八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第四話

はぐれ4

 

夜が明け、日が登りきった11時。

 

今日は休日で主婦が家族のために昼食を作りはじめる頃、黒歌は目を覚ました。

 

ビジネスホテルの硬いベットとは違う2週間ぶりのフワフワのベットはいつも使っているもの以上に気持ち良く、つい寝過ごしてしまった。

 

もう起きなくてはと体を起こそうとするが、左手に何かがくっついているようで起き上がれなかった。

 

黒歌はまたか、と思いながらも嬉しそうに笑い、掛け布団をどかす。

 

そこには黒歌の左手に抱きつくルシウスの姿があった。

 

ルシウスは見た目はもう子供ではなく年相応の大きさだ。

 

しかし心はまだ子どもなのだ。

 

小さい頃に両親をなくし、兄妹も失ったルシウスは心が成長をやめてしまった。

 

いまは少しずつ本来の心の年齢に近づいてきているがそれでもまだ子どもなのだ。

 

いまは12歳ほどまで成長しているだろう。

 

小さい頃に親に甘えることができなかった分、黒歌と2人きりのとき、ルシウスはとことん甘えてくる。

 

それが黒歌はとても嬉しかった。

 

自分も幼い妹を置き去りにしてしまったから。

 

黒歌はルシウスの頭を優しく撫でながら、耳元で「起きて」、と声をかける。

 

うーん、と声を上げるがルシウスは起きない。

 

それどころか左手だけでなく背中に手をまわし抱きしめてきた。

 

突然のことで黒歌は一瞬硬直し、硬直が解けると顔を赤くする。

 

普段はいたずら好きで男慣れしてそうな黒歌だが、実は初心。

 

小さい頃から妹とふたりで暮らしていた黒歌は恋愛経験など皆無。

 

親しい男もルシウスに出逢うまでいたことがなく、いたのは妹の為に眷属になって仕えた憎き主どもだけだ。

 

だから初めてできた愛しい男の子から抱きしめられたら、赤面し固まることしかできなかった。

 

5分ほど経ちようやくいま(・・)は慣れた黒歌はルシウスを優しく抱きしめ返す。

 

ルシウスはそれに安心したのか口元がゆるみ、顔を黒歌の豊満な胸にうずめる。

 

これにまた黒歌は固まってしまい2人がベットから出たのはそれから1時間後だった。

 

 

 

「うぅ、まだ頬が火照ってるし、心臓がばくばくいってるよぉ」

 

あれから昼食を取ったりと1時間ほど経っているがまだあのときのことで頬をほんのりと染め、胸を抑える黒歌。

 

どれだけ初心なんだと思うかもしれないが、ルシウスと1時間抱き合っていたのだ。

 

仕方が無いと思って欲しい。

 

「いつまでそうしてるの?はやく『赤龍帝』を殺さないとアーシアがもっと穢されちゃうよ!黒姉の妹ちゃんだって危ないんだから」

 

「で、でもあんなことされたら、しかないにゃぁ……」

 

「?」

 

ルシウスはなんで黒歌がああなっているのかわからず、『赤龍帝』を殺しにいくことを急かすが黒歌はそれにボソボソと返すだけ。

 

その反応にルシウス首は首を傾げた。

 

まぁ子どもに乙女心を理解しろという方が無理な話かもしれない。

 

「……よし!もう大丈夫。『赤龍帝』を殺しにいくにゃん!」

 

「じゃあ、その『赤龍帝』が通ってる学園に行こう」

 

「わかった。ついてきて」

 

2人は駒王学園に向けさっきを放ちながら走り出した。

 

 

 

2人が駒王学園に『赤龍帝』を殺しに向かっている中その2人の敵である『赤龍帝』兵藤一誠は黒歌の妹でありリアス・グレモリーの『戦車(ルーク)』塔城小猫。

 

リアス・グレモリーの幼なじみで現レヴィアタンの妹、ソーナ・シトリーの『兵士』匙 元士郎の2人と共に昨日来た2人のエクスカリバー使いを探していた。

 

「なぁ兵藤。こんな街中歩いてたところであの2人見つかるとは思えないんだが」

 

「でも、見つけないと木場にエクスカリバーを破壊させてられないしなぁ」

 

3人で町を歩きながら探しているが、こんな町中の真昼間に見つけるのは困難だろう。

 

相手は教会から極秘任務を受けやって来たプロの悪魔祓いだ。

 

早々見つかるはずがない。

 

見つけるのは相当な馬鹿だけだろう。

 

歩くこと十数分。

 

「……見つけました」

 

「え?見間違いじゃない?」

 

「小猫ちゃんどこ?どこにイリナたちが?」

 

イッセーたちに聞かれ、小猫が指を差した。

 

イッセーたちもそちらを見ると。

 

「えー、迷える子羊にお恵みを〜」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

周りの人たちに奇異な視線を向けられる白いローブを着た怪しい2人組の女性が祈りを捧げていた。

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒つかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ?」

 

「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

ゼノヴィアはイリナの隣に立てかけている絵画を指差した。

 

そこにはなにやら聖人らしき人が描かれた下手な絵画があった。

 

「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんなこといっていたわ!」

 

「じゃあ、誰だかわかるのか?私には誰1人脳裏に浮かばない」

 

描かれているのは貧相な服をきて頭の上に輪っかがあるお方と、背景に赤ちゃん天使がラッパを持って宙を舞っているものだ。

 

「たぶん、ペトロ……さま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」

 

「いいえ、こんなのよ!私にはわかるもん!」

 

「ああ、どうしてルシウスは私を置いていってしまったんだ。おかげでこいつを1人で抑えないといけないなんて……。主よ、これも試練ですか?」

 

「ちょっと、そんなこと言わないでよ!私だってルシウスくんと離れたくなかったんだから!ルシウスくんの部下になったって聞いた時どんなに嬉しかったか!」

 

「それは私も同じだ。……はぁ、今頃あいつはどこにいるんだ?」

 

「きっと、ドイツかアメリカよ。そこに別荘があるっていってたし」

 

「別荘か。……どうして年は同じなのにこれほど差が開くんだ。私たちのもらう報酬をいくらかき集めても別荘なんて買えないぞ」

 

「それはイスカリオテのメンバーだからでしょ。あんたって、沈むときはとことん沈むわね」

 

「だか、おまえもそう思うだろう?」

 

「まぁ、それはそうだけど……」

 

ぐぅぅぅぅぅ……。

 

2人は腹をすかしているのか遠くからみていたイッセーたちにも聞こえる腹の音がする。

 

2人はその場に力なく崩れた。

 

それをみたイッセーたちは呆れたような表情で2人に話しかけたのだった。

 

のちに2人は相当の馬鹿と3人の悪魔に知られたことにより、散々からかわれることになる。

 

 

 

その頃ルシウスたちは駒王学園に到着し、乗り込んでいた。

 

しかし、今日は土曜日。

 

部活に参加している生徒しかおらず、一応部活であるオカルト研究部は夜に行われる。

 

いまきても無意味であったが2人はそんなことは知らない。

 

目に付く生徒たちに「兵藤一誠がどこにいるか知らない?」と聞いてまわり、怪しい2人になぜ探しているのか聞き、それに男子は「ついにイッセーが断罪されるときが来た!」女子は「あの変態兵藤からお姉様たちを救って!」とルシウスに激励をおくる。

 

なぜこんなに自分たちが激励されるのか不思議に思い理由を聞く。

 

すると出るわ出るわイッセーの悪評。

 

ますます『殺る気』に満ちていくルシウスと黒歌。

 

ただ肝心のイッセーの居場所は誰も知らず、とりあえず久しぶりにゼノヴィアとイリナに会いにいくのだった。

 

 

 

「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

そう言いながらイリナとゼノヴィアは大量に注文したメニューを平らげていく。

 

その様子をルシウスがみていたら黒歌と重ねて見ることだろう。

 

注文された料理の量は2人前ではなく十数人分にもおよぶ。

 

その食べっぷりに唖然としていた3人だが、いまは顔を青くして「こんなに食べて、お金、足りるかな?」と財布の心配をはじめる。

 

テーブルから大量にあった食事がすべて片付きようやく2人は箸を止めた。

 

「ふぅー、落ち着いた。キミたち悪魔に救われるとは、世も末だな」

 

とゼノヴィアは奢ってもらったくせに失礼なことを発し、

 

「はふぅー、ご馳走様でした。ああ、主よ。心やさしき悪魔たちにご慈悲を」

 

胸で十時を切りダメージを与えるイリナ。

 

イッセーたちはイリナによって頭痛に襲われ、頭へ手を当てる。

 

「あー、ごめんなさい。つい十時を切ってしまったわ」

 

てへっと可愛らしく笑い謝る。

 

その笑顔にイッセーと匙は鼻の下を伸ばし小猫にイッセーは足を踏みつけられる。

 

「で、私たちに接触した理由は?」

 

いきなり切り出されるとは思っていなかったイッセーは息を飲むが、息を深く吐いてから答える。

 

「俺たちもエクスカリバーの破壊に協力したい」

 

イッセーの告白に2人は目を丸くさせ驚く。

 

まさかあれだけやられたのに自分たちに接触してきた挙句エクスカリバーの破壊に協力したいと言い出すとは思ってもみなかった。

 

2人は互いに顔を見合わせ、それからゼノヴィアはイッセーを見た。

 

「そうだな。一本ぐらい任せてもいいだろう。破壊できるのならね。だだし、そちらの正体がバレないようにしてくれ。こちらもそちらと関わりを持っているように上にも敵にも思われたくはない」

 

まさかの許可に今度はイッセーたちが驚いているとイリナがゼノヴィアに聞く。

 

「ちょっと、ゼノヴィア。いいの?相手はイッセーくんとはいえ、悪魔なのよ?」

 

イリナの疑問は正しい。

 

イッセーたちは悪魔。

 

敵同士なのだから普通なら協力関係を結ぼうとは思わないのだから。

 

だがイリナの疑問にゼノヴィアはあっさり答える。

 

「イリナ、正直いってこの任務は私たちには重い。ルシウスがいた頃は成し遂げていただろうがいまの私たちでは、無事に任務を終えて帰れる確率は3割だ。ならば悪魔たちが協力したいといっているのだから使用じゃないか。私たちに害はないわけだしな」

 

「それは、そうだけど。でも……」

 

「別に悪魔の力を借りるといってない。ドラゴンの力を借りる。上もドラゴンの力を借りるなといってないからな」

 

「……ヘリクツよ。それ」

 

「私もキミもここで死ぬ訳にはいかないしね。ルシウスにもう一度会うのだろう?」

 

「ええそうよ!私たちを捨てたルシウスくんにはビンタしてやるんだから!」

 

「決まったね。そう言うわけだからよろしく頼むよ『赤龍帝』」

 

無事に成立したことにイッセーたちは安堵する。

 

最悪もう一戦交えるつもりだったから、その分安堵も大きかった。

 

「OK。商談成立だ。俺はドラゴンの力を貸す。じゃあ、今回の俺のパートナーを呼んでもいいか?」

 

イッセーはケータイを取り出し、木場に連絡を入れた。

 

 

「……話はわかったよ」

 

イッセーから連絡を受けた木場はファミレスで協力のことを聞いた。

 

「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を許可を承認されるのは遺憾だけどね」

 

「ずいぶんないいようだな。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で切り捨てているところだ」

 

木場の言葉にゼノヴィアが反応し、睨み合う。

 

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね?エクスカリバーと──教会に」

 

その問いに「当然だよ」と木場は冷たい声音で肯定した。

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被害者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

木場は憎悪の眼差しをイリナに向ける。

 

『聖剣計画』

 

それは木場がまだ神を信じ、教会の人間だった頃。

 

バルパー・ガリレイによって行われた『人工聖剣使い』を作り出そうとした計画。

 

そしてそれはルシウスの兄妹。

 

『ルシエル』と『ルシア』の命を奪った計画。

 

木場はその計画の唯一の生き残りだった。

 

「その事件は、私たちの間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。いまでは堕天使側の住人さ」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

「──バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司祭』と呼ばれた男だ」

 

「……堕天使を追えば、その者にたどり着くのかな」

 

バルパー・ガリレイの名を聞いて木場の目に憎悪の光が宿る。

 

「僕も情報を提供した方がいいようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を1人殺害していたよ」

 

『!』

 

その情報にその場の全員が驚いた。

 

もう既に接触していたとは思わなくてみんな目を丸くさせる。

 

「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

 

フリードの名前を聞きイッセーは顔を歪めた。

 

アーシアをひどい目に合わせたのを思い出したのだろう。

 

「フリード・セルゼン。13歳で悪魔祓いになった天才で『特務機関イスカリオテ』の次期団員候補にも上がっていた者よ」

 

「だが奴はあまりにもやりすぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初からなかった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

それを聞いてああ、やっぱりとイッセーは思った。

 

あんな奴が教会でまともであったはずがないから。

 

「フリードは聖剣を手に入れ私たちに牙を剥くか。まあいい。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

ゼノヴィアはメモ用紙に連絡先を書きイッセーに渡す。

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

 

「サンキュー。じゃあ、俺たちの方も──」

 

「イッセーくんのケータイ番号はおばさまからいただいているわ」

 

イッセーは自分も番号を教えようとするがイリナはすでにイッセーの母親から聞いていて知っていた。

 

それを聞いてイッセーは母親に腹を立てる。

 

「では、そう言うことで。食事の礼、いつかするぞ。赤龍帝の──」

 

「ああ。やっと、見つけた(・・・・)」

 

ファミレスから出たあとゼノヴィアがイッセーたちに別れを告げようとするとそれを遮る声がした。

 

ゼノヴィアとイリナはその声に振り返り、イッセーたちはわけもわからず首を傾げる」

 

ゼノヴィアとイリナの目に映ったのは前と変わらず司祭服を着た美少年。

 

イッセーと匙はいきなり現れたイケメンに歯ぎしりし、小猫は動じずただそれを眺め、いや、ほんのりと頬を赤く染め、木場はルシウスを見て言葉をなくした。

 

「ル、ルシウス……どうしてここに?」

 

「ルシウスくーん!会いたかったよぉ!」

 

ルシウスにゼノヴィアは問いかけイリナは抱きつく。

 

それを見てイッセーと匙は「なんて羨ましい!!」と涙を流す。

 

「久しぶり。ここに2人が来てるって聞いたから会いに来たよ」

 

それを聞いてゼノヴィアとイリナは顔を赤くして嬉しそうにする。

 

──ああ、それと。

 

ルシウスが発した言葉でその場の一人を除いた全員が驚愕し、例外の、『赤龍帝』兵藤一誠はなぜ自分をとわけがわからなかった。

 

「『赤龍帝』を殺しにきたよ」

 

元『特務機関イスカリオテ』悪魔祓い(エクソシスト)。

 

序列第2位。ルシウス・ランスロット。

 

リアス・グレモリーが兵士、『赤龍帝』兵藤一誠。

 

ついにルシウス(最強)とイッセー(変態)が出会った。

 

 

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