行かせルシウスはカテレアを殺せると嗤っている。

 

そんなルシウスを見て八咫烏(アヤメ)は嘆く。

 

もう、ここまで壊れてしまったのかと。

 

少しずつ蝕んできた両親の死というものはルシウスの精神を破壊してきた。

 

そこに兄妹も死により負荷のかかるようになったルシウスの精神はもう崩壊寸前だった。

 

それをなんとか繋いでいたのが、アーシア・アルジェント。

 

だが、アーシアが教会から追放されルシウスの元から消えた。

 

そこからまた、精神を蝕んでいった。

 

アーシアが悪魔になったと聞いてルシウスの精神は壊れ、復讐はもう止まらないものとなった。

 

それはもうアーシアでさえ止めることはできないかもしれない。

 

少なくとも。

 

アヤメは止められない。

 

ルシウスと最も永き刻を過ごしたアヤメでは止められない。

 

たとえそれが絶対に勝てない(・・・・・・・)相手であろうと止めることはできない。

 

「それじゃあ、カテレア!あの世に行ってらっしゃい!大丈夫!すぐにキミの仲間も『俺』が送ってやるから!寂しくないよ!だから安心して死ね。…………あ〜、やっと一人終わった〜。あと何人だっけ?まぁいいか。全部ブチ殺せば。『俺』なら出来る。僕なら出来るよ。待ってろ母さん父さん。『俺』ちゃんとできるから!2人を殺した奴は全員殺すから!そうだろ、アヤメ!」

 

せめて。

 

せめて。

 

《……そうじゃな、主様》

 

──妾だけでもルシウス、お主の味方であり続けよう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

私はどうすれば良いのだろう。

 

私は見てしまった。

 

ルシウスに抱きつく彼女の姿を。

 

ルシウスに抱きしめられ嬉しそうに笑む彼女の顔を。

 

そして何より、彼女を抱きしめ笑み(・・)を見せたルシウスを。

 

私にとってルシウスは息子のような存在です。

 

幼き時から彼はとても危うい存在で将来が心配でした。

 

両親と兄妹の死によって気づいた彼の心は死んでしまっていた。

 

そんな彼を救ったのがアーシア・アルジェントさん。

 

聖女と呼ばれ、教会の信徒たちから担ぎ上げられた哀れな少女。

 

アーシアと出逢ってから少しずつ心が戻り、人間らしさを取り戻したルシウス。

 

だけど、私は知っている。

 

そんなルシウスを救おうとして助けることができなかった少女の存在を。

 

名前はメルティリア・クレオパトラ。

 

彼女はずっとルシウスを救おうと教会中を走り回っていた。

 

心を取り戻すために勉学を。

 

ルシウスを守れるように『神言』を。

 

そして。

 

『神の使徒(ヘヴン・アポストロ)』に13歳という最年少での入団。

 

ようやく救えるとルシウスに会いに行ってみればすでにアーシアの手によって救われていて。

 

そんな彼女が思ったことは「よかった。ルシウスくんはもう救われたんだ」

 

自分の努力が無駄になってしまったのも関わらず、本当に嬉しそうに笑った彼女を見た私は。

 

この子なら、と思った。

 

私がこの世界に生まれて400年。

 

ようやく見つけた守りたいと思った女性。

 

相応しくないのは分かっている。

 

彼女はルシウスのことが好きということも知っている。

 

けれど私は惹かれてしまった。

 

思い他人を救うために3年間努力し続けた彼女の健気さに。

 

ルシウスは彼女のことをなんとも思っていない。

 

それなら私にも。

 

そう考えてしまって。

 

でも、見てしまった。

 

メルティリアを抱きしめ笑みを浮かべたルシウスを。

 

本当に、どうすればいいんだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ヴァーリ、メルティリア。迎えにきたぜぃ」

 

赤龍帝と白龍皇。

 

堕天使総督と神の御子(デミゴッド)。

 

その戦いの間に入り込んでくる者がい。

 

三国志の武将が来ているような鎧を身にまとった爽やかそうな顔つきをした若い男。

 

「美猴か。何をしに来た?」

 

「北の田舎(アース)神族と一戦交えるから任務に失敗したなら帰って来いってよ?」

 

「わかったわ」

 

「……そうか、もう時間か」

 

「なんだ、あいつは?」

 

メルティリアとヴァーリが戦闘を切り上げたのを見てイッセーはアザゼルに尋ねた。

 

「──闘戦勝仏の末裔だ」

 

イッセーは空が誰なのかわからないらしく闘戦勝仏?と首をかしげる。

 

「ソッコーで把握できる名前を言ってやる。──奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」

 

「……え? ええええええええええええええっ!?そ、そ、孫、悟空ぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

美猴の正体がかの有名な孫悟空だと聞いてイッセーは大声をあげる。

 

「俺っちは仏になった初代と違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。俺っちは美猴。よろしくな、赤龍帝」

 

イッセーに自己紹介を済ませると棍を手元に出現させるとクルクルと器用に回し、地面に突き立てた。

 

刹那、地面に黒い闇が広がり、それがヴァーリとメルティリア、美猴を捉えると、ズブズブと沈ませていく。

 

「待て!逃すか!」

 

イッセーが捕まえようとするが、神器(セイクリッド・ギア)が解除され、力が抜けていく。

 

「旧魔王の血族で白龍皇である俺は忙しいんだ。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。いずれ、再び戦うことになるだろうけど、そのときはさらに激しくやろう。お互いもっと強く──」

 

それだけ言いかけて、白龍皇は孫悟空と神の御子と共に闇のなかへと消えていった。

 

 

 

──ごめんね、白音。

 

黒歌は小猫の真実を話すことはなかった。

 

ただ、そう小猫に謝ると黒歌はいなくなってしまった。

 

どうして、何も教えてくれないんですか姉さまっ!

 

私は、姉さまが怖いし憎い。

 

けど、それ以上に大好きなのに!

 

一緒に居たいのに!

 

姉さま、姉さまっ!!

 

 

駒王学園から離れた静かな場所に白い子猫の独りの鳴き声が響いていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ルシウスはカテレアを殺し終えるとすぐに校舎内へと戻った。

 

それからしばらくすると外に戦闘に出ていた者たちが帰ってきたがそこにヴァーリとメルティリア、黒歌の姿はなかった。

 

ヴァーリは仕方ないとしてメルティリアがいないということは彼女も禍の団(カオス・ブリケード)に入っていたのだろう。

 

(僕の復讐を手伝ってくれるって言ってたから、相手が誰かも曹操あたりから聞いたのかな)

 

《さてな、妾にはわからぬ》

 

「ルシウスくん」

 

「ん?ああ、イリナ。無事だったみたいだね」

 

「うん……。私、ミカエル様の護衛としてきてるのに何もできなかったから」

 

「気にすることないよ。キミはまだ伸び代がたくさんある。いまは何もできなかったかもしれないけど、いつか必ずミカエルさまのお役に立てる時が来るよ」

 

「本当に?」

 

「うん。キミの元上司の僕が言うんだ。絶対にその時が来る」

 

「……うん。ありがとうルシウスくん!」

 

《(本当に不思議で仕方ないのう。先ほどまであれほど壊れていたというのにいまは元に戻っておる。これが長く続けば良いのじゃが。きっと……)》

 

ルシウスに慰められたイリナは再び笑顔を見せ、アヤメはイリナを慰めたルシウスについて考える。

 

だが、考えたところでルシウスの復讐心が変わるはずがなく。

 

アヤメは考えるのをやめた。

 

いまを大切にしようと。

 

 

 

その後ルシウスはセラフォルーにあることを頼み込み駒王学園を後にする。

 

門をくぐったところで黒歌が待っていた。

 

「お待たせ黒姉」

 

「それほど待ってないにゃん。それにしても今日は疲れたにゃん。ホテルに戻ってくつろぎたいにゃ〜」

 

「そうだね。今日は疲れた。明日からも色々とあるし今日はもう休もう」

 

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