八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第一話

はぐれ1

 

昨日イッセーさんの家に2人組の悪魔祓い(エクソシスト)さんが来てから私はある悪魔祓い(エクソシスト)がいまどうしているのか気になっていた。

 

「はぁ……」

 

「大丈夫かアーシア?昨日イリナ達に会ってからため息ばかりついてるけど」

 

「え?だ、大丈夫ですよ。ただお二人の姿を見て今どうしてるのかなぁって気になってしまって」

 

「どうしてるのかって、教会の人?」

 

「はい。6年くらい前から仲良くしていただいた人のことを」

 

イッセーさんは怖い顔をして私に聞いてきます。

 

「そ、それって男か?」

 

「?はい。そうですよ?」

 

「うわぁぁ!まさかアーシアに男がぁぁ!!」

 

私が答えた途端イッセーさんは頭を抱え、転げ回りはじめました。

 

どうしたんでしょうか?

 

「……無様」

 

「ぐはぁっ!」

 

小猫さんにボソッといわれた言葉で転げ回るのをやめて動かなくなってしまいました。

 

「あらあら。もしかしてアーシアちゃん。その人のことが好きですの?」

 

「へっ!?ち、違いますよぉ!その人も悪魔祓い(エクソシスト)だったからです」

 

朱乃さんに聞かれて私は大きな声をあげてしまいました。

 

すぐに否定しましたけど、朱乃さんは私を見て笑っています。

 

うぅ、恥ずかしいです。

 

顔、赤くなってないでしょうか。

 

「アーシア。顔が赤いわよ」

 

部長さんに赤いといわれてしまいました!

 

「うぅ、からかわないでくださいぃ」

 

「ごめんなさいね。顔を赤くしているアーシアが可愛らしくて。それでその悪魔祓い(エクソシスト)とは恋人なの?」

 

「ち、違いますよぅ!その、私が一方的に、好きなだけです……」

 

今度は自分でも顔が赤いのがわかりました。

 

すっごく熱くなってます。

 

コンコン

 

部室の扉からノックの音が聞こえてきました。

 

よかったですぅ。これで部長さん達から解放されます。

 

『教会の者だが、リアス・グレモリー殿の部室はここであっているだろうか?』

 

女性の少し低い声が聞こえてきました。

 

「えぇそうよ。入ってちょうだい」

 

「失礼する」

 

扉があいて入ってきたのは白いローブを着た2人の女の人です。

 

1人は青い髪に緑のメッシュが入った背の高い女の人と、茶色の髪をツインテールにしてる可愛らしいイッセーさんの幼なじみのイリナさんです。

 

朱乃さんが2人を席に案内し、紅茶の準備に行きました。

 

木場さんは2人が入って来た時からずっと睨みつけています。

 

木場さんは教会で彼の兄妹と同じ実験をされていたそうですから、仕方ないかもしれません。

 

「この度は突然の訪問で申し訳ない」

 

「かまわないわ。それで交渉したいこととは?」

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

え?エクスカリバーが奪われた、ですか?

 

あれは深部の方に保管されていて奪うことは難しいはずです。

 

それが奪われるなんて!

 

イッセーさんを見るとなにを言ってるのかわからないようで首を傾げていました。

 

「聖剣エクスカリバーそのものはもう存在しないわ」

 

部長さんの言葉でさらにわかんなくなったのかイッセーさんの頭の上に?が浮かんで見えます。

 

「イッセーくん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」

 

「いまはこのような姿さ」

 

イリナさんの説明で青い髪の女の人が布に巻かれて長い物を取り出し、布を剥がしました。

 

そこに現れたのは一本の長剣。

 

「これがエクスカリバーだ」

 

エクスカリバーを見た途端、私は恐怖、戦慄、畏怖といった感情に支配されました。

 

こ、これがエクスカリバーですか!

 

教会にいた頃も見たことがなかったのでみれたことは嬉しいですが、もう見たくありません。

 

「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を錬金術によって新たな姿になったものさ。これは7本作られたうちの1本さ」

 

イリナさんは懐から紐?を取り出しました。

 

すると紐は形を変えていき、一本の刀になりました。

 

「私のは『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』。形を自由自在にできるわ」

 

「私のほうは『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』だ」

 

イリナさんが取り出したエクスカリバーからは『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』と同様の恐怖を感じました。

 

「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力をはなす必要もないだろう?」

 

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからと言っても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう?それに私の聖剣は能力を知られてもこの悪魔の皆さんに後れを取るなんてことないわ」

 

イリナさん、私たちに絶対に勝てる自信があるんですね。

 

2人がエクスカリバーをしまってくれたことで先ほどまで感じていた恐怖から解放されたとおもったのですがまだ近くからプレッシャーのようなものを感じます。

 

木場さんです。

 

木場さんがプレッシャーを放っていました。

 

木場さんがすごく怖い表情でエクスカリバーと2人を睨んでいました。

 

「……それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」

 

「各教会から1本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだって話なのさ」

 

「エクスカリバーを奪ったのは?」

 

「奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』だよ」

 

その答えに部長さんは目を見開きました。

 

私だって『神の子を見張る者(グリゴリ)』が動くなんて信じられません!

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われるなんて失態どころではないわね」

 

「奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部、コカビエルだ」

 

え?

 

えぇ⁉︎

 

コカビエルですか⁉︎

 

コカビエルっていうと聖書にも記されている堕天使じゃないですか⁉︎

 

部長さんもコカビエルの名前に苦笑してますし。

 

「私たちがここに来たのは、私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いに悪魔が一切介入しないこと。今回の事件に関わるなと言いにきた」

 

「それは牽制かしら?もしかして、私たちがその堕天使と手を組んで聖剣をどうにかすると思ってるの?」

 

「本部は可能性がないわけではないと思っているのでね」

 

部長さんの瞳に冷たいものが宿るのがわかりました。

 

かなりキレてますよぉ!

 

でも仕方ないです。

 

教会は無実ですのに悪魔が共犯なってるかもしれないって言ってるわけですから。

 

「上は悪魔と堕天使を信用していない。聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう?堕天使どもと同様に利益がある。それゆえ、手を組んでもおかしくない。もし、堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなたたちを完全に消滅させる。たとえ、そちらが魔王の妹でもだよ」

 

「私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」

 

部長さんの言葉を聞いて青い髪の女の人──ゼノヴィアさんはフッと笑いました。

 

「それが聞けただけでもいいさ」

 

「あなたたち2人でエクスカリバーを奪還するの?無謀ね。死ぬつもり?」

 

部長さんは呆れ声で2人に聞くと2人は決意の眼差しで言いました。

 

「そうだ」

 

と。

 

「無論、ただて死ぬつもりはないよ。最低でも堕天使の手からエクスカリバーはなくすつもりだ」

 

「……2人だけでそれは可能なのかしら?秘密兵器でもあるの?」

 

「さてね。それは想像にお任せするよ」

 

それっきり部長さんとイリナさんたちは見つめあったまま、動きません。

 

しばらくしてイリナさんたちは立ち上がりました。

 

「それでは、そろそろお暇させてもらおうかな。イリナ、帰るぞ」

 

「そう、お茶は飲んでいかないの?お菓子ぐらい振舞わせてもらうわ」

 

「いや、遠慮しておこう」

 

部長さんのお誘いにゼノヴィアさんは手を振って断りました。

 

イリナさんも手でゴメンなさいをしながら断ります。

 

そのまま2人が出て行くのだろうと見ていると、私に2人の視線が集まりました。

 

私、何か粗相をしたでしょうか……?

 

「──兵藤一誠の家で出会ったとき、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさか、この地で会おうとは」

 

私は『魔女』の単語を聞いて体が震え出しました。

 

──どうして。

 

私の頭の中に教会で罵声を浴びた時の映像がフラッシュバックしました。

 

「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん?悪魔や堕天使をも癒す能力を持っているらしいわね?追放され、何処かに流れたと聞いていたけど、悪魔になっているとは思わなかったわ。これでは彼(・)が報われないわね」

 

え?

 

彼?

 

「……あ、あの。……か、彼って……?」

 

「それはアーシアさんを追いかけて出て行った元悪魔祓い(エクソシスト)のことよ」

 

私を追いかけて?

 

そ、それって……。

 

「『ルシウス・ランスロット(・・・・・・・・・・・)』のことさ」

 

──アーシア。僕は、君が好きだ。

 

その名前を聞いて、彼の声が、聞こえてきました。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

あれは私がまだ『聖女』として教会に所属していて『魔女』として追放される一月前でした。

 

「ねぇ、アーシア。君は僕とずっと一緒にいてくれる?」

 

久しぶりの休暇が取れた彼と近くの高台で街を眺めていた時に彼は私にそう言ったのです。

 

「はい。私はルシウス、あなたとずっと一緒にいますよ」

 

私はそう返しました。

 

その時は友だちとしてだと思っていたんですけど、それが間違いだと気づきました。

 

「そっか……。アーシアは僕のそばにずっと、いてくれるんだ」

 

彼は私だけに見せる優しい表情で微笑んでいました。

 

幸せを噛みしめるように。

 

「アーシア。僕は、君が好きだ」

 

突然の告白に私はルシウスを見ると彼は柵に手をおき町を眺めてました。

 

白銀の髪を風が持ち上げなびき、私だけに見せる優しい表情で眺めている姿はとても美しくて。

 

私は先ほど告白されたことも忘れ、ただ見惚れていました。

 

「僕は、アーシアといるとき、心がすごく落ち着くんだ。どんなに辛いことがあっても君を見るだけで僕の心は穏やかになっていく。僕はね、君に会う前はずっと死んでた。両親が死んでから、兄さんやルシアが殺されてから、心が死んでた。ただ言われた通りに悪魔を殺し、堕天使を殺す、人形だった。でも君に出会って僕は、心が何かに満たされていくのを感じたんだ。初めてだった。生を感じたのは。それからだよ。僕が君に惹かれていったのは。今日はどんな顔をしてるかな?いつもみたいに失敗してかなしそうな顔をしてるのかな?信徒に感謝されて笑顔になってるのかな?もしかしたら、自惚れだけど、僕に会いたくてしょうがないって顔をしてるのかな?って。気が付けば僕は、君が好きになってたんだ」

 

ルシウスは町をみつめながら、私に確かに伝わる声でそう言ってきて。

 

私は涙を流しました。

 

嬉しかったから。

 

彼が、ルシウスがそれほどまでに想ってくれていたことに。

 

彼が、彼だけが『聖女』としてのアーシア・アルジェントではなく、ただのアーシア・アルジェントを見てくれていたことに。

 

それから私は彼になんて返したか、覚えていません。

 

ルシウスの気持ちに応えたのか、それとも……。

 

ただ、彼の優しい微笑みはしっかりと目に焼き付いています。

 

──あなたは悪魔になった私をまだ好きと言ってくれますか?

 

あの高台で想いを告げてくれた時のように。

 

──私ともう一度会ってくれますか?

 

叶うことなら。

 

私は──

 

──もう一度あなたと一緒に笑い合いたいです。

 

 

 

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